5年生になるとなかなか読書の時間が取れない子供たちも多いのではないでしょうか。ここでは昔からの名作や映画化されたものまで、ストーリーに入り込みやすい作品を5冊ご紹介します。ぜひ貴重な自由時間に読書をして疑似世界の旅に出ましょう!
言わずとも知れた宮澤賢治の児童文学代表作です。
イギリスの兵隊のように立派な身なりの若い紳士が2人、狩りの途中で道に迷ってしまいます。右も左もわからない山奥で見つけたのは「西洋料理店 山猫軒」。
「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」という開き戸の掲示を「このうちは料理店だけれどもただでご馳走するんだぜ。」と都合よく解釈して中に入りますが……。
- 著者
- 宮澤 賢治
- 出版日
- 2013-05-27
『注文の多い料理店』で楽しめるのは言葉遊びとも言える絶妙の言葉づかいです。山猫軒に入ると次から次に文章の書かれた扉が現れます。2人の若い紳士は書かれているどの文章も、さらには扉が多いことですら「これはロシア式だ。」と都合良く解釈するのです。
2人の紳士の文章に対する解釈は決して間違ったものではありません。ただし自分達に都合が良いように捉えすぎて文章の不自然さに気づかず……。この2人の紳士は命を大切にしない身勝手な傾向があるようです。自分中心に物事を捉えた結果、2人は顔を失ってしまいます。
自分たちが無下に扱った犬たちに助けられるという皮肉さは、世の中がどのような人間にも平等であることを示しているのでしょう。
山猫軒の文章、どこがおかしいのかあなたなら気が付くことが出来ますか?
主人公のカミラはリマ豆が大好きなのに食べないと決めていました。人の目ばかりを気にして過ごしていたのでみんなが嫌いなリマ豆が好きだなんて言えなかったのです。
そんなカミラが新学期の服選びをしていると、頭のてっぺんからつま先までカラフルな縞模様になってしまいます。すぐにお医者さんを呼びますが原因は不明。何人もの医者や専門家にも見てもらいますがどんどん奇抜な姿に変わっていきます。最終的に部屋と一体化してしまうカミラ。カミラの病気はどうしたら治るのでしょう?
- 著者
- デヴィット シャノン
- 出版日
人の目ばかりを気にして、本当に好きなものを好きと言えないカミラのような子はいませんか?他人の目を気にせず、自分の本当の気持ちを相手に伝えることはとても難しいことですね。
カミラの病気は色とりどりのストライプ柄になるところから始まります。好奇の目が向けられれば向けられるほど人の言う通りの姿に変身してしまうカミラ。そんなカミラの病気を治してくれるのは、突然やってくる可愛らしいおばあさん。おばあさんはカミラの本心を引き出すことにより元の姿に戻すことに成功するのです。
リマ豆とはライ豆とも呼ばれている実在するインゲン豆属の食用豆のこと。本作のリマ豆に当たるような、あなたにとって特別なものは何ですか?
チャーリーは両親や祖父母達と暮らすとても貧しい家庭の男の子。いつも空腹で、誕生日にもらえるものはたったの板チョコ1枚です。
ある時、近所にある謎の巨大チョコレート工場が工場見学のキャンペーンを展開します。幸運にも当たりくじを手に入れたチャーリーは祖父と共に参加しますが……。
巨大すぎる工場と見たことのない労働者、そして画期的過ぎる発明品の数々。ハイテンションな工場長ウォンカと共にちょっとキケンな工場見学の始まりです!
