宮西達也は1956年静岡県生まれの絵本作家です。小学校の教科書の挿絵やエッセイなど、幅広いジャンルで活躍されている作家です。
見た目にとらわれず、心の中から感じとれるやさしさや思いやりなどを表現しつづけています。そんな思いを一途に伝え続けてきた作品は、読者の心にも伝わり、読者投票で選ばれる「けんぶち絵本の里大賞」を何度も受賞しています。
宮西達也の絵本の絵は、版画と同じような技法で、何版かに描き分けて仕上げているそうです。そのため、独特の色使いや、シンプルなのに深みのある絵が生まれるのだと思います。また、読み聞かせやライブライティングなど、数多くのイベントを開く、サービス精神も人気のひとつではないでしょうか。
肉食恐竜のティラノサウルスと、草食恐竜のアンキロサウルスの赤ちゃんとの、少し切なくなる、心温まる愛情物語です。大人気の「ティラノサウルス」シリーズの1作で、テレビと映画でアニメ化もされました。
ひとりぼっちのアンキロサウルスの赤ちゃんは、「おまえうまそうだな」と近づいてきたティラノサウルスを、自分のことを「ウマソウ」と呼ぶおとうさんだと勘違します。最初は戸惑うティラノサウルスですが、何日も一緒に過ごすうちに、情が湧いてきました。
でもそれと同時に、こんな自分にむかって、おとうさんみたいになりたい!と「ウマソウ」が言うたびに、心が痛み……。本当の親もとへかえそうと考えつくのです。親が子を想うように、ティラノサウルスにも「ウマソウ」に対する愛情が芽生えた瞬間だと、感動してしまいます。
- 著者
- 宮西 達也
- 出版日
一緒にいたいと泣く「ウマソウ」に、うそをついて、本当の親もとへ「ウマソウ」を走らせます。「ウマソウ」をそっと見届けるティラノサウルスの決断には、「ウマソウ」の幸せを一番に考えた深い愛情を感じずにはいられません。
タイトルと表紙を見ると、とても怖そうですが、物語の内容とのギャップに、まずは驚くでしょう。強面の肉食恐竜が、「ウマソウ」のかわいい勘違いから、自分の幸せより、相手の幸せを想うやさしさと愛情を知る、大人にも読んでもらいたい作品の1つだと思います。
死ぬ日を知っているシニガミさんが、病気で弱っているこぶたと、はらぺこのオオカミを通して、命の尊さを教えてくれる物語です。宮西達也作品ならではの、描き分けの技法の美しい情景が、堪能できる作品でもあります。
誰も知らない自分の死ぬ日を知っているという、シニガミさん。シニガミさんが死ぬ日を知っているのは、死ぬ日を決めるのがシニガミさんだからです。シニガミさんは、花や草、空や雲など、どんな姿にもなることができます。
あるとき、はらぺこオオカミは、おいしそうなこぶたを見つけました。しかし、こぶたが病気だったので、元気になってから食べようと決め、看病することにします。あたたかいスープをあげたり、踊ってみせたりしますが、よくなりません。シニガミさんのささやきによると、こぶたはあと何日かの命……。
こぶたのために看病していたオオカミは、いつしかこぶたを食べようとは思わなくなっていました。それどころか、助けたい一心で、病気に効くという赤い花を、危険な崖の下に取りに行きます。シニガミさんのささやきによると、オオカミもまた、あと何日かの命……。
- 著者
- 宮西 達也
- 出版日
2人はどうなるのかと、不安になると思います。でも、オオカミが看病を通して、他人と関わることで、生きている意味や楽しさを知るという経験は、もしかしてシニガミさんの仕業かな?と、シニガミさんを少し見直す気持ちになるところが絶妙です。
「シニガミ」という、すこし怖いワードですが、とても大切な命の尊さをわかりやすく伝える感動作になっています。いろいろな姿になって、2人を見つめるシニガミさんを探しながら読み進めるのも楽しいですよ。
主人公のオオカミが、ひとりで食べきれないほどのこぶたたちを見つけるという、とても運がいい日に起こる、ほのぼのとした物語です。怖いイメージのオオカミですが、宮西達也らしい、ちょっと気のいい感じのオオカミのキャラクターが、際立つ作品になっていると思います。
オオカミのウルは、おひるねもりで無防備にお昼寝をしているたくさんのこぶたたちを見つけます。「なんてきょうはうんがいいんだろう」と大喜び!でも、ひとりでは食べきれないので、友だちのオオカミたちにも教えてあげることにしました。
ウルの友だち、ワォーとガルルとペロリ。それぞれの家に、おひるねもりのことを話しに行くのですが、ワオーもガルルもペロリも、ウルをもてなしてくれて、話しそびれてしまいます。でもウルは、おみやげまでもらってご満悦です。
- 著者
- 宮西 達也
- 出版日
よくありそうな、オオカミとこぶたたちの物語だと思っていると、いい意味で裏切られます。ちょっと気のいいおとぼけ感のあるオオカミのウルの「きょう」が、うらやましくなるくらい「うんがいい」日なんです!
