最近刺激が足りない、わくわくどきどきしたい、と思っている方におすすめなのが、フレデリック・フォーサイスのスパイ小説です。また、国際問題に関心がある方にもぜひ読んでいただきたいです。そんなフォーサイスのおすすめ5作を選んでみました!
フレデリック・フォーサイスは1938年生まれの、イギリス出身の作家です。彼の書いた多くのスパイ小説などの作品は、様々な言語で翻訳され、人気を得ました。
彼は1956年から1958年までは、イギリス空軍に勤めていました。その後、地方のプレスのレポーターとして、ジャーナリズムの世界に入っていくことになります。1960年代前半に、ロイター通信社の特派員としてフランス、西ドイツ、チェコスロバキアに派遣され、滞在しました。1965年に有名な放送局のBBCに入り、1967年~1970年に起こった、ナイジェリア内戦とも言われるビアフラ独立戦争の現地取材しています。
1971年に発表された小説家としての処女作『ジャッカルの日』が大成功を収め、フォーサイスは一躍人気作家になりました。この作品に自身がフランスに特派員として滞在したときの体験を描いているように、彼は執筆の際にこういった軍隊やジャーナリズムでの自身の経験を活かしています。
この記事では、そんなフレデリック・フォーサイスの中でもおすすめの作品を5作ご紹介します。
1960年代、フランスのシャルル・ド・ゴール大統領は、植民地アルジェリアの独立を認めました。しかし、それに対する反発も根強く、武装組織「秘密軍事組織(OAS)」は「ジャッカル」と呼ばれるプロの殺し屋を雇い、大統領の暗殺を目論みます。
こうして、捜査官と暗殺者の戦いの火蓋が切られたのです……。
- 著者
- フレデリック・フォーサイス
- 出版日
- 1979-06-10
1971年に出版された、フレデリック・フォーサイス最初の小説『ジャッカルの日』は、世界中で大変評判となりました。日本でも人気の作品で、スパイ小説の名作としてあげられています。1973年には映画化もされました。
実際にあったシャルル・ド・ゴール大統領暗殺計画への詳細な取材を地盤にした作品と言われており、フィクションながらリアリティがあります。大統領を殺そうとする暗殺者と、それを阻止しようとする捜査官たちの、プロ同士の緊張感がある駆け引きに、ページをめくる手が止まりません。気が付いたら最後まで読んでしまっているでしょう。
スパイ小説が好きな方、どきどきしたい方、心理戦が好きな方は必読の一冊ですよ!
1963年11月22日はケネディ大統領が暗殺された日。この日、西ドイツのライターであるペーターは、一人のユダヤ人の老人の自殺現場に遭遇します。その老人は、強制収容所に入れられていた生き残りであり、いつかそこで実行された残虐行為を摘発したいと考えていました。
さらに、その老人のいた強制収容所の所長エドゥアルト・ロシュマンが、自分の父の仇であることを老人の日記で知ったペーターは、ロシュマンを追うことを決意します。しかし、次第に命を狙われるようになり……。
- 著者
- フレデリック・フォーサイス
- 出版日
印象的なのは、戦犯であり、父の仇であるロシュマンを追おうとするペーターを止める人々がたくさんいることです。彼の母親でさえも、男を追って何かが判明したとしても遅すぎる、ペーターが非難されるのがオチだ、と言います。ナチスによる差別が行われていたころ、それは許されないとわかっていながらも、何もできなかった、といううしろめたさを抱えていることなどがあり、皆暗い過去と向き合うことを恐れているのです。
人間は、暗い歴史とどのように向き合い、償っていくのか。戦争は人間をどれほど傷つけるのか。スリルに富んだ物語でもありながら、そういう問いを真剣に投げかける作品でもあります。
あるイギリスの会社の社長が、アフリカの貧しい小国ザンガロの水晶山と呼ばれている鉱山に、豊富なプラチナがあることを知りました。それを掌中に収め、莫大な利益を得るために、ザンガロでクーデターを起こして、懇意の者に政権を握らせることを画策します。
真意を隠しつつクーデターを起こすために、評判の傭兵シャノンを雇います。しかし、抜け目のないシャノンは会社の真意をきちんと探ろうとしていた上に、アフリカの悲惨な現状をよく心得ていて……。
- 著者
- フレデリック・フォーサイス
- 出版日
シャロンという傭兵の姿を、フォーサイスが自身の経験と綿密な取材を基にして、描き切った作品です。ザンガロというのは架空の国家ですが、利権追求の資本主義や、冷戦、民族主義、アフリカとヨーロッパの複雑な関係など、現実の問題を絡めた設定となっています。
一般人だと普通は知らない、武器の調達などの過程が細かくリアリスティックに描かれており、知らない世界をのぞき込むような刺激があります。そういったクーデターまでの準備過程だけでもとても面白いのですが、やはり真骨頂はラストでしょう。
ラストでは、シャノンの傭兵としての生き様を感じ取ることができます。彼が何を考え、どう行動したのか……。ぜひ最後まで読んで、彼の熱い生き様を受け止めてほしいです。
少年のコカイン中毒死の話を聞いたアメリカの大統領は心を痛め、コロンビアからもちこまれるコカイン産業の撲滅を命じました。この重大な任務を任されたのは、「コブラ」こと元CIA(中央情報局)職員のポール・デウローでした。
かつての敵である「復讐者(アヴェンジャー)」ことキャル・デクスターと共に、コカインを扱う巨大な組織を追い詰めようとします。
- 著者
- フレデリック・フォーサイス
- 出版日
- 2014-04-25
話が早くてありがたい、心地よい。誰しもがそういった感覚を持ったがあるとは思いますが、まさにこの作品の語り口は、その感覚を味わせてくれるのです。麻薬の問題という複雑な問題を題材にし、しっかりと緻密に描いているにも関わらず、頭が痛くなることはなく、不思議とテンポよく、スルスルっと読めてしまいます。
気が付いたら、あっという間に結末のところまでたどり着いていることでしょう。しかし、ここで読者は、この語り口のテンポの良さは、ある意味フォーサイスがある意図をもって仕掛けたものだと気づきます。心地よいテンポを楽しみながらも、どうか油断しないでくださいね!
最後にご紹介するのは、2016年に出版されたフォーサイスの自伝『アウトサイダー 陰謀の中の人生』。彼の冒険に満ちた人生の物語は、世界中に衝撃を与えました。
- 著者
- フレデリック・フォーサイス
- 出版日
- 2016-12-28
上でわずかに述べさせていただいたフォーサイスの経歴を見ただけでも、なかなか刺激的だと思われたのではないかと感じますが、彼の人生はまさに「事実は小説より奇なり」と思えるようなものです。フォーサイスの激動の人生こそが、極上のエンターテイメントのように感じられます。
一方で、彼自身が小説で極上のエンターテインメントを提供し続けながらも、作品には必ず現実的な国際問題への言及を取り入れていたように、本作にも国際政治についてのとても厳しい追及があります。
フィクションよりも刺激的で、冒険に満ちた人生を送りながらも、国際問題に真摯に向き合い続けたフォーサイスの姿勢が、何よりも小説作品の中で活かされていることを実感できる自伝です。
刺激に満ちた極上のエンターテイメントでありつつ、国際問題に真剣に言及した作品を送り続けてきたフォーサイス。彼自身の人生が大きく反映された作品を、ぜひ読んでみてください。大いに楽しめると同時に、大いに考えさせられると思います。