年齢の節目を迎える時が、誰でもやってくるもの。中でも20代から30代へ向かう時、体力の衰えとまだ若いという気持ちのせめぎ合いが起こり、強く自分の年齢を意識してしまうでしょう。ここではアラサー女子必見のおすすめ恋愛漫画5作品をご紹介します。
晩婚化や出生率の低下、生涯独身者数が上昇するといった話題が、ニュースで取り上げられるようになった昨今。お見合いや知人の紹介やらでとりあえず結婚するという時代を通り過ぎた現代は、女性一人でも生きていけなくはない、ある意味で優しい世の中になりました。
しかし、漫画家の東村アキコは、過去を懐かしみあの時の話をし続ける友人をみて、目を覚ませ!と訴えるために『東京タラレバ娘』を描いたのだとか。これでもかというくらい、アラサー女子の痛いところを突いてくるのが本作最大の魅力です。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2014-09-12
あの時こうしていれば、こうだったら。「タラレバ」ばかり言い続けて気が付けばもう33歳。そんなアラサー女子の一人で脚本家の倫子は、高校時代からの親友の香、小雪とともに、居酒屋で女子会を開くことが日常となっていました。
ある日、いつも通り3人で結婚できないことに対する愚痴で盛り上がっていたところ、金髪の美青年モデルKEYに、「タラレバばっかり言っているな」と罵倒されます。
時は、折しも東京オリンピック開催が決定した頃。開催時、自分はどうしているのだろうと想像したときに、1人でいることの孤独さをリアルに感じ取った倫子は、結婚するために行動をはじめるのです。
そもそも恋愛ってどうするんだっけ、という感覚や、登場人物が不倫の恋に溺れてしまうところが、妙に現実的であり、共感する場面も多い本作。読む方が未婚だった場合は、尻を叩かれている気分になること請け合いです。罵倒されているような、はたまた激励されているような不思議な気分になるでしょう。
アラサー女子3人の、三者三様の恋物語が描かれるとともに、東村アキコ節が炸裂。痛すぎる女の描写に自分自身を当てはめてしまい、胸が苦しくなるものの、笑って読めるエンタメ要素も満載です。現実と創作が絶妙なバランスで成り立っている、大人女子に向けた恋愛漫画になっています。
男と女は同じ人間であっても脳のつくりは異なっていると言われています。そのため、男性的な考え方と感覚は女性には理解できない部分も多く、また逆もしかり。
そうは言っても、ダメなものはダメ!と横っ面を張り倒してくるのが尾崎衣良の『深夜のダメ恋図鑑』。深夜に開催されている女子会で、自分が遭遇してしまったダメ男たちについて語る、という形式の物語になっています。様々なシチュエーションが登場し、そのセリフがリアルすぎると、多くの女性読者から共感を呼んでいる恋愛漫画です。
- 著者
- 尾崎 衣良
- 出版日
- 2015-04-10
自身の浮気をなぜか肯定する男や、誰にでも簡単にできることを全て彼女にやらせる男、全ての女子が俺を好きになると思い込んでいる勘違い男など。ダメ男の博覧会かというくらい、様々なタイプの男たちとそのシチュエーションが登場します。
本作最大の魅力は、そのダメ男たちを、女子たちが冷徹な言葉でばっさりと切り捨てるところでしょう。実際には面と向かって言えずに飲み込んでしまいがちな言葉を、実に辛辣に口に出してくれる彼女たち。その清々しさには思わず拍手したくなります。
勘違い女がいるのなら、勘違い男だっているもの。日頃の鬱憤を晴らしてくれる本作は、心の安定剤にもなりうる存在です。あの男ムカツク!となったときに、この作品を手に取れば、それよりもっとイラっとする男の姿を目の当たりにし、怒りが緩和されるかもしれません。
一般的に世間では、20歳を迎えると大人とみなされ、それ以降は何となくひとくくりにされているような感覚があります。年齢を重ねるごとに大人としての経験値は増えていきますが、悩みが無くなるわけでも、自分をコントロールできるようになるわけでもありません。皆、何かしら迷いがあり、悩みを感じていることでしょう。本作にも、そんな大人たちが登場します。
交際約10年となる岩城晃平との結婚を意識し始めた29歳の浅尾温子。結婚といっても、何か情熱があるわけでもなく、何となくするなら晃平、というようなあっさりとした感覚です。そのため、仲は良いものの、結婚という大きな一歩に踏み出せないまま過ごしていました。そんな時、晃平が、職場の上司である高野を妊娠させたこと、そしてその相手が子どもを産むということを告白します。
- 著者
- 渡辺 ペコ
- 出版日
- 2010-01-22
