絵でストーリーを感じ取る絵本と耳から物語を感じ取る読み聞かせが中心となる幼児期。小学校に入学すると、国語の授業を通じて文字の多い文章に慣れ親しみ始めます。自分で読む力が育つ7歳ごろのお子様にぜひ読んでいただきたい5冊をご紹介しましょう。
素直で友達思いのかえるくんとがまくんはとても仲の良いお友達。物語は春から始まります。かえるくんが冬眠中のがまくんを起こしにやってきますが……。
寝起きの悪いがまくんを冬眠から起こすかえるくんの格闘を描く「はるが きた」、自分には手紙なんて来ないと悲しみ嘆くがまくんに同情し、かえるくんがガマくん宛の手紙を書く「おてがみ」など5つのショートストーリーが楽しめます。
- 著者
- アーノルド・ローベル
- 出版日
- 1972-11-10
この本の主人公であるかえるくんとがまくんは、とても人間らしい個性を持っています。かえるくんは優しくて頭の回転が速い優等生タイプ、一方がまくんは失敗も多く愚痴っぽい性格です。読んでいる子どもたちはかえるくんの立場で読み進めながらも、がまくんの言動に「自分もやっちゃったことあるな……」と感じてしまうことでしょう。
そして優等生タイプのかえるくんも風邪を引いてしまったり、がまくんの見られたくない姿を見て笑ってしまったり、完璧ではない部分を見せてくれます。かえるくんになった気分で読み進めていると「かえるくんダメだよ!」と思わずツッコミを入れてしまうはずです。
このかえるくんとがまくんの姿は"ともだち"がお互い様の関係であることを教えてくれます。助ける側と助けられる側が入れ替わりながら更に深い仲へと発展するという気づきを子供たちに与えられるのではないでしょうか。
そして、落とし物を届けてくれる優しさを持つ森の仲間たち、がまくんの面白い姿を見に集まってしまう水辺の仲間たちは学校のクラスメイトを彷彿とさせてくれることでしょう。可愛らしい挿絵にもご注目下さい。
物語はある図書館にライオンがやってくるところから始まります。人々は慌てふためきますが、館長だけはそのままにしておくよう指示をします。なぜなら、ライオンが図書館の規則をきちんと守っているから。
その日からライオンは毎日図書館にやって来るようになります。きちんと規則を守り、お手伝いしたり、子どもたちと読み聞かせを聞いたり、図書館になくてはならない存在になっていくのです。しかし怪我をした館長を助けるために規則を破り……。
- 著者
- ミシェル ヌードセン
- 出版日
- 2007-04-20
学校での規則、交通機関での規則、図書館での規則など、場所に応じた規則を理解し、納得して守っていけるようになるのは小学校生活が始まる7歳頃でしょう。そして規則を守ることこそが正しいことであると強く信じている年頃でもあります。
図書館に現れたライオンは規則を守っているので図書館に通うことを許されるのです。大きな声を出さない、走らない、読み聞かせも行儀よくマナーを守って楽しみます。しかしある日、怪我をした館長を助けるためにライオンは図書館の規則を破ってしまうのです。
この本の最後は次の文章で終わります。
「たまには、ちゃんとしたわけがあって、きまりをまもれないことだって あるんです。いくら としょかんのきまりでもね。」(『としょかんライオン』からの引用)
決まりを守ることはもちろん大切、だけどそれ以上に大切なこともあるのかもしれない……こども達にそんなことを考えさせることのできる1冊です。
主人公の"ぼく"を先頭に、ライオン、ゾウ、クマなど子供が大好きな動物たちと森中を行進するお話です。
ぼくのラッパを聞くと、動物たちは行進に加わる準備を始めます。しかも、思い思いの礼儀作法を身につけて。髪をとかすライオン、セーターを着るゾウ、クマはどのように行進に加わるのでしょう。そしてぼくは一体何匹の動物たちと行進が出来るのでしょうか?
