漫画『最遊記』が面白い!名言でわかる名作の魅力をネタバレ紹介!

更新:2021.12.19

西遊記と言えば誰もが聞いたことのある中国の伝奇小説。今回紹介するのはそのパロディー作品である『最遊記』です。登場人物は一癖も二癖もあるキャラクターばかり。西遊記とは一味違う『最遊記』の世界を、名言とともにご覧ください!

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漫画『最遊記』が面白い!名言から魅力を紹介!【ネタバレ注意】

著者
峰倉 かずや
出版日
2002-10-26

峰倉かずやが描く本作は、「最遊記」シリーズとして続編まで描かれているファンタジー漫画です。アニメや小説、舞台になるなど、幅広くメディアミックス展開されています。

『最遊記』は、なんといっても4人のキャラクターがかっこいいところが魅力です。タイプの違うイケメンたちのアクションには、目を奪われるでしょう。

西遊記のパロディ作品であるため、主人公の他にも妖怪や神など人以外のキャラクターが多く登場します。そのため、ファンタジー要素をぎゅっと濃縮したような良さがあるのです。

今回は、本作のあらすじから見どころまで、一挙にご紹介していきます。

漫画『最遊記』あらすじ

 

『最遊記』の舞台である、妖怪と人間が共存する地・桃源郷では妖怪が急に自我を失い狂暴化する異変が発生していました。どうやら、何者かが牛魔王の蘇生を目論んでいることがその原因であるらしいとわかります。

最年少で最高法師・三蔵の名を引き継ぐ玄奘三蔵法師は、神である観世音菩薩に、3人のお供を連れ桃源郷の異変を止めるべく天竺を目指すことを命じられます。

しかしお供は全員ワケありの妖怪3人衆。女大好きエロ河童・沙悟浄、口癖は「腹減ったぁ~!」・孫悟空、いつもニコニコ実は腹黒・猪八戒、そして当の三蔵法師も、酒と煙草と銃を愛用する、生臭坊主。

そんな三蔵一行が旅に出るところから、この物語は始まります。

 

『最遊記』の名言①「俺は生まれて死ぬまで俺だけの味方なんだよ」

『最遊記』の名言①「俺は生まれて死ぬまで俺だけの味方なんだよ」
出典:『最遊記』1巻

天竺を目指し出発した三蔵一行を、早速牛魔王に寝返った大量の妖怪達が襲ってきます。人間である三蔵法師とともに戦う孫悟空・沙悟浄・猪八戒に向け、「お前達は妖怪なのに何故人間側の味方をする?」と問いかける妖怪。 

「俺は生まれて死ぬまで俺だけの味方なんだよ」(『最遊記』から引用)

悟空たちは、自分が妖怪だから妖怪の味方をするとか、人間である三蔵と仲間だから人間に味方するとかそういう基準で誰かの味方となって戦うことを選んでいるわけではありません。人間側・妖怪側と分けて考えるのではなく、自分の思いに従う。物語序盤でありながら、そんな悟空達の生き方が垣間見えるシーンです。 

『最遊記』の名言②「ただ飯がうまかったんだ、そんだけ!!」

旅を続ける三蔵一行。ある日、正体を隠し村を訪れた三蔵一行が出会ったのは宿屋の少女・朋茗。料理が得意な彼女は、彼らに美味しい料理をふるまいます。食べるのが大好きな悟空は、彼女の料理に大喜びでしたが、その一方で悟空たちの正体を知らない朋茗は、友人を妖怪に殺された過去を持ち、妖怪を強く憎んでいました。

その晩、三蔵法師を狙う妖怪が宿を襲い、朋茗が人質にされてしまいます。戦いの中、自分たちが妖怪であることを朋茗に知られてしまう悟空たち。 

出典:『最遊記』1巻


 

「人間だとか妖怪だとか、そーゆーちっちぇえことはどーでもいいんだよッ。ただ飯がうまかったんだ、そんだけ!!」(『最遊記』1巻より引用)

