1度見たら忘れられない世界が広がる。インパクトのある個性的な絵と、温かみを感じるどこかシュールな文が魅力的なスズキコージの絵本を紹介します。
スズキコージは1948年静岡県生まれの絵本作家です。20歳の時に東京新宿の路上で個展を開き、それ以降画集や絵本、挿絵を担当した作品を世に送り出しています。
一度見たら忘れられない個性的で異色の輝きを放つ絵と、キャッチーかつシュールな文で作られた絵本作品は子供も大人も幅広い世代の方に人気で読まれ続けています。
また、ポスター、壁画、舞台美術、映画にも出演するなど幅広い分野で活躍しているスズキコージ。旅行が好きで国内外問わず様々なところに旅にでているので、旅先で見た光景やふれあった人々から何かインスピレーションを得て、その独特の絵本の世界が生み出されているのかもしれません。
『?あつさのせい?』はある暑い日にうまのはいどうさんが帽子を駅のベンチに忘れてしまったところから始まります。通りがかったきつねのとりうちくんが忘れ物の帽子をかぶっていくのですが、帽子を気に入りすぎるがあまりに、今度は自分の持っていたカゴを忘れていってしまいます。
この後も様々な動物が前の動物が忘れたものを気に入っては自分の持ち物を忘れていって……ということの繰り返し。
内容もさることながら、擬人化した動物たちの絵や名前も面白いので注目してみてください。
- 著者
- スズキ コージ
- 出版日
- 1994-09-15
子供も大人も一緒になって、本をめくるたびに今度はどんな動物が出てきて何を忘れていくのだろうとわくわくしながら読み進めることができます。
また、忘れ物が続いて最後は一体どうなってしまうのか?はいどうさんの帽子は戻ってくるのか?ぜひ読んで確かめてみてください。背表紙には、何やら撮影しているような場面の絵が描かれているので、この作品はもしかして映画かドラマの一部始終というような意図で作られたのかなとも思わせられます。
『?あつさのせい?』という題名の意味も最後には「そういうことだったのか!」ときっと納得できるはず。
まずきゅうりを主人公にしたスズキコージのセンスがよくて、それだけでもなぜだかクスッと笑えてしまいます。
道行くきゅうりさんに動物たちが代わる代わるこの先にねずみが出るから危ないよと教えてくれるのですが、きゅうりさんはそんなことお構いなし。危ないと言われてもどんどん道を進んでいきます。
絵を見てみるときゅうりさんが、会った動物たちが身につけていたものを1つずつ装備していっているので、何を装備しているのか見つけ出すのもまた面白い!
- 著者
- スズキ コージ
- 出版日
- 1998-11-10
みんなが危ないと言っているねずみに挑もうと突き進むきゅうりさんは、決心したら揺るがない強い気持ちと大切なものを守る強さを教えてくれているような気さえします。
そして背表紙には、こわいねずみをやっつけたことが称賛されたのか、きゅうりさんの銅像が作られて街に飾られた絵が載っています。
短いお話で同じセリフが繰り返されるので、大人は読み聞かせしやすいですし、子供も繰り返されるセリフが面白いみたいで何度も読んで欲しいとリクエストされることも。
また、途中に出てくる動物たちも見た目が少し怖いものもいるのでページをめくるとドキッとしてしまうことがあります。ねずみはいつどこから出てくるのだろうか……とスリルも味わえる1冊です。
犬のフンザくんが寝ている間に、インクビンの中から現れた謎の生き物、ブラッキン。ブラッキンとブラッキンが机の上に描いた絵を気に入ったサボテンのキンダーちゃんが、おもちゃの船に乗って冒険するお話です。だからタイトルが2人の名前を合体させてブラッキンダーなのかと納得。
冒険する様子を描いた絵はどのページも色鮮やかで、譜面や英字写真のコラージュがあったりとまるで1ページ1ページがアート作品のようで見応えがあります。
また、1文1文がリズムを刻んでいるかのような文なので、歌うように心地よく読めるところも魅力的で読んでいて楽しいところの1つ。
- 著者
- スズキ コージ
- 出版日
- 2008-08-17
ブラッキンが黒くて緑のギラギラした目をしているので、最初は見た目を怖がる子供もいるかもしれませんが、読み進めていくうちに楽しそうに冒険するブラッキンに愛着がわいてくることでしょう。
冒険した後に机の上に残るブラッキンが黒いインクで描いた絵は、一見何の意味ももたないただのらくがきのようにも見えますが、楽しかった冒険を絵に残しておこうとブラッキンなりに描いたのではないかなと思います。きっと小さい子供のなんだかわからないようならくがきにもいろんな想いが込められているのだろうなとこの本を読んで感じることができるでしょう。
絵の見応えと夢のあるお話に、読み終わった後は1本のファンタジー映画を観たかのような気分になれるはず。
スズキコージの絵本の中では珍しく、絵は全て白黒。色鮮やかな絵もいいのですが全て白黒というのもまたいい味を出しています。
こちらは絵本というよりも、『生き物図鑑』といった方がしっくりくるでしょう。
スズキコージから生み出された架空の生き物たちはどれも本当に実在しているかのように、絵と共にその風貌や性格などが事細かに描かれています。このような生き物たちを鮮明に描くことのできる想像力には脱帽。
- 著者
- スズキ コージ
- 出版日
文は大人向けかなという印象を受けますが、小さな子供でもいろいろな不思議な生き物たちの絵を見るだけでも楽しめます。見たこともない生き物たちに「この動物何!?」「この生き物何してるの?」と子供は興味津々。
読み聞かせする時は、「この生き物は〇〇して生活しているんだよ」というように簡単に説明してあげると、子供もより興味を持ってくれるかもしれません。
また、絵本カバーの折り返し部分にはスズキコージ自身が大千世界の生き物に変身したかのような写真が載っていて、それを見るとなんだかほっこり。
こちらの絵本は『マザーグースのうた』で日本翻訳文化賞を始め、数々の賞を受賞した経歴をもち、『もこ もこ もこ』や『わたし』などの絵本作品の著者でもある谷川俊太郎が文を書いています。
「にょろくね くるんる」「おろれろ んむむぎゅ」と独特な擬音語・擬声語が文の中にたくさん盛り込まれていて読み聞かせすると、聞いているだけでも楽しそうにしてくれる子も。
- 著者
- 谷川 俊太郎
- 出版日
- 2016-11-29
文とスズキコージの愉快で鮮やかな絵がとても合っていて、見て楽しい読んでも楽しい絵本。
子供は雨の日に外で遊べず退屈している時があります。そんな時にこの絵本を読んであげると、身近な生き物のでんでんむしがでんしゃになって冒険に連れて行ってくれたら……こんな世界があったらいいのにな……と子供の想像力と夢が膨らむことでしょう。
スズキコージの世界観が魅力的に描かれている絵本を紹介しました。絵に見応えがあるのはもちろんのこと、文も特徴的なものが多いので、読み聞かせするのがとても楽しいです。
最初は個性が強くて、子供が気に入るかどうかと気になる方もいると思いますが大丈夫!
子供も大人も1度読むとやみつきになってしまいそうなスズキコージの絵本の世界に、ぜひ足を踏み入れてみてください。