『サラリーマン金太郎』は、暴走族の伝説のヘッドとして名を馳せた矢島金太郎が、中途入社した大手建設会社ヤマト建設で立身出世を果たす、サクセスストーリーです。 破天荒な主人公の生きざまをいきいきと描いた快作で、高橋克典 主演のドラマシリーズは最高視聴率20.9%、第4期まで続く人気となりました。その後も永井大主演でドラマ化され、パチンコやパチスロ機も登場するなど、根強い人気を誇ります。 この記事では、『サラリーマン金太郎』のあらすじはもちろん、喧嘩っ早いけど情に厚い主人公をはじめとした魅力的なキャラクターや、名言、おすすめエピソードを紹介します。 また、本作はスマホアプリでも読むことができ、なんと今だけ全9シリーズすべて1巻分が無料です!気になった方はそちらもどうぞ。
『サラリーマン金太郎』は、人気マンガ家本宮ひろ志が1994年から2016年までの20年以上にわたって、『サラリーマン金太郎』『サラリーマン金太郎マネーウォーズ編』『新サラリーマン金太郎』『サラリーマン金太郎五十歳』と連載を続けてきたしてきた大人気シリーズです。
暴走族の総長だった矢島金太郎は高校を中退し結婚、子供にも恵まれて妻の地元の漁師町で暮らしていました。その後妻は他界。
ある日、ボートの故障で水難事故に遭いそうになっていた大手ヤマト建設の会長・大和守之助を助けたことから、中途入社することになり、赤ん坊の竜太を連れて上京し、物語が始まります。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 1994-12-08
赤ん坊をおぶったまま繁華街のサラリーマンと不良の喧嘩に仲裁に入ったかと思いきや、彼は不良をボコボコにした挙句ビールケースで殴りつけます!
物語序盤からパトカーで連行されたり、引越しの挨拶もせずに隣家に赤ん坊を預かってくれと頼みに行ったり、親に反抗的な隣家の息子を殴ったりと、基本的にすぐにバイオレンスな展開になります。しかし、なぜか金太郎の暴力によりストーリーはよい方向に転がりはじめるのです。
そんな本作は、破天荒な主人公がいろいろな人を巻き込み、振り回しながら、出世街道を駆け上がっていくサクセスストーリー。ビジネスマンガというカテゴリーになりますが、本作は会社を舞台に展開するヒーローマンガという方が適切かもしれません。
曲がった事が大嫌いな正義の味方が、自分の美学を貫き、悪を退治していく。
読むとスカッとする単純明快なストーリーと、肉感的で色っぽい女性キャラクターなど、どんどん続きが読みたくなる男のロマンが詰め込まれた立志伝です。
ここからはそんな本作のおすすめのエピソードをキャラ、名言からご紹介しましょう。
1965年のデビューより、ヒット作を多数持つ人気マンガ家本宮ひろ志。喧嘩に明け暮れていた学生時代を過ごし、高校中退後、航空自衛隊に入隊していたこともある異色の経歴の持ち主です。
その後もなかなかに波乱万丈。他人に指図されるのが嫌という理由から自衛隊を17歳でやめ、18歳で貸本マンガ家としてデビュー。それからはヒット作を多数発表します。
72歳(2020年現在)になった今も『グッドジョブ GOOD JOB』等を連載中です。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 2017-11-17
代表作には『サラリーマン金太郎』『俺の空』『男一匹ガキ大将』『天地を喰らう』『赤龍王』『夢幻の如く』などがあります。現代が舞台の物語から、歴史もの、仏教をモチーフにした作品など幅広いテーマの作品を発表している本宮。
作品のほとんどは、破天荒な主人公が活躍するストーリーです。キャラクターには、作者自身の曲がったことが嫌いな性格や、元不良少年だったという生い立ちが色濃く反映されています。
妻はレディースコミックを中心に作品を発表しているマンガ家のもりたじゅん。作中の女性キャラの下絵はもりたじゅんが担当しています。不思議な色っぽさがあることでファンの間では有名です。
本宮作品の主人公は基本的に、男性にも女性にもモテモテ。こんなことが言えたらスッキリするだろうな、こんな風に生きられたら楽しいだろうなと、男が憧れる男であり、一本芯のとおった生きざまに女性が惚れずにはいられない男でもあります。
そんなまっすぐな性格が魅力的の主人公が本宮ひろ志作品の何よりの魅力かもしれません。
本宮ひろ志のおすすめ作品を紹介した<本宮ひろ志おすすめ漫画作品5選!『俺の空』『サラリーマン金太郎』の作者>の記事もおすすめです。気になる方はあわせてご覧ください。
ここからは、本作のキャラの名言をご紹介していきます。
まずはこのマンガの主人公・矢島金太郎から、名言を6つご紹介。矢島はテレビドラマではTBSシリーズでは高橋克典が演じ、大ヒットシリーズとなり映画化もしています。テレビ朝日シリーズでは永井大が演じました。