妖怪と人間でありながら、一緒に旅をする三蔵一行の周りには、わかりあえない種族間の問題が常につきまといます。人間は妖怪への怖れから妖怪を迫害し、妖怪は自分たちを迫害する人間への恨みを募らせているのです。

その一方で、人間と妖怪でも信じ合って愛し合っている人にも出会います。妖怪でも人間でも関係ないということを旅しながらますます実感していく三蔵一行は、時に妖怪に襲われ恐ろしい思いをする人間、時に人間から妖怪というだけで差別されてしまう妖怪と、出会い、別れ、考え、成長していきます。

『最遊記』の名言③「妖怪も人間も種族の違いなんてない世界に…1日も早くなる様にって思うんです」

ある村で、妖怪の夫が帰ってくるのをずっと待っている人間の女性・旬麗と出会う三蔵一行。夫の名前が「慈燕」だと聞き、悟浄は動揺します。「慈燕」とは、生き別れている悟浄の兄と同じ名前。悟浄の過去が明かされるシーンです。

悟浄は、人間と妖怪の間に生まれた禁忌の子供。しかも母親は父親の愛人とあり、幼い頃正妻からの虐待を受け殺されかけます。正妻の子である兄の沙慈燕は、悟浄を守る為に、悟浄を殺そうとした正妻を殺してしまいます。その罪を負って姿を消した兄に、悟浄はずっと引け目を感じて生きてきました。
 

著者
峰倉 かずや
出版日
2002-11-26

結局旬麗の夫である慈燕は悟浄の兄とは別人だということがわかります。慈燕を見たという噂に惑わされ妖怪に襲われた旬麗を助けた悟浄は、旬麗を襲っていた妖怪に禁忌の子供であることを「出来そこない」と嘲笑われます。

「妖怪も人間も種族の違いなんてない世界に…1日も早くなる様にって思うんです。もしも――もしも私と慈燕の子供が生まれたら、幸せになって欲しいから」(『最遊記』より引用)

そう願っていた旬麗の姿を思い出して激怒する悟浄。母のためなら死んでもいいと思っていた昔のこと、喧嘩ばかりだけど頼りになる今の仲間のこと。旬麗とその夫のことをきっかけに考える中で、引け目や罪悪感ばかりだった兄への気持ちは変わっていきます。もし兄に会ったら……。

「伝えたいのは謝罪でも感謝でもない。ただありのままを胸をはって、俺が今こうして生きてるっつーーこと」(『最遊記』より引用)

信用できなくても信頼できる仲間ができたことで、確実に変わっていく悟浄たち。決して言葉では言わない、不器用で乱暴な仲間の思い方に男同士の友情の良さを感じることと思います。

特に悟浄は、女好きでチャラいという印象が強いですが、その実とても仲間思いで義理堅く、人情味が厚いところが魅力的なキャラクターです。やっかむ妖怪に対して怒ったのも、自分の為というより旬麗の優しい願いを踏みにじる言葉を許せなかったため。普段仲間から雑に扱われがちな悟浄が珍しく庇われている貴重なシーンともなっています。

『最遊記』の名言④「例えば僕を信頼してくれる人がいるなら、僕は自分自身を精一杯守り抜きます」

旅の途中、妖怪を滅してまわる法力僧・六道の噂を耳にする三蔵一行。なんと六道の正体は、三蔵がまだ寺にいた頃の知り合い、朱泱でした。当時はその生まれと生意気さ故に寺の修行僧たちからやっかまれる三蔵を庇う優しい男だった朱泱。しかし、三蔵が山を降りたあと襲ってきた妖怪達を倒すため、禁じ手と呼ばれる呪符で自らに呪いをかけてしまいます。その影響で、札に取り憑かれ、罪のない妖怪を殺し続けている朱泱は、悟空たちさえも襲おうとします。 

