高学年になった時点で、あまり読書が好きになれなかった場合、難しそうな本を買い与えたところで、きっと更に読書嫌いが進むことでしょう。そこで今回は、きっと読書が好きになるおすすめの児童書を選びました。ぜひ、参考にしてみてください。
主人公のセオは13歳。両親は二人揃って弁護士で、叔父さんも今は会計士だけれども昔は弁護士をしていました。そんな環境で育ったセオも、将来は「弁護士か検事」を目指しています。
ある日、ゴルフ場のそばで殺人事件が起きました。被告は無罪の判断が有力とされていますが、セオは「あやしい」と感じ、独自の調査をスタートさせていきます。
テーマは法律や法定など、少しとっつきにくい難しいテーマが採用されていますが、物語構成的には非常にシンプルで理解しやすい内容です。
- 著者
- ジョン グリシャム
- 出版日
- 2011-09-16
この作品の魅力は、法廷ミステリーの巨匠として知られるアメリカの小説家ジョン・グリシャムがはじめて手掛けた児童書であるという点です。
つまり、法廷モノについてあまり書いたことのない作家が挑戦的に手掛けたものではないという事実です。子どもたちに、法廷や司法がどういうものなのか、関心を持ってもらえるよう、丁寧に書かれてある点も特徴的だと言えるでしょう。
日本でも導入された裁判員制度と、アメリカの陪審員制度との違いについても、興味を持って見比べてみると、新たな発見があり楽しめるはずです。
開拓時代の北アメリカが舞台。ですので、イナゴの大群、大吹雪、日照りといった、現代では、そこまでの脅威とはなりえない「自然」との戦いが描かれています。
現代では、必要なもののすべては、コンビニとホームセンターでまかなえますが、同書の時代では、生活に必要なもののすべては、自力で形にする必要がありました。
便利さと引き換えに、現代人が何を失ってしまったのか体感することができます。
- 著者
- ローラ・インガルス・ワイルダー
- 出版日
- 1972-07-15
同作は、「インガルス一家の物語」シリーズにおける第一作目であります。同シリーズは、全9作となっており、第二作目は『大草原の小さな家』です。一作目の森から大草原地帯へと移住しているのがわかります。
パンやバターなどの食材づくり、家も自分たちで丸太を組み立てて作っていくから大変です。上でも書いたとおり、今ではすでにそこにある物、専門家が手を貸してくれる物事を、全て家の者で自力でやらなければならない世界が描かれています。
その中で見えてくるのは、家族の温かさや一体感です。父親と母親の素敵さが見事に描かれているので、本作を読むことで、今まで当たり前に感じていた両親の良さを再確認するきっかけになるかもしれません。
時代は三国志。一般的に三国志は難しくて途中で挫折する人が多いと聞きます。その中で本作は、少年少女向けに書かれてあるので、その難しさを分かりやすく、噛み砕いて伝えてくれる点が特徴です。
難しい漢字にはルビがふってありますし、図表やイラストも豊富に使われている点もわかりやすいです。
『三国無双』などのゲームで、すでに名前を聞いたことのある小学生もいるかもしれませんが、もう一歩踏み込んだ理解を得るのに最適な本となっています。
- 著者
- 出版日
この本最大の魅力は、三国志の入門書としても十分という点です。実際、「らくらく読める」とうたっている本を読んで、ちんぷんかんぷんだった人が、この児童書で理解を深め、三国志の世界との付き合いを大きく前進させた例もあります。
また、児童書で入門書的なものだからと言って、侮らないことです。イラストばかりで史実を省略しまくったものとは一線を画しており、戦場での臨場感や、戦術レベルの細かな描写などもしっかり描かれており、満足度は高いです。
本作は、朝日小学生新聞に7月~9月までの3か月間連載後に書籍化されました。朝日学生新聞社児童文学賞受賞作でもあります。
主人公は、小学5年生の詠子。彼女のおばあちゃんは、町で小さな雑貨屋さんを営んでいますが、本業は別にあり、それは「言葉屋」と呼ばれるちょっと不思議な職業でした。おばあちゃんの工房に入門することを決めた詠子は、そこで言葉にまつわる様々なことを学んでいきます。
- 著者
- 久米絵美里
- 出版日
- 2014-11-19
この作品は、タイトルにも示されてある通り「言葉」がテーマ。言葉屋であるおばあちゃんは、「言葉を口にする勇気」と「言葉を口にしない勇気」を提供しています。
おばあちゃんのもと、言葉屋の修行をするようになった詠子が、言葉と人、人と人の関係について、以前よりも深く考え始めます。
そんな詠子の姿を追いかけて読むことで、おばあちゃんの修行を疑似体験できるはずです。その体験によって、詠子同様、何かを得るヒントになれば素敵なことです。
主人公は女の子の詠子ちゃんなので、男の子よりは女の子が読むと共感できる部分が大きいかと思います。
『だれも知らない小さな国』は、「ぼく」が主人公のファンタジー作品です。ぼくが大切にしている秘密の場所、こぼうしさまの話が伝わる小川で、ぼくの小指ほどの大きさしかない「小人たち」と出会うことになります。
コロボックルとは、小人たちの呼び名です。アイヌ民謡に登場する「コロボックル」と、ぼくが出会う小人は「同種族」ではないかと思って、ぼくは、そう呼びます。小人たちも気に入り、コロボックルを自称するように......。
- 著者
- 佐藤 さとる
- 出版日
- 1980-11-10
高学年くらいになってくると、周囲の大人は、大人としての成長を促すため現実的な世界を教育してきます。しかし、大切なことは目に見える現実世界だけではありません。
本作の魅力は、ぼくの成長を通じて、想像の世界は果てしなく自由であること、また、ファンタジー世界の透明感を深く堪能できる話になっています。
子供と大人の境目、多感な少女の一年を描いた作品『十二歳』。無邪気な子供のようには振る舞えず、かといって大人にもなり切れない。難しい年頃の葛藤が優しい世界と共に語られます。
- 著者
- 椰月 美智子
- 出版日
- 2007-12-14
十二歳の少女・鈴木さえ。彼女の子供らしい一面、大人の男性に抱く淡い恋心など、大人になれば忘れてしまうような少女の気持ちが丁寧に描写された本作。何気ない日常の中でいつの間にか変わっていくもの、クラスメイト達の優しさ、時には自分がわからなくなるようなもどかしさ、等身大の十二歳の心には少し切ない気持ちを感じます。
今回は高学年になった子におすすめの児童書をご紹介しました。いずれかがきっかけとなり、読書嫌いから「読書好き」に変化することを期待しています。
とは言え、嫌いな物ごとを好きにまで転換させることは、そう容易いことではありません。ですから、まずは嫌いという拒絶反応を取り払えるように、本を読むことを習慣化して、苦手でも嫌いでもないという地点を目指すと良いと思います。