透き通った世界を描くと定評のある、たむらしげる。彼は絵本作家でもあり、漫画家としても活躍しています。その作品の世界感は固定観念を打ち砕くファンタジーそのもの。絵本の扉を開けて、摩訶不思議な世界へ迷い込みませんか?
たむらしげるは1949年東京都生まれの絵本作家、漫画家です。青年時代まで八王子で過ごしていました。
子どもの頃夢に見た世界を本のなかに描き出したという、たむらしげるの絵本作品。幼少期の彼は夜空に満点の星が見える山奥に住んでいて、いつも星を眺めていたと言います。その頃の原体験からか、彼の描いた夜空は不思議な魅力に満ちているのです。
桑沢デザイン研究所を卒業し、印刷関係の仕事を経て絵本作家に転身したたむらしげるは、漫画雑誌「ガロ」に連載を持っていた経験もあり、漫画家としての一面もあります。
その作品に触れた子どもたちは、目に見えない何かを信じるかもしれないし、想像力が鍛えられるかもしれません。近未来的でもあり、どこか懐かしくもある不思議な世界は、子どもたちの想像力を大いに刺激することでしょう。
『ロボットのくにSOS』は、コンピュータグラフィックスの手法を用いて描かれた作品です。物語は、ロボットの国にすむゼンマイ仕掛けの古いロボットが、博士の所に助けを求めてやってくるところから始まります。
地下にあるロボットの国で大地震が起き、発電機が壊れてしまったためにロボットの国の機能がすべて止まってしまったと言うゼンマイロボット。ロボットの国の中では、ゼンマイをまかずには動くことができない彼は古く価値のないものとみなされてきましたが、そのゼンマイロボットだけが、電気のない中を動くことができたのです。
ちょうどロボットが来た時にフープ博士の所に、自分のおもちゃを直してもらうために、ルネという男の子がやって来ていました。ゼンマイロボットの話を聞いたフープ博士とルネは、猫のネプチューンを連れて旅に出ます。ロボットだらけの国なんて、なんだかワクワクしますね!
- 著者
- たむら しげる
- 出版日
- 1996-09-10
ゼンマイロボットは、旅の途中で何度かゼンマイを回してもらわないと動きがストップしてしまうという、なんともやっかいなものでした。でも、心優しく、その動きはコミカルで、子ども達はきっと好きになることでしょう。
マンガのようにコマ割りになっているので、コマに指をさしながら、声色を変えて楽しみながら読み聞かせをしてみましょう。物語のラストでは、ゼンマイロボットが自分の部品を使ってロボットの国を救う決断をします。子どもの目にその決断はどう映るでしょうか?
真のヒーローとはどんな存在か、読んだ後に子どもに問いかけてみたいものですね。
空に浮かぶ星の気持ちを考えた事はありますか? スターヘッドの主人公はなんと、空を旅する星なのです。決められた軌道をとてつもなく長い時間をかけてめぐるスターヘッドは、旅の途中に近づいた惑星があまりに美しくて、ついつい寄り道をしてしまうのです。
想像を絶する広さの宇宙に、ひとりポツンと旅を続けるスターヘッドは、とてつもなく孤独な存在に感じられます。子どもにとっては新しい角度から物事を見る面白さを知ることができますし、大人にとっては決められた人生をたどる道から少し離れるという、非日常を感じられるかもしれません。
- 著者
- たむら しげる
- 出版日
スターヘッドが引き寄せられた魅惑の星には、サンタクロースや歩く家など、摩訶不思議な世界が広がっています。人間の想像をはるかに超えた世界で、スターヘッドはフワフワと旅を続けるのです。
スターヘッドが旅するこの惑星は、たむらしげるの代表作『ファンタスマゴリア』に登場する惑星です。作品同士のストーリーがつながっているので、両方を読み比べてみても面白そうですね。
手漕ぎボートで宇宙に行けたら、どんなに楽しいでしょうか?想像力に限界はありません。『うちゅうスケート』は、大人や知識を持つ子どもを混乱させるような、夢いっぱいの演出が所々にちりばめられています。
宇宙人のお友達、ミュー君からルネ君宛てに手紙が届きます。そこには、土星にできた新しいスケート場で一緒に遊ぼうという誘いの言葉が綴られていました。ルネ君は早速おじいちゃんと一緒にボートに乗って、宇宙に向かって出発するのです。
- 著者
- たむらしげる
- 出版日
- 2014-11-15
表紙の美しさもさることながら、ボートで銀河を進むという設定の面白さも秀逸です。土星の周りにある輪の正体を知っている子も知らない子も、そこでローラースケートをして遊べたらと想像するだけで面白いですね!