出典:『最遊記』3巻

三蔵の昔の仲間ということで全力で攻撃できずにいた悟空たち。その隙をつかれ、攻撃された悟空をかばった三蔵は大きな傷を負います。自分をかばい血を流しながら倒れる三蔵を見た悟空は、その衝撃で妖力を抑えていた封印を外してしまいます。

封印を外したことで我を失い、仲間達さえ攻撃してしまう悟空。三蔵たちのピンチに突如現れた観世音菩薩の助力により、なんとかを再び力を封印することができましたが、自我を取り戻した悟空は自分が仲間達を傷つけてしまったことにひどく落ち込みます。そんな悟空を八戒は諭します。

 

「例えば僕を信頼してくれる人がいるなら、僕は自分自身を精一杯守り抜きます。僕もその人を信頼しているならなおさら、その人に自分を恥じたりしたくないから――。…三蔵言ってたじゃないですか。「そいつらは死なない」って。だから僕らはそれに応えなきゃ。自分が誇れるだけの強さで」(『最遊記』から引用)


本作の見どころのひとつはキャラクターたちの成長。特に、最年少の悟空の成長は目覚ましいもの。この一件で強くなることを決意した悟空は、これから三蔵一行をつなぐ、ある意味一番大人な存在にもなっていきます。

 

『最遊記』の名言⑤「次は必ず…俺が、俺がお前に手を差し出すから。きっと差し出すから」

名言とともに、悟空と三蔵の出会いについても紹介したいと思います。大地が生んだ異端児である悟空はもともと地上ではなく、神々が住む天界で暮らしていました。『最遊記外伝』では、悟空の過去、そして生まれ変わる前天界にいたころの三蔵・悟浄・八戒について描かれています。とはいえ、三蔵たちには前世の記憶などは一切ないのですが。

天界で三蔵の前世・金蝉太子の下で育てられる悟空でしたが、あるショックなできごとが原因で妖怪の力を暴走させてしまいます。その罰として、天界での記憶も、幼い悟空を命がけで守った3人の大事な仲間たちの記憶も奪われ500年間五行山山頂の岩牢に閉じこめられます。
 

著者
峰倉 かずや
出版日
2005-12-28

金蝉太子が残した最後の言葉は

「――――次は必ず…俺が、俺がお前に手を差し出すから。きっと差し出すから。」(『最遊記外伝』より引用)

そして、500年の月日が流れます。ある日、五行山に修業に来た三蔵は自分をうるさく呼ぶ声を聞きます。その声の主を探すために山頂まで登った三蔵は、悟空を発見するのです。最初は「誰も呼んでねぇよ」と否定していた悟空は、後にこういいます。

「ホントは、ずっと呼んでた。ずっとずっとさびしくて――でも呼べる名前なんて、俺ひとつも持ってなくて。…だから、『誰か』って心ン中でずっと…呼んでた。きっとずっと呼んでた。」(『最遊記RELOAD』より引用)

そんな三蔵の行動と重なるのは、今は亡き三蔵の師匠、光明とのエピソード。赤ん坊の三蔵を拾った理由を、光明はこう語っています。

「声が、聞こえたからですよ。(中略)それはもうしつこく何度も呼ぶもんで、あんまりうるさいから、勝手に連れてきちゃいました。」(『最遊記』より引用)

悟空に記憶はなく、三蔵は生まれ変わりとはいえ別人。それでも、運命的に三蔵が悟空に手を差し伸べたシーンは、『最遊記外伝』を一度読んだ後では涙なしに読めません。天界でのすべてを失い、500年の孤独を味わった悟空は三蔵が現れたことにどれだけ救われたことでしょう。この出会いなしには、三蔵一行の旅は始まりませんでした。三蔵一行の始まりを形作るエピソードの紹介でした。

