甲斐信枝が自然を描く絵本おすすめ5選!生命の尊さ、美しさを感じる

更新:2017.5.3 作成:2017.5.3

植物や自然に関わる作品を多く発表している甲斐信枝。あらゆる植物が芽吹く春に読みたくなる作品をご紹介します。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

自然と寄り添った絵本作家・甲斐信枝とは

甲斐信枝は1930年生まれの絵本作家です。絵本作家としては長く現役を務めあげている彼女は、自然と人との関わり、植物に関する絵本を多く発表しています。じっくり観察されたそれらの動きを的確に伝える技術に優れた作品ばかりです。

甲斐信枝の絵本は植物の研究者が手がけたのでは、と思ってしまうほど鋭い視点で細かい部分まで観察され、その生態を的確に描いています。生き物に興味を持ち始めた子どもにはうってつけの作品といえるでしょう。

また、彼女の作品を彩るのはその観察力だけではありません。多くの作品が水彩画や色鉛筆で描かれるなど、柔らかさと繊細さを兼ね備えた表現をしているものばかりです。植物たちの生態を細かく的確に表現するには最適だったのでしょう。読み手も一緒に外に出て観察をしてきたような気持にさせてくれます。

観察力と表現力に富んだ甲斐信枝の作品は、そんな植物たちの生命を感じることのできるものばかりです。今回はその中でも珠玉の5冊をご紹介します。

身近な植物の成り立ちを知れる、甲斐信枝の絵本

著者
甲斐 信枝
出版日
1993-04-10

『たねがとぶ』はタイトル通り、植物の種の様子を描いた作品です。鋭い観察眼で描かれた作品なのに、優しく繊細に描かれています。

驚くべきは、まず描写の細かさでしょう。それも細部までしっかり観察されており植物図鑑から引っ張ってきたかのような精密さです。花の様子、種の様子、種の飛び方まで植物の成り立ちを的確に表現しています。

さらに注目すべきは、音の表現。植物たちが種を飛ばす様子に音があるのです。実際に聞いてきたかのようなリアルな表現をしており、植物たちの営みを身近で追体験したかのような錯覚に陥ります。

広い原っぱなどを見る機会が減った現代に、この絵本を手に取ってみてください。子ども時代を思い出して、身近な植物たちの存在を愛おしく感じられるはずです。

植物たちのたくましさに、生きる勇気を分けてもらえる絵本

著者
甲斐 信枝
出版日
1985-04-30

『雑草のくらし』はまさしく雑草の絵本です。彼らの持つ生きる力とたくましさに胸を打たれます。

実際に甲斐信枝自身がとある空き地を5年かけて観察し、その空き地の雑草たちの生き様を描いた作品です。観察スケッチといえる精巧なイラストと、植物それぞれが持つ生きる知恵に驚かされます。

空高く背を伸ばすもの、地面を掘るように伸びていくもの、多種多様な生態を鋭く観察し、それをまとめたこの作品はまさしく植物図鑑といえるでしょう。見たことのある植物から、名前も姿も知らない植物までがそこに存在しているので大人から子どもまで、幅広い世代で楽しむことができます。

5年の歳月を経て描かれた植物たちの攻防やたくましさは、読み手に強く生きる勇気を与えてくれるでしょう。決して折れず、くじけず、次世代に種を残そうとするその姿はまさしく現代に必要な姿勢なのかもしれません。

生きているのは植物だけじゃない!小さな生き物たちにも注目

著者
甲斐 信枝
出版日
2017-03-04

『きゃべつばたけのいちにち』は今までの2冊と異なり、キャベツ畑のみをピックアップした作品です。キャベツを取り巻く生き物たちの躍動感を楽しめます。

キャベツ畑の一日は朝早くから始まります。卵をつけるチョウや葉を食べにくるアオムシやアリといった虫たち……彼らの生きるための工夫を見ることができるのです。静かな畑の様子を描いていますが、読み進めている間、爽やかな朝と植物たちの躍動感で満たされた時間を過ごすことができるでしょう。

この作品もまた、鋭い観察眼で細かくキャベツ畑の様子が描かれています。虫たちも非常によく観察されて描かれているため、虫が苦手な読者は驚いてしまうかもしれませんね。しかしそれ以上に目を見張るような発見があるので、ついついページをめくってしまうでしょう。

農家のように1日中キャベツ畑のそばにいることの出来ない読者のための、観察日記としても良い作品でしょう。生命の営みや生き物を大切に扱うことをしっかり感じてもらえる作品です。

植物たちの気持ちを想像させる甲斐信枝の作品

著者
甲斐 信枝
出版日
2015-09-02

『のげしとおひさま』はノゲシの成長を、その気持ちとともに描いた作品です。この絵本を通して、植物の気持ちを楽しめるでしょう。

ノゲシは自分の身の回りを行き来できる虫や動物をうらやましく思います。どうしたら自分も動けるようになるのか、おひさまに相談すると「たくさん陽の光を浴びるように」と教えてもらいます。おひさまのいうことを聞いたノゲシがどうなるか……。大人だったら結末は分かるのに、ワクワク感を抑えられない作品です。

表情や身振りが表現されていないのに、ノゲシの気持ちが手に取るように分かります。虫たちをうらやましいと思い、おひさまの言うことを聞いても何も変わらないがっかり感、そして最後の躍動感は分かりやすく小さな子どもでも楽しめるようになっています。

実際に作中の場面を見てきたかのようなイラストと、丁寧な言葉選びをしている文が見事にマッチしているのです。ノゲシの観察日記としても、植物の物語としても楽しめる二面性を持っている作品といえます。近所でノゲシを見かけたらこの本を思い出して手に取ってみると良いかもしれません。

母の愛と期待を胸に、子どもたちは成長していく。

著者
甲斐信枝
出版日
2011-02-02

『のえんどうと100にんのこどもたち』は野エンドウの親子のお話。今回紹介する絵本の中で唯一表情が描かれ、明確な擬人化が施されているので小さなお子様から楽しめる作品です。

野エンドウのお母さんは種である子どもたちに深い愛情をかけながら、おひさまの力を借りて子どもたちの旅立ちに向けて準備をしていきます。一方子どもたちはその愛を受けながら外の世界に希望を見出し、外に出る気持ちを高ぶらせていくのです。

野エンドウのお母さんの表情は、これ以上ないというほどに深い愛と優しさと子どもたちへの希望が込められています。子どもというのは本来これだけ穏やかな笑顔を母に浮かべていてほしいのだということに気づかされるのではないでしょうか。

子どもたちの表情にも、一つ一つに個性があります。またそれぞれのお部屋での過ごし方にも個性が現れています。野エンドウのお母さんはその個性を否定せず、優しく受け止めてくれるのです。その様子は人間の親子との差を感じずに読むことができるでしょう。

子どもたちが旅立ってからのお母さんの様子は少しだけ寂しく描かれていますが、そばにいる子どものおかげでそれも払拭されます。野エンドウの観察絵本としても、親子の深く優しい物語としても楽しめる作品です。

観察眼が優れた甲斐信枝の作品をご紹介しました。普段意識しない世界に目を向けることの大切さ、その世界での営みを知ることの大切さを小さな子どもに伝えるのは難しいですが、彼女の作品があればきっと伝えられるはずです。ぜひ親子で楽しんで下さい。