アンクルトリスでおなじみの柳原正平が、赤ちゃんむけの絵本を描いていることをご存知ですか。手がけた絵本はシンプルな内容で、絵もはっきりとしていて子供の想像する力をくすぐりそうなものばかり。その中から厳選して5冊の絵本を紹介したいと思います。
1935年に東京で生まれた柳原良平は現在の京都市立芸術大学を卒業後、大好きな船を描く画家を目指します。しかし日本では希望を叶える職業がなく、サントリーの宣伝部に入社。開高健、山口瞳と制作をしたトリスウイスキーのCMは、毎日新聞産業省などを受賞しました。
1959年サントリーを退社後は、船に関する書籍を多数出版。1980年代後半からは子供むけの絵本も手掛けるようになりました。
1988年に発売された『かお かお どんなかお』は、柳原良平がはじめて子供向けに描いた絵本。はっきりとした色彩とシンプルな絵で小さなお子様にも人気のロングセラーです。
「かお に めが ふたつ はな は ひとつ め も ひとつ」これで顔の出来上がり。
顔が出来上がると気持ちによって変わる表情へと展開していきます。全ページにわたり顔だけが描かれていますが、顔の輪郭はそれぞれの表情にぴったりのラインと色で描かれています。
- 著者
- 柳原 良平
- 出版日
目をまん丸にして口を大きく開けたら「たのしい かお」、目を細くして口をへの字にしたら「かなしいかお」。それぞれのパーツが動くことで、顔は色々な表情をみせてくれます。
シンプルな文章で綴られる『かお かお どんなかお』は読み手のアレンジも楽しめる絵本です。また挿絵と一緒に顔の表情を変えながら読んでも楽しそう。顔の体操にもなりそうですね。
子供向けの本ですが、アンクルトリスのキャラクターを感じさせる色合いとラインで描かれており、大人も癒されそうな絵本です。
『やさいだいすき』は、大根、にんじん、きゅうりなど食卓に登場する身近な野菜が出てくる絵本です。
「だいこん いっぽん にんじん にほん」など3つまでの数え方からはじまり、「まるい じゃがいも」、「なすびは むらさき」など色や形へと展開。子供も自然といろいろなことが覚えられるように構成が考えられていて、野菜を身近に感じさせてくれるストーリーになっています。
- 著者
- 柳原 良平
- 出版日
文章が短いので繰り返し読んでいると覚えられそうな内容の絵本です。
読んで楽しむだけではなく、「おみせに いって やさいを さがそう」と書かれています。本に登場した野菜たちを実際に探してみることを提案した内容は、野菜にも愛着がわきそうですね。
次のページではお店で買った野菜たちを台所でとんとん、ぐつぐつするお母さん。実際に自分で見た野菜たちがどんな料理に変化をするのか子供も楽しみになるのではないでしょうか。きっとその日のごはんは、いつもにも増して野菜を美味しく感じられそうですね。
『のりものいっぱい』は、家族でどこかへお出かけをする前に読むとよりお出かけが楽しくなりそうな絵本です。
身近な乗り物「じどうしゃ」に乗ってニコニコ笑顔なのは誰でしょう。次に出てくるのはタクシー、同じ大きさの乗り物で揃えられているのかと思ってページをめくると次はバス。そして緊急自動車などへつながり、新幹線、船、飛行機も登場します。
- 著者
- 柳原 良平
- 出版日
柳原良平が大好きな船は見開き2ぺ―ジにわたり紹介されているなど、こだわりを感じられる場面もあります。
絵本で登場した「のりもの」たちは目も描かれていて、なんとなくそれぞれに表情があるように感じます。お子様も可愛らしい「のりもの」に興味を持たれるのではないでしょうか。ぜひ読後は、絵本に登場した「のりもの」を探しに街に出かけてみませんか。
家にある「もの」たちが主人公の絵本『おうちのともだち』は、家電などあって当たり前になりがちな大人がハッとさせられる絵本です。
「コップ ちゃん はぶらし くん」とそれぞれ家にあって生活の一部になっている「もの」が「ちゃん」や「くん」づけで書かれている点にも注目。普段当たり前のように使う「もの」たちは、実はないと困るものばかり。それぞれの「もの」に敬意を表している気持ちが伺える絵本です。
- 著者
- 柳原 良平
- 出版日
物語は朝起きてから寝るまでの間に子供たちが触れる機会の多い「もの」たちが使う順番に書かれています。それぞれ、自分を助けてくれたり、教えてくれたり、中には遊んでくれるものも。話せるようになったお子様には、最初にクイズを出してから読み始めても良さそう。
「もの」の名前でテンポよく綴られていて、その中には「かがみくん おはよう」、「いただきます ごはん おいしい」など真似したくなるような言葉も。
そして最後には「みんな ともだち また あした」で締めくくられています。あって当たり前ではない「もの」は、自分たちの生活に欠かせないものばかり。自分が使っている気持ちではなく、「ともだち」と表現しているところにこの絵本の良さがあると思います。
毎日の生活はたくさんの「におい」に囲まれて暮らしています。しかし大人になると意識して暮らすことも少なくなりますね。『このにおいなんのにおい』は、生活の中で感じられる「におい」に着目をした本です。
この本では、目に見えるのは煙くらいで色はついていない「におい」をデザインのように表した絵本です。波のように描かれた「におい」は、風にのって流れてくる様子をビジュアル化していますね。
「におい」を表現した波は「におい」の元を連想させる色、そして太いラインの中には卵焼きの絵が描かれていたり、文字が流れるように書かれていたりする場面も。
- 著者
- 柳原 良平
- 出版日
- 2004-04-15
物語は、朝起きた時に漂ってくる美味しそうな朝ごはんの「におい」から始まります。そしてまちの「におい」、季節の「におい」など物語は「におい」をポイントに展開していきます。
小さなお子様ならこの絵本を読んだ後は、鼻をくんくんしながら近所を散歩しそう。そしてお子様が大好きな「におい」は何でしょう。
この本を読んだ後は「〇〇はどんなにおい?」とクイズでコミュニケーションをとっても楽しそう。もしかしたら子供ならではの発見があるかもしれませんよ。
柳原良平が手掛けた赤ちゃんむけの絵本の特集はいかがでしたか。シンプルなストーリーと絵でありながら、メッセージ性もしっかり感じられる物語ばかりです。今までに読んだことのある方もこの機会にもう一度読んでみてはいかがでしょうか。