まど・みちおのおすすめ作品5選!「ぞうさん」など多くの童謡を手掛けた作家

更新:2017.5.9

「やぎさんゆうびん」「ぞうさん」などの童謡で知られるまど・みちお。彼は104年の生涯をかけて真摯に創作活動に取り組んだ、大変偉大な作家でした。詩を通して世界と向き合い続けた彼の大きな優しさに触れられる、おすすめ5作品をご紹介します。

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生涯をかけて創作活動に取り組んだ作家、まど・みちお

1909年に山口県で生まれ、2014年に104歳でその生涯に幕を下ろした詩人で作家のまど・みちお。「やぎさんゆうびん」「ぞうさん」「ふしぎなポケット」「おにぎりころりん」「一年生になったら」など、現代でも多くの子ども達に親しまれている童謡の作詞を手掛けたことで知られています。

彼は童謡のほかにも多数の詩、絵画、エッセイ等の作品を残し、合唱曲や校歌の作詞なども手掛けるなど、生涯をかけて創作活動に打ち込みました。

また彼は太平洋戦争で帝国陸軍に入隊した経験があり、戦時中に2編の戦争協力詩を書いています。それは当時の文化人として、半ば強要されてのことではありましたが、彼は後年、平和を願う詩人として、あってはならなかったことだとしてそれを悔やんでいることを明らかにし、その2編の詩を全集に収録するとともに謝罪の意を示しました。その真摯な姿勢には、感銘を受けた方も多いのではないでしょうか。

生涯をかけて世界と、読者とに誠実に向き合い続けてくれた偉大な詩人、まど・みちお。彼の遺したたくさんの作品は未来を生きてゆく私たちに優しく語りかけてくれているようです。今回は彼の大きな優しさにふれられる著作を5作品、ご紹介します。

詩人のあたたかい言葉が溢れる『まど・みちお詩集』

本書には日本人ならだれもが知っている童謡「やぎさんゆうびん」「ぞうさん」をはじめとした、馴染みのある詩が多数収録されているため、読めばたちまち懐かしい気持ちにさせられること間違いなしの1冊でしょう。

たくさんの詩を味わうように読んでいくうちに、まど・みちおの詩における視点が実に様々であることに気が付きます。大人になったり子供になったり、動物になったり植物になったりほんの小さな虫になったり、生きてはいない「もの」になったり……。宇宙に存在するものすべてに命を吹き込んで丁寧に書き表された彼の詩は、読者に命あることの不思議さ、尊さについて考えさせてくれます。

著者
まど みちお
出版日

「ぞうさん ぞうさん おはなが ながいのね そうよ かあさんも ながいのよ ぞうさん ぞうさん だれが すきなの あのね かあさんが すきなのよ」(『まど・みちお詩集 ぞうさん』より引用)

上記引用は今日も多くの子ども達に歌われている童謡「ぞうさん」ですが、大人になった今あらためて読むべき素晴らしい1編だといえます。なんてあたたかい言葉が優しく連ねられているのでしょうか。だれかに「お鼻が長いのね」と言われたぞうさんが大好きなお母さんを思い浮かべ、「かあさんも長いのよ」と誇らしげに答える様子が目に浮かぶようです。

あるがまま自然体でいること。自分に自信を持つこと。違っていることを当たり前として、相手をそのままで受け入れること。また、自分をそのまま受け入れてもらうこと。まど・みちおはシンプルで優しい言葉を使って、この世界で生きていく上で大切なことを私たちに諭そうとしてくれているようです。

ひらがなのリズムが優しく楽しい、声に出して読んでみたくなる可愛らしい詩の数々。子どもから大人まで世代を超えて一緒に親しむことができる、素晴らしい1冊です。

まど・みちおの心に触れられる1冊『いわずにおれない』

「まどさん」の愛称で親しまれ、2014年に104歳で逝去したまど・みちお。本書は彼が生前に受けた取材をもとにインタビュアーの細貝さやかが文を書き、1冊にまとめて刊行した、詩人まど・みちおを知るには最適な内容となっています。

「ぞうさん」をはじめ子ども向けの童謡を多数発表した彼は1994年に国際アンデルセン賞を受賞しています。児童文学のノーベル賞と言われるこの賞を日本人が受賞するのは、史上初めてのことでした。そんな快挙を達成した彼ですが、本書を読む限り、親しみをこめて「まどさん」と呼ばれることがとてもよく似合う、温厚なみんなのおじいちゃん、という雰囲気のお人柄。本書にはそんな「まどさん」が生前遺した詩や絵、インタビューで語ったあたたかい言葉が多数収録されています。

著者
まど みちお
出版日

「自分が自分であること、自分として生かされていることを、もっともっと喜んでほしい」(『いわずにおれない』より引用)

本書の序盤、まど・みちおは読者にこう語りかけます。その言葉には長い年月をかけて世界を見つめたしずかな目と、宇宙に存在するものすべてに命を宿らせ、その尊さを詩にして発表し続けた彼の心が息づいているように感じられることでしょう。

偉大な詩人まど・みちおは、その生涯をかけて、どんなふうに世界を見てきたのか。なにを伝えたくて、数々の詩を書き続けたのか。読者に「まどさん」の愛称で親しまれた彼の心に触れられる本書は、なにかにつまずいた時、悩みを抱えた時に繰り返し読み返したくなるような、特別な本になるかもしれません。たくさんの人に読んで頂きたい1冊です。

