文芸

モーリス・ルブランのおすすめ小説5選!怪盗ルパンシリーズだけじゃない!

更新:2017.5.8 作成:2017.5.8

「怪盗紳士ルパン」シリーズの生みの親として名高いモーリス・ルブラン。しかし、ルパンの成功ゆえに苦悩した作家でもありました。今回は、ルブランのおすすめ作品を5作ご紹介いたします。

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ルパンの存在ゆえに葛藤したものの、最後まで共に生きたモーリス・ルブラン

1864年にフランスのルーアンで生まれたモーリス・ルブラン。フローベールなど、偉大なフランス文学の作家たちに影響を受け、小説家を志し、パリで作品を書いていきました。

しかし、ルブランの純文学作品が注目を集めることはありませんでした。貧しい生活の中で、ある日大衆小説の執筆を依頼されます。気がすすまないものの、当時大流行していた「シャーロック・ホームズ」シリーズをヒントにして、1905年に「アルセーヌ・ルパンの逮捕」を書き上げました。この作品は人気を得て、ルブランは収入を得ることに成功したのです。

ルパンのおかげで暮らしは楽になり、ルブランの名前も知られていったものの、それゆえにルブランは悩むことになります。ルブランはもともと、純文学で成功したいと願っていたため、大衆文学で成功したことにジレンマを感じたようです。奇遇にも、「シャーロック・ホームズ」の著者、コナン・ドイルも純文学で成功したいという思いが強かったため、ホームズでの成功に葛藤を抱いていました。

1930年代には、純文学作家としても評価されていくようになります。そうした中で、少しずつルパンのことも受け入れていったのです。結局は亡くなる2年前の1939年まで、「怪盗紳士ルパン」シリーズを書き続けました。

1941年にルブランは亡くなり、パリのモンパルナス墓地に埋葬されますが、亡くなる数週前に彼は「ルパンが私の周りに出没して何かと邪魔をする」という内容を警察に訴え、亡くなるまで警察が24時間警備していました。

ルパンゆえに大いに葛藤したものの、結局は最期のときまでルパンと共に居続けたルブラン。そんな彼のおすすめ作品を5作紹介します!

ルパンのエッセンスが詰まった、モーリス・ルブランの代表作

1907年に出版された、「怪盗紳士ルパン」シリーズの最初の短編集です。シリーズ処女作「アルセーヌ・ルパンの逮捕」や、最大のライバルである名探偵シャーロック・ホームズと出会う「遅かりしシャーロック・ホームズ」など、シリーズの世界を知れる短編が9作が収められています。
著者
モーリス・ルブラン
出版日
2005-09-09
本書に収められている「アルセーヌ・ルパンの逮捕」で世間に姿を現したルパンは、たちまち人々を魅了します。ルパンは軽妙で大胆不敵な怪盗で、独自の美学を貫いており、義賊のような面もあり恋も嗜む、当時流行っていたシャーロック・ホームズとは対照的な魅力を持つ人物として人気を博しました。

魅力的な怪盗あり、ライバルあり、謎解きあり。はたまた駆け引きや恋愛、壮大な冒険まで……。ロマンにあふれたルパンの世界を知るための、必読の一冊です。気が付いたら、あなたもルパンに心を盗まれていることでしょう。

次々と謎が謎を広げていく物語

1909年に発表された「怪盗紳士ルパン」シリーズ初の長編です。

ノルマンディーのジェーブル伯爵邸で、盗難事件が起こりました。盗人は撃たれたはずなのですが、現場に姿がないのです。この事件には、怪盗としてよく知られているアルセーヌ・ルパンの影がありました。

高校生探偵イジドール・ボートルレをはじめ、警察やシャーロック・ホームズ、マスコミも登場し、事件は次第に壮大な冒険になっていき……。
著者
モーリス ルブラン 南 洋一郎
出版日
「撃たれたのに現場から姿を消した怪盗」という、小粒ながら魅力的な謎から、暗号など様々な仕掛けがあり、どんどんと壮大な物語へとなっていきます。新たな謎が現れるたびに、物語のスケールが広がっていくようになっており、終始わくわくしながら読める作品です。

ルパン、ボートルレの関係にもぜひ注目してみてください。怪盗と探偵という、もともとは対立し合う関係性ですが、競争の中で互いに敬意をもっているように感じられる描写があります。登場人物たちの人間臭さを感じられるのも、この作品の魅力です。

様々な謎に手を取られるように引っ張られて、行きついた先にはいったい何が待っているでしょうか?ぜひその目で確かめてみてください。

続きが気になる本作、ぜひ『続813』も手元に用意を!

