本当は怖かった、ピーターラビットのお話5選!お父さんがパイに?

更新:2021.12.20

世代を超えて、根強い人気を誇るピーターラビットの絵本。実はちょっと怖いと言われる作品があるのはご存知ですか?

ブックカルテ リンク

ピーターラビットとは?

「ピーターラビット」はイギリスの女性絵本作家ビアトリクス・ポターの絵本です。この絵本は、彼女が家庭教師をしていた頃の教え子(友人の息子:ノエル)に宛てた絵手紙が原点だといわれています。ビアトリクスは絵本化したいと思っていたのですが、その夢はなかなか叶いませんでした。1901年に実費出版でついにその夢が叶い、「ピーターラビット」シリーズは性別や年齢、さらには国境を超えて多くの人から愛される作品になりました。

この絵本にはたびたびビアトリクス本人が登場します。絵本を通して様々な教訓を伝えたビアトリクスは、今もなお、おはなしの中で生きているのです。

パイにされたピーターのお父さん

ピーターラビットの絵本は、全8集のうちに24話が収録されていて、第1集の1話が『ピーターラビットのおはなし』になっています。

主人公のうさぎの男の子ピーターは大変ないたずらっ子で、2週間のうちに上着を2枚と、靴を2足もなくしてきてしまうのです。そんなピーターは、お母さんや3匹のいい子な妹達と一緒に、大きなもみの木のしたの砂の穴の中に住んでいました。

著者
ビアトリクス・ポター
出版日
2002-10-01

ある朝、ピーターのお母さんはパン屋さんにパンを買いに行くため、小うさぎたちを遊びに行かせます。その時に、お百姓のマグレガーさんの畑には行かないように小うさぎたちに言い聞かせました。なぜならそれにはちゃんとした理由があったからなのです。

「おまえたちのおとうさんは、あそこで じこにあって、マグレガーさんのおくさんに にくのパイにされてしまったんです。」
(『ピーターラビットのおはなし』より引用)

3匹のいい子な妹たちは、いいつけを守って森で遊びましたが……いたずらっ子なピーターは一目散にマグレガーさんの畑にむかいます。そこでピーターはマグレガーさんの野菜を食べに食べ、しまいにはマグレガーさんに見つかって追いかけまわされてしまうのでした。

逃げても逃げても野菜泥棒をしたピーターを追いかけてくるマグレガーさん。ピーターは、網にひっかかったり、ふみつけられそうになったりしながらも、なんとか自力で逃げ出すことができました。

へとへとになって家に戻ったピーターは、どさりと横になり目をつぶりました。

「きのどくに、ピーターはそのばん、おなかのぐあいが よくありませんでした。」
(『ピーターラビットのおはなし』より引用)

撃たれたうさぎ

第2集の第6話は、「わるいうさぎ」と「いいうさぎ」のおはなしです。

いいうさぎが食べていたニンジンを横取りしたわるいうさぎは、「てっぽうをもったおとこのひと」に鳥と間違われて撃たれてしまいます。
 

著者
ビアトリクス・ポター
出版日
2002-10-01

てっぽうをもったおとこのひとが駆けつけると、そこにはニンジンと尻尾と髭しかなく、ウサギの姿はありませんでした。けれども、ニンジンを横取りされて穴の中に隠れていたいいうさぎは、髭も尻尾もなくしてつるんとなったわるいうさぎが走りすぎていくのを見ました。

悪いことをした人間が頭を丸めるように、つるんとなったわるいうさぎがこの後改心したのかは疑問です。

大人が読めば、自然界の掟を改めて実感できます。子どもに読み聞かせて、誰かの物を横取りすることはいけないことだと伝えることもできるでしょう。

子猫のトムがネコ団子に⁉

第5集の14話は、あるネコの家族とネズミの夫婦のおはなしです。

ネコのタビタおくさんには3匹の子猫がいるのですが、やはり大変ないたずらっ子なのです。少し目を離すと必ずいたずらをはじめるので、パンを焼く間、子猫たちをおしいれに入れておくことにしました。モペットとミトンはすぐに見つり、おしいれに入れられましたが、トムはどこを探してもみつかりませんでした。

著者
ビアトリクス・ポター
出版日
2002-10-01

タビタおくさんは家に住み着いているネズミたち襲われたのだと思い涙を流します。なぜならタビタおくさんは7匹もの小ネズミを捕まえたことがあったので、もっとたくさん住み着いていると考えたのかもしれません。

「このまえの土よう日の ばんごはんにしましたけど。」
(『ひげのサムエルのおはなし』より引用)

その7匹の命は無駄にはなりませんでした。

トムはというと、煙突を上って、てっぺんですずめを捕まえようと上り始めていました。下のほうからはパチパチと薪が燃え始めている音がしたので後戻りはできません。ところがトムは道に迷ってしまい、いつまでたってもてっぺんに行き着くことができませんでした。代わりに行き着いたところはひげのサムエル夫妻の家で、とても狭くかび臭いところだったそうです。

「えんとつがつまってて、そうじしなくちゃ いけなかったんです」
(『ひげのサムエルのおはなし』より引用)

トムは一生懸命言い訳するのですが、それも空しく……なにがなんだかわからないうちに上着はぬがされ、くるくるまきに紐でしっかり縛られてしまいました。ネコ団子を作るのに必要な材料やら道具やらを揃えるために髭のサムエル夫妻は出かけていきました。

