小説に正解はない! なんていう言葉もありますが、それでも先人から学びたいもの。日常的に小説を書いている私が小説を書く上でとっても参考になった! という本を紹介します。小説を書かないという人でも、物語がどんな風に生まれるのかを知ると、今まで以上に面白く読めること請け合いです。
最初に紹介するのは、石崎洋司の『黒魔女さんの小説教室』。「黒魔女さんが通る!!」という青い鳥文庫の子ども向けシリーズ作品があるのですが、そのキャラクターたちと作者の石崎先生が楽しく小説の書き方を教えてくれます。
小中学生から読めるようになっていてとっても読みやすいので、初めて小説を書いてみたい、と思っている人にオススメ。小説の冒頭・書き出し、キャラの立て方、文章そのもの、そしてアイディアをどうやって膨らませていくかなどなどが丁寧に、でも読みやすく楽しく書かれています。
一見すると初心者向けで内容も簡単そうに思えるのですが、あなどるなかれ。具体的な例が豊富で、基本が網羅されているのです。書き慣れている人でも気づかされる点は多いのではないでしょうか。
あとがきには「小説を書くというのは、大好きなだれかにお話をプレゼントしてあげること」という石崎先生の言葉があります。誰かに読んでもらうために書くという、最も大切なことを確認させてもらえる1冊でもあります。
- 著者
- ["石崎 洋司", "藤田 香"]
- 出版日
- 2009-12-01
次は大人向けの小説の作家さんの本を。貴志祐介の『エンタテインメントの作り方』。
貴志祐介といえば、ホラーやミステリーなどでとっても有名ですよね。『青の炎』『硝子のハンマー』『悪の教典』『新世界より』などなど、ドラマ化・映画化・アニメ化された作品が多数ある作家さんです。この本では、小説の着想からプロット(あらすじや設定をまとめた小説の設計書のようなもの)の立て方、執筆、推敲と、小説を書くためのすべての作業について順番に説明されています。
中でも私がとっても興味深かったのは、プロットについて述べられた部分。実際に発表されている貴志先生の作品を例に、このシーンではこんなプロットを書きました、というのが紹介されているのです。プロの作家さんがどんなプロットを立てているのかは、非常に気になるところではないでしょうか。
貴志作品を読んだことがある人なら、どんな意図のもとであのヒット作が生み出されていったのか、という視点でも楽しめる1冊です。
- 著者
- 貴志 祐介
- 出版日
- 2015-08-26
ここまではわりと王道な小説技法が載っている本を紹介してきましたが、今度は小説ってなんでもアリ! と思わせてくれる1冊を。筒井康隆の『創作の極意と掟』です。筒井康隆がどんな作家か、なんて説明はもはや不要でしょう。
この本は小説のノウハウ本というわけではなく、文中でも「単なるエッセイだ」と述べられています。ざっくりまとめると、筒井康隆がどんなことを考えて小説を書いてきたかが書かれた本です。ですが、形容や描写、文末表現といった細かいノウハウ的な話から、実験的に書いてみたという実際の著作の意図や狙いといった話まで、その内容は非常に多岐にわたります。「作法など不要、というのが筆者の持論」との言葉どおり、小説には正解がない、を徹頭徹尾論じたような1冊です。
また、例としてほかの作家の作品にも数多く触れています。実験的な手法を取り入れた様々な作品を知られるという点でもオススメです。
- 著者
- 筒井 康隆
- 出版日
- 2014-02-26
最後に紹介するのはこちら、トキワ荘プロジェクトの『マンガで食えない人の壁―プロがプロたる所以編―』です。小説の本じゃないじゃんと思われるかもしれませんが、小説にもとっても役立つ内容です。
この本は、マンガ家さんをはじめとした様々なプロの方たちの対談を集めた本です。『シティハンター』の堀江伸彦、『ライアーゲーム』の甲斐谷忍、『のだめカンタービレ』の二ノ宮知子などなど、そうそうたる顔ぶれ。語られているエピソードもマンガだけでなく小説にも応用できるものばかりで参考になるのはもちろん、ヒット作誕生の裏側がわかって純粋に楽しめもしました。
私が特に印象的だったのは、二ノ宮さんの『のだめカンタービレ』に関するお話。ご存じ、音大を舞台にしたマンガですが、音楽経験者の私も「わかるわかる!」とつい頷いてしまうリアルなお話でした。なので作者の二ノ宮さんは音楽に詳しい方なのかと勝手に思っていたのですが、なんと、この本で「楽譜も読めない」と書かれているのですね。衝撃です。徹底的な取材の末にここまで書けてしまうなんてと脱帽しました。
- 著者
- NPO法人NEWVERY内 トキワ荘プロジェクト
- 出版日
- 2014-11-11
小説の書き方は千差万別ですが、プロの作家が何を考えてどんな風に書いているのかを知るのはとっても参考になります。好きな作家さんがどんな風に作品を書いているのかを知れば、作品をもっと楽しめるかもしれません。小説を書く人も書かない人も、舞台裏を覗いてみるつもりで読んでみてはいかがでしょう?