10歳におすすめの絵本&児童書!想像力の高まる頃に読ませたい5冊

更新:2021.12.20

物事の考え方や捉え方が一気に大人びて、想像力が増してくる10歳頃の子どもたち。周りの人間との関係や関わり方が変化し、友達同士のトラブルが増えてくるのもこの時期です。この多感な時期に子どもにぜひ読ませたい、想像力の高まる本を5冊ご紹介します。

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絵がすべてを語る『漂流物』

しっかりとしたストーリーがありながらも、一切文字が出てこない無声映画のような一冊です。

物語の舞台は海辺。どこにでもいるような普通の一人の男の子がヤドカリやカニを観察しています。観察に夢中になり過ぎ波に飲まれて、気づいたらカメラのような不思議な箱が目の前に。そのカメラの中には宇宙人のような機械のような不思議な海の姿がたくさん写っているではありませんか!

著者
デイヴィッド ウィーズナー
出版日

この本の醍醐味は、表情豊かな人物の顔に代表される緻密な絵にあります。漫画のようなコマ割りで、ストーリーを追いやすい工夫もされていますよ。文字のない絵本というと0歳の赤ちゃん絵本を思い出す方も多いかと思いますが、精巧な絵とストーリーで構成されているこの本は10歳程度の能力と感受性があってこそ楽しめる絵本でしょう。

主人公の少年が受け取った漂流物には、現実世界で見たこともないものがたくさん写っています。作り物?と疑問に思っていると今度はどこにでもいる普通の子どもの写真。でもその子の手には違う子どもの写真があって……。この謎の解読に必要なものは虫メガネと顕微鏡です。小学校中・高学年の理科で身近な道具ですね。今まさに勉強してきた道具たちが謎の解読に使われている姿はワクワクすることでしょう。

本を読むことが苦手な子供たちもきっと夢中になってしまいますよ。読書好きになるきっかけ作りに、ぜひ手に取ってみて下さいね。

10歳から読みたい初心者向け伝記『その手に1本の苗木を―マータイさんのものがたり』

この物語はケニアの環境保護運動家であるワンガリ・マータイの伝記です。

マータイが生まれ育ったケニアの農村は、自然豊かで神様の木の言い伝えを守る心豊かなところでした。学問の為にマータイがふるさとを離れ5年後に戻って見ると、農村は荒れ果てて村の人々が口にするのは不満ばかり。マータイは他人のせいにして文句ばかりを言うのではなく、問題を自分たちの力で解決していくよう村の人々の意識改革を始めます。

著者
クレア・A. ニヴォラ
出版日

森林の保護、自然環境の整備は現在の日本において他人事ではありません。小学校中学年程度になると環境破壊についても机上の理論で学習する機会があることでしょう。この物語は繊細で美しい絵と共に判りやすい端的な文章で構成されていますので、読みやすく、伝記初心者におすすめです。

主人公のマータイは問題解決のためにとにかく自分で体を動かす人間です。マータイが身をもって指導を行うことで、字の読み書きが出来ない農村の女性達は国の援助を得ることも時間をかけて学校に通うこともなく問題解決への一歩を踏み出します。また問題解決のために同じ目標を持って働いていくことは、すべてを他人のせいと考えていた農村の人々の荒んだ心までも変えていくのです。

大きな木となるまでに相当な年月が必要な苗木たち。とても小さく地道な努力が実を結んでいく姿は環境保護の観点だけでなく、勉強などの生活面でも参考になりますよ。

戦時中の兵士と子どもたちの交流を描く『すみれ島』

太平洋戦争が終わりを告げる数か月前の物語です。

戦火の渦中に居ながら、上空を飛んでくる戦闘機の意味や行く末を知らずに無邪気に手を振る子供たち。ある時、航空隊に贈る激励の手紙の中にたまたまスミレの花を入れます。すると数日後、航空隊から近況を書いたお礼の手紙が届いて……。子どもたちはこの時初めて特攻隊の役割を知るのです。

著者
今西 祐行
出版日

平和に対する感謝と願い、そして過去の戦争に対する正しい知識は小学校時代にぜひ身につけたいものの1つです。戦争という同じくくりの中で生きていても、確実に死ぬために飛行機で飛び立つ若者もいればその飛行機を見て単純に喜ぶ子供もいます。平和な現代に生きていると戦争は過去のもの、身近ではないものと感じてしまいがちですが、戦争は今の自分たちと何ら変わることはないそれぞれの日常の延長線上に存在していたのです。この物語ではまだ幼い生徒たち、特攻隊員、そして美しいスミレの対比によってそのことを強く感じることが出来るでしょう。