ひとり残されたトムは助けを呼ぼうとなきましたが、とてもきつく縛られていたため他の人に聞こえるほどの声は出せません。もがいてクタクタになったトムのもとに髭のサムエル夫妻が戻ってきました。それから、バターを塗って、ねり粉で巻いて、麵棒でペタペタ伸ばし固めました。その間もトムはくいつこうとしたり、ないたりしましたが身動きの取れなくなったこの頃になってはどうすることもできません。

幸運なことに、トムを探し続けていたタビタおくさんたちに、間一髪で助け出されるのですが……サムエルご夫妻は見つかる前に急いで引っ越しをしなくてはならなくなりました。おかげでタビタおくさんの家にはネズミが出ることはなくなったようです。

大きくなったモペットとミトンは大変上手なネズミ捕りになり、村中から仕事をうけ安楽に暮らすことができましたが……サムエルご夫妻も負けてはいませんでした。お百姓のバレイショさんのなやに引っ越しをした2匹は、ありとあらゆる食べ物を食べつくしバレイショさんをひどく困らせました。

「そのネズミたちは、みんな、ひげのサムエルのご夫妻のしそんー子どもや まごや ひいまごや ひいひいまごたちでした。いつまでいっても、きりが ありませんでした。」
(『ひげのサムエルのおはなし』より引用)

なかなかシュールな絵が多いですが、「生きる」ことについて考えさせられるおはなしです。

尻尾を食いちぎられた子リス「ナトキン」

第4集の10話は、おてんばな男の子のリス「ナトキン」のおはなしです。

ナトキンは兄さんや、大勢のいとこと一緒に湖のそばの森に住んでいました。リスたちは、秋になるとブラウンじいさまというふくろうの住みかである「ふくろうじま」まで食料を採りに出かけます。

著者
ビアトリクス・ポター
出版日
2002-10-01

私たちが誰かの家にお邪魔するとき、手土産を持っていくのと同じように、リスたちは木の実を採らせてもらうかわりにブラウンじいさまの好物を持っていくのでした。

リスたちが手土産を集めているときも、ブラウンじいさまに挨拶をしているときも、木の実を集めているときも……ナトキンはいつも悪ふざけをしたり、遊んだりしていました。中でもブラウンじいさまに対する悪ふざけは目に余ります。他のリスたちが低姿勢で挨拶をしている中、ナトキンときたらブラウンじいさまの周りをぴょんぴょん飛び跳ねてなぞかけ歌を歌うのです。

ある日、ブラウンじいさまの頭にナトキンがとびかかろうとしたとき、さすがのブラウンじいさまも頭にきたのか……ナトキンをぶら下げて革をはごうとしました。ナトキンは大暴れをして逃げることができましたが、しっぽはぷっつり切れてしまったのです。

おはなしはここで終わっていますが、実は続きがあるようです。ナトキンは尻尾を返してくれとブラウンじいさまに手紙を送り続けるようなのですが、食べられてしまったものが返ってくるはずもなく、ナトキンは尻尾が短いまま生きていくことになるようです。

他のリスたちと一緒に丁寧に挨拶をして、食料を集めていればこんなことにはならなかったのかもしれません。かわいそうなナトキンですが自業自得なのでしょう。

今でもナトキンは他のリスたちになぞかけをされると棒をぶつけたり、悪口を浴びせられたりしているようです。

間一髪助け出された子うさぎたち

第1集の第2話は、ピーターといとこのベンジャミンバニーが、1話のときにピーターがマグレガーさんの畑に落としてきた上着と靴を取り戻しに行くおはなしです。

1話で大変な思いをしたピーターは終始ビクビクしていましたが、ベンジャミンバニーはゆうゆうとしたものでした。

マグレガーさんとマグレガーさんのおくさんは遠くに出かけていたため見つかって追いかけまわされることはなく、かかしの服にされていたピーターの服を取り戻すことができました。

著者
ビアトリクス・ポター
出版日
2002-10-01

そのまま真っすぐ帰ればよかったのですが、ついでに野菜を盗んで帰ろうとしたので、運悪くネコとでくわしてしまいました。大きなかごをすっぽりかぶって通りぬけようと試みるのですが、かごの上で寝られてしまい、そこから5時間も動くことができない破目に……盗んできた野菜というのは、玉ねぎだったため、かごの中はそれはもうひどい臭いだったようです。

息子を探しに来たベンジャミンバニー氏(ベンジャミンバニーのお父さん)はネコなんてちっとも怖くなかったため、2匹を助け出し、近くの温室にネコを閉じ込めました。ベンジャミンバニー氏は2匹の小ウサギを持っていたムチでぶち、森へと引き上げるのでした。

ベンジャミンバニー氏がこなかったら、この30分後に帰宅したマグレガーさんにまた追いかけまわされていたかもしれません。行先を伝えず、子どもたちだけで遊びに行くのは、ウサギの世界でも私たちの世界でも変わらず危険なことなのでしょう。

うわぎと靴をもって帰宅したピーターはピーターのお母さんに怒られることはありませんでした。罰は一度受け、反省をしたら二度はいらないものです。

ピーターのお父さんがマグレガーさんのおくさんにパイにされてしまってから、ピーターのお母さんはうさぎの毛の手袋やそで口かざりを編んだり、せんじ薬やうさぎタバコを売って暮らしていたそうです。

優しくも強いピーターのお母さんと、頼りになるベンジャミンバニー氏がかっこよく思える作品です。

いかがでしたか?子どもに伝えたいことと、大人が思い出さなければいけないことの両方が書かれている素晴らしいこの絵本を、あなたもぜひ1度読んでみてください。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る