どいかやの描く、ほっこりする優しいイラストの絵本おすすめ5選!

更新:2021.12.6

色鉛筆で描かれる繊細で優しいどいかやのイラストは観る人の心を癒してくれます。こんな世界があったらなあ、小さい頃に描いた夢が絵本の中に。

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色鉛筆の魔術師「どいかやとは」

1969年東京生まれの絵本作家どいかや。優しいタッチの色鉛筆で描かれるイラストに時にわくわくしたり、キュンとしたり、ふんわりと包み込まれるような感覚になります。10年間服を買わないなど物を大切にしながら質素な生活をすることをモットーに、自然と動物を心から愛し、ペットの殺処分を撲滅する運動をしています。温かな色彩で描かれる動物や自然、食べ物で、心を満たされてください。
 

女の子の憧れの一日がぎゅっとつまった絵本

最初に紹介するのは『チリとチリリ』です。どいかやと言えばこの本と思い浮かべる人も多いでしょう。

かわいい女の子のチリとチリリが自転車でお散歩途中に森の喫茶店で一休みしたり、お買い物、水遊びをしたり、最後には森のホテルに泊まって動物たちと演奏会を聞いてゆったり楽しく過ごすというお話です。

著者
どい かや
出版日

「こんなことできたらな」と子どもの頃に頭に思い描いていた世界が目の前に。子どもたちだけで好きなものに触れて、買って、遊んで、動物たちと楽しんで、そんな素敵な一日をあたかも自分も経験しているかのような気持ちになります。

特に絵本に登場する食べ物は優しいタッチで描かれ、ネーミングも思わず手にとってみたくなるようなものばかり。すみれティーやれんげティー、どんぐりコーヒー、はちみつパンのくわのみジャムサンド、くるみパンのいちごジャムサンド……。

2人が訪れるところでは色々な大きさのアイテムがあります。喫茶店では大きさも形もいろいろな椅子とテーブル、パン屋さんでもくまさんには大きなパン、うさぎさんは小さめのパン、ホテルでもいろんな大きさの鍵。ここには、どいかやが大切にする「様々な動物たちとの共存」という世界観があらわされていると言えるでしょう。

チリとチリリはシリーズ化されていて、まちのおはなしやちかのおはなしなど他にも5作あります。

お子さんとお子さんの友達をチリとチリリに見立てて、2人で遊んでいるように読み進めていくのも楽しいでしょう。最初から最後まで優しい雰囲気に包まれたこの絵本に、心が和むことまちがいなしです。
 

みんなで食べるとおいしいね。家族で食卓を囲みたくなる絵本

次は『ねこのかあさんのあさごはん』。

朝ごはんの時間のお話です。お母さんは一番に起きて家族のごはんの準備。月曜日はたまごとろとろオムライス、火曜日はサラダ風混ぜご飯、水曜日はミルクたっぷりミルクスープご飯、木曜日はお母さんが寝坊しちゃって……。

著者
どい かや
出版日

どれも美味しそうなイラストで、こんな朝ごはんをみんなで食べられたらなとあこがれる光景が目の前に広がります。

朝ごはんを家族全員一緒に食べていますか?お父さんが早くに出社、お母さんも働いていたら自分と子どもの準備で精いっぱいでしょう。この絵本を読むと毎日は無理でも、土日だけでもこんな朝ごはんを作ってみたいと思えるかもしれません。

でも、朝ごはんのメニューってマンネリ化してきませんか?この絵本にはねこのおかあさんが作った朝ごはんのレシピがすべて載っています。お子さんと一緒に作ってみても楽しいでしょう。

個人的にはお母さんが寝坊してしまうシーンが親近感がわいて、ちょっと安心しました。

特別ではない日常が描かれ、やっぱり家族っていいなと思える一冊です。

猫好きにはたまらない心がきゅんとなる絵本

次に紹介するのはかわいい詩の絵本『ねこのうたたね』。

猫を飼っている人にとっては「わかる。わかる」と共感して思わずニヤニヤしてしまいそうな日常の光景が描かれています。

絵本を読むというよりは、心にじんわりと響く詩とその詩にマッチした優しいイラストを堪能してください。
 

著者
どい かや
出版日

本棚に本を入れたいけど、先に猫に入られてしまって本を入れられない「ねこだな」や掛布団のようにどんどん乗っかってきて、温かいけどすごく重い「猫布団」など、なにげない猫の姿がとてもキュート。