友だちのオオカミたちもみんなやさしくてあたたかいので、ルウはほんとうに幸せだと思います。でも、ほんとうは、一番「うんがいい」のは、おひるねもりのこぶたたちなのかもしれませんね。
にゃーごと鳴く大きい猫と、3匹のこねずみとの、軽妙な会話のやりとりが楽しい物語です。表紙は見開きになっていて、にゃーごと鳴いているとても大きい猫の表情は、何とも言えぬ迫力があります。
ねずみの学校では、猫に会ったらすぐに逃げるようにと、先生が教えています。でも、先生の話を聞かない3匹のこねずみがいました。そんなのんきな3匹のこねずみたちは、3匹で桃を取りに行くことにします。
桃を取りに行く途中で、大きな猫に遭遇してしまいました。当然、猫は、こねずみたちを食べようとしますが、無邪気に話しかけてくるこねずみたちに、戸惑っている様子です。無邪気なこねずみたちもさることながら、素直にこねずみたちに答える猫の姿が、何とも言えず、クスっと笑えます。
- 著者
- 宮西 達也
- 出版日
名前を「タマ」という猫は、こねずみたちを背中に乗せて、一緒に桃を取りに行きますが、まだ、こねずみたちをあきらめたわけではありません。しかし、その後も無邪気なこねずみたちのペースに巻き込まれます。こねずみたちの優しさに触れ、猫の気持ちはかわるのでしょうか……。
無邪気なこねずみたちに、ハラハラドキドキがとまりません。純粋なこねずみたちと接することで、猫の心にも変化が起こるはず!と期待しながら、引き込まれます。怖いと思った表紙の『にゃーご』と鳴く大きい猫も、読み終わる頃には、愛嬌たっぷりのキャラクターに見えてきますよ。
先に紹介しました『にゃーご』の続編で、今回も、大きい猫と3匹のこねずみたちとのふれあいを描いた心温まる作品です。『にゃーご』同様、迫力ある大きい猫の表紙だけ見ても、ワクワクしてきます。
野原で遊んでいた3匹のこねずみたちに、村長さんは、あんまり「ちゅーちゅー」と鳴いていると猫に食べられちゃうと注意しました。案の定、こねずみたちの目の前に、大きな猫が現れたのです!
ところが猫は、こねずみたちが誰だかわからない様子。こねずみたちは、とっさに、怖いねずみ像と「ぼよよ~ん」という鳴き声だとウソえを教えました。猫は、教えてもらったお礼に、3匹を背中に乗せて、バナナをごちそうしに行きます。それにしても、「ぼよよ~ん」とは、なんとも癒されますね。
- 著者
- 宮西 達也
- 出版日
今回もまた、無防備なこねずみたちにハラハラしますが、猫がねずみを知らないという、意表をつかれた展開にビックリ!そして、こねずみたちのウソを素直に聞く猫が、笑えます。ねずみとか猫とか関係なく、心が通じる温かさを感じてもらえるのではないでしょうか。「ぼよよ~ん」で続編も期待しちゃいますね。
作品に共通する、弱いものと強いものなど立場に関係なく、ふれあうことで生まれることの大切さを学べます。こどもだけではなく、大人の心にも響きます。