また特攻機が上空を通過したであろう無人島にたくさんのスミレの花が咲くラストには、戦争によって命を落とした人々の願いや思いがたくさん詰まっています。

洗練された短い文章と淡くどこか懐かしさを感じる挿絵で構成されたとても読みやすい本です。ぜひ平和を考えるきっかけとして手に取ってみて下さいね。

10歳だから共感できる!転校生との友情を描く『ユウキ』

舞台は札幌のとある小学校。主人公ケイタにはユウキという名の友達がいました。入学当初前の席に座っていた祐基、マシンが大好きで大人しい悠樹、サッカーの得意な勇毅。不思議なことに1人のユウキが転校すると違うユウキが転入し、必ずケイタの気の置けない友人となるのです。

勇毅が転校した後、ケイタの元に転入してきたのはユウキの名を持つ女の子でした。ユウキという女の子は小さな赤い手帳を持った不思議な占い少女で……。

著者
伊藤 遊
出版日
2003-06-25

3人のユウキにはそれぞれ全く違う特徴があり、それゆえにケイタはそれぞれと全く違う思い出を共有しています。10歳頃はクラス内の友人関係がグループ化されてくる頃でしょう。どうしても偏りがちな友人関係において、この3人のユウキとケイタとの関わり方は羨ましい限りですね。

そして新しく転校してきたユウキ(優希)。ケイタは「ユウキ」が初めて女の子であったことに驚き、優希が怪しい占いでクラスの人気者となっていく姿を心配します。占いで人気者となったものの、ふとしたきっかけでクラスから孤立してしまうその姿はどこの学校のどこのクラスにも起こりうることであり、読みながら自分と重ね合わせてしまうこともあるかもしれません。

ユウキが入れ替わりにやってくるという奇妙な学校、転入してくる怪しげな占い少女、という設定にはとても不思議な非現実的な世界を想像してしまいます。しかし優希の占いの理由や転校生の思いが明らかになるにつれ、とても晴れやかで爽やかな気分となるでしょう。転校が少しだけ楽しみになるかもしれませんよ。

時間がないと感じたらぜひ読みたい!『モモ』

自分が何者なのか、どこから来たのか、親は誰なのか、何を聞いてもさっぱりわからない不思議な少女モモ。清潔とは言えない独特の身なりをしたモモの特技は、話した人間を幸せな気持ちにさせることでした。

ある日、人々の時間を奪ってしまう悪者「灰色の男たち」がモモの住む町にやってきます。1人の灰色の男がモモの前では秘密をばらしてしまい……。

灰色の男たちに狙われるモモは無事に人々の時間を取り戻すことができるでしょうか?

著者
ミヒャエル・エンデ
出版日
2005-06-16

この物語のテーマはズバリ"時間"です。10歳頃の子どもたちは学校の勉強が難しくなったり、習い事が増えたりすることで「遊ぶ時間が足りない」「とにかく時間がない!」と感じ始めているのではありませんか?

この本に出てくる時間どろぼうたちは、町の人々に時間を貯金するように持ち掛けます。人生にはあとこれだけの時間しかない、食事の時間や寝る時間は一生でこれだけかかる、恋する彼女に費やしている時間は無駄な時間だ……。現実の数字を例にして聞いている(読んでいる)と、えらく時間を無駄に使っている気になることでしょう。毎日「早くしなさい!!」と言っているお母さんたちはきっと共感できるのではないですか?

一見正しいことを言っているように思える灰色の男たちは何が悪いのか、それは無駄な時間を奪われたことにより殺伐としてしまった街の様子によって表現されています。無駄な時間を奪われたモモの住む街の風景はどこか現在の日本にも通じるところがあるかもしれません。

時間の使い方に悩んでいる方、「早く!早く!」が日常化している方はぜひ、モモと一緒に時間の旅に出てみませんか?

10歳頃の子どもたちは幼児期から培った経験と学んできた知識を糧に目をみはる成長を遂げます。親子関係よりも友人関係を優先し始めるのもこの時期からでしょう。そして、大人以上に色々な悩みが出てくるのもこの時期です。心が戸惑ったり、悩んだりしたときには本を読んで想像力を鍛えてみませんか?未知の世界を冒険できたり、面白い友達が出来たり、想像が溢れ出すとても有意義な時間を過ごすことができますよ。

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