第3話「金太郎、出勤する」に登場する名言です。矢島金太郎が東京に上京してアパートに引越しした翌朝に、会社に出勤したいから赤ん坊の竜太を預かってほしいと、隣家の水木家をたずねます。
水木家は、サラリーマンの水木とその妻と中学生の息子一樹でした。一樹は、父親が夜の繁華街で不良に殴られて許してほしいと懇願している様子を目撃したことから、父親に反抗的な態度をとり、侮蔑の言葉を投げつけるようになったのでした。
父親の無様な姿を見たのだから無理も無いと落胆する水木を見た矢島金太郎は、諭すのかと思いきや突然一樹の顔面を殴打します。鼻血を流してふっとぶ一樹に向かって放った言葉がこの言葉です。
「殴られる痛さや怖さ……
情けなさはな、やられたもんじゃなきゃあわからねえんだよ」
(『サラリーマン金太郎』1巻より引用)
息子を殴られて、驚いていた水木とその妻ですが、金太郎の言葉を聞き水木家一同心を動かされ、水木の妻は金太郎の子供竜太を預かりたいと申し出るのでした。
第5話「金太郎、髪を切る」に登場する名言です。ハチマキ姿に長い髪をひとつに束ねて、会社に出勤していた金太郎に対して、ハチマキと髪を切れと命令した専務の黒川優作。彼は身なりを整えろというだけではなく、そこから仕事に対しての向き合い方まで真摯に話しました。
最初は髪を切らないと宣言し、黒川に対して対立していたかに見えた金太郎ですが、実は黒川のまっすぐな言葉を受け止めていました。そして黒川が権力闘争に敗れ退陣するということを知ったときに昼休みにオフィスでバッサリと髪を切るのです。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 1994-12-08
それを見て、もともと彼の態度を不満に思っていた中沢という人物は、金太郎が専務の黒川の権力に屈したのだと思い、ざまあみろと罵詈雑言を浴びせました。それに対しての金太郎の返事がこちら。
「男ってのはな……男のためになら……男を張るんだよ」
(『サラリーマン金太郎』1巻より引用)
トレードマークのハチマキをやめて長い髪を切ることは、会社のために退社することを決めた黒川に対する、金太郎なりの最大限の敬意だったということがわかる言葉です。
矢島金太郎の暴走族時代の回想シーンに登場する名セリフ。
きっかけは電車内で声をかけてきたニューハーフ・徹。以前暴走族のメンバーだった彼の口から金太郎の暴走族時代の伝説と、亡き妻明美とのエピソードが語られます。
明美は目の不自由な女性でしたが、明るく前向きな性格で、金太郎は彼女の障害を知った上で恋仲になりました。暴走族から足を洗い、結婚するのではないかという矢先に、明美は不良に暴行されてしまいます。
思い悩み自殺をはかった彼女をバイクの後ろに乗せて、金太郎は走ります。彼に付き従った暴走族の人数は2万人。伝説に残る大暴走となりました。その後、そのうちの3人が明美に暴行を働いたことを自白しますが、金太郎は関係ないと返事をするのです。その後に続く言葉がこちら。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 1995-06-19
「何がどうあろうが俺が明美に惚れてることは変わりゃあしねえ、
俺と明美だけの問題だ。俺の女はこいつひとりだ」
(『サラリーマン金太郎』3巻より引用)
こうやって文章にすると、突っ込みどころ満載です。なぜ恋人が自殺未遂をしたら、子分を引き連れて暴走行為をする必要があるのかわからないし、婦女暴行をした仲間を許す意味もわからないと思う方も多いかもしれませんが、作中での金太郎はべらぼうに男らしく、最高にしびれる名セリフなのです。
3巻の半分ほどが過去のエピソードで構成されているのですが、暴走シーンのカット割りや背景演出もすばらしく、漫画ながら映画のワンシーンのようなカーチェイスがくり広げられる、読みごたえのある巻になっています。『サラリーマン金太郎』ファンなら外せない名言です。
第24話「金太郎、会社を恋する。」で、新入社員研修の打ち上げの席で役員と懇談をしている際に、役員会を見学したいという要望を出した金太郎。理由を聞かれた際の返事がこちら。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 1995-09-19
「私はこれからヤマト建設と……
人生のかなりの時間をかけて関係していくことになります。
それはひとりの女を選んで人生をともにしていく、
そのことと同じくらい重いはずです。
私は会社と……恋愛をしたい」
(『サラリーマン金太郎』4巻より引用)
金太郎らしい筋の通った会社愛を感じさせる名言です。ただの社員なら決して言い出せない役員会の見学。実際に、「会社のトップの人たちはどう会社の方針を決定しているのか見てみたい」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか?
