『くれよんのくろくん』の絵本シリーズ3冊をご紹介!

更新:2021.12.20

クレヨンセットのクレヨンたちに手足がついて、箱から飛び出し元気に動き回るという物語『くれよんのくろくん』。お絵描きを始めたこどもたちにとって、とても身近なクレヨンが主人公の大人気絵本の3部作をご紹介します。

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「誰にでも可能性がある」と気付かせてくれる作品『くれよんのくろくん』

こども用のクレヨンセットの中で、最も出番の少ないのは何色でしょうか?主人公・黒クレヨンのくろくんは、他の色の仲間たちからのけ者にされて、寂しい思いをしますが……。

一枚の白画用紙に、くろくんの仲間たちそれぞれが思うがままに描いていた絵は、次第に収拾が付かなくなり、ケンカになってしまいます。それをおさめたのが他でもないくろくん。このお話は、仲間はずれにされていた子が思いがけない活躍をしたことでヒーローとなり、みんなに受け入れられるというサクセスストーリーなのです。

絵を描く時、特にこどもはカラフルな色を使いたがり、モノトーンには手を出さない場合が多いものです。黒は人の髪の毛を塗る以外には使わない色であったり、あるいは、使うことが滅多にない色であるため、箱の中にあることさえ忘れていたりもします。しかし、それは単に黒の使い方を知らないだけなんだということを、この本によって気付かされます。

著者
なかや みわ
出版日
2001-10-15

黒クレヨンのように、実は用途がいっぱいあるのにも関わらず、そのことを知らないために「宝の持ち腐れ」となってしまっているものは、世の中にたくさんありますよね。この絵本を通じて、何にでも可能性があるということ、角度を変えれば今まで目に入らなかったものが見えてくるのだということを学べます。

読み聞かせにはもちろんですが、全てひらがな・カタカナなので、ひとり読みができるようになったお子さんにもおすすめです。

言うまでもなく、クレヨンはお絵描き道具です。くろくんたちが絵を描く場面がたくさん出てきますが、彼らの自由でのびやかなタッチの絵が楽しいです。絵本の絵が「絵」であることが、ちょっと不思議ではありますが、彼らの描く絵も主役のひとつなので、ぜひ注目してくださいね。

あのくれよんたちが帰ってきた!くろくんが大活躍する待望の続編『くろくんとふしぎなともだち』

『くれよんのくろくん』シリーズ2作目である『くろくんとふしぎなともだち』。1作目では、ちょっと引っ込み思案なイメージもあった「くろくん」ですが、本作では、なかなか積極的です。

ちょっとさんぽに、と、ケースから飛び出していったくろくんは、あるいていった先で出会ったともだちのためにお絵描きをします。そのともだちと一緒に遊んで、とっても楽しい時間を過ごしたくろくん。次の日は別のともだちに出会い、くろくんはまた同じように一緒に楽しく遊びます。くろくんがいったいどこに出掛けているのか気になる仲間たち。そこで、くろくんは仲間たちも連れていつもの場所に行くと、またまた新しいともだちに出会うのでした。

くろくんがともだちと遊ぶ様子が楽しいです。1作目では仲間たちに黒い色を否定されていた感がありましたが、自分の色の特性を活かして自由に動き回るくろくんはとっても素敵。

著者
なかや みわ
出版日
2004-08-25

今度はくろくんの仲間たちも加わって、みんなでともだちのためにお絵描きをします。画用紙に、どんどんいろんなものを描いていって、大きな大きな絵が出来上がると、ともだちは大喜びしますが、事態は思わぬ方向に。「これからいったいどうなるの?」と、物語はどんどん盛り上がり、読み手を引き込んでいく構成で飽きさせません。

1作目では地味だったくろくんが、本作では仲間たちが頼りにする存在に成長していて頼もしいです。こどもがステップを上がって、できることが少しずつ増えていくような感じと似ていて、くろくんを応援しながら親子で読みたい本としておすすめです。

みんなで心をひとつにすることの素晴らしさを教えてくれる作品『くろくんとなぞのおばけ』

いつも夜はセットの箱の中で、きちんと並んで眠っているくろくんたち。ある朝、目が覚めたら、仲間のひとりがいなくなっていた!という、ちょっと穏やかではない場面から始まる『くろくんとなぞのおばけ』。

他の2作とは、ちょっと違う趣のお話です。登場するのはくろくんや仲間のくれよんたちをはじめ擬人化された「もの」ばかりだったのですが、このお話には「もの」でない生き物が出てきます。タイトルにある「なぞのおばけ」とは、いったいどんなやつなのか?その正体を突き止めるべく、くろくんは箱を飛び出しますが……。

本作のテーマは「団結」。くろくんたちは、力を合わせてあることを成し遂げます。ある目的のために、みんなで一生懸命方法を考え、心をひとつにして実行する。こどもが集団生活の中で、そういうことが必要な場面は何度となく訪れると思いますが、ひとりではなく大勢で考えれば良策が見つかるということ、ひとりでなくみんなですることに意味があるということを気付かせてくれる物語です。

加えて、本作では、くろくんが仲間たちに頼りにされる存在になっていて、彼がみんなの期待に応えられるまでに成長していることがわかります。なんと頼もしくなったくろくん!

著者
なかや みわ
出版日
2009-07-20

ところで、3作すべてに共通しているのは、くれよんたちがくれよんらしく絵を描くことで物語を盛り上げているところですが、本作で彼らが描くものは特に美しくて、そしてせつないもの。どんな絵が出来上がるのか、大いに期待しながらページをめくってほしいです。

裏表紙の絵は、セットの箱の中に仲間たち全員がきれいに並んでおさまっている様子です。みんなで心をひとつにして何かを成し遂げられるようになったくれよんたちの、ちょっと得意気で満足そうな表情がほほえましく、本を閉じてからも思わずニッコリしてしまいます。

この後、4作目、5作目……と作品が増えていくことを期待してしまう、シリーズ3作目です。

いかがでしたか?はじめはひとりぼっちだったくろくんが、だんだん仲間と楽しく過ごせるようになるという内容は、これから幼稚園などに入って初めて集団生活にのぞむこどもが環境になじんでいくための助けになるかもしれませんね。また、この絵本がきっかけでお絵描きが好きになるお子さんも少なくないと思います。お子さんの誕生日などに、クレヨンセットと一緒にこれらの絵本をプレゼントするのも素敵ですね。

1作目では少々気弱な感じのくろくんが、2作目ではひとりでどんどん出掛けられるようになり、3作目では、遂に仲間たちからの揺るぎない信頼を得るようになります。そんなくろくんの成長していく様子がわかるので、ぜひ全3作通して読んでみてほしいと思います。

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