出典:『最遊記外伝』4巻

『最遊記』の名言⑥「俺の為に生きて俺の為だけに死ぬ、それが俺の誇り」

三蔵一行のメンバーは各々大切な人を失った過去を持っています。三蔵法師は唯一の師であると同時に親ともいえる光明を、猪八戒は実の姉であり恋人でもあった花喃を、沙悟浄は愛してくれなかった母、そして生き別れになった兄を、悟空は500年前天界から命がけで悟空を逃がそうとした仲間を…。その記憶を胸に、彼らはこう言います。

著者
峰倉 かずや
出版日
2002-12-26

「『誰かの為』になんて死んでたまるか。残された『誰か』の痛みがわかるから。俺の為に生きて俺の為だけに死ぬ、それが俺の誇り」(『最遊記』から引用)

誰かのためではなく、自分のために戦い生きるという三蔵達の生き様は、作中で何度も登場します。それは全て、自分の為に大切な人がいなくなってしまう悲しさを知っているからこそ生まれた生き方。彼らが過去の悲しみ故に強く生きていく姿にはきっと胸を打たれます。

永く険しい旅の始まり【1巻ネタバレ注意】

人間と妖怪が共存しながら平和に暮らしていた「桃源郷」。しかしある時、妖怪たちが次々と狂暴化し、自我を損失してしまったことで、その平和は壊れてしまいました。

元凶は、500年ほど前に天界の闘神・哪吒太子(なたくたいし)に封印されたはずの大妖怪、「牛魔王」を蘇生しようとする動きが見られたからです。その実験のせいで桃源郷全土に負の波動が満ち、妖怪たちが自我をなくしてしまったのでした。

著者
峰倉 かずや
出版日
2002-10-26

 

実験を阻止して桃源郷に平穏な日々を取り戻すため、西の地にある天竺を目指すことになった玄奘三蔵。お供として選ばれたのは、孫悟空、沙悟浄、猪八戒です。

彼らは妖怪でもあり人間でもあるという中間の存在で、だからこそ自我を失わずに済んでいました。

1巻の見どころは、やはりすべての始まりである彼らが集結した場面ではないでしょうか。本作の世界観がよくわかり、また彼らがみな過去に何かしらのトラウマを抱えていることがうかがえます。

また三蔵たちの動きを察知した敵サイドのお披露目も前半からあり、「誰が敵なのか」「彼らはどういう立場なのか」がはっきりするので、特に最初をじっくり読んでおくと今後の物語をスムーズに読み進められるのではないでしょうか。

本作の特徴である横文字の言葉や乗り物など近代的なものも多く登場。ジープやクレジットカードなどがある反面、道は舗装されておらず、建物は木造や石造りの低いものばかり。三蔵一行以外は移動に馬車を使っており、さまざまな時代のものが入り混じっていることがわかります。

序章の最後には日本の駄菓子屋でおなじみの食べ物なども出てきて、本来の旅やバトルとはちょっと外れた部分にある遊び心も見逃せません。

 

宿敵との初対面【2巻ネタバレ注意】

三蔵たちと打ち解けつつ、互いの信念をぶつけ合う良きライバルの紅孩児(こうがいじ)一派。牛魔王の息子であり、牛魔王の蘇生を目論んでいる玉面公主の部下です。

そんな紅孩児と三蔵一行が、2巻で初めて対峙します。紅孩児が玉面公主の命により、三蔵たちを抹殺しようと刺客を送り込んでもうまくいかずくすぶっていた際に、紅孩児の部下で薬師の八百鼡(やおね)が自ら三蔵たちに接触すると申し出ました。

著者
峰倉 かずや
出版日
2002-11-26

 

仲間想いで部下想いの紅孩児は反対しますが、八百鼡の意志を受け入れ送り出すことに。八百鼡は三蔵たちが寄るであろう酒場に先回りし、忙しい店内でセクハラ親父に振り回されながらも食事に毒を盛るタイミングを図っていました。

