末吉暁子のおすすめ著書5選!絵本や児童書を手がけた作家

更新:2021.12.2

「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズなどで知られる末吉暁子。その作品は子どもの発想力を刺激する空想と現実の境界が曖昧なところが魅力的です。不思議な世界に子どもたちをいざなう、オススメの5作品を紹介します。

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ざわざわ森のがんこちゃんの生みの親、末吉暁子

出版社に勤務していた経験のある児童文学作家・末吉暁子。編集者時代に絵本作家の佐藤たけるのすすめで始めた創作活動が評判を呼び、本格的に制作活動を始めます。日本児童文学者協会新人賞の受賞歴もある作家です。

「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズや、「やまんば妖怪学校」シリーズなど、怪獣や恐竜、そしておばけなどをテーマにしたファンタジー調のものが多く、その作品は多くのファンに愛されてきました。

末吉暁子自身は大学の非常勤講師や同人誌の創刊など、作品の制作以外にも幅広く活躍し、子どもの本委員会の委員も務めましたが、2016年5月28日、病でこの世を去っています。

夢が膨らむかくれんぼう『もりのかくれんぼう』

主人公のけいこが森の中で出会ったのは、森の枯れ葉に似た色をした不思議な男の子でした。けいこはその森で、たくさんの動物たちと一緒にかくれんぼをすることになります。

金色の森の中で、けいこは上手に隠れている動物たちを一つ一つ探し出します。絵本を見ている子どもにとっては、隠し絵の中からけいこと同じように動物を見つけ出す楽しみや達成感を感じられて、つい夢中になるのではないでしょうか。

著者
末吉 暁子
出版日

とても美しい森の中で、いろんな表情をして隠れている動物たちがとても魅力的です。不思議な森に小さな女の子が一人で迷い込んでいくというシーンそのものがドキドキします。動物たちを探すときのワクワクする気持ちは子どもたちの心のどこかにずっと残り続けるのではないでしょうか。

枯れ葉がこんなに美しいということを気づかされる、秋の雰囲気をまとったこの一冊。寝る前に子どもと一緒に秋の森に迷い込んだ気分を満喫してみてはいかがでしょうか。

答えを一緒に考えよう『ママ、あててみて!』

主人公のみこちゃんに、晴れたから遊ぼうと声をかけてきた誰かさんとは、誰でしょうか?みこちゃんは得意げに、その誰かさんの特徴をママに教えて当ててみてと言うのです。

その誰かさんとは、赤くて・丸くて・大きくて・空に浮かんでいて……ママは分かっているのにわざと間違えているのか、分からないフリをしているかのようにとぼけた答えを連発します。実際にこんなやり取りが世界中の親子の間で行われているような、そんな身近な会話に心が温まります。

著者
末吉 暁子
出版日

外で遊ぼうと誘ってきた誰かさんとは、赤くて丸いテントウムシ?空に浮かぶ赤い風船?赤くて大きな帽子?ママの答えは全部間違いですが、なぜかみこちゃんはとてもうれしそうに笑っています。

赤くて丸いものがこんなにたくさんあるなんて驚きですね。ママと一緒になって考えるのも楽しいでしょう。みこちゃんの部屋はピンク色を基調とした可愛らしいデザインで、笑顔のぬいぐるみやリンゴの乗ったカゴなど、どこか懐かしい雰囲気に包まれています。

温かいおひさまの笑顔も子どもたちに愛される素敵なものです。雨上がりの日には、この絵本を思い出して思い切り外で走り回りたいと思うかも知れませんね。

『星に帰った少女』タイムスリップした少女が出会ったのは……

母親とは、家族とは何か、そんな事を考えるきっかけとなるこの一冊。小学校高学年あたりから読むのをおすすめしたいボリュームのある作品です。

主人公のマミ子は新しいコートを欲しいと思っていた時、母親が手直しした古いコートを与えられて不機嫌になります。塾に向かうバスに乗ったマミ子は、ひょんなことからいつもの行先とは違う別の場所にたどり着くのです。そこはなんと、1949年の静岡県。マミ子の母親がまだ12歳だった頃にタイムスリップしていました。

著者
末吉 暁子
出版日

マミ子は自分がタイムスリップしてきたことも、自分が今いる場所がどこなのかも最初は全く気づきません。でも、そこで出会った少女と一緒に過ごすうち、自分がなぜここにいるのか、目の前の少女は誰なのかということにも気がつくのです。

子どもが大人になる瞬間と言うのは、人それぞれでしょう。はっきりしたきっかけを経験する人もいれば、徐々に成長していく人もいて、十人十色。この本を読んだ子どもは、ふと自分の親も子どもだったと言う当たり前の事実に想像を巡らせるかもしれません。

ノスタルジックな挿絵と、時代を感じられる内容で、懐かしさを味わうことも出来る素敵な物語です。

末吉暁子の代表的シリーズ作『ぞくぞく村のミイラのラムさん』

表紙の絵からして、コミカルな雰囲気が伝わってきますね。ぞくぞく村のミイラのラムさんは、お風呂が大好きという面白い設定です。ミイラが一体どんなお風呂に入るのかと不思議に思いますが、なんとホルマリンのお風呂に入るんですね。

でも、お風呂に入るために包帯を解くのに時間のかかることかかること。ちょっと間抜けで、人間味にあふれるラムさんは読み手をところどころで笑わせてくれます。

著者
末吉 暁子
出版日

ちょっと太ってしまった奥さんミイラのために、長い包帯を買いに走り回るラムさん。その姿は、人間の夫が妻のために走り回る姿のようでもあり、そこでも読み手はつい笑ってしまうのではないでしょうか。

太った奥さんミイラのためにどれほどの長さの包帯が必要だろう……考えた末、ラムさんは象のミイラが使う大きな包帯を買うことにするのです。象のミイラがいるなんておかしいですね。ぞくぞく村にはたくさんの怪物たちが登場しますが、どのキャラクターもコミカルで、どこか人間味にあふれています。

こんな村が本当にあったら、怖い物見たさでつい覗いてみたくなるかもしれませんね。

『波のそこにも』平家物語を元に末吉暁子が描くファンタジー

もし海の底に世界があったら……そんな想像を現実にリンクさせる不思議な物語です。平家物語を元に作られたこのお話の舞台は海の底。主人公は海の中で生きる少女タマオです。

ある時地上で戦いが起こり、激しい戦火の中、宝剣を胸に抱いたある少年が海に身を投げます。その少年に出会ったタマオは、彼が沈むさなかでどこかへ消えた宝剣を探すため、龍王の宮へ旅に出るという使命を与えられます。

著者
末吉 暁子
出版日
2015-07-15

幻想的な雰囲気に包まれた海の世界で繰り広げられる大冒険。少年少女の純粋な心と力強さで立ちはだかる苦難を乗り越えていく姿は爽快です。

気弱だったタマオが、旅の仲間たちと切磋琢磨しながら成長していく姿もみものです。本の中に描き出される海の世界も様々な色模様や生物たちに彩られ、まるでタマオと一緒に冒険の旅をしている気分になれることでしょう。

目に見えるものだけが真実ではないかもしれないという期待を感じられる作品の数々。末吉暁子の作品を読むと心の中に自由な世界を思い描く楽しみを味わうことが出来ます。

幼い子どもから、小学校の高学年まで、年齢に合わせてお気に入りの一冊を探してみてはいかがでしょうか。

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