子育てをしていると、栄養のことを考えると好き嫌いしてほしくない、でもなかなか食べてくれない、という時期があります。調理法を工夫してもダメ。そんな時に読み聞かせを楽しむことで好き嫌い克服の助けになる絵本をご紹介します。
『やさい だいすき』は、いろんな種類のお野菜を紹介している絵本です。
厚紙を切り抜いて顔を描いたユーモラスな野菜たち。ある時はいっぽん、にほん……という数え方。またある時は、まあるい、ながい、など形の説明。
背景はシンプルに単色なので、お野菜が飛び出してくるように感じます。
- 著者
- 柳原 良平
- 出版日
赤字に真っ白な「だいこん いっぽん」。黄色地に真っ赤な「にんじん にほん」。最初からなかなかのインパクトです。
とても重厚そうな「かぼちゃ ひとつ」。はちきれそうなほど水分を含んでパンパンの「トマト みっつ」。
家族三人「まるい じゃがいも」、夫婦仲良しの「ながい ねぎ」。
シンプルな挿絵なだけに、身近な野菜達の特徴が際立って表現されていて、本物以上に美味しそうなのです!大人もついつい見入ってしまいます。お野菜にくっつけてあるまんまるな愛嬌のある目はこちらをじっと見つめてくるようで、小さいお子さんはこのお顔があることで、お野菜に親しみをより感じられるかもしれません。
お話の最後はお母さんとお店でお野菜をお買い物。お店にならぶたくさんのカラフルなお野菜たち。実際にお買い物に行った時、絵本で見たお野菜あるね、どれを食べてみようか?なんて会話が楽しめそうな一冊です。
『そらまめくんのベッド』は、ふっわふわのそら豆くんのベッドにみんな寝てみたい、というお話です。
そら豆くんのベッドは綿のように柔らかい自慢のベッドです。あまりに寝心地がよくて熟睡なのか、あっという間に朝。そらまめくんがやってきて、ぼくにも寝かせて、と頼みます。宝物だから、ダメ、とそら豆くん。
グリーンピースの兄弟、さやえんどう、ピーナッツ、と次々やってきて同じお願い。もちろん、誰にも貸しません。
- 著者
- なかや みわ
- 出版日
- 1999-09-30
ところが、ある日、そら豆くんのベッドが消えてしまいます。何日探しても見つかりません。みんなは、貸してくれないからバチがあたったのさ、といいながらも、かわいそうになり自分達のベッドを貸してあげることに。
しかし、枝豆くんのは小さすぎ、グリーンピース兄弟のは長すぎ、さやえんどうはうすい。ピーナッツくんのは硬い……やっぱり自分のベッドがいい!とそら豆くん。再び探しに出ます。
やっと見つけたら、なんと大きなうずらがどっしりとのっかっています。そしてベッドの中には卵が!さてさて、そら豆くんのベッドと卵はどうなったでしょう?
さやえんどうのさやがペラペラなのにへの字顔のそら豆くん。ピーナッツの硬い殻で窮屈そうなそら豆くん。それぞれのお豆の質感がとてもリアル。挿絵を見ていると、いろんなお豆を食べてみたくなります。
また、ピーナッツくんは地下のお部屋に住んでいる、など、生態もちゃんと描かれていて、一口に「お豆」と言ってもいろいろあるんだなあ、と感心。
そら豆の皮を剥いてそら豆くんのふかふかベッドに触ってみたい!頭の上のトレードマークの黒い爪部分をつまんでみたい!と興味をそそられる一冊。お豆が苦手なお子さん、そうでないお子さんにもオススメのお豆が愛おしくなるお話、是非手にとってみてください。
『ぜったいたべないからね』は、お母さんに妹のお世話を頼まれたお兄ちゃんの奮闘記です。
また小さくて手のかかる妹。パパとママはちゃんとめんどうをみておいてね、とおでかけ。そんな簡単に言わないでほしい。妹は好き嫌いが激しいのに!
人参は兎の餌でしょ。豆なんて気持ち悪い色してる。なんて言って絶対に食べない。
- 著者
- ローレン チャイルド
- 出版日
食事の時間になると、妹は案の定文句を言い始めた。まめは嫌。じゃがいも、きのこ、キャベツも嫌。トマトにいたっては絶対に食べない!と宣言。
大ピンチのお兄ちゃんですが、ちゃんと作戦を考えていました。それはよかった、今日のメニューに嫌いなものはひとつもないよ、と言います。
ところが、テーブルにはにんじんと緑豆。いぶかしがる妹を前に説明します。それは、はるばる木星から届いた”えだみかん”と、地球の反対側で空から落ちてきた”あめだまみどり”だよ、と!