毒入りご飯を三蔵たちが食べる直前、八百鼡にセクハラをしていた男性が再び絡んできます。そしてなぜか三蔵たちと飲み比べをする展開に。

4対4の飲み比べのすえ、セクハラ男性、三蔵、悟浄、八戒が残りました。

「セクハラおじさんは許せませんもんね」(『最遊記』2巻より引用)

八戒は八百鼡に「自分が勝つ」と笑みを浮かべます。八百鼡は、自分を庇おうとしてくれている彼らに心が動かされそうになるものの、意を決して自ら手を下そうとするのです。

しかし、これまでさまざまな妖怪と戦ってきた彼らが簡単にやられるはずもなく、八百鼡は敗北。そして命を絶とうとするのです。そこへ紅孩児が登場。彼は高慢な言動を多々するものの、その根底には優しさや素直さを持っています。

敵キャラクターたちにもつい好感をもってしまう2巻でした。

 

悟空の本当の姿と謎【3巻ネタバレ注意】

3巻では、三蔵がかつての友である六道(りくどう)から攻撃を受け、重傷を負ってしまいます。悟空は自分の側で血だらけになる彼を見て動揺。頭についていた妖力制御装置である金鈷が壊れ、本来の姿ともいえる「斎天大聖(せいてんたいせい)」の姿になってしまいました。

金鈷を失った悟空は強大な力を解放する代わりに、意思疎通がはかれなくなり、見境なく攻撃を仕掛けるようになってしまうのです……。

著者
峰倉 かずや
出版日
2002-12-26

 

悟空の猛攻で六道を退かせることに成功しましたが、悟空は攻撃をやめようとはしません。悟浄が力づくで動きを止めたそのとき、どこからか声が聞こえ、彼の頭に再び金鈷がはめられました。驚く八戒と悟浄の前に現れたのは、五大菩薩のひとり、観世音菩薩でした。

観世音菩薩は、三蔵に天竺へ行くよう命じた張本人。彼との雑談のなかで、悟空が以前天界にいたことが判明します。ただ当時の記憶を悟空自身は持っていません。

悟空は金鈷が外れる直前、三蔵によく似た、しかしどこか違う男性を思い浮かべていました。そして観世音菩薩は、意識を失っている三蔵を「金蝉童子(こんぜんどうじ)」と呼びます。

「…こーゆーことされて悔しいだろ『金蟬童子』 いや…今は玄奘三蔵だったな」(『最遊記』3巻より引用)

なぜ観世音菩薩は三蔵のことを「金蟬童子」と呼んだのか、悟空が思い浮かべた長髪の男性は誰なのか、謎は深まっていきますが、悟空の記憶にはない過去の天界で何かがあったことが読み取れますね。

わからないことが増えてしまいましたが、それでも悟空は三蔵たちとともに前に進むことを決意しました。4人のなかでは唯一未成年の彼が今後成長していく姿を見るのが楽しみです。

 

八戒の過去と仲間【4巻ネタバレ注意】

 

4巻では、八戒につきまとい、執拗に彼の心を壊そうとする敵が登場します。八戒は作中でも優しく柔和な青年として描かれていますが、その過去は想像もできないような凄まじいものでした。

敵の攻撃で悟浄が怪我を負い、悟空ともはぐれ、仲間が次々にやられていく状況に、八戒は精神的に追い詰められてしまいます。そんな彼を楽しそうに眺めながら、敵はつついてほしくない過去をほじくり返していくのです。

 

著者
峰倉 かずや
出版日
2003-01-27

 

八戒はかつて、小さな田舎の村で愛する女性と暮らし、子どもたちに勉強を教え、給料は少ないながらも充実した日々を送っていました。しかし、ある日その村に見目麗しい女をさらっていく妖怪「百眼魔王」の一族がやってきたのです。

村人たちは自分の娘が連れてかれないよう、身代わりとして八戒の恋人だった女性を差し出しました。女性が連れていかれた現実と村人たちの行為を知った八戒は、村人を皆殺しにして百眼魔王の城へと攻め込み、そこにいる妖怪たちを片っ端から殺していったのです……。

