山川あいじオススメ漫画ベスト5!河原和音原作『友だちの話』は泣ける!

更新:2021.12.20

アーティスティックで独特な雰囲気を持つ絵と、登場人物の心情やその場の雰囲気・空気感の描写が上手いことで有名な山川あいじ作品。感情の繊細さを描くことに長けた山川の作品は甘く切なく、泣けること間違いなし!特にオススメの5作品をご紹介します。

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雰囲気・心理描写に長けた漫画家山川あいじ

山川あいじは、群馬県出身の少女漫画家。詳しいプロフィールは明らかにされていませんが『キミを想う』という作品でデビューし、それ以来病気での休養を挟みつつも人気少女漫画家としての道を歩んでいます。

ほどんどの作品を『マーガレット』や『別冊マーガレット』で発表。様々なタイプや絵柄の少女漫画が溢れる中で、特徴的な絵柄と切なく甘いストーリーで人気を博しています。

その特徴的な絵柄とは、どことなくイラストチックな画風。“ザ・少女漫画”というよりも、どこかアーティスティックな雰囲気の絵柄が美しいのです。また、セリフ以外に書かれるモノローグが印象的で、登場人物の状況や心境が詩的に表現されています。

その画力の高さ・独特さから、原作つき漫画を描いたり小説の挿絵を描いたりと多くの活動をしてる山川あいじ。多くの人の心を掴んできた山川作品の魅力を紹介します。

5位:モテモテ女子が初めての恋をした

主人公は小林マヤ。周りから可愛いと言われてモテモテであることを自分自身でもわかっています。持ち物がなくなったり、熱い視線を感じたりしても「私は可愛いから仕方ない」と思ってあきらめるほど。

マヤは男の子たちが自分への好意をしめしてくる状況に飽き、恋愛ごとにときめきを感じられなくなっていました。そんなある日、マヤを避ける男の子が……。他と違う態度のその男の子のことがマヤは気になり始めます
 

著者
山川 あいじ
出版日
2004-07-23

その男の子の視線が自分ではなく友人のエリに向けられていると気付いたマヤ。エリにそのことを伝えますが、エリは「気にしなくていい」とさっぱり言うだけでした。

マヤはその男の子とエリをくっつけようとしますが、エリにとっては余計なお世話。そんなことしなくていいからと否定されたうえに「なんであの子をそんなに気にするのか」と問われたマヤは、自分自身がその子のことを気になっていると気づきます。

そんなマヤの気になるお相手は大人しく無口な男の子・崎。話しかけても一言答えてくれず、そのうち崎の声が聞きたいとと余計想いを募らせていきます。その感情が恋だと気付かないまま……。

少し触れただけでドキドキしたり、崎から自分がどう思われているのか気になったり。自分から好意を持つことがなかったマヤの不器用で切ない恋の行方とは……。

苦労することなく好かれてきたマヤですが、逆の立場になったことで激変。モテモテであるがゆえに少し自己中心的な性格だったマヤが初めての恋をし、初めて自分がどう思われているのか、嫌われていないか、など気にする姿が可愛いです。

私はモテる!男の子の視線は釘付け!なんてうらやましい状況ですが、恋をして臆病になり、自分自身の気持ちに困惑しながらもつい目で追いかけてしまう……なんて姿は共感する人も多いのではないでしょうか。

「なんで気になるのかわからない」と悩んだり、「これって恋?」と考えてしまったりと、初恋の微妙な心の変化が気恥ずかしいようなじれったいような、そしてどこか懐かしい気持ちにさせてくれるお話です。

山川あいじのわりと初期の作品のため、ルーズソックスやガラケーなどが描かれさらに懐かしい気持ちになるかもしれません。思春期の日常と恋愛がリアルに描かれた可愛いラブストーリーです!
 

