小学生になったから読み聞かせはもう必要ない?いえいえ、自分で読み書きができるようになっても、自分で読むとまだまだ「字を追う」ことに注力してしまいがちな7歳児。ぜひ読み聞かせで耳から入る物語を楽しませてあげてください。
『アベコベさん』は、なんでも逆の一家の物語です。アベコベさん一家はキッチンで眠り、夜に起き出し、パジャマに着替え、寝室でごはんを食べます。真夜中の公園で遊んだり、逆立ちになってテレビを見たりします。何て不思議で楽しそうな日常なのでしょう。
そんな一家に、ある日事件がおきます。お隣のプラムさんが急用で出かけることになり、その子どものルーシーと一緒にプラム家で留守番をすることになったのです。何でも逆のアベコベ一家、無事に留守番が務まるのでしょうか。
- 著者
- フランセスカ サイモン
- 出版日
ごはんを手づかみで食べたり、おかずがケーキだったり、壁に絵を描いたりと、子どもにはうらやましい描写がたくさんあります。「私もこんな風にしてみたいな」というワクワク感がつのりますね。
自分たちのやり方に全く疑問を持たないアベコベ一家。他の人が全く異なるやり方をしていても動じず、また否定もしません。「どうしてプラムさんは私たちとちがうの?」という子どもの質問に、「いろんなひとがいるのよ」。ここには思わずクスリと笑ってしまいます。
カラフルで可愛らしいイラストにも心魅かれる1冊です。
『かわいそうな ぞう』は、太平洋戦争末期の日本の動物園、上野動物園が物語の舞台です。空襲がはげしくなってきた東京では、動物園に爆弾が落ちて檻が壊れ、動物たちが逃げだし市街で暴れては大変とのことで、軍の命令で次々に動物たちが毒殺されていました。ライオン、トラ、ヒョウなどの猛獣に始まり、いよいよ当時動物園にいた3頭のゾウたちも毒殺されることになりました……。
- 著者
- 土家 由岐雄
- 出版日
賢いゾウたちは毒の入った餌を見分けて食べません。結局餓死させることになります。空腹でふらふらになりながらも、餌がもらえるかと考えたのか芸当をしてみせるゾウたち。ゾウの最期の描写には胸が締め付けられます。
戦争による痛みを実際に体験していないパパママ世代でも、伝えることのできる思いがあると思います。読み聞かせながら、感情が高まり声に詰まってしまうこともあるかもしれません。戦争について、言葉を使って説明することも大切ですが、声を震わせながら読み聞かせしてあげることでも、子どもたちはきっと何かを感じ取ってくれるはずです。
決して明るいお話ではありませんが、心にズシンと響く、忘れられない1冊となることでしょう。
『100万回生きたねこ』は佐野洋子のロングセラーの絵本で、子どもはもちろん大人にもぜひ読んでいただきたい1冊です。とても有名な絵本なので、内容は知らなくとも、表紙の目力の強いとらねこのイラストは見たことがあるという方も多いかもしれません。
この絵本は、100万回死んで、100万回生きるとらねこのお話です。100万回生きている間に、色々な飼い主に出会います。王様や船乗り、小さな女の子、というように。ねこが死ぬと飼い主はみな決まって泣きます。でもとらねこは1度も泣きません。そんなねこにあるとき転機がおとずれます。
- 著者
- 佐野 洋子
- 出版日
- 1977-10-19
「あるとき、ねこはだれのねこでもありませんでした。のらねこだったのです。ねこははじめて自分のねこになりました。」
それまでは必ず飼い主がいたねこですが、初めてのらねこになったのです。そして誰にも執着をしなかった彼が、美しい白ねこに恋をして一緒に暮らすようになり、子ねこも生まれます。2匹は幸せな日々を過ごしていきますが、白ねこはだんだんと年をとります。そして……。
「生と死」については、子どもにどうやって伝えていけばよいのかと悩むテーマでもあります。『100万回生きたねこ』はその答えがズバリ書いてあるわけではありませんし、7歳のお子さんには理解しきれない部分ももちろんあると思います。でも一度触れていれば、大人になってからまた手に取ることもあるでしょうし、また異なる感想を持つことでしょう。
ちょっと深いテーマでも理解できるようになってきた年齢だからこそ、親子で色々な思いを共有できる読み聞かせがおすすめの絵本です。
『かさどろぼう』はスリランカの小さな村が舞台です。鮮やかな色遣いのイラストが目を惹く、ユーモラスな絵本です。
バナナやヤム芋の葉を傘代わりにしていた村の人たちは、傘を見たことがありません。ある日、キリ・ママというおじさんが生まれて初めて町に出かけ、色とりどりの美しい傘を見かけて心奪われます。そして1本買って帰るのですが、村のお店でコーヒーを飲んでいる間に傘が何者かに盗まれてしまうのです。その後、何度傘を買っても盗まれてしまうおじさん。いったいどうなるのでしょうか。
- 著者
- シビル ウェッタシンハ
- 出版日