そして今回八戒を襲った敵は、彼が大量殺戮を犯したときの関係者でした。彼は過去を乗り越えることができるのか、見どころです。

またそんな過去を知りながらも、今の八戒を受け入れている三蔵、悟浄、悟空の絆も垣間見えるエピソードになっています。

 

4人の出会い【5巻ネタバレ注意】

 

5巻では、4人が初めて出会った時の様子が描かれます。寝食をともにし気を使わない今とは違い、まだお互いに知らないことだらけで少しギクシャクしている姿を見ることができます。

時期でいえば、八戒が大量殺戮を犯した直後ですね。悟浄は大怪我を負っている彼を拾って面倒を見ていました。

三蔵は、天界との中継の役割を担っている三仏神から、犯罪者の「猪悟能(ちょごのう)」を探すよう命じられていました。

 

著者
峰倉 かずや
出版日
2003-02-25

 

「猪悟能」とは、八戒の昔の名前のこと。三蔵は悟空を連れて情報を集め、とある男性が「猪悟能」らしき男を居候させているという噂を耳にします。その人こそが悟浄でした。三蔵はすぐに2人のもとを訪ねます。

しかし三蔵が悟能について問い質すと、彼は家を飛び出して姿をくらましてしまったのです。あわてた一行はあとを追うことに。

やっと見つけたその時、悟能は彼が殺した家族の妖怪に襲われていました。三蔵たちのおかげで難を逃れた悟能は、恋人の亡骸を探しに百眼魔王の城へと行くのですが、そこはすでに更地になっていたのです。

失意に座り込む悟能を見た三蔵は、経を読みます。ここが、彼らが初めて三蔵に惹かれた場面かもしれません。

その後「猪悟能」は「猪八戒」となるのですが、その理由はぜひ実際に読んで確かめてみてくださいね。

 

敵チームの不穏な動き【6巻ネタバレ注意】

 

天竺まではまだまだ長い道のり。しかし牛魔王の蘇生実験は着実に進んでいってしまっているようです。

現在実験には、三蔵の師である光明三蔵から受け継いだ経文のひとつが使用されていて、その解読の結果、ほかの経文も必要だということがわかりました。

紅孩児一派は三蔵一行の抹殺任務を外され、経文を集めるという新たな指示を受けています。紅孩児と独角兕(どくがくじ)は東方の砂漠にそれを奪いに向かうのですが、目的の場所はすでに砂に埋もれ、何も探せない状態でした。

 

著者
峰倉 かずや
出版日

 

しかしそこに偶然、経文を所有している三蔵一行が居合わせるのです。三蔵は、紅孩児たちが現れる前に戦っていた敵の毒で動けない状態。ほかのメンバーも彼を助けるのに必死でした。

紅孩児は一瞬だけ迷うのですが、自分は三蔵一行の「敵」なのだと思い直します。

するとそんな彼に対峙するために悟空が自ら金鈷を外し、その結果紅孩児は瀕死の重傷を負ってしまいました。

一方その頃、紅孩児の本拠地である吠登城では、彼の腹違いの妹で、蘇生実験の首謀者である玉面公主の実の娘である李厘(りりん)が、玉面公主に呼びだされていました。李厘のそばにいた八百鼡を身動きがとれないよう縛っているあたり、何か良からぬことを考えていることが見て取れます。

そこへ、重傷を負った紅孩児を抱えた独角兕が戻ってきました。

玉面公主の部下の你健一(にぃじぇんいー)博士が自分ならその傷を治せると持ちかけ、紅孩児は彼に預けられることに……。

「——言ったよね 大事な物は手離しちゃダメだよって」(『最遊記』6巻より引用)

一体、紅孩児と李厘はどうなってしまうのでしょうか。敵サイドからも目が離せません。

 

「神様」はだれ?【7巻ネタバレ注意】

 

