現実的にはお断りですが、束縛の強い愛に憧れる方もいるのではないでしょうか。重すぎるからこそ、物語の中でなら楽しめるという安心感があります。ここでは、歪んだ愛が描かれた恋愛漫画作品の中でも、束縛度に着目。ランキングにしてご紹介いたします。
人は、様々なものと愛を秤にかけます。時間やお金、趣味や仕事、友人との時間。その中でも究極だと言えるのが、命でしょう。命がけの恋とはよく言いますが、現実では、命をかける状況は稀です。しかし、漫画だからこその、胸を焦がすような命がけの恋があるのです。
『BLACK BIRD』は、「烏天狗」という一族の青年と、100年に一度生まれる「仙果の娘」という特異体質の女子高生が織りなす恋物語。仙果の娘は、血肉に延命長寿や不老不死をもたらす力を持ち、花嫁に迎えれば一族が繁栄するという、強大な力を持っています。そのため、道具として扱われ、過去には悲惨な末路を迎えた仙果の娘も多く存在しました。
- 著者
- 桜小路 かのこ
- 出版日
- 2007-01-26
原田実沙緒は、幼いころから妖を見る、特殊な力を持っていました。子どものころ、自分を守ってくれていた烏水匡(うすいきょう)と再会しますが、そこで自分が仙果の娘という特殊な存在であること、匡が烏天狗と呼ばれる妖であることを知らされます。
仙果の娘の力がほしい他の烏天狗の一族との抗争とともに、実沙緒と匡の、文字通り命を懸けた恋を描いています。匡は実沙緒ひと筋で、愛情表現はストレート。こんな風に愛してほしい、という女性の願望がぎゅっと詰まっています。対する実沙緒も純粋で一途。初恋である匡を想い続ける姿に、こんな恋がしたいと憧れる読者が続出しています。
しかし匡は、元々自分の兄の結婚相手としてあらわれた実沙緒に一目ぼれ。兄を蹴落とし、自分が当主となって実沙緒と結婚してしまった、という驚異の情熱を見せつけた人物です。激闘の末に結ばれるため、想いの強さが表れていますが、束縛はかなりのもの。命がけで愛し愛される物語をご堪能ください。
一緒に暮らしている兄弟が気になっていたけど、実は血は繋がっていなかった……。漫画の王道展開ですが、兄弟として接してきた時間と自分の気持ちへの葛藤、世間の目など、様々な障害の先にある恋を楽しむことができます。恋は徐々に進めていくものですが、突然関係性の変更を求められた時、どのような行動をとりますか?
『そんなんじゃねえよ』は、美形で有名な双子の兄と平凡な妹が織りなす恋物語。真宮烈、哲は二卵性の双子の兄弟。地元では知らない人はいない有名人です。その妹の静は、超平凡で容姿は兄たちに比べると「中の上」という微妙な評価。しかし、兄たちからは溺愛されて育ちました。
- 著者
- 和泉 かねよし
- 出版日
- 2003-03-26
兄たちには「幼い自分たちの元に小さな静が連れてこられた」という確固たる記憶があり、血が繋がっていない確証を持っています。だからこそ、妹以上の感情を抱いていました。血が繋がっていないということが静に知られた時、どちらかを彼氏に選ぶよう、静に迫ります。
静がピンチになったときに必ず駆けつける二人は、とってもヒーロー的。しかしその愛が重たすぎるため、受け止める静の度量に感嘆してしまいます。作中ではさらに血縁関係が複雑になっていき、もはや誰と誰が血が繋がっているのか、混乱を起こすような状態に。それでも、想いを貫こうとする姿は、歪んだ愛と言わざるを得ません。
血縁関係が明らかになるにつれ、静の気持ちは翻弄されます。状況に戸惑いながらも一途に静を想う真宮兄弟の愛情の深さに、読者は少々ハラハラさせられる場面も。独特なギャグセンスも光る、笑いも胸キュン要素もぎゅっと詰め込まれた1冊です。
お金持ち学校に通う庶民の少女が、数多のいじめを持ち前の忍耐と根性で乗り越え、いじめていた当事者の御曹司と、紆余曲折の末、恋を成就させる物語。ドラマや映画もヒットした、国民的少女漫画『花より男子』です。明るい学園ラブコメ作品である本作、実はヤンデレ要素があることに読者の皆様はお気づきでしょうか。
本作は、お金持ちばかりが通う、英徳学園に進学させられてしまった庶民の子、牧野つくしが主人公。正義感が強く、曲がったことが嫌いな彼女は、教師すら口を出せない、学園を牛耳る4人の男子、「F4」から親友をかばったため、いじめの対象にされてしまいます。
- 著者
- 神尾 葉子
- 出版日