サボテンの形をした宇宙人や、お菓子の形をした宇宙人、こんな宇宙人がいたら会ってみたいと思わせるユニークなキャラクターもたくさん登場します。
もしかしたら大人の言う事や教科書の内容は全部嘘で、土星の輪には、ローラースケート場が本当にあるのかもしれない。そんな風にひそかに、子どもの夢見る心を育ててくれる絵本です。
子どもの頃は、自分が眠っている夜の間は、世界が動いているということを全く意識なかったでしょう。『よるのさんぽ』は、夜の世界がどうなっているのか、興味を持ち始める頃の子どもにおすすめです。
子どもにだって寝付けない夜はあるもの。この絵本は、なかなか眠れない男の子が夜の街を散歩するお話です。子どもが夜に、パジャマのまま一人で外に出るなんて、現実ではなかなかありえませんね。しかし絵本の中の男の子は散歩をするうち、いつの間にか大きくなっていき、町のピンチを助けることになります。
- 著者
- たむら しげる
- 出版日
『ガリヴァー旅行記』の主人公のように大きくなった男の子は、夜の街の探検を始めます。透明感のある青で描かれた夜の街は、知的な雰囲気を持ちながらも温かみを感じられる不思議な世界です。
男の子は夜の街で発生した火事を、大きな体をいかして鎮火します。夜の街で、誰かを助ける。ヒーローになった男の子を、読み手の子どもたちは憧れのまなざしとともに見つめるかもしれませんね。
夜、寝かしつけの前に子ども達にぜひ読んであげたい絵本です。この絵本を読んでから眠ると、いい夢が見られそうですね。
古い家に住む小さなおばけは、ハーモニカが得意でした。古い家が夜の闇に包まれると、小さなおばけがハーモニカで演奏を始めます。するとそれを聞きつけたのか、森の木のおばけがやってきて、得意のバイオリンを披露してくれます。
おばけがそろって音楽を奏でるなんて、怖いようで、なんだかおもしろいですよね。2人が音楽を奏でていると、またその家に、誰かがやってきます。ドアを開けるとそこにいたのはなんと水のおばけ!それから次々に仲間が増えていき、おばけたちはみんなで楽しく、美しい音色を奏でるのです。
- 著者
- たむら しげる
- 出版日
- 2004-05-20
夜、どこか遠くで響く不思議な音を耳にしたことはありませんか?その音の正体は、もしかしたらおばけのオーケストラかもしれません。
おばけのコンサートは仲間を増やしていきながら音楽を楽しみ、いつの間にか夜が更けていきます。コンサートの音楽に魅せられた生き物たちが一緒に踊り出すと、ついにはコンサート会場だった古い家までがダンスを始めて大変なことに!
予想外の展開で読み手を驚かせてくれる愉快な『おばけのコンサート』。おばけを怖がっていた子どもたちでも、この絵本を読めば大好きになるかもしれませんね。
たむらしげるの描く不思議な世界は、いかがでしたか? 絵本は家にいながら、心を遠く離れた場所に連れて行ってくれます。子ども達には、たくさんの夢を見せてあげたい。そんな思いを持っているお母さん、お父さんには、ぜひ一度たむらしげるの不思議な世界に子どもたちを連れて行ってあげて欲しいものです。きっと誰もが夢中になるのではないでしょうか。