誰しも思ってること、言いたいけれど言えない言葉を代弁してくれる爽快感を感じる名言です。
ヤマト建設は中央建設と合併し、ヤマト中央建設に社名変更しました。それに伴い、会社上層部で熾烈な派閥争いが行われます。
そんななか元中央建設の丸山社長付きの社長室長となった金太郎は、丸山の発言の真意がわからずイライラ。その矢先に蕎麦屋でのアルバイト店員の態度に腹を立てて言った名言がこちら。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 2001-02-19
「一円でも金もらってりゃプロだ。
もっとケツの穴に力を入れて仕事しろやあ!!」
(『サラリーマン金太郎』26巻より引用)
仕事にプライドを持ち、少しでも違うと思ったことは口に出して正そうとする金太郎らしい名言です。
この巻では、そんな彼の性格ゆえの衝突が描かれます。揉め事を避けて上司に服従する、昔ながらのサラリーマンらしい丸山の生きざまと、破天荒でトラブルを恐れず、自分の正義を貫く金太郎の生きざま。それぞれの対比が見事です。
専務として登場し、後に社長となる黒川優作。テレビドラマではTBSシリーズで秋野太作、テレビ朝日シリーズで古谷一行がキャストを務めます。
金太郎と黒川の出会いとなるエレベーターの中でのやりとりは、『サラリーマン金太郎』のなかでも頻繁に語られる名シーンです。専務の黒川優作が乗ったエレベーターには社員は乗らないといういつの間にかできた慣例を、無視して一緒にエレベーターに乗り込む金太郎。
その金太郎の主張を正論だと認めつつ、きちんと言葉でサラリーマンの道理を説明し、彼に対して身なりを整えろと諭します。対立しながらも両者が認め合う姿勢に、ビリビリとしびれるような緊張感が感じられます。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 1994-12-08
「人間というのはな、ひとりじゃ生きられない。
社会を営んで始めて生きていける。
人間の社会には上下の関係がある。
その中でバランスを取ってやっていく事が人間が身につけた知恵だ。」
(『サラリーマン金太郎』1巻より引用)
本作の名言のなかでも、特にサラリーマンならぐっとくるであろうこのセリフ。この後の働くうえでの心得や、「サラリーマンをなめるんじゃないっ」という、去り際の一言にもしびれる展開です。
なんのためにスーツを着て、なんのために規則を守っているのか。サラリーマンの美学について語る黒川の名言、名シーンです。
矢島金太郎がサラリーマンになるきっかけを与えた人物、ヤマト建設の創始者で会長の大和守之助。テレビドラマではTBSシリーズで津川雅彦、テレビ朝日シリーズで宇津井健がキャストを務めます。
ボートの故障で水難事故に遭いかけた際に金太郎に助けられたことから恩義を感じているだけでなく、養子に迎えようと話を持ちかけたりするほど彼を気に入っており、かたい信頼関係で結ばれています。
しかしある時、そんな大和守之助が金太郎を突き放すような一言を言うのです。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 1995-03-17
「たった今から君がわしの命の恩人であることはすべて忘れる。
今後わしをジイさんと呼ぶことは許さん」
(『サラリーマン金太郎』2巻より引用)
冷たい言葉のように聞こえますが、これは守之助が金太郎を恩人としてでなく、ヤマト建設の社員として扱うことを決めた決意の言葉なのでした。
金太郎が立派なサラリーマンになれるということを確信し、彼を育てるために現役を続行する決意を決めたからこその一言です。「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」ということわざを思い出させる名シーン、名セリフです。
柴幡工務店の不正入札を暴いた金太郎。うらみを持った柴幡工務店は会社に郵便爆弾を送りつけ、東北支社の副支社長・伊郷龍蔵らが重症を負います。
腹を立てた金太郎は暴走族時代の仲間を集めて、河北市役所と暴力団事務所を襲撃し、警察のやっかいになることに。留置されている金太郎に面会に来たヤマト建設会長・大和守之助の発言がこちら。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 1996-06-19