まど・みちおが日々思うこと『百歳日記』

本書は2009年に2回にわたってNHKで放送されたドキュメンタリー番組「ふしぎがり〜まど・みちお百歳の詩」の取材記録をもとにして構成された1冊です。同年に100歳を迎えたまど・みちおが語った宝物のような言葉を中心に、直筆の絵や写真、そしてたくさんの優しい詩をまじえて1冊にまとめられているため、非常に読みやすい作品といえるでしょう。

真摯な目線で世界を見つめ続けたまど・みちおの100年。彼が日々の中で思ったこと、考えたこと。それらが素直に、優しい言葉で綴られています。読む人の心を包み込む、素敵な1冊です。

著者
まど・みちお
出版日
2010-11-06

「私は、小さいノートを日記帳にして、そこに書き込んでいます。新しいノートを初めて使うときには、必ず「よろしくお願いします」とノートにもあいさつをします。もともとは立派な木か何かだったのに、こんな紙にされちゃってね、ノートも犠牲者なんですから。『私も粗忽者だからめちゃくちゃなことを書きますよ。覚悟しておいてください』と伝えておきます。」(『百歳日記』より引用)

100歳を迎えたまど・みちおによって丁寧な口調で語られる、謙虚でチャーミングなエピソード。彼の語り口は読者をおだやかな気持ちにさせ、笑みを溢させることでしょう。

彼は著作の中で、難しいことや説教くさいことを、何ひとつ言いません。優しい言葉で読者に語りかけるようにして、自分が100年の人生経験で本当に学んだこと、思ったこと、考えたことを伝えてくれます。私たちはそんなまど・みちおの心からのメッセージを、素直に受け取ることができるはずです。ぜひ読んでみてください。

優しい言葉がならぶ『どんな小さなものでも、みつめていると宇宙につながっている』

2009年に100歳を迎えたまど・みちお。彼が雑誌などのインタビューで語った言葉の中から多くの人に伝えたい言葉を選び抜いて掲載した本書は、言わば詩人まど・みちおの名言集のような1冊となっています。

作中で彼は子どもにも分かるような優しい言葉を用い、目の前にいる読者に向かって語りかけるかのように言葉を紡いでいます。そのおだやかな語り口からは、彼のまとう空気までもがありありと伝わってくるようです。タイトルとなっている「どんな小さなものでも、みつめていると宇宙につながっている」とは、なんて彼らしい、美しい言葉なのでしょうか。

著者
まど みちお
出版日

冒頭、著者は本書のタイトルについてこのように述べています。

「引っ込み思案な子どもでした。アリや花のおしべなどの小さいものをじっとみつめることが好きでした。小さいと、ひと目で全体が見えるから、そこに宇宙を感じていたのです」(『どんな小さなものでも、みつめていると宇宙につながっている』より引用)

彼はこれこそが、ありとあらゆるものに命を見出し、詩作する彼自身の感性の「みなもと」であると考えてました。読者は、偉大な詩人のルーツが素朴なものであったことを知ると同時に、生きとし生けるものすべてに向けられた彼の優しさに包まれることとなるでしょう。

また本書には2009年に100歳を迎えたまど・みちおの写真や直筆原稿が多数掲載されています。彼は2014年、104歳でこの世を去りましたが、本書では「まどさん」の愛称で親しまれた生前の彼の面影に触れ、その姿に生きる勇気をもらうことができます。多くの人に読んで頂きたい1冊です。

こどもたちに希望を託す『まどさんからの手紙 こどもたちへ』

最後にご紹介する本作『まどさんからの手紙 こどもたちへ』は上に挙げた4作とは少し異なる作品です。

この本は1994年にまど・みちおが日本人としてはじめて国際アンデルセン賞を受賞した際、彼の母校である山口県徳山小学校の在校生から届いたお祝いの手紙への返事として書かれた手紙をもとにしています。まど・みちおが「徳山小学校のみなさんへ」と宛名を書いた実際の手紙にささめや ゆきが可愛らしい絵を付けて、2014年にすべてのこどもたちに向けた絵本として刊行されました。まど・みちおの願いが子どもにも分かる言葉で、素直に綴られた内容となっています。

著者
["まど・みちお", "ささめや ゆき"]
出版日
2014-03-21

「……わたしも ちからいっぱい がんばるつもりですが わたしは もう 八十四さいの としよりです。どんなに がんばっても たいしたことは できません。でも みなさんは ちがいます。みなさんが いま ぜんりょくを あげれば それは もう できないことは ありません。どうか みなさん、まいにち まいにちを むだに しないで げんきいっぱいに やってください。」(『まどさんからの手紙 こどもたちへ』より引用)

まど・みちおは自身の詩作と同様、伝えたいことをこどもにもわかる優しい言葉で、飾らず、まじめに書きました。この手紙を書くことで、彼はこどもたちに希望を持たせ、未来を託そうとしているように見えます。

104年の生涯を一生懸命に生きた詩人、まど・みちお。現世に生きる私たち大人も、彼にとっては子どもみたいなものなのではないでしょうか。私たちも彼からのこの手紙を受け取り、「げんきいっぱいに」今を生きることを頑張ってみたいものですね。あなたもぜひ、まど・みちおのエールを、受け取ってみてください。

いかがでしたでしょうか。生涯をかけて創作活動に取り組み、素晴らしい作品を数多く遺した偉大な詩人、まど・みちお。彼の紡いだ優しい言葉の数々は読者の心に素直に染み込み、明日を生きる活力となるでしょう。ぜひ、手にとってみてくださいね。