松谷みよ子のおすすめ絵本5選!読み続けられる、ぬくもりのある作品

更新:2017.4.20

深い解釈のできる作品を多く残しながら、もう一方で赤ちゃんのための絵本も数多く発表した松谷みよ子の安心感のある絵本を紹介します。

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松谷みよ子の表現力の多彩さに脱帽!

2015年2月に89歳で逝去した松谷みよ子は、対象を選ばない絵本の作り手として高く評価される絵本作家です。まさしく大人から子供まで、様々な解釈、価値観を試させる作品を多く残しています。

戦争による疎開で訪れた長野で民話に触れそれらに関わる作品を残し、平和をうたうため戦争を題材にした作品を多く発表しました。多くの作品が大きな文学賞を受賞するなど高い評価を得ているものばかりです。その表現力の高さは世界でも高く評価されており、1960年発表の『龍の小太郎』は1962年の国際アンデルセン賞優良賞の受賞歴もあるほどです。

今回はその表現力の高さを“赤ちゃんの愛読書”となるようにと願いを込められた赤ちゃんの本を中心に紹介します。思わずにっこりと微笑んでしまうようなぬくもりのある作品ばかりです。
 

幸せは笑顔から始まる

『いいおかお』は、親になった大人なら誰もが願う“子どもの笑顔”を題材にしたお話です。自分のこどもの笑顔を想像しながら、または楽しみにしながら読むと心温まること間違いなしです。

著者
松谷 みよ子
出版日
1967-04-15

表紙の猫がすでに良い笑顔であることが特徴のこの絵本は、ページをめくってみるとすべて笑顔が描かれています。子育てをしていたり、子どもに関わる職業についていたりする大人にとっては理想の笑顔を表現しているかもしれません。

最初の女の子の”いいおかお”に始まり、様々な動物が真似をして“いいおかお”をしていきます。その様子は思わず頬が緩んでしまうような、まったりした雰囲気が流れており、温かい気持ちを呼び起こしてくれるでしょう。最後にお母さんからご褒美のお菓子をもらった時の表情は、子育ての経験がある大人であれば一度は見たことのある満面の笑顔ではないでしょうか。

この絵本を読んでいるときはきっと心穏やかに過ごせるはずです。感情表現ができるようになってきた赤ちゃんと読むと笑顔の練習やコミュニケーションツールの一つとして利用するのも良いかもしれませんね。
 

子どもにはお風呂を楽しんでほしい、という願いが込められた作品

『おふろでちゃぷちゃぷ』ではお風呂に入るまでの様子を言葉を反復させながらリズムよく描いている作品です。

著者
松谷 みよ子
出版日
1970-05-05

お風呂でよく見かけるおもちゃは“あひる”ですが、ここでも最初に登場するのはあひるです。そのあひるがわれ先にと、ウキウキしながらお風呂の用意をしている様子が手にとるように分かります。それにつられて慌てて服を脱いではだかんぼうになっていく子どもの様子もホッとするような安心感を思い出させてくれます。

あひると子供がお風呂に入っている様子はきっと子ども心をくすぐるでしょう。あひると一緒に泡で遊んで、その泡で髪の毛を色々な形に作っている様子も微笑ましいものです。お風呂が苦手な子どもも、“お風呂って楽しい場所なのかも……”と興味を示してくれるでしょう。
 

いじめは他人事ではない。直球な表現が胸を刺す

次に紹介する『わたしのいもうと』はいじめをテーマにした作品です。絵本といえど、テーマは大人子ども関わらず読むべきものといえるでしょう。読んでいる間の衝撃は最後まで胸を震わせます。

著者
松谷 みよ子
出版日
1987-12-01

明るく元気な、そして大切な家族である妹から語られるいじめの内容と様子が変化していく表現は、胸をざわりとさせるものがあります。妹の時間が少しずつ止まってしまうことに対して、家族として、姉として何もできない苦しみが重たくのしかかってくるのを感じることができるでしょう。

妹をいじめた子たちは少しずつ確実に年を重ねていくのに対し妹の時間は止まったままで、なのに命はただただ削られていくというリアルな表現はいっそ恐怖さえ感じます。折り紙で折られた鶴は”生きたい”と願った妹の最後の抵抗なのでしょう。生きた証を残していた妹の真似をして、折り鶴を折る母親の涙は静かに流れ、姉である語りはなすすべもなく、そして妹は最期を迎えてしまうのです。妹の言葉であろう手紙は、いじめの罪のありかを明確に示していました。

本作は実話をもとに描かれた作品だそうです。小学校の授業の教材として採用している地域もあるようで、それだけ高く評価されている作品といえます。いつ自分に、我が子に、身近に起こってもおかしくないいじめを考えるには、ぜひ手に取るべき作品といえるでしょう。

表情がなくとも可愛らしさは表現できる

『きゅうりさんととまとさんったまごさん』は赤ちゃんが食べ物や食材を認知しだし、興味を持ち始めるころに読み聞かせてあげると喜んでくれるであろう作品です。

著者
松谷 みよ子
出版日
1999-10-20

食卓に並ぶ食材として身近な3種類の食べ物を使って仲良く遊んでいる様子を描いています。それぞれお散歩の途中に出会っていくわけですが、普通は舟とは言えないものが舟となって登場します。舟に乗ってみんなで遊んでいる様子は表情が描かれていなくとも可愛らしい笑顔でいることが想像できるでしょう。

また舟が窮屈だからと、少しずつ舟の真似をするために降りて川遊びをしている様子は譲りあいの心を持つことも表現されています。“みんなで使うものはみんなで仲良く譲りあいながら使おう”といった道徳もさりげなく表しています。押しつけがましいものを感じさせない表現力は松谷みよ子ならではといえるでしょう。お友達ができたころのお子様のために読んであげるといい作品です。
 

恐怖によって戦争の恐ろしさと愚かさを伝える絵本

『まちんと』は『わたしのいもうと』と同様、大人から子どもまで世代に関わらず読むべき絵本といえるでしょう。『まちんと』では戦争と原爆による苦しみと悲しみをテーマにした作品です。

著者
松谷 みよ子
出版日

昭和20年8月6日の朝、原爆によって広島の町と人は焼けただれ、苦しみと絶望が町を覆いました。登場人物の3歳になる女の子も同じように被爆します。

女の子は母親にトマトを与えられますが、それだけで焼けたのどが潤うことはありませんでした。のどを潤してもらうため女の子は母親にトマトをねだりますが、母親の手元にはもうトマトはありません。母親はトマトを探しに行きますが見つからず、やっとの思いで見つけたトマトをもって戻ったころには、女の子は息絶えてしまっていたのです……。

女の子の被爆から死への短時間を端的に描いていますが、そのリアリティは計り知れません。ただ話せばいい、語り継げばいいというものではなく“戦争がいかに苦しく辛く悲しく愚かしいもの”かを感じるための作品といえます。戦争によって引き起こされる悲劇を繰り返さないためにも、読み継ぐに必要な1冊でしょう。
 

松谷みよ子の表現力の高さを感じられる作品の紹介をしました。子どものため、大人のため、さらには人類のためといっても過言では無いクオリティの作品を多く発表しています。年齢によっても感じ方やとらえ方が様々なのでいつまででも子供に読んであげたい絵本ばかりですね。