4位:となりの席の男の子と、初々しくて甘い恋

卯多子は身長172cmの高校一年生。背が高いことを気にしていますが、大人しく優しい性格の女の子です。そんな卯多子の隣の席に座るのが原田。明るくクラスの人気者の彼ですが、ある日教科書を見せてあげてから二人は仲良くなっていきます。

明るい原田の性格に惹かれていく卯多子。しかし、中学生のときの失恋のせいで恋愛に臆病になってしまっていました。けれど気持ちが溢れてしまい、思わず「好き」と告げてしまいます。
 

著者
山川 あいじ
出版日
2013-08-23

実は控えめで優しい卯多子に惹かれていた原田。卯多子の告白を受け入れ、2人は付き合うことになりました。デートをしたり、初めて手をつないだり……付き合ってからもゆっくりと2人の距離は縮んでいきます。

順調に見える2人ですが、同じクラスの不登校の男子・犬居が気にかかったり、卯多子の中学のときの片想い&失恋相手である鳥羽と再会したりと少しずつ波乱の影が……。

でも卯多子と原田は2人でこれを乗り越えていきます。犬居には協力してノートを作ったり、登校してきた彼に居場所を作ったり。鳥羽のことも卯多子は「あの失恋があったから今がある」と思えるようになっていくのでした。

大人しく優しい女子と明るい男子が隣の席になって恋に落ちる……。こんな風にまとめてしまうとよくあるストーリーだと思ってしまうかもしれません。ただ、この作品の魅力は変わった設定や劇的な展開ではなく、あたたかく描かれる2人の空気感なのです。

何気ない会話やよくある高校生の日常がさりげなく、かつ細かく描かれ、それにつれて変わる2人の表情が逐一丁寧に描かれています。卯多子の可愛らしさ、原田のかっこよさが絵だけで伝わってくるような丁寧な描き方は山川あいじならでは。

こんな同級生がいたら楽しいだろうな、とかこんなことが自分の学生時代にもあったな、なんて思えるツボがたくさん!甘酸っぱくてキラキラしたオススメの作品です。
 

3位:チョコレート=犯罪の世界をひっくり返す奮闘劇!

原作はイギリスの人気作家、アレックス・シアラー。それが山川あいじによってコミカライズされ、同時に映画化もされました。

舞台はとある国、とある時代とあやふやですが、ある日甘いもの好きの人にとっては信じられない法案が可決されます。それが「チョコレート禁止法」。チョコレートを食べることだけでなく、作ったり所有するだけで犯罪になってしまうのです!
 

著者
["山川 あいじ", "アレックス・シアラー"]
出版日
2008-10-24

選挙で当選した「健全健康党」によって発令された「チョコレート禁止法」は、国民の健康のためと言われています。しかしチョコレートだけでなく甘いもの全般が禁止になり、代わりに支給されるお菓子もとにかくマズイ!

主人公は、この最悪な法律に抗うことを決めたハントリーとスマッジャーという2人の少年。チョコレートが大好きな2人はチョコレートを密造し、地下チョコバーを開くことにしました。好きなものを食べるという自由を勝ち取るため、ハントリーとスマッジャーは戦います。

選挙に行くのをサボる大人が多いため、抜け道をぬけるように当選してしまった政党。その政党のせいで「甘いもの」という楽しみがなくなり、生きづらくなってしまった世界……。そんな世界を変えるのは勇敢な子供達なのです。聞いているだけでワクワクする設定ですね!

勇敢な2人の少年とそれに協力する仲間や大人たち……最初は見つからないようにチョコレートを食べられる場所を作るだけでしたが、その活動がやがて「政府」と「チョコレート警察」を相手取り、世の中を変えていくという様子が描かれます。

法律や政府に逆らうなんて決断ができるのも子供だからこそ。好きなものは好き、ダメなものはダメだとハッキリしているのが彼らの強さです。子供の持つ純粋さと力強さ。さらにそれを支えてくれる大人たちもちゃんといて、政府とのバトルは面白みを増していきます。

小説が原作、映画化もされたものですが、こちらは1巻で完結。山川あいじ作品はゆったりとした空気感が特徴ですが、このお話は長い原作を1冊にまとめたもののため流れが早い!しかし、そのテンポが軽快でむしろ気持ちいい疾走感を感じさせてくれます。

「変な法案を強制される」というシリアスなテーマなのに、チョコレートが題材だからなのか気分は重くならず読めます。魅力的なキャラたちとテンポよくすすんでいくストーリーで物語に入りやすく、一気に読んでしまうこと間違いなし!
 