本作のなかで最初で最後の強大な敵と言っても過言ではない「神様」。ここから最終巻である9巻まで、「神様」と神様にいいように使われてしまう妖怪のお話が続きます。

とある町で買い出しをしていた悟浄が偶然知り合った、金閣という少年。彼は悟浄から聞いた三蔵、悟空、八戒のことを「悪い人」だと判断し、自分がやっつけると宣言してきました。

「僕には神様がついてるんだ」(『最遊記』7巻より引用)

 

著者
峰倉 かずや
出版日

 

人間の子どもが言うことだと軽く考えていましたが、悟浄がいざ宿に戻ると三蔵たちは倒れ、そこに大きな妖怪と少年が立っていたのです。

実は金閣は妖怪の子どもでした。「牛魔王」の刺客というわけではなさそうですが、仲間がやられたとあって悟浄は立ち向かおうとします。

しかし彼が動くよりも先に、唯一意識があった三蔵が金閣の妖怪である銀閣に向けて銃を発砲しました。さらに金閣にも銃を向けます。

それを見た悟浄は子ども相手だと制止をかけ、その隙に金閣たちは逃げてしまいました。

「あのガキは敵だろうが!!!」(『最遊記』7巻より引用)

声を荒げる三蔵に悟浄は謝りますが、彼はどうやら閣に幼いころの自分を重ねているようでした。

冷静になった後、2人はもう1度金閣を探しにいきます。しかしそこで見たのは、「神様」に殺される少年の姿……。

「神様」は金閣のことを騙して人殺しをさせようとしていて、うまくいかなかったため彼自身を殺してしまったのです。その正体は一体何なのでしょうか。

 

三蔵一行の絶対的敗北【8巻ネタバレ注意】

 

「神様」が牛魔王と関係ないのであれば天竺に向かうしかないと決めた三蔵たちでしたが、出発の日の朝、悟浄が何も告げずに3人の前から姿を消してしまいました。

彼を置いて先に進むと言う三蔵の判断に、悟空と八戒もついていくことを決めますが、やはりどこか様子がおかしいようです。三蔵自身も、以前にもましてタバコを吸い、言葉には出さずとも苛立ちを募らせているようでした。

ここまでずっと4人で旅を続けていたので、誰かひとりが欠けてしまうことは、彼らにとってとても大きな出来事だということがわかります。

 

著者
峰倉 かずや
出版日

 

口を開けば喧嘩することも多い4人ですが、根底ではしっかりと繋がっていることがうかがえます。3人は「神様」のいた町に戻り、悟浄を追うことを決意しました。

そして、悟浄と「神様」が戦っている城にたどり着きます。

そこで見た「神様」の姿は、「三蔵法師」のようでした。額に印(チャクラ)があり、白い装束に身を包んでいるさまは神々しく見えます。非常に強い力を持っていて、4人は一瞬で大けがを負ってしまいました。

「“無一物”って知ってる?」(『最遊記』8巻より引用)

「神様」が放ったこの言葉に、三蔵の顔色が変わります。彼にとって「無一物」は師との思い出であり、大切な言葉でした。そして「神様」は三蔵から経文を奪いとるのです。

唯一動く力の残っていた悟浄のおかげで何とか逃げ出すことができましたが、その後三蔵は4日間も目を覚ましませんでした。旅をして以来はっきりと「負け」を経験していなかった彼らが、ここまでやられてしまったのは初めてです。

さて、彼らはこのピンチをどう乗り越えるのでしょうか。最後まで注目したいですね。

 

「神様」との再戦【9巻ネタバレ注意】

 

「神様」との絶対的な力の差を見せつけられた4人。三蔵、悟浄、八戒は「先を急がなければ」「経文を取り戻さなければ」「でも負けるかもしれない」という思いに侵され、どこか尻込みしているようでした。