ルパンはある男から、ドイツの重大な秘密文書の隠し場所の暗号のカギを入手します。しかし、その男は殺されて死体となって発見されました。ルパンは殺人をしないことで知られていたため、このことは世間に衝撃を与えます。

警部ルノルマンはルパンではないと信じ、捜査を始めますが……。本作はルパン、警察、殺人犯が入り乱れる冒険活劇です。
著者
モーリス・ルブラン
出版日
1959-05-27
ルパンファンの間で高く評価されている傑作です。次から次へと事件が起こり、謎が提示され、圧倒的なスピードで展開されていく物語に、ページをめくる手が止まりません。ルパンの誇り高い情熱もまた、物語に大きな華を添えています。

物語には普通、クライマックスがありますが、この作品については、どこがクライマックスなのかわからないほど、多くの山場があります。本書を読んだ人にクライマックスがどこかを聞いてみると、おそらく人によって違った回答が返ってくるのではないでしょうか。最初から最後まで、まるでジェットコースターのような勢いを保っている作品です。

本作には続編『続813』があります。あっという間に読めてしまって、先が気になって仕方がなくなること請け負いですので、『813』を読み始める前に、手元に『続813』を用意するのがおすすめですよ!

モーリス・ルブランはルパンだけじゃない!夢中になれる極上のSF冒険小説

1920年に雑誌で発表された、ルパンシリーズではないSF冒険小説です。

英仏海峡で次々と船の遭難が起こっていました。これは大きな地殻変動の前触れといわれ、実際、とんでもないスケールの地殻変動が起き、大陸とグレートブリテン島は陸続きになってしまうのです。この前人未到の地「無人の土地(ノー・マンズ・ランド)」での大冒険が始まります。
著者
モーリス・ルブラン
出版日
大きな地殻変動でヨーロッパ大陸とイギリスが地続きになってしまう、というスケールの大きな出来事から始まる魅力的な大冒険が描かれています。「怪盗紳士ルパン」シリーズでもみられるようなスケールの壮大さと、胸が躍るような冒険は、この作品でも健在です。

主人公であるシモンは、健康で勇気に満ちた魅力的な青年で、離れ離れになった恋人を探すために、突然現れた新世界を旅していきます。読んでいくうちに、突然現れた誰の所有でもない土地を自分自身が冒険しているかのように感じることでしょう。一見突拍子もない設定ながら、その世界に読者を没頭させるルブランの語りの巧みさに驚かされます。

ルブランというとどうしても「怪盗紳士ルパン」シリーズが有名ですが、それ以外にも思わず夢中になってしまうような極上のエンターテイメント作品を多く執筆しています。本書も極上のSF冒険小説です!

最高にオシャレな締めに込められた切実な思い

1919年に雑誌で連載された、こちらもルパンものではない作品で、モーリス・ルブラン初のSF小説です。

ビクトリアンは、発明家であるおじに不思議な現象を見せてもらいます。スクリーンが「B光線」という謎の光線を受け止めると、そこに3つの眼が現れ、歴史上の出来事の映像が映し出されました。

おじはこの映像を上映して、研究費を稼ごうとしますが、そんな矢先に「B光線…ベルジ…」という不可解なダイイングメッセージを残して殺されてしまいます。さらに映像を上映するための仕組みも奪われ、ビクトリアンが愛している娘のベランジェールも誘拐され……。
著者
モーリス・ルブラン
出版日
上に書かせていただいたあらすじを読んだだけでも、様々な謎が浮かんでくると思います。3つの眼とはいったい何なのか?犯人は誰なのか?ダイイングメッセージの「ベルジ」はやはり愛称がベルジュロネットのベランジェールなのか?

こういった謎に苦悩するビクトリアンに、読者は感情移入できるでしょう。魅力的な謎の畳みかけを巧みに使って読者を物語世界に引き込むのみならず、ビクトリアンの恋であったり、ミステリアスなヒロインのベランジェールであったり、緊迫感のある駆け引きだったり、とにかく読者を惹きつけてくるロマンにあふれた作品です。

ラストには、ロマンにあふれた作品にふさわしい、とても美しく粋な文章が書かれています。一方で、そこにはルブランの切実なメッセージが込められているのです。ぜひこの作品が1919年という、第一次世界大戦終結の1年後に書かれたものである、ということを思い起こしながら、最後の文章を読んでみてください。

とにかく冒険したい、わくわくしたいという方におすすめなのが、モーリス・ルブランの作品です。一瞬でロマンに満ちた作品世界に連れて行ってくれますよ!