カントクは同人サークル「五年目の放課後」を運営するイラストレーター、グラフィッカー、原画家です。ちっちゃくて可愛らしい女の子が魅力の、波に乗っているクリエイター。今回はそのカントクがイラストを担当するライトノベルを紹介します。
カントクは同人サークル「五年目の放課後」で活動する傍ら、美少女ゲームの原画やライトノベルの挿絵、アニメのキャラクターデザインを担当するなど、美少女を描く仕事で幅広い活動をしているクリエイターです。
また、オリジナルアニメーション映画『ガラスの花と壊す世界』ではキャラクター原案を務めるなど、年々活躍の場を増やしています。
また、無類のチェック柄好きであることも知られており、カントクが描くイラストの多くにはその意匠が凝らされています。今後彼のイラストを見るときは服のデザインや柄にも注目して見れば、さらに面白くなること間違いなしでしょう。
本作『変態王子と笑わない猫。』の第1巻は2010年MF文庫J史上最高の売り上げを記録し大ヒットとなりました。イラストを担当していたカントクの名を、世間にも大きく知らしめた作品です。
- 著者
- さがら 総
- 出版日
- 2010-10-20
主人公横寺陽人は女の子のことばかり考えている煩悩まみれの少年で、いつも建前ばかりを喋ってしまいます。そのため、水泳部の女の子の水着を見る、という不純な動機で所属していた陸上部の、次期部長の指名を断れないでいました。
そこで友人の勧めで「笑わない猫」像にお供え物と引き換えに建前を引き取ってもらうことにし、そこでメインヒロインである筒隠月子と遭遇します。彼女もまた猫像にいらない本音を引き取ってもらおうとしていたことを知るのです。
しかし建前がなくなり、自分の考えていることが全て言葉に出るようになった陽人は、変態と認知されるようになってしまいます。そして本音を取り戻すために奔走することになるのでした。
本作は主人公の煩悩まみれの本音がダダ漏れになるなど、コミカルなタッチで描写されていきます。しかし、中盤以降のシリアスな展開や読了後の爽快感、家族間の愛情をしっかりと描くテーマ性などはライトノベルとは思えないほど完成度が高く、アニメ化もされるなど高い人気を誇っています。
ちょっとえっちで、けれど締めるべきところはしっかりと締める構成はカントクのイラストとの相性も良く、コメディー・シリアスの両面でキャラクターの魅力を存分に発揮しており、引き込まれること間違いなしと言えるでしょう。
『僕は友達が少ない』などで大ヒットを記録したライトノベル作家・平坂読の『妹さえいればいい。』。ライトノベル作家の主人公の羽島伊月を中心に魅力的なキャラクターが溢れる作品で、2017年にアニメ放送が決まるなど大きな話題になっている作品でもあります。
- 著者
- 平坂 読
- 出版日
- 2015-03-18
妹ものラノベしか書かない作家である羽島伊月、その弟(のちに妹であることが明かされる)で家事や勉強をそつなくこなす千尋、超売れっ子作家で伊月に想いを寄せる可児那由多、伊月の元同級生の大学生白川京、伊月の同期デビューの小説家不破春斗など魅力的なキャラクターが数多く登場します。
普段見ることのできない作家の裏側を書いた作品で、ボードゲームやレトロゲームに興じて仕事をしなかったり、酒を飲んで酔っ払いどんちゃん騒ぎしたり、楽しげな日常がコミカルに描かれている点も大きな魅力です。
もちろん、小説家らしく締め切りに追われて缶詰部屋で四苦八苦しながら執筆をしたり、ライトノベルの締め切り事情など、嘘か誠か判断に困るような業界裏話にクスリとしてしまうことも多いでしょう。
また、1巻は裸の挿絵が挿入されるなど、カントクの技巧で描かれる肌色成分増し増しのイラストも、人気に大きく貢献しているといえます。
作家の厳しくも楽しい日常の一端をぜひとも覗いてみてはいかがでしょうか?
本作は渡航、橘公司、さがら総の三人組小説家グループ「Speakeasy」が構築したシェアワールド作品『プロジェクト・クオリディア』の一作品です。2015年に放送されたアニメ『クオリディア・コード』の前日譚ノベルとしてさがら総が執筆し、カントクがイラストを担当しています。
- 著者
- さがら総(Speakeasy)
- 出版日
- 2015-10-23
突如現れた謎の敵、アンノウンとの戦いにより崩壊した近未来が描かれています。東京・神奈川・千葉を舞台にしており、本作は「湾岸防衛都市東京」に所属する朱雀壱弥が主人公です。
アニメ放送では壱弥は東京の首席として描かれていますが、本作では工科と呼ばれる非戦闘員として東京に所属しています。彼は戦闘員さながらの能力を誇っているのですが、飛行能力がないために戦闘科には入ることができず歯がゆい思いをしているのです。
そんな壱弥はヒロインである宇多良カナリアと出会い、東京という都市が抱える歪みと向き合っていくことになります。
序盤は人類愛を掲げる壱弥と周囲との人間のズレや、カナリアの空回りしてしまう努力などがコミカルに描かれ、読者の笑いを誘います。しかし、東京という都市の歪みが顕現すると共に、カナリア自身の特異なパーソナリティも明らかになり、物語は大きく方向転換して飽きることのないエンターテインメントを見せつけてくれるでしょう。
アニメや他のシェアワールド作品を見ていればニヤリとする場面も多いですが、単作でも良質なエンターテインメントとして完成されている本作。シリアスな場面が多いですがそれをしっかりと受け止め、補完しているカントクの挿絵も大きな魅力です。
本作品は2016年に肝臓癌にて死去したラノベ作家松智洋の作品を、彼が代表を務めていた有限会社「Story Works」が執筆を行い、リリースした作品です。
- 著者
- ["松 智洋", "StoryWorks"]
- 出版日
- 2017-02-24
松智洋は『パパのいうことを聞きなさい!』『迷い猫オーバーラン』などで家族愛を描きました。本作でもその息吹を十二分に感じ取ることができます。
主人公鍵村葉月は物語ばかりを読んでおり、激しい空想癖を持ってしまいました。そのせいか友人もおらず、母親を亡くしてから家族関係もうまくいかないという人生を送っています。しかし、あるとき偶然『原書』と呼ばれる魔法使いの書を手にすることで魔法使い“メドヘン”になってしまいました。
そのまま、若き魔法使いたちが集まり学んでいくクズノハ女子魔法学園への転入を勧められるのですが、家族を説得する勇気がなく、結局体験入学という曖昧な形に逃げてしまいます。学園の中で土御門静という少女と“メドヘン”としての訓練を重ねることで絆を深めていく、という展開です。
ヘクセンナハトと呼ばれる儀式を通して成長していく葉月が、家族との交流を取り戻し、友人を獲得する展開は良質なエンターテインメントとして描かれており、松智洋の残したものの大きさを再認識させられます。
登場するキャラクターもほとんどが女の子ということもあり、カントクが描く魅力的なキャラクターが多数登場します。美麗なイラストと、どこか温かさを感じさせるテキストとの相性も抜群です。
松智洋の遺した物語『メルヘン・メドヘン』おすすめです!
人気イラストレーター「カントク」が彩る作品、いかがだったでしょうか?華麗なイラストにも負けない傑作揃いですのでぜひともご一読ください!