そんな彼らを引っ張ったのが、悟空です。1番幼く、1番単純で、1番素直な彼だからこそできたのかもしれません。また、もっとも三蔵と一緒にいる時間が長いので、彼がショックを受けている姿に奮い立つものもあるようで、強い絆がうかがえます。

 

著者
峰倉 かずや
出版日

 

いったい悟空がどうやって3人の気力を取り戻したのかは、実際に読んで確認してみてください。彼らにとって悟空の存在がどれほど大きなものなのかを理解することができます。

そして心身ともに健康を取り戻した4人は、再び「神様」のいるお城へやってきました。アトラクションともとれるトラップを通過し、「神様」のいる「オモチャ箱」へとたどり着きます。

「神様」にとっては、金閣の件も今回の三蔵の件も、ただ「オモチャ」が欲しいというある意味無邪気な気落ちによるものでした。遊んでいるだけだったのです。

ひとりでずっと遊んでいた「神様」に対し、4人は力を合わせた連携プレーで挑みます。さてその勝負の行方は……。

戦いの後、「神様」は自分の「先生」を待っていたということが判明します。「先生」とは彼にとっての師で、彼に「三蔵法師」の称号を与えてくれなかった人でした。

そしてついに「先生」が姿を現します。

その正体は、三蔵が幼いころに出会い、現在も因縁のある人物でした。実は物語のはじめから登場しています。さて、誰なのでしょうか。

ラストは本作らしく、三蔵たち4人の明るさに救われるものになっています。

 

続編『最遊記RELOAD』の見どころをネタバレ紹介!

著者
かずや, 峰倉
出版日

『最遊記』の名言を紹介してきました。本作は続編が描かれているシリーズもの。ここでは、あらすじを簡単に紹介していきます。

前作で、一行は西へと向かう旅をしていましたが、今回も引き続き西を目指す旅が続きます。単純に続きとして読むことができますし、前作を読んでいなくても、本作から違和感なく物語を楽しむこともできるでしょう。

前作が好きだったけど、何か変わったの?と心配はいりません。雰囲気はそのまま保ちつつ、さらにグレードアップした画力、シナリオで『最遊記』の続きを楽しめるのです。

はたして一行は、西にたどり着いて目的を果たすことができるのでしょうか?まだまだ彼らの旅は続きます。

さらなる続編『最遊記RELOAD BLAST』の見どころをネタバレ紹介!

著者
峰倉 かずや
出版日

『最遊記RELOAD』の続編にあたるのが本作。最終章という立ち位置で描かれています。

シリーズ通して、三蔵一行が西を目指す旅の冒険が描かれてきましたが、今回ではようやく彼らが西にたどり着きます。

2017年にはアニメ化されました。『最遊記』から愛読している方はもちろん、アニメで知った方にもおすすめです。最終章となりますので、1作目や外伝も含めて読んでから手に取ると、より世界観を楽しむことができるでしょう。

西にたどり着いた一行は、もう一人の三蔵法師と呼ばれる人物に出会い……。彼との出会いは、4人にどのような変化をもたらすのでしょうか。

シリーズ最終章、最後まで見逃せない展開が続きます。ぜひ手にとってみてくださいね。

漫画『最遊記』のかっこいいファンタジーを楽しもう!

著者
峰倉 かずや
出版日

作品の名言や物語の魅力、続編のあらすじをご紹介してきました。

西を目指してはじまった4人の旅は、どのような結末を迎えるのでしょうか?

『最遊記』は、全9巻で完結しています。続編としては「RELOAD」「RELOAD BLAST」が出ていますので、本編を読み終わっても長く楽しめることができる作品です。

また、『最遊記外伝』も出ています。こちらに登場するキャラが本作の登場人物と関係があるなど、より作品の世界観に深入りできるのでおすすめです。

『最遊記』の魅力は伝わったでしょうか。紹介した以外にもたくさんの名言が出てきます。ぜひ『最遊記』をお手に取り、悟空たちと一緒に天竺を目指す旅に出てみてください。

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