学校では思考力が求められる文章題などが多くなり、勉強に苦手意識を持つ子も増えて「9歳の壁」とも言われるギャングエイジたち。自分中心の世界から抜け出し、他人を意識し始めた子どもたちにすすめたい、読書が楽しくなる作品です。
他の子たちとちょっと違うところがあるウエズレーには友達がいません。ウエズレーが住む町は、家の形も子どもたちの髪型もみんな同じ……。自分だけの隠れ家があったらなぁ、と思うウエズレーは、夏休みの自由研究に壮大な計画を思いつきます。
- 著者
- ポール・フライシュマン
- 出版日
自分だけの作物を育て、自分だけの文明を作ることをひらめいたウエズレー。ずば抜けた行動力と発想力を生かし、「ウエズランディア(ウエズレーの国)」を作っていきます。ウエズレーが育てた不思議な作物の実は、モモとイチゴとリンゴが混ざったような味なんだとか!根っこの先は大きなイモのようで、茹でても焼いてもフライにしても美味しいだなんて、どんな食べ物なんでしょう?80個の文字で作られたウエズレー語って?子どもたちの興味をグイグイと惹きつけます。
読んでいる子どもたちも惹きつけられるのですから、当然ウエズレーの町の子どもたちだって興味津々です。「異質な者」としてウエズレーにちょっかいを出していた子も、自分や他の人たちとは違う人間もいるのだということに気づき、その魅力を素直に認めていきます。仲間意識も強烈になってきたギャングエイジに是非どうぞ。
人間を恨んで村を襲うトラに困った王様へ、占い師が「王子をトラに差し出せば、国に平穏がおとずれるだろう」と予言し、幼い王子はトラの住む森に置き去りにされます。それでも王様もお妃様も王子のことが忘れられず、森のトラを襲うため兵隊を出すのです。
- 著者
- チェン ジャンホン
- 出版日
- 2007-06-16
この本は、トラが子どもを口の中にくわえている中国風の絵が印象的な大型絵本で、縦横無尽のコマ割りが物語にさらに迫力と深みを加えています。読み聞かせにもおすすめです。
お話は墨絵のような森の中でトラのお母さんが悲しそうに吠えているシーンから始まります。
「子どもたちが、人間の猟師に殺されてしまったからです。トラは、子どもたちを助けてやることができませんでした。」(『ウェン王子とトラ』より引用)
そして次のページでは、トラがものすごい形相で人間の村を襲っています。子どもを助けられなかった母の絶望を冒頭から感じ取り、胸をぐっと衝かれるでしょう。
ウェン王子によってトラは優しい母性を取り戻し、国には平穏が戻ります。人間から付けられた古傷に触れられたトラは怒りを蘇らせますが、その時の王子の驚いた顔に自分の子どもを重ね、トラも王子も涙を流すのです。
王子を心配してトラを襲おうと兵隊を出した王様たちの気持ちや、トラが王子に接するときの気持ちから、反抗期に入りかけた子どもたちも親の愛情の深さを感じ取るに違いありません。ウェン王子がトラに自分の息子を預ける最後のシーンは、これから続くであろうトラと小さな王子の物語を想像させ、心が温かくなるようなエンディングです。
チョコレートで出来た大きなお城が飾られている、すずらん通りの洋菓子店「金泉堂」は町一番の人気店です。ある日、光一と明が金泉堂のショーウインドーを羨まし気に眺めていると、突然ガラスが割れてしまいます。お店の大人たちはそれを子どもたちのせいと決めつけ、いわれのない濡れ衣に光一はクラスの男子を誘って仕返しを計画し、その計画を知った大人たちも作戦を練ります。果たして勝つのは大人か、子どもか?
- 著者
- 大石 真
- 出版日
『チョコレート戦争』は今なお続くロングセラーで、大人VS子どものストーリーが心をワクワクさせる一冊です。「大人の言うことがいつも正しいわけではない」と気づいてはいるものの、うまく表現できずモヤモヤしている子どもたちの胸をスカッとさせます。
子どもの話を嘘だと決めてかかる金泉堂の大人たちに憤慨して、「もう決してこの店のケーキは食べない」と言い切る先生の事を思いつつ、お土産のエクレアを頬張ってしまう明の後ろめたい気持ちが絶妙に表現されています。チョコレートのお城を盗む計画をたてる光一の実行力も見事です。折りたたんだ手紙の上部に赤線を引き、「速達」として授業中に友だちの手から手へ渡していくなんて、憧れてしまいますね。
将来お金持ちの有名人になった時にインタビューに答えることが面倒だ、と毎日の記録をノートにつけているグレッグ。世界中で翻訳され、人気を博しているシリーズです。1冊読み終えると次々手が伸びますよ!
- 著者
- ジェフ キニー
- 出版日
お金持ちの人気者になってモテたい!というグレッグ。身近な毎日の出来事を「記録」としてつけています。おばあちゃんの家をトイレットペーパーでぐるぐる巻きにしてしまったり、ヘッドフォンを頭に付けて手を使わずに頭を振るだけで落とすゲームを発明したり、TVゲームの車に「おなら号」と名前をつけてみたり……。年頃ならではの、バカバカしくて笑ってしまうことばかりです。
ギャングエイジの男子たちは、グレッグと同じようにでまかせで毎日を乗り切っているようなもの。共感できないわけがありません。もちろん女子にもおすすめです。男子ってホントバカだよね、とグレッグや他の登場人物にクラスの誰かを照らし合わせてニンマリしてしまうかも。
魔女と人間の間に生まれた少女キキが、魔女として生きることを決意し相棒の黒猫ジジと親元を旅立ちます。到着したコリコの町では人々の魔女に対する反応が冷たいことへ途方に暮れますが、「魔女の宅急便」を開業し、町の人との交流や出来事を通じて成長していく1年間のお話です。
- 著者
- 角野 栄子
- 出版日
- 2002-06-20
1989年にスタジオジブリでアニメーション映画化され、大ヒットとなって世の中に広く知られるようになりました。映画のキキは大きな赤いリボンがトレードマークの13歳の魔女ですが、原作ではキキが35歳になるまでの6巻をシリーズ化しており、宅急便のお仕事も原作の方が盛りだくさんです。
「どうして女の子って、こう無駄な質問をするんだろう。」「男の子の頭の中には、質問しかないのかしら。」とお互いに異性に対して思うところや、「サバサバしているから女の子っていう気がしない」と言われたキキがイライラするところは、9歳の子にとって共感できる部分があるでしょう。
低学年で読んでいた本とは文字の大きさも厚さも違いますが、良く知る映画の原作なので手も届きやすいでしょう。
勉強が苦手と思うようになっても、友だちとうまくいかなくて悩むことがあっても、何かをヒントとして与えてくれるような本を集めました。難しい年齢になってきた子どもたちにも、本って楽しい!と思ってほしいです。