誰にだって苦労していることはある。きっと子どもにだってあるはず
- 著者
- 鈴木 のりたけ
- 出版日
- 2016-03-05
『とんでもない』は視点を変えて物事をとらえることの大切さを、子ども向けに訴えた作品です。大人が読んでも思わず“はっ”としてしまうのではないでしょうか。
ある男の子が「ぼくはどこにでもいるふつうの子」と自分には特徴がないことを嘆きます。そして鎧といわれる分厚い皮を持つサイに憧れます。しかしサイからは「とんでもない!」と意外な言葉を言われてしまいます。彼なりに悩みがあり、それは実はほかの動物にも当てはまることでした……。
自分のことを「何にも特徴のない平凡な人間」であることを嘆くのは大人のほうが多いかもしれませんね。しかしこの作品は特徴がある人にはその人なりの悩みがあることを忘れてはいけないことを思い出させてくれます。
また、深いテーマに対して、描かれているイラストがコミカルと哀愁が共存している面白さがあります。悩みを持つ動物たちの顔は本当に困ったように描かれているのですが、そこに漂うのは哀愁ばかりではありません。どこかクスリと笑ってしまうようなキャラクター性を感じます。悩みの割に悲壮感が漂わないのは、鈴木のりたけのイラストのおかげといえるでしょう。
相手が動物だろうと人間だろうと何かしら悩みや不安の種を抱えて生きているものです。その不安を受け止めていく強さを持つこと、その不安を他人に押し付けないことをうたった作品といえるでしょう。大人になる前に、子どもに伝えたいことの一つがつまった作品です。
クイズ、回文、早口言葉。何でもありの遊び絵本!
- 著者
- 鈴木 のりたけ
- 出版日
- 2015-06-06
『たべもんどう』は野菜を登場人物にした遊び絵本です。
表紙からしてジャガイモのキャラクター性が強いですね。野菜たちの出題するクイズや回文は答えもしっかりついていて子どももしっかり楽しめます。早口言葉は親子で勝負してみるなど、コミュニケーションのツールとして一役買うこと間違いなし!と言えるでしょう。
コミカルに描かれている野菜たちのキャラクターの濃さも必見です。キュウリやまいたけ、ほうれん草など身近な野菜たちが読者に遊びを投げかけてきます。その様子はあまりににぎやかなので、思わず笑顔になる子どもも多いでしょう。
子どもの遊び心をくすぐりながら、しっかり読み進めることができます。言葉遊びによるものが多いので、知識の吸収が始まる小学生向きの絵本といえるでしょう。
仕事とは、役割とは。シュールな登場人物に心奪われる
- 著者
- 鈴木 のりたけ
- 出版日
- 2015-11-12
『ケチャップマン』は絵本というには重いテーマをシュールな表現で訴えた作品だといえるのではないでしょうか。子どもと言わず、大人にも読んでほしい絵本です。
主人公のケチャップマンは押せば中身が出てくるケチャップの容器です。彼は「自分にしかできないこと」を探して仕事を探し回ります。そして見つかったのはフライドポテト専門店でした。働いているうちにとある人物がケチャップマンを訪ねてくるのです……。
表紙はケチャップの容器に手足が生えた生き物(?)が買い物をしている場面ですが、あまりのインパクトの大きさに驚く読者も多いのではないでしょうか。実は最初から最後まで、各ページのインパクトが強いので内容がなかなか入ってこないかもしれません。ですがそのインパクトがクセになるので2度3度と読んでも飽きが来ない作品となっています。
この作品に掲げられるテーマは“仕事とは何か”“自分にできることとは何か”といったところでしょうか。ケチャップマンの仕事探しに始まり、仕事中の様子で哀愁が漂うさまは現代の働き盛りの大人たちの胸をえぐるようです。それでも懸命に働き自分を見つめるケチャップマンに感情移入してしまうのは仕方ないのかもしれません。
この絵本を読むことによって、自分というものを見つめなおす機会になるでしょう。それは大人も子どもも関係なく、また遅いも早いもありません。改めて“自分”というものを考えたくなる一冊です。