- 著者
- 蜂飼 耳
- 出版日
幻想的な世界観の『うきわねこ』は、読み手を癒すことにかけてはトップクラスといえるでしょう。大人から子どもまで愛される作品の一つといえる作品です。
表紙に描かれたうきわを持った猫に、心惹かれて手に取る読者も多いのではないでしょうか。しかし注目するのは猫ばかりだけではありません。建物や風景全てが美しく描かれています。最初から最後まで描かれるイラストは優しいタッチと幻想的な雰囲気のものばかりです。
主人公の猫・えびおは誕生日におじいちゃんからうきわをプレゼントされます。そのうきわには秘密がありました。おじいちゃんに言われた満月の夜にうきわを膨らませると不思議なことが起こります。そしてこの後えびおは忘れられない素敵な出来事を体験するのです……。
様々な経験が心を豊かにしていくといいますが、えびおはおじいちゃんとうきわを使って素敵な経験を重ねていきます。それらは全て現実ではありえないことばかりですが、読み手はえびおと一緒にその経験を共にしているような気持にさせてくれるのです。
全体の構成全てが読者のために向けられたものなので、えびおの体験は自分のことのように飲み込むことができます。しかしそれらは押しつけではなくあくまでも自然に感じられるものなので優しさを感じることもできるでしょう。年齢を問わずに親子で読みたい作品です。
- 著者
- 馬場 のぼる
- 出版日
- 1967-04-01
『11ぴきのねこ』は猫の出てくるシリーズとして人気シリーズの一つといえるでしょう。シリーズ全ての表紙に11匹の猫が笑顔でいることが印象的なこの作品は、何よりも読みやすさが抜群です。シンプルな線と単純な配色のおかげで目を疲れさせないので何度も読み返すことができます。
物語の起承転結がはっきりしており、なおかつ小さな子どもでも分かりやすい“オチ”がしっかりあることが、世代を超えて愛される理由でしょう。それらは猫の醍醐味といえるギャップを上手に表現しているので、思わず声を出して笑ってしまう読者もいるのではないでしょうか?
作者の馬場のぼるは漫画家・絵本作家として著名な人物で手塚治虫ややなせたかし、長新太とも交流を重ねていました。漫画家として、絵本作家として日本の児童書の根底を築いたとされる彼の作品を多く楽しむきっかけとしても、ぜひ手に取ってほしいシリーズです。
- 著者
- ハンス・フィッシャー
- 出版日
- 1954-12-10
『こねこのぴっち』は子猫の小さな冒険が描かれています。動物たちの優しさと子猫の愛らしさに、きゅんとすること間違いなしです!
主人公のぴっちは猫であることがつまらなくなってしまったため、他の動物の真似をしていきます。しかし他の動物の様子を知るうちに自分は猫として飼い主であるリゼットおばあさんと一緒にいるのが一番幸せだと気付くのです。
多くの動物が登場しますが、みんなが一番小さいぴっちを見守っています。その様子は種族を超えた家族のように感じるでしょう。そのなかでぴっちは自分が何なのか、何になりたいかを探りながら、様々な動物たちと交流を重ねていくのです。
またぴっちは作中にひょんなことから家に帰れなくなってしまいます。その晩の夜には想像したこともない恐ろしい体験をするのです。何とか動物たちに助け出されますが、ぴっちはすっかりふさぎこんでしまいました。しかし動物たちとおばあさんの介抱のおかげで立ち直っていきます。
物語の後半の展開は、家族の温かさがとてもよく表現されています。動物たちもおばあさんも、ふさぎこんだぴっちをとても心配している様子は胸を打つものを感じられるでしょう。またぴっちが家族の温かさに触れ、心を開いていく様子はわが子の成長を目の前にするかのような感慨深いものがあります。
イラストを手がけたのはスイスで有名な画家のハンス・フィッシャーです。彼の幼い娘のために作られたというこの作品は、大人になってからでも読みたい作品といえるでしょう。
- 著者
- 佐野 洋子
- 出版日
- 1977-10-19
『100万回生きたねこ』と聞いたら誰もがあの縞模様の猫を思い浮かべるのではないでしょうか。世界中で愛される、絵本の最高峰といえる作品です。
何度も生を経験した猫は、出逢った白猫と恋に落ち、初めて大切だと感じた家族の死を経験します。彼は深い悲しみのため、泣き続けました。そしてある日の昼に、愛した白猫の横で動かなくなり、二度と生き返ることはなかったのです……。
物語は穏やかに展開していき、白猫と出逢ってからはさらに穏やかさを増していきます。まるで不老不死の自分に対して、時間に限りのある白猫との時間を惜しむかのようです。愛する者との時間はやはり“時間が進まなければよいのに”と願ってしまうものなのかもしれません。
人生において、心を閉ざして生きることの虚しさは計り知れません。しかしそれはいつ現れるか分からない誰かによって開かれることもあります。そしてその相手を大切にし、愛することで変わることがあることを教えてくれるのです。この作品はそんな愛の物語なのです。
深いテーマから、人によって解釈が様々な作品。親子で、夫婦で、友人で語り合うきっかけにピッタリでしょう。大切で愛するだれかを思い浮かべた時に読みたい一冊です。
- 著者
- 石井 桃子
- 出版日
- 1967-01-20
『ちいさなねこ』はまだまだ幼い猫が外へ外へ冒険にむかう姿を描いた絵本です。
まだ生まれたばかりで外の世界を知らない子猫が、様々なピンチをくぐり抜けてお散歩をします。しかし家に帰れないほどのピンチを迎えてしまいます。そこに助けに現れた母猫によって、子猫は無事お散歩を終えることできました。
登場人物は猫の親子ですが、どんな動物の親子にも当てはまる物語なのではないでしょうか。好奇心のおもむくままに行動する子どもと、優しく見守り全力で子どもを守る母親が描かれており、そこには種族を超えて母親の子どもへの愛情を理解することができます。
模写のように描かれている分、猫の動きにリアリティがあります。そのためより猫の親子の絆を感じることができます。わが子に思いを馳せながら、母を思いながら読むとより感慨深い作品となるでしょう。
猫好きが胸をときめかせること間違いなしの絵本を紹介しました。感動の名作から笑みがこぼれる作品まで、猫は幅広く絵本の中で活躍します。猫好きにプレゼントしてもよし、親子で猫を好きになるための教科書にしてもよし、猫グッズとしてコレクションに加えるもよしでしょう。ぜひ猫を楽しむきっかけにしてください。