何度も傘を盗まれているのに、なぜかのんびりとした印象のおじさん。盗まれるのは、決まってコーヒーを飲んでおしゃべりしている時です。「このつぎは きっと つかまえてやるから」といっても、特に誰かを疑っているわけではありません。どろぼうをつかまえる、と言っているものの、何だかほのぼのとした空気感が読んでいても伝わってきます。
そんなキリ・ママおじさんですので、無くなった傘を見つけたときにも、1本だけはどろぼうのために残しておいてあげるのです。最後に「どろぼう」の正体が明かされるのですが、読み終わった後は、爽やかな楽しい気持ちが残ります。
『かさどろぼう』の作者シビル・ウェッタシンハの作品では、他には『きつねのホイティ』がおすすめです。食べ物がほしくてずるがしこく立ち回るきつねのホイティと、村人とのやりとりがユーモラスな絵本です。
『ずーっとずっとだいすきだよ』は表紙からも分かると思いますが、少年とエルフィーという犬のお話です。少年とエルフィーは一緒に大きくなります。でもある時から、エルフィーは年をとってだんだん動けなくなります。そんなエルフィーに少年は毎晩、「ずーっと、だいすきだよ」伝え続けます。
- 著者
- ハンス ウィルヘルム
- 出版日
少年の家族もみな、エルフィーが大好きでした。でも、だれも口に出して「だいすきだよ」とは言いませんでした。「すきならすきといってやればよかったのに」という男の子のセリフには大人の私たちの方が考えさせられるかもしれません。
亡くなってしまって初めて愛に気づくということもあるでしょう。でもその気持ちは相手が生きているときに伝えなければ伝わらないのです。
初めてペットを飼う前に読んであげるのも良いかもしれませんね。
変わった形の石や変わった色の石を集めるのが好きなロバのシルベスターは、ある日赤く光る石を見つけます。その石に触れて願い事を唱えると願い事が叶うことに気がついたシルベスターは、家に持ち帰り家族の願いを叶えてあげようと思います。
しかし途中でいやしいライオンに会ったシルベスターは驚きすぎて、自分を岩にしてしまったのです。岩から自分の姿に戻ろうと思っても、赤く光る石に岩の姿のままだと触れることができません。
- 著者
- ウィリアム スタイグ
- 出版日
シルベスターが帰宅しないことを心配した両親は、近所を探し警察にも聞きますが手掛かりは得られません。
一方、シルベスターは岩になった自分に誰かが座り、光る赤い石を持って「岩がシルベスターになるように」とお願いをしてもらうしかありませんが可能性は低すぎます。だんだんやりきれなくなってきたシルベスターは目を開けず眠るように過ごすことが多くなりました。そして季節は無常にも移り変わっていきます……。
果たして岩になったシルベスターはどうなるのでしょう。赤く光る石を拾い本当に自分の願いが叶うかどうかを確かめたシルベスターは、バチが当たってしまったのでしょうか。
前半部分を読むと「こんな石があったらいいな。」と思わせてくれますが、後半は岩になったシルベスターと帰ってこない彼を待つ両親の寂しい姿に結末が心配になります。
シルベスターを探す姿は、子どもが親にとってとても大切な存在だということを感じさせてくれるおすすめの絵本です。
小学校低学年の子たちに向けた読み聞かせをする時に、人気のある一冊が『番ネズミのヤカちゃん』です。
4人きょうだいの末っ子のヤカちゃんは一匹だけ声が大きくて、お母さんときょうだいは自分たちが住んでいる家の人間に存在が知られてしまうのではとドキドキ。
ある日、お母さんは子どもたちがそろそろ自分で暮らせるようにと人間界との付き合い方についてルールを歌で教えます。しかしここでもヤカちゃんは大きな声で返事をして、お母さんときょうだいを慌てさせます。
- 著者
- リチャード ウィルバー
- 出版日
- 1992-05-31
ある日、ヤカちゃんの大きな声を聞いた住人のドドさんは、家の壁の中にライオンか何かがいるようだと騒ぎはじめます。そこでネズミ捕り器を買ってきて、チーズを乗せ罠を仕掛けるのです。
夜になり壁の穴からでてきたヤカちゃんは大きなチーズを見つけますが、その時にお母さんが教えてくれた人間界にあるねずみとりの罠の歌を思い出し難を逃れます。しかし、ちょっと天然なヤカちゃんは家族にネズミ捕りがあったことをいつもの大きな声で知らせます。この声を聞きつけたドドさんは翌日に次なる作戦にでますが、これも失敗。
そして3日目の夜、ヤカちゃんは人間が寝静まった部屋に出てみると、食器棚から銀の食器などを袋に入れている怪しい男の影を見つけます。そしてヤカちゃんは、いつもより更に大きな声で怪しい人物がいることを叫び……。
いつも声が大きすぎてお母さんを困らせているヤカちゃんですが、ラストでは人間も助けるお手柄を立てます。
物語の中にはネズミのお母さんが歌う歌、ヤカちゃんの大きな声など静かに読み進めていくよりも声に出して読んでみたくなる絵本です。