持ち前の雑草根性でいじめを乗り越えたつくし。F4のメンツと関わるうちに、そのリーダー格である道明寺司と恋をするように。しかし、いじめられていたため、司への感情はマイナススタート。むしろ、序盤のつくしは、助けてくれたF4の花沢類に恋心を抱いていました。
司は、今まで自分の想いや願いがかなわなかったという経験をほとんどしてこなかった人物。つくしのために変わろうと努力しても、肝心のつくしの心が類に揺れているため、その不安や不満が、暴力や暴言といった形で発露してしまいます。そんな司を、完全に見捨てることができないつくし。着地点を見いだせない恋心に、やるせなさが募ります。
オレサマな性格であるため、独占欲も人一倍強い司。実は立派なヤンデレなのですが、序盤の行動の幼さからか、その要素をすぐに感じ取ることはできません。けれど、司が変わっていくのは、つくしへの恋心があればこそ。国民的少女漫画には、苦しい恋の姿も描かれています。
結婚したら苦労しそうな職業、というイメージがあるのが、農家や漁師など重労働な職業。そして、神社や寺など特殊なしきたり、作法が必要となる職業です。
『5時から9時まで』は、英会話教室の非常勤講師を務める桜庭潤子と東京大学卒のインテリ僧侶、星川高嶺(ほしかわたかね)の恋を中心に、同じく講師の山渕百絵、事務を務める毛利まさこ、妹の桜庭寧々といったキャラクターたちの恋を展開。複数の恋が絡み合っていますが、互いにライバルになるという要素は薄く、群像劇的な作りになっています。
- 著者
- 相原 実貴
- 出版日
- 2010-06-25
桜庭潤子は、上智大学を卒業して外資系証券会社に勤めた後、英会話教室の講師へ転職した27歳。海外ドラマのような生活にあこがれを抱き、キャリアを積んで海外で生活、結婚することを夢見ています。そんな時、祖母に強制的にお見合いさせられた星川に気に入られてしまった潤子は、星川の英語のレッスンを受け持つことに。
しだいに星川に惹かれていく純子。嫌いではないため、肉体関係をもってしまいますが、夢があるために結婚を受ける気はありません。逃げ出そうとする潤子を寺の一室に監禁するなど、序盤から星川は歪んだ愛を爆発させていきます。
どうしても潤子と結婚したい星川ですが、自分の要求と感情を押しつけているため、潤子も素直にうなずくことができません。学歴的には星川が上のため、潤子の英語スキルを否定する場面なども見られ、上から目線になることも。
潤子、流されすぎ!と心配になりますが、そこは男女のこと。反発しながらも惹かれるのは、星川が潤子に歩み寄ろうとする姿を見せるからなのでしょう。愛情がすこぶる重たい星川に、本当に大丈夫なのかと疑いの目を向けつつ、様々な恋を楽しむことができる作品です。
恋は1人でするものではないとはよく言いますが、重い、軽いと話題になるように、2人の恋愛感情が等しいわけではありません。同じくらいの愛情を持っていたら、それは幸せなのか。
『私の…メガネ君』は、愛の重さが等しい2人の恋物語。しかし、その愛の形は、その関係性が当人たちにしか理解できないほど歪んでしまっています。傷つけあうような恋だからこそ、当人たちの絆はより深いものになるのかもしれません。
- 著者
- すもと 亜夢
- 出版日
下多蝶子は、陸上部所属の高校生。小さなころから隣の家に住んでいる「メガネ君」こと天川太一朗のことが大好きでした。あまりに好きすぎるため、太一朗の悪口を言いふらし、孤立させたことがあるほど。そのことが原因で、2人は一切話すことなく高校生となりました。
陸上部の先輩、明智が家に上がり込んでいる様子を見ていた太一朗が、窓ガラスを壊してにらみつけている姿を見た蝶子。明智は自分と蝶子が付き合っていると嘘を言いました。そのことがきっかけで太一朗が話しかけてきた時、とっさに自分の恋心を打ち明けた蝶子は、逃げることができない恋に一歩足を踏み出してしまったのです。
嫉妬深いが故に歪んだ愛情をぶつけ、太一朗を孤立させてしまった蝶子。一見蝶子だけが歪んでいるように見えますが、太一朗もなかなかのものなのは明智が蝶子の家にいた時に、ガラス窓を割るという行動からも察することができます。
互いに対する愛情が重すぎて、好き嫌いは分かれる作品。しかし、愛という感情の生々しさを、ダイレクトに伝えてくる、数少ない作品でもあります。2人で世界が完結しているからこそ、一種の美しさがある、隔絶された世界の美を見出すことができる作品です。
愛の形は様々ですが、深い愛情を抱き、抱かれる関係というのは、やはり羨ましくなるもの。様々な愛の形、重さを、存分に味わってください。