そしておまえが食べないならラッキー。めったに食べられないから僕が全部もらうよ、とベテラン保育士さんのような切り返し!妹は惜しくなって、ちょっとかじってみます。なかなかいけるかも?
こんな風にテーブルの上の食べ物全てを特別な貴重な食べ物として妹に興味を持たせます。やまのてっぺんで取れる”くもぐゔゃらん”って何でしょう?人魚も食べている”ころもうみ”とは?子どもならではの発想に脱帽。是非本を読んで答え探しをしてみてください!
最後には妹自ら一番苦手なトマトを食べたい、というまでになります。苦手な食べものをこんな風に特別な意味と名前をつけることで興味をもたせ、試してみようと思わせるこの方法は、好き嫌いの多いお子さんに困っているお母さんにとっては早速試してみたい有り難い技ではないでしょうか?
子どもがペンで描いたものを色鉛筆で色を塗ったような挿絵は、子どもの頭の中に入り込んだよう。お話と相乗効果になって仮想の食べ物が本当にあるんじゃないかな、なんて思えてしまうくらい、なんとも言えないよい味を出しています。
好き嫌いをユーモアで克服できるオススメ絵本、是非読んでみてくださいね。
『おやおや、おやさい』は、おやさいたちが、ダジャレでマラソンしているユーモラスな絵本。
色鉛筆画のリアルなお野菜に目玉と手足がくっつけられているだけでも笑いを誘う絵本ですが、マラソン中継そのものがダジャレのオンパレード。
- 著者
- 石津ちひろ
- 出版日
- 2010-06-10
「にんきものの にんにく きんにく むきむき」
「きゅうりは きゅうに とまれない」
「かぼちゃの ぼっちゃん、かわに ぼちゃん」(『おやおや、おやさい』より)
と最初からスピードもダジャレも飛ばしっぱなし。リアルな野菜部分とは反対に手足のとってつけたような描き方がつくも神のように見えてきて、夜中にこんなマラソン大会が本当に行われているかも、と不思議な気持ちに。
さて、一等賞は誰だったのでしょうか?もちろん最高級のダジャレでゴールです!お子さんとわはは、と笑いながら、肩こることなく野菜に親近感を感じることができる名作です!
『いっぱいやさいさん』は、お野菜讃歌ともいうべき、それぞれのお野菜のあるがままを称える絵本です。
表紙からすでにお話が始まっています。半分熟れて真っ赤で半分まだ緑のトマト。今畑から収穫してきたばかり。茎の切り口がまだみずみずしく青いから。隅には本物かと見間違うようなてんとう虫と蟻。
最初のページはきゅうり。きゅうりにたくさんのブツブツ。新鮮なことがわかります。半分にした切り口にはきゅうりの液が小さな粒になって滲み出てジューシーそのもの。傍らには今にも飛び出しそうなキリギリス。羽の透け具体や足のたくさんの棘も図鑑かと思うくらい細かく描かれています。
- 著者
- ["斉藤 恭久", "まど みちお"]
- 出版日
- 1992-06-01
そして、まどみちお氏の詞がページをめくるごとにやさしく語りかけてきます。
「きゅうりさんは、
きゅうりさんなのが
うれしいのね。
すずしそうな みどりの ふくに、
きらきら ビーズを
いっぱい つけて。」(『おやおや、おやさい』より)
「たまねぎさんは、
たまねぎさんなのが
うれしいのね。
ありったけの ふくを、
みーんな きちゃって。
まあるまる
ふとっちゃって。」(『おやおや、おやさい』より)
薄皮が半分めくれている玉ねぎの横で薄皮そっくりの羽を広げているクルマバッタ。尻尾をだしているラディッシュとラディッシュ色のアカガネサルハムシ。ハーモニカのようなコーン。きれいなピンクの足元からふさふさ葉をしげらせるホウレンソウ……。
と、まだまだ野菜讃歌は続きます。
繰り返しのリズムが、読み聞かせる方も聞く方にも気持ちがよく、また野菜を称える言葉が優しく心に響いてくる一冊。
「やさいさんたち、みーんな うれしいのね。
だいすきな やさいさんに してもらっちゃって。
かみさま、ありがとう!っていってるのね。」(『おやおや、おやさい』より)
野菜の魅力を最大限に褒め称え、感謝で終わる詞。野菜さんの命ありがとう。ごちそうさま。そんな気持ちになれるオススメ絵本です。