自分が経験すると、「どいて」と猫に言ってしまいそうな場面でも、どいかやの手にかかれば「まっいいか」とその時間を楽しんでしまいたくなるのが不思議です。

この絵本を手に取ったとき、紙が真っ白ではないので、ちょっと古いのかな?という印象を受けるかもしれません。その理由は間伐材紙で作られた絵本だからだそうです。さらに、その紙の無駄が出ないように絵本のサイズが考えられたり、それでも余ったところでポストカードが作られたり……エコ、森林保護をモットーとしているどいかやならではのしかけが満載と言えるでしょう。

猫派の方もそうでない方も、ほっこり癒される絵本です。

見て楽しい、触ってほっこり布絵本

こちらも猫好きにはたまらない絵本『トイちゃんとミーミーとナーナー』。文をどいかや、絵を手芸作家のさかいあいもが担当しています。

おばちゃんの家のねこに生まれた2匹の猫ミーミとナーナが女の子のトイちゃんの家にやってくるまでのお話とその後の日常について描かれた布絵本。
 

著者
どい かや
出版日

さかいあいもの布やフェルト、レースなどを使った丁寧で優しい絵は、どいかやの作風と見事にマッチしています。

トイちゃんが着られなくなったセーターを2匹の猫のベッドに作り変えてあげるところなど、ここでも物を大切にするどいかやの信条がさらりと描かれています。

小さな命と物を大切にしながら過ごす日々をふわふわもこもこした手触りの温かい手芸作品と優しいストーリーで表現され、読んだ後、ぎゅっと抱きしめたくなるような温かい気持ちになるでしょう。

動物と一緒に暮らすことの楽しさを感じることができる一冊です。お子さんに猫を飼いたいとねだられてしまうかもしれませんね。
 

「生き物に感謝し、物を大切にしよう」親子で読みたい絵本

最後に紹介するのは、文をアイヌ文化の研究家の萱野茂、絵をどいかやが担当している『アイヌのむかしばなし ひまなこなべ』です。

すべてのものに神が宿ると考えるアイヌのくまの神と道具の神の物語。中でもくまの神は特別な存在として崇められています。人間は肉や毛皮をありがたくいただき、感謝の気持ちを込めて豪勢な食事や踊りでくまの魂をもてなすのです。そこで、くまの神は踊りでもてなしてくれる一人の若者が気になり、神はこの若者に会いたくて、会いたくて、何度もアイヌにしとめられては、また、くまに姿を変えてやってきます。その若者の正体は......?

著者
萱野 茂
出版日
2016-08-31

命を大切に、そして物を丁寧に扱うことで幸せが訪れるというアイヌに伝わるお話。どいかやの色鉛筆の柔らかいイラストで、神秘的に描かれています。

神様視点で書かれているので、ごちそうの数々には自分がもてなしをうけているような感覚になるでしょう。また、まるで息遣いが聞こえてきそうなほど熊の毛の一本一本の線描や民族衣装の刺繍の再現には絵の中から臨場感が感じられます。

そして、タイトルの「ひまなこなべ」の意味に「なるほどな」とため息が漏れるでしょう。

買った状態のままを維持できるように、常に手間暇かけて手入れをし、物を粗末に扱うことをしない。そうすると、道具の神は必ず恩返しをしてくれる。クリック一つで簡単にいろんなものを買え、流行を追い続ける私たちが立ち止まって考える良い機会になるでしょう。

親子で読みたい珠玉の一冊です。

どいかやが色鉛筆で描くメルヘンの世界に迷い込んだようなイラスト、緊迫感を感じるような迫力のあるイラスト、そして読んで幸せになるストーリーで、心を癒されませんか?

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