漫画『ハナムラさんじゅっさい』のリアルさが刺さる【ネタバレ注意】

更新:2021.11.24

作者ハナムラの半自伝的漫画『ハナムラさんじゅっさい』。アラサー男子の悲哀が感じられる設定に引き込まれるおすすめ作品です。今回は本作のリアルなストーリー展開をご紹介!ネタバレを含みますのでご注意ください。

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漫画『ハナムラさんじゅっさい』がしょっぱい……

著者
ハナムラ
出版日
2011-01-11

本作は半自伝的漫画。主人公は新人コンペで「惜しい」と言われ続け、はや29歳の漫画家ハナムラです。とにかく彼の残念な日々に共感、笑える作品となっています。

当初、実家が営む喫茶店を継ぐこともでき、彼女にも養ってもらっておりと、なんだかんだ逃げ道があることで吹っ切れなかった彼。しかし今回もネームがボツだったことを機に仕事も彼女とのこともそろそろちゃんとしようと腹をくくります。

しかしその日に彼女からまさかの他の男との結婚宣言。その後自分より年下の漫画家にも追い越されと散々な状況に陥ります。ハナムラは漫画家としての道をあきらめようかとも考えますが、やはり漫画を描くことが好きだと再確認して夢を追い続けることに。

そう一念発起したものの、仕事がありません。そんな困っていた時に連絡をくれたのは大学時代の友人。彼の大学の後輩が携帯コミックサイトに掲載する作品の漫画家を探しているというのです。それを聞いて即OKするハナムラですが、それはエロ漫画の仕事で……!?

ハナムラのここがしょっぱい!【仕事でどんどん追いてかれる……】

6年前に新人賞に入選し、まだ若かったハナムラはそこで自分は天才なのではないかと調子づきます。しかしその後はなかなか芽が出ません。どんどん同期が連載を始めていくのを眺めながら、自分は何も成果をつかめずにいるのでした。

そしてついに先日、ハナムラの読み切りでアシスタントを勤めていた新人も突然連載が決まり、ハナムラの心はもうボロボロです。

単発で読み切りを雑誌に載せたり、原作付きの企画読み切りを描いたりはするものの、全く連載に縁がないハナムラがいつも言われる言葉は、「惜しい」。全体的にまとまっているのに、具体的に何が悪いのか分からない状態に、本人も周囲もお手上げ状態です。

自分のためにも彼女のためにも「最後の勝負」をすべきだと分かっているのですが、ハナムラはなかなか踏ん切りがつかないままに色々とずるずるきてしまっていたのでした。

著者
ハナムラ
出版日
2011-03-11

ハナムラのここがしょっぱい!【彼女との別れ話がキマらない!】

ハナムラはプライベートでも残念。「帰ったら大事な話があります」というメールを見たハナムラはエロDVDやゲームやフィギュアなどへの散財など、何かまずいことをしたのではないかと自分のこれまでの行いを振り返ります。お母さんと子供のようで、甘えている関係性が伺えます。

しかしふと悪い話とは限らないと気づき、「結婚」について思い至るのです。普段の行いを怒られるのか、それとも結婚の話なのかという考えを行ったり来たりする彼でしたが、なんとその晩彼女は帰って来ず、そのまま朝になってしまいます。事故かと心配するハナムラですが、明け方帰ってきた彼女が言い放った言葉はこうでした。

「私決めた 結婚する(中略)
結婚するのはあなたじゃない
だから…別れてほしいの…!」

衝撃の展開です。

放心状態になりながらそのまま彼女が続ける浮気相手の話に「…へぇ〜〜かっこい〜〜…」「いや〜…謝ることじゃないよ〜〜…」「戦闘力(ねんしゅう)高そうだね…」と相槌を打つハナムラ。

その様子を見た彼女に「何でアンタはいつもいつもヘラヘラして……!!悔しくないの!?何とか言ってみなさいよホラッ!!」と逆ギレされてしまいます。ハナムラが何したって言うんだよ!情けなさすぎます。


しかしさすがにそれにはハナムラも「夕べはどこで何してたんだコノヤローーっ!!!」と怒りをあらわに叫ぶのですが、「聞きたいなら答えてやろうかコノヤローーっ!!!」と返され、何も言えなくなってしまいます。彼女強し。

よくよく聞いていると彼女の言葉の端々には元サヤもありえるのではないかと思われるようなものがあるのですが、うまい切り返しができないハナムラ。そこは漫画のようにはいきません……。

ここからのハナムラがアツい!【まさかの逆転、エロゲ展開!?】

しかしそれではただただ読んでいて辛いもの。ここからが素敵なエロゲ展開なのです。

連載もない、彼女もいなくなってしまったハナムラに飛び込んできたのがウェブ漫画での仕事。散々な状況ではあったものの、夢を諦めないと決心した彼。読んでいて熱くなります。

しかも紹介された仕事の面談にいたのは美人編集者。彼は更にやる気を出し、いざ本題へ。どんな話が飛び出すのかと身構えていると、編集者はこう言うのです。

「ハナムラさんにはエロマンガを描いて欲しいんです………!」

怒涛の勢いで放送禁止用語を連発する彼女。しかも資料として持ってきたエロ漫画やサンプルの原稿などを見るためにわざわざ隣に座ってくるのです。最高、あるいは逆に新手の拷問か何かでしょうか。

ハナムラは彼女の勢いに押されつつも返事を保留にしてもらいます。そして悩みまくった結果、周囲に答えを委ねることに。すぐに展開しないこの気弱さがリアルです。

概ね肯定的な意見を聞いた後に彼は編集者の彼女にイエスの返事を電話します。すると彼女はこう言ってくるのです。

「じゃあ明日18pネーム持ってきてください!」

エロゲ展開からの1日でネームを仕上げろという衝撃につぐ衝撃の展開。ハナムラは驚きながらも頭の中で色々なことを考えた結果、見栄を張って余裕だと言ってしまうのです。

大丈夫かよ、ハナムラ!?そして彼は人生初のエロ漫画を書くことになり……。

『ハナムラさんじゅっさい』を読んで、エロ漫画のリアルを体験しよう!

著者
ハナムラ
出版日
2011-05-11


 

この後も怒涛の展開で読者を引き込んでいく『ハナムラさんじゅっさい』。パワフルな編集者とのやりとりや、エロ漫画ならではの迷いなど、ハナムラが様々な障害を乗り越えていきます。

現実的で派手ではないけれど共感度の高い障害をひとつひとつ乗り越えていくハナムラの様子は見ていて元気になるもの。本作で、ぜひあなたも日々を頑張るエネルギーをチャージしてみてください。

 

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