- 著者
- マリー・ホール・エッツ
- 出版日
- 1963-12-20
この絵本は幼児期に手に取って読み聞かせをした方もいらっしゃるでしょう。子どもに人気のある動物がたくさん登場し、更に2本足で行進する姿は幼い子供たちの興味を引きますね。
この本の挿絵はすべてスケッチ画のような優しい黒色のタッチで描かれていますので、とても想像力が膨らみます。森の木々の様子も動物たちの格好も、子ども一人で読み返してみると新しい発見、新しい想像とたくさん出会えるかもしれません。
この本の文章は各ページ多くても3行程度ととても短くなっています。さらに想像力を掻き立てる挿絵に対し、「としとった はいいろの こうのとりが」など読むことで更に想像しやすくなる文章が随所に見られますので、一人で本を読むことに抵抗のあるお子さんでも受け入れやすく、読みたくなるような1冊となりますよ。
おかあさんすずめに初めて飛び方を習ったこすずめは、自分の力で飛べたことが嬉しくて「石垣の上まで」というおかあさんすずめの言いつけを守らずにどんどん遠くまで飛んで行ってしまいます。どこまでも飛べそうに思えたのですが……。
疲れ果てて行きついた先は他の鳥たちの巣ばかり。「ちゅん」としか鳴けないこすずめは仲間ではないので巣には入れてもらえません。歩いて歩いてあたりが暗くなった頃にやっと出会った一匹の鳥、それはおかあさんすずめでした。
- 著者
- ルース・エインズワース
- 出版日
- 1977-04-01
7歳頃の子ども達は親の手を離れて一人、もしくは子供たちだけで登下校をしている場合も多いでしょう。自分でお友達の家に遊びに行ったり、習い事に行ったり、学校以外にも親元を離れた活動の場が広がる時期でもありますね。この本に出てくるこすずめの姿はこの時期の子供たちの姿と重なる部分がたくさん見られます。
一人で出来たことで自信がつき、過信しておかあさんの言いつけを守らずに迷子になってしまうこすずめ。迷子になった後、こすずめはからすや山鳩など出会った他の鳥たちに巣に入れてもらえないかと聞いてまわります。困ってただ立ちすくむだけでなく、自分の力で強い心を持って事態を打破していこうとするこすずめの姿は子供たちにも見習わせたいところです。
あたりも暗くなってきた頃、こすずめがやっとおかあさんすずめに会えたシーンには読んでいる側もホッとして涙が出て来そうになりますよ。
子どもにとっては冒険することも大切、言いつけを守ることも大切、そして出会ったしまった困難に立ち向かう勇気も大切です。この本を読み、自分だったらどうするのかどうすべきなのかを学べると良いですね。
作者であるウルフ・スタルクの子供時代の思い出を描いた物語です。
ある日の夕方、ウルフは父親に宇宙を見せに連れて行ってあげると連れ出されます。宇宙はマイナス263度で寒いと聞き防寒対策を施して出発するのですが、実はウルフには宇宙が何であるのか解りません。
いつもの店に寄り、いつもの公園を通り、着いた先は低い丘の上。空に広がっていたのは満点の星空でした。
- 著者
- ウルフ スタルク
- 出版日
宇宙を見せてやると連れ出されたウルフは、宇宙とは何かを父親に尋ねます。父親の答えは「この世界のぜんぶさ。そこには、すべてのものがあるんだ」。その言葉通り、歩きながら父親はウルフに色々なことを教えます。普段の道を歩きながら親子で色々な話をすることも、きっと宇宙の一部なのでしょう。
そしてやっと着いた丘の上で、ウルフは地面のアザミや石の上のかたつむりを宇宙と勘違いします。父親は星を熱く説明しますが、ウルフの心にはイマイチ響いていないようです。挙句の果てに父親は犬の糞を踏んでしまう始末。しかしおかげで宇宙へのお出かけはウルフの心に深く刻み込まれた出来事となりました。
大人が感動するものを子どもに共有させることはとても難しいことです。しかし親子で共有した時間は子どもにとって何よりの宝物となります。特に一人立ちを始める7歳頃になると親子でゆっくりと歩く機会も減ってきていることでしょう。あなたも子どもと宇宙を見に行ってみませんか?
小学校に上がった7歳頃の子どもは自分の力で何事もこなすようになります。でも心の中はまだまだ親と離れて一人でやることへの不安もいっぱいあることでしょう。そんな子供たちと同じように、ご紹介した本の登場人物たちは不安になったり失敗したり。自分と一緒だ……と共感しながら、たくさんのきれいな挿絵と共に本に親しんで下さいね。