「人間の我慢とは、
動物として人間だけが持ちえた大事な行動だ」
(『サラリーマン金太郎』7巻より引用)
暴力に対して暴力で対抗しようとする金太郎に対して、人間として我慢を覚えることの大切さを説いた、大和会長の名言です。金太郎をたしなめつつも、彼のために尽力する、大和会長の金太郎への深い愛情が伝わるエピソードになっています。
4巻から登場する、銀座の高級クラブ「ジャルダン」のママ美鈴。テレビドラマではTBSシリーズで斎藤陽子、テレビ朝日シリーズで井上和香がキャストを務めます。
金太郎に一目惚れしたのち、金太郎の後妻となった彼女。その後、美香という娘を授かりますが、金太郎の浮気が発覚。美鈴は台所で皿を叩き割り、金太郎にビンタをかまし、娘を残して家を飛び出すのでした。
その後彼女は戻ってくるのですが、寝室は別という気まずいままの生活が続きます。しかしある日、金太郎に対して美鈴が普通に接します。許してくれるのかとたずねた金太郎に対しての美鈴の返事がこちら。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 1999-10-19
「最初から許してるわよ」
(『サラリーマン金太郎』21巻より引用)
浮気を発端とした2巻に渡る険悪な夫婦喧嘩でしたが、美鈴の懐の深さをみせて終了となりました。娘を置いて家を出た時は心配になりましたが、大団円となりました。男性相手には豪胆な金太郎ですが、奥さんには頭が上がらないあたり、リアリティがあってよいですね。
ヤマト建設会長の大和守之助の別荘に招かれ、一緒に釣りを楽しんだ金太郎。翌朝、会長夫人に誘われて別荘にある露天風呂に裸の付き合いということで、2人で入浴することに。しかし色っぽい雰囲気になることはなく、親戚のおばと甥っ子のような仲の良さが感じられる展開です。
そこで会長夫人は金太郎に対し、会社を経営し成功すれば財産として別荘を得ることができる、しかしそれ以上の財産は人間であると話すのです。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 1999-04-19
「こんな別荘よりもっとすごい財産があるんだ。
人間だよ……人間としていいバランスを持っていて
頭も良く やる仕事が頼もしくてね
他人に対する思いやりもある
そういう好ましい人間がだよ
私達に忠誠を誓って会社の財産でいてくれる
これが震えるほどうれしい 何より一番の財産なのさ」
(『サラリーマン金太郎』2巻より引用)
たとえば、会社を創業したオーナー社長は社員の価値がわかるが、サラリーマンあがりの社長はそうではないとその後、会長夫人は続けます。
しかしそれに対して異を唱えた金太郎の意見も否定せず、逆にその考えを褒めるのです。自分の確固とした考えを持ちつつも、自分とは相反する意見も受け入れる。そんな会長夫人の懐の深さを感じさせる良エピソードです。
一流商社・東紅に飛び込みで面接を受けにいった金太郎が出会ったのは、派遣社員で受付嬢をしている前野久美でした。実は彼女は東紅創業者の孫娘で、東紅の個人筆頭株主。実質的にトップにある人物でした。
そんな彼女は金太郎を信頼し、プロジェクトの責任者に任命。しかしヤマト建設時代から金太郎をライバル視する鷹司誠士が、金太郎は運がよいだけで知恵がないと発言します。それに対する彼女の返答がこちら。
- 著者
- 本宮 ひろ志
- 出版日
- 2002-03-19
「知識より大事なものは知恵ですわ。
そして知識は答えを出さないけど知恵は答えそのものです」
(『サラリーマン金太郎』30巻より引用)
学力が全てではない、むしろ社会に出てからは勉強だけではない頭の良さを問われることを教えてくれる言葉です。この後鷹司は改心し、続編「マネーウオーズ編」以降は金太郎の参謀として活躍します。
以上、『サラリーマン金太郎』のあらすじと名言をご紹介しました!
金太郎はもちろん、登場人物の魅力が伝わったでしょうか?
『サラリーマン金太郎』は漫画アプリからも読むことができますので、気になった方はぜひ読んでみてくださいね。