ドキドキしたりワクワクしたり、ハラハラしたり時に胸が熱くなったり。絵本が与えてくれる豊かな世界は子供だけでなく大人をも魅了して止みません。そんな絵本を自分で作れるとしたら?今回は絵本の作り方が分かる5冊の本を用意しました。
絵本作家であり日本児童出版美術家連盟会員である、つるみゆきによる一冊です。フルカラーでプロの絵本作家が絵本を仕上げていく様子を丁寧に解説。プロだからこそ知り得る「絵本作りのルール」がぎっしり詰まっています。
- 著者
- つるみ ゆき
- 出版日
- 2013-01-09
ストーリー作りのヒントやアイデアの出し方から、絵本作家が使う画材や画材が表現出来る風合いまで絵本作りのイロハを徹底的に公開。絵本を作りたい人に大いに参考になるだけでなく、絵本作家の仕事現場を覗いてみたいという好奇心のある人も楽しめます。大人が描く子供目線の作品が出来上がるまでの行程は子供も大人も一緒に楽しむことが出来るでしょう。
電子書籍の絵本の作成について触れられているのも本書の大きな魅力です。パソコンで絵本を作成してウェブ上で公開すれば、プロの絵本作家でなくても誰でも自作の絵本を発表することが出来ます。絵を描くのが好きな人や、子供と絵本を作って楽しみたい親御さんなど、様々な人の絵本作りの可能性を広げてくれる内容です。
カラーも多く見やすいレイアウトになっています。初めて絵本作りに挑戦する人の目線に立って作られているので、初心者の人でも安心です。絵本を読む楽しさだけでなく、作る楽しさを教えてくれる新しい本。初めての絵本作りがよりスムーズに、より楽しくなる一冊だと思います。
『絵本をつくりたい人へ』は土井章史による絵本づくりに関するハウツー本です。土井章史は25年以上かけて300冊以上の絵本の企画に携わってきた絵本のスペシャリスト。そんな彼が絵本をつくる側の楽しさを味わえるのがこの本なのです。
- 著者
- 土井章史
- 出版日
- 2014-03-28
土井章史は絵本をつくる上で大切なことは子どもの気分を共有することだとして「子ども」をこんな風に説明しています。
「子どもは誰に教わらなくても楽しいときは笑うし、悲しいときには泣く。心で思ったことがすぐに体に出てしまう、体と心がくっついた状態なのだと思います。(中略)それと同時に、まだ小さい弱い人たちだけれど、一方では常識を知らないのでアナーキーで残酷な部分も持ち合わせています。保護する対象であると同時に、強靭な精神を持った魅力的な生き物です。」(『絵本をつくりたい人へ』より引用)
子どもと接する機会の少ない大人は子どもという存在を再認識させられるこの記述にドキッとさせられるのでないでしょうか。絵本づくりの基礎が学べるだけでなく、子ども独特の世界を感じることが出来るのも本書の面白さだと思います。5名の絵本作家に行なっているインタビューも読者には嬉しい特典です。「絵本」と一口に言っても様々なテイストのイラストがあり、作家が表現したい子どもの世界もそれぞれ異なります。作家一人ひとりの捉える子どもの姿の違いを比較してみるのも面白いでしょう。
実用的でさらに絵本の世界を魅力的に伝えてくれるハウツー本。絵本を書きたい人にも絵本を読みたい人にもおすすめしたい一冊です。
『絵本づくりトレーニング』は絵本作家でありミュージシャンである長谷川集平が送る絵本づくりのトレーニング本です。登場人物は4人。2人の講師と浪人生の男子と大学生の女子の4人です。この4人が絵本について語る形式でトレーニングが出来るようになっており、読者もやりとりの一員として参加しているかのような臨場感を味わうことが出来ます。
- 著者
- 長谷川 集平
- 出版日
「絵本とは君自身であり、君の思想であり、君の知恵なんだ。もし君が真の生活を送らなければ、君の絵本は真実を語れないだろう。」(『絵本づくりトレーニング』より引用)