- 著者
- ロアルド・ダール
- 出版日
- 2005-04-30
工場見学に行ったことはありますか?工場見学は見慣れた商品が作られる工程が楽しめたり、作られているものがお土産として提供されたり、とてもワクワクするものですね。この物語に出てくるとても大きなチョコレート工場のお土産はなんと一生分のお菓子!ただし、参加できるのは当たりくじを引いた子ども5人とその保護者のみです。
主人公のチャーリーは真の幸運の元にこの当たりくじを手に入れます。しかし参加者の中には感心しない方法で当たりくじを手に入れた子が多数。この物語、実はファンタジーの中に勧善懲悪が描かれています。彼らには自業自得の罰が下されるのです。
そして、この物語の1番の魅力はチョコレート工場内の見事な描写でしょう。次から次に聞いたことも想像したこともない名前や効能のあるお菓子が登場します。この物語を映画で見た方も多いかと思いますが、本で読むと自身の想像力が掻き立てられて、さらにワクワクすることでしょう。
そして物語は真面目で気の優しいチャーリーにピッタリなエンディングを迎えます。ぜひチャーリーと一緒に夢の工場を冒険してみませんか?
小さくて弱く殺処分されそうになっていた子豚のウィルバーは、その家の少女ファーンのおかげで命拾いをします。納屋の床下にある堆肥の山の上で暮らすことになったウィルバー。そこで、蜘蛛のシャーロットと出会います。
元気にすくすくと育った子豚のウィルバーの行きつく先は燻製のベーコンやハムになること。ウィルバーを助けるために知恵を出し合うシャーロットや納屋の仲間たちはウィルバーをどのように助けるのでしょう?
- 著者
- E.B. ホワイト
- 出版日
- 2001-02-10
子豚のウィルバーと蜘蛛のシャーロットの友情を描いた物語です。
家畜として殺される運命のウィルバーを助けるために、蜘蛛のシャーロットが知恵を絞って考えた方法は蜘蛛の巣に文字を書くことでした。ウィルバーのために農場に暮らす動物たちが開く作戦会議はとても可愛らしく、読んでいて思わず笑みがこぼれてしまうことでしょう。
この物語では動物それぞれの性質や寿命を目の当たりにします。実際、豚の寿命は10~15年、蜘蛛の寿命は1年程度です。つまり友情を育んだウィルバーとシャーロットは長くても1年しか一緒に居られません。その分、ウィルバーはシャーロットの子孫たちを見守っていくのです。
このような現実味のある内容は、読み終わった後にも深く心に残ることでしょう。
外に出たら周りの動物、昆虫たちをよく見てみて下さい。もしかしたら家の周りの動物たちも作戦会議を開いているかもしれませんよ。
主人公は、春から中学校に進学する巧(たくみ)。天才ピッチャーとして野球漬けの日々を送ってきた巧は、家庭の事情で岡山県の片田舎にある母の実家に引越します。
巧はプライドも高く、ピッチャーである自分に絶大なる自信を持っています。新天地で出会った同級生の豪(ごう)にバッテリーを組もうと提案されますが……。
野球に打ち込む思春期の男の子の心境を丁寧に描いた青春ストーリーです。
- 著者
- あさの あつこ
- 出版日
- 2003-12-25
『バッテリー』というタイトルの通り、野球少年が主人公で野球に関する展開が中心となる物語。テレビドラマ、アニメなど何度も映像化されている作品です。
野球一筋で野球のことばかり考えている巧に対し、新天地の仲間たちは野球より勉強・塾という選択を親たちから迫られています。今まで当たり前に野球ばかりを追っていた巧は、自分の置かれていた環境がどれだけ恵まれていたのか、引越しによって改めて気づかされるのです。
また巧には地元に帰って生き生きしている母さん、体が弱いと守られているばかりだった弟の青波、野球をやらない父さん、実は高校野球の名監督だったじいちゃんなど個性豊かな家族が居ます。親子ケンカをしてしまうじいちゃんと母親、野球をやらない婿の父さんとじいちゃんなど、家族同士のやり取りには思わずクスッとしてしまいますよ。
野球用語もたくさん出てきますが、人間の心情が丁寧に描かれていますので野球を知らなくても十分楽しめるでしょう。
5年生は夢や想像を語ることはもちろん、現実の自分について話をすることさえ恥ずかしいと思う年頃かもしれませんね。しかし心の中にはたくさんの世界が広がっていることでしょう。ぜひ、好みの本を読んで現実で発散できない夢や想像を膨らませて下さい。夢の世界はストレスの解消にもなりますよ。