渡辺ぺこ『にこたま』は、何かに対する強いエネルギーを感じさせない、淡々とした空気が特徴。温子の淡白な感覚も、上司の高野のだれにも頼らない毅然とした態度も、ある程度年齢を重ねたからこその、諦めのような空気が漂うのです。
高野は産む代わりに、晃平と結婚するといった協力はいらないと、はっきりとした条件を提示してきます。とはいえ、晃平の責任もあるので、温子と晃平は自分たちがどうするべきかを考え、2人は問題解決のために行動しますが……。そこに温子の友人や、温子の職場の店長など、様々なアラサー女子の恋愛事情がからみ、煩わしい展開になっていくのです。
恋愛から結婚を意識せざるを得ない30代は、まさしく人間の成長段階のひとつなのでしょう。なぜ恋愛をし、結婚をするのか、悩み、迷い、息苦しくもがく姿のリアルさが胸に迫る作品です。
周囲には絶対にバレないよう、秘密にしなければならない恋。それは例えば、既婚者との恋愛、法律で守られている年の子が相手の場合、そして相手が近親者だった場合。秘密の恋が一概に不幸であるとは言えませんが、秘密にしなければならないということは、全ての人から理解されないという意味でもあるのです。
茜田千の『さらば、佳き日』は、兄と妹が一緒に新しい家に引っ越してくるところから始まります。名字が1つだけ記された表札に、名前が2つ。誰もが新婚夫婦だと疑わず、当人たちも夫婦だと名乗ってはいるものの、そこに住んでいるのは、間違いなく血の繋がった兄妹です。広瀬桂一と晃は、実の兄妹でありながら、夫婦として穏やかな生活を送っていました。
- 著者
- 茜田千
- 出版日
- 2016-01-14
きっかけは、晃が中学1年生、桂一が高校1年生だった頃。晃は、桂一の彼女に激しい嫉妬の感情を抱いたことで、兄への想いを自覚してしまいます。思いがけず感情を告げたものの、一度は離れようとした2人。しかし、知らない人間になれるはずもなく、手を取り合って誰も2人を知らない街へ引っ越したのです。
様々な障壁を前に、2人の気持ちは強固かと言えばそうでもなく、周囲の意見や互いを想い合うがゆえにすれ違い、本当に彼らの選択は正しかったのか、迷い続けます。キャラクターの心理を丁寧に描いているため、痛みや苦しみが読者に直接に伝わってきて、息苦しささえ覚えるでしょう。
テーマが兄妹の恋愛というだけに、悲劇になるのではないか、と心配になってくる本作。2人の母親や、友人たちの存在が絡み、さらに広瀬兄妹を迷走させます。どんな形になっても、2人が納得いく答えを見つけ出し、幸せになってほしいと願わずにはいられない、祈るような恋愛漫画です。
誰もが器用に生きているわけではなく、自分をうまく表現できなかったり、口を閉ざしてしまったりすることもあります。大人になれば自分の感情を上手に処理できるようになるなんてことはなく、こじらせた挙句に後ろ向きさが度を増している、なんてこともあるでしょう。
『わたしは真夜中』は、そんな後ろ向きなアラサー女子、夜野とばりが主人公。何かに向き合い、考えることを恐れて逃げ、無意識な弱さやずるさを抱えています。それを自覚はしているものの、どうすることもできないのが、アラサー女子の特徴のひとつ。ひとつの場所に留まり、いつまでも動けずにいるのです。
- 著者
- 糸井 のぞ
- 出版日
31歳のとばりは図書館司書として働いています。中学生のころからの付き合いである久志と結婚しますが、浮気が原因で離婚。一人息子の聖とも離れて生活していました。ある日、勤務中に19歳の青年、池端太一に声をかけられます。彼は一緒に寝てほしい、と突然彼女にお願いしてきて……。
特に性的な意味ではなく、不眠症である太一が、たまたまとばりが傍にいる時に熟睡できたため、一緒に寝てほしいとお願いに来たのですが、若すぎる年齢に、とばりでなくても及び腰になるもの。太一に告白され、惹かれている自覚があるものの、今までの経験なども相まって、素直に好意を受け取ることができません。
生きづらさを抱えているからこそ、作中のとばりのセリフに共感。アラサーだからこそ感じる、人間関係に関するプレッシャーを代弁してくれます。
作中には、人生は無意味なことなどなく、無意味は無意味なりの意味があるといった内容を語るシーンがあります。人間として未熟で、無駄に迷っている今も、きっと何かしらの意味があるのだろう、と思わせてくれるでしょう。この恋愛漫画を読めば、不器用ではあっても、無意味なことを楽しめる人間でありたいときっと考えられるようになりますよ。
アラサーという年代は、環境や体調といった、様々な要因に影響されやすいでしょう。今回ご紹介したのは、憂鬱な気分を共感でき、時には笑って忘れさせてくれる、そんな恋愛漫画ばかりですので、ぜひ読んでみてください。