本書では絵本づくりに必要なテクニックだけでなく、絵本をつくるのに重要な思想や視点を学ぶことが出来ます。さらにその絵本づくりの心構えを日常生活に活かして、明るい生活を送る方法まで導いてくれるのです。「絵本的発想」という新しい価値観を与えてくれる一冊だと言えるでしょう。登場人物たちのやりとりも魅力的です。生徒たちが読者の疑問などを代弁してくれるので、知りたいことが瞬時に分かり納得できる内容になっています。
長谷川集平が長年の経験によって培ってきたノウハウや絵本的思想を惜しげもなく披露してくれる、読者にはありがたいトレーニング本です。彼がそのテクニックを身につけるのにどれだけ長い時間かけて失敗を繰り返したのかを考えたら、一冊でそれを学べる本書は一読の価値があると思います。ぜひあなたも絵本的思想という新しい世界を覗いてみてはいかがでしょうか。
本書はベテラン編集者であるエレン・E・M・ロバーツによる絵本の書き方のガイド本です。絵本とは何かというところから始まり、絵の工夫について、物語の構成のコツ、執筆プランまで、ありとあらゆる絵本の書き方のノウハウが盛りだくさんになっています。
- 著者
- エレン・E.M. ロバーツ
- 出版日
主に文章から成り立つ本と、絵が大部分を占める絵本の違いを作者はこんな風に記しています。
「子供が絵本を読みはじめるのは、そこに絵があるからである。絵を見れば、込み入った状況がひと目でのみこめる。絵はつぎに来る場面をチラリとのぞかせる窓であり、誘い水である。絵本の絵は、子どもを文字の世界に引き入れる役を果す。読むことにまだ慣れていない子どもにとって、絵は未知の世界の地図となり、道案内になるのである。」(『絵本の書き方——おはなしづくりのAからZ教えます』より引用)
編集という仕事に長く関わって来た作者がこんな風に絵本の真髄となる考え方をしっかり記してくれるので、技術的な面だけでなく心構えの部分でも多くを学ぶことが出来るのです。
また、紹介されている絵本もほとんど外国のものなので「外国の絵本」という新しい世界を知ることも出来ます。絵もそれぞれ個性があり、眺めているだけで国境や時空を超えた絵本の世界を味わうことが出来るのもこの本のおすすめポイントです。
編集者が作家に送るような実用的なアドバイスが多く記されています。正に絵本の書き方のハウツー本永久保存版と言っても良いでしょう。一冊手元にあれば実に頼もしい、そんな一冊だと思います。
『きむら式 童話のつくり方』の作者は木村裕一です。彼は300冊以上の作品を執筆し、多くの作品でミリオンセラーを達成した経験を持つ絵本・童話作家。本書はそんな木村裕一が持つ童話のつくり方のテクニックがぎっしり詰まった一冊です。
- 著者
- 木村 裕一
- 出版日
- 2004-03-21
本書では木村裕一が自身の作品を例に挙げて、実際の執筆過程を元に童話づくりのポイントを紹介しています。自分自身が創り上げた作品で、自分自身の経験を元にアドバイスを記しているので、内容が非常に具体的です。本書を読めば綺麗事だけではないありのままの執筆風景を知ることができるでしょう。
作者は絵本作家について
「犠牲にするものがなくて、無理せず続けられて、当たればでかくて、長く続く。こんなにいい職業はない。」(『きむら式 童話のつくり方』より引用)
と多少世俗的に評しながらも、本物の童話について
「お子様ランチではなく、本物のステーキの味をちゃんと子供に与えるのが本来の童話」(『きむら式 童話のつくり方』より引用)
と絵本作家としての強いこだわりもしっかり記しています。
物語の発想をするテクニック、絵本の構成について、仕事を取るまでの手順、文章テクニックなど役に立つアドバイスがぎっしり詰まった一冊です。数々のミリオンセラーの作品を作ってきた作者だからこその技術やコツなどが知れるので、読後は絵本を書いてみたくなること間違いなしでしょう。物語を作るといういわば一人で行われる孤独な作業の強い味方となる本だと思います。
今回は絵本をつくる楽しさが味わえる5冊の本をご紹介しました。最後までお読みいただきありがとうございます。