タイトルには『番ネズミのヤカちゃん』と書かれていますが、番ネズミとは一体どういうことなのでしょう。そしてヤカちゃんたちはドドさんのお家から出て行ってしまったのでしょうか。詳しくはぜひ手に取って、読んでみてください。
1975年に初版が発売された『いつかはきっと…』は、シャーロット・ゾロトフの物語にアーノルド・ローベルが挿絵を描いた絵本です。
アーノルド・ローベルと言えば、小学校1年生の教科書にも採用されているガマくんとかえるくんが主人公の「ふたりはともだち」シリーズを思い浮かべる方もおられると思います。『いつかはきっと…』は女の子が主人公のストーリーですが、繊細なタッチの絵にアーノルド・ローベルらしさを感じます。
- 著者
- シャーロット・ゾロトフ
- 出版日
- 1975-10-25
『いつかはきっと…』は、小学校に上がったばかりだと思われる夢みがちでおしゃまな女の子の物語。自分がほしいこと、できるようになりたいことを「こうなるといいなあ」と思っていることをつづっている絵本です。子供は自分と重ね合わせ、大人は子供の頃にこういう気持ちをもっていたなあと懐かしくなりそうなストーリーです。
お兄ちゃんの友達に名前で紹介されること。長い髪を褒めてもらえること。ピアノが上手だと言ってこらえること……一見、女の子中心の望みばかりかと思えば、お金持ちになって知っている人にプレゼントをすることや、枯れ木に水をやってみるみる生きかえらせたいという現実にはちょっと無理そうなことも。
読後は、彼女のように『いつかはきっと…』とポジティブな気持ちで、夢や希望を持っていけたらいいなあと感じる本です。
この絵本は読み始める前に表紙の絵をしっかり見てください。コタツで食事をしているお父さん。お母さんもその横で何かをしています。そして、赤いスカートの女の子に注目。手に何か持っていますね。
固い表紙を開いた2ページ目にはお父さんのスーツに手を入れる女の子。一体なにがはじまるのでしょうか。
朝、小学校に向かうため玄関を出るまみこを見送るお母さん。まみこは「きょうは何の日だかしってるの?」とお母さんをはやすように声をかけ、「知らなきゃ階段三段め。」と言い残して出かけていきます。
- 著者
- 瀬田 貞二
- 出版日
- 1979-08-10
まみこに言われた通り階段三段目をお母さんが見に行くと、赤いひもで結ばれた手紙が置いてありました。その手紙には次の手紙が置いてある場所書かれていました。次の場所に行くとさらに次の場所が書かれていたり、クイズになった手紙が見つかります。そして9通目の手紙には、お父さんへ電話をするように書かれていました。
まみこがお母さんに宛てた宝さがしのような手紙を作ったのはどうしてでしょう。ヒントは『きょうはなんのひ?』というタイトルにあります。そして宝探しのような手紙にはさらなるサプライズも。
この絵本には、親子の温かい絆とやさしいまみこの気持ちが書かれています。
そして子どもに読み聞かせるとまみこのような宝の地図の手紙を「私もやってみたい」というお子様もおられるのではないでしょうか。ぜひ親子で楽しみながら読んでみてください。
表紙の絵ですでに何か目の上にシワを寄せている白いアヒル。そして勢いのあるタイトルにどんな物語なのかとワクワクする絵本『うごいちゃだめ!』。
ある日、みずうみに出かけたアヒルは自分の泳ぎにうっとりしていたら、ちょっとがさつそうなガチョウがやってきて、どちらが泳ぐのが速いのかなどの競争を始めます。次にどちらが高く飛べるかを競争しますが、これもアヒルの負け。そして、アヒルの提案でどちらが動かずにいられるかのチャンピオンを決める競争を始めます。
- 著者
- エリカ シルヴァマン
- 出版日
2匹の意地の張り合いで始まったどれだけ動かずにいられるかの競争は、ハチが飛んできたリ、ウサギに乗られたり、カラスにつつかれたりと大変なことになっていきます。それでも2匹は動きません。そこに強い風が吹いてきて、どちらとも飛ばされてしまいます。
草むらに転がって動かない2匹を見つけたキツネは自分のごちそうにしようと2匹を袋の中に入れて家へ持ち帰ってしまいます。キツネはくつくつ煮えた鍋の中にどちらか1匹を入れようとしますが……。
『うごいちゃだめ!』は、動かない競争を始めたばかりの場面ではクスッと笑ってしまうシーンもありますが、風に吹かれた辺りから展開が変わってきます。
つまらない意地の張り合いで大変なことになりそうな予感のするストーリーに、ハラハラし通しの物語です。2匹の我慢比べの物語として読むだけでなく、意地を張らないこと、譲り合うことなどをお子様と話し合う時にもおすすめの絵本です。
いかがでしたでしょうか。読み聞かせの良いところは、親子で1冊の絵本を覗き込みながら同じ時間を共有できることです。そして感じたことなど語り合うのも素敵ですね。ぜひ読んでみてくださいね。