2位:家族愛+恋愛で2倍あたたかくなれる優しいストーリー

幼い頃に母親を亡くし、義理の父親である誠司と暮らす葉瑠。ずっと一緒に暮らしてきたものの、血はつながっていない親子の絆をテーマに描かれます。

高校入学を控えた中学三年生の葉瑠は、誠司の祖父のお葬式へと出席。それをきっかけに、自分の置かれている環境を改めて考え始めるところからストーリーは始まっていきます。
 

著者
山川 あいじ
出版日
2011-04-25

自分に正直な葉瑠。優しくされたら優しくする、伝えたいことは言葉で伝える、としっかりした芯の強さを持っています。それはきっと誠司にちゃんと寄り添われ育てられた証。しかし「母親が亡くなってから、自分には誠司がいたけれど誠司を包んでくれる人はこの10数年いなかった」と考えはじめます。

少女漫画とはほとんど恋愛を中心に描かれるものですが、この作品では誠司との「家族」としての絆がメインに描かれます。2人は血はつながっていないものの、葉瑠にとっての「大好きな母親」であり誠司にとっての「愛した妻」という共通する一人の女性への思いがあるからか、2人は本当の親子よりも親子らしいのです。

しかしもちろん恋愛要素も入ってきます。誠司の大学の先輩でありシングルマザーの千絵とその息子の永和、そして長らく会っていなかった葉瑠の幼馴染、凡太との出会い。誰が誰に想いを抱いているのか、家族と恋愛が絡み合いながらゆっくりと進んでいく皆の関係は要注目です。

誠司との関係を考える葉瑠の心情がメインに描かれているため、ふわっとしたストーリーの進み方。しかし、そんなたストーリーに山川あいじのやわらかい絵がぴったりマッチしていて、飲み込みやすい作品です。ぱっと変わる葉瑠の表情がとにかく可愛く、葉瑠を見る誠司の目もあたたかい。終始優しい雰囲気が流れます。
 

1位:河原和音×山川あいじのコラボレーション

『高校デビュー』や『青空エール』の著者、そして『俺物語!』の原作も担当した人気漫画家・原作家の河原和音と山川あいじがタッグを組んだ大人気作です。

物語の中心となるのは大人しく地味な英子と、人目を惹くほどの美少女もえという2人の女の子。タイプは全く違いますが、2人の関係はまさに「親友」。女の固い友情と恋愛をテーマに描かれます。
 

著者
山川 あいじ
出版日
2010-10-25

可愛いということでよくも悪くも特別扱いされてきたもえは、自分のことを嫌いでした。そんなもえの心を助けてくれたのが英子で、それからずっと一緒に居る2人の友情は固いもの。それが恋愛にも影響していきます。

その美貌ゆえにたくさんの男子から告白を受けるもえ。しかしもえが出すのは、「私と付き合うのなら英子とも一緒にいることになる。私より英子を大切にすること」という変わった条件でした。

それほど友情に強い思いを持つもえと英子、さらにこの条件を飲んだ土田という男の子とその親友の鳴神という男の子。この4人を中心にストーリーは展開。1冊の中に「友達のはなし」「友達のはなし 2nd」「友達のはなし Final」が収録されており、それぞれ英子目線・鳴神目線・もえ目線で話がすすんでいきます。

違った3人の目線で描かれることでそれぞれのキャラクターを理解することができ、より共感できる話になっているのが特徴。4人全員に悩みや葛藤・強い想いがあって、それがひしひしと伝わってきます。

恋愛が中心に描かれることの多い少女漫画にしては、珍しく恋愛<友情が中心。いつも一緒に居る友人に彼氏・彼女ができると、嬉しい反面寂しい気持ちがあるのは多くの人が共感できることではないでしょうか。そんな葛藤や、それでも友人の恋愛を応援したいという優しい友情……。

登場人物がみんなさわやかで優しく、甘酸っぱい友情&恋愛ストーリーにまとめられています。人気少女漫画家2人、それぞれの魅力が存分に詰め込まれた作品。是非読んでほしいオススメの一作です!
 

その場の雰囲気やキャラクターの心情が紙面いっぱいに広がり、とにかく絵で魅せてくる山川あいじ作品。ゆっくりあたたかく流れる空気感は山川作品独特のものです。ドキドキハラハラスピーディーに!ではなく、じんわりとあたたかくなるラブストーリーの世界を楽しんでみてください!

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