少女が戦国時代にタイムスリップし、若君に恋するという恋愛漫画『アシガール』。ありがちな話かと思いきや、主人公のアホさと恋心のまま戦場で足軽になるというトンデモ設定が他と一味違います。今回はその魅力を徹底紹介!最新9巻までのネタバレありなのでご注意を。
- 著者
- 森本 梢子
- 出版日
- 2012-07-25
主人公・唯のアホさと彼女が惚れる若様のかっこよさ、ふたりの純愛ストーリーが魅力の恋愛×時代漫画『アシガール』。
戦国時代にタイムスリップしてしまった女子高生がその時代の若様に恋をして、彼が死んでしまう歴史を足軽として戦場で戦って変えようとする物語です。
恋愛漫画にしてはこの作品の主人公は見た目もキャラクターも可愛いタイプではありません。しかも抜けていて何事にも特にやる気のない性格。
しかし彼女は若様に恋に落ちて一変します。彼女は彼を守るために女子だというのに髪を振り乱して戦場で大活躍!とにかくこのアホな勢いだけが魅力のキャラクターなのです。
主人公がそんな二枚目キャラですので、本作の花は若様。彼は見た目も爽やかで麗しく、性格も優しいというパーフェクトなスペックの持ち主です。ところどころで胸キュンなセリフを言い、唯と読者をドキドキさせてくれます。
どう見ても主人公が引き立て役なカップルですが、ふたりの恋模様は純粋そのもの。アホゆえに周りが見られないことで純粋?な唯と、冷静に周囲を俯瞰しながらもまっすぐな思いを貫く若様がいいコンビです。
足が異常に速いという唯一の取り柄を活かし、唯は若様が死んでしまう歴史を変えることができるのでしょうか?
この記事では本作の魅力を徹底紹介!最新9巻のネタバレを含んでおりますのでご注意ください。
- 著者
- 森本 梢子
- 出版日
- 2013-02-25
主人公の唯は何事にもやる気のない女子高生。おしゃれにも勉強にも恋愛にも興味がなく、あるのは唯一食い気だけ。
そんな彼女ですが、たったひとつだけ長所がありました。それは足が速いということ。かなりの才能を持っているのですが、いかんせん何事にも興味のない性格ゆえ、真面目に部活をするということもありませんでした。
ある日、唯の弟で頭のいい尊がタイムマシーンを開発したと言います。話半分で彼の難しい説明を聞き流していた唯。何の気なしにその装置をいじってしまったところ、なんとそのまま戦国時代にタイムスリップ!
尊の説明では満月の日に行き来できるということでしたが、唯は話を聞いていなかったのでよく分からないまま、兵士たちにまぎれ込み、何とか一夜を明かします。
兵士たちの団体に紛れたまま彼女が出会ったのは、その時代を治めていた若君さまでした。イケメンの彼に唯は初めての恋に落ちます。
しかし現代に帰ったところ、若君様が死んでしまうのは彼女が戦国時代に降り立ったすぐ後のことだということが判明するのです。
ショックを受ける唯ですが、彼女は自分の足の速さを活かして足軽として彼を守ることを決意。まさかの女子高生in戦国時代の恋愛ストーリーが始まります。ギャグ満載でどんどん進んでいく物語にハマること間違いなしです。
唯はアホゆえに本能で行動し、様々なピンチを乗り越え、その場に順応していきます。その様子は彼女を見直すというより本当にアホなのだなぁと思わされるようなもの。
目を覚ました先が現代でないと気づいた唯はパニックになりながらも、見ず知らずのところに置いていかれては大変だと、足軽集団に紛れて行動します。
学校の制服が闇夜で紛れて足軽たちの格好と似ているから怪しまれていないのだと気づいた唯は、夜が明ければバレてしまうと焦ります。
そんな時にたまたま負傷者が装具を脱いだところを見かけた彼女は彼のものを身につけて何とかその場を乗り切りました。アホなのにこんなところでは頭の回転が速いですね。
そこからふと冷静になって唯はこれからどうすれば良いかとふと考えます。現代人であれば普通はまず命の心配をするであろう、血みどろの戦いが繰り広げられていた戦国時代。しかし唯は正真正銘のアホ。
「これからどーなるの!?もう…帰れないの!?
こんなことならあのステーキ食べてから来るんだったーーーーっ!!」
夕食のステーキのことを考えているのです。アホすぎます……。
はたして彼女はつわものだらけの戦国時代で生き残れるのでしょうか?
唯のアホさ、そして主人公としての決まらなさが感じられるのが若様との初対面のシーン。
彼女は昼間になってからもどうにかごまかし、足軽集団と行動をともにします。しかしこのまま城下町に入って勘違いされている人物の家族に対面すればさすがに正体がバレてしまうと、トイレをしたいと言ってその場から逃げ出しました。
全速力で駆け抜けたものの、腹ペコで倒れた唯は目の前にきのこを見つけます。
「しいたけだァァ!!
しいたけにしては少し赤いけど…てゆーかかなり真っ赤で白い模様もあるけど…
でもこれは絶対しいたけだし しいたけは食べれる!
毒じゃない 毒じゃない 毒じゃな…」
アホすぎます。せめてそこらへんの草で我慢すればいいものを、わざわざ一番やばそうなものに手を出すなんて、こんな子が戦国時代でやっていけるでしょうか?
しかしそれを見ていたひとりの男が声をかけます。
「毒じゃ
それを食うたら心の臓が止まって 死ぬぞ」
顔をあげた唯が見たのは超絶イケメン。恋を知らなかった唯ですが、彼に一目惚れし、一気にその気持ちが膨らんでいきます。
「何もわかんないけどとにかくもうっ…もうっ…
すんんんんんんごい 好きっっ!!」
普通、恋愛漫画で主人公が恋に落ちる瞬間は誰しも可愛く見えるかと思いますが、唯にいたっては全く可愛くありません。むしろその青年を見つめる表情は変質者のよう。大事なシーンが全くキマりません。
そして彼が若君だということを知った唯は逃げることも忘れて若君が統治するお城にほいほいとついていきます。正真正銘のアホ。正体がバレたらという心配は恋心に打ち消されています。
そしてついに勘違いされている人物の家族に引き合わされてしまい……。
- 著者
- 森本 梢子
- 出版日
- 2016-12-22
前巻7巻の終盤で命からがら若君のために宿敵の秘策を伝えにいった唯。途中で敵に左肩を撃たれてしまいますが、何とか一命をとりとめていました。そして救護のためにそのまま、普段若君たちが暮らす黒羽城に運び込まれてしまうのです!いきなり実家訪問!
そこで唯は若君の実の母親には好かれたものの、女中たちに嫉妬で嫌がらせをされたり、お局的な乳母にやっかいばらいされそうになったりと散々な扱いを受けます。
しかし唯も黙っているだけではなく、彼女たちの度肝を抜いてやろうと廊下を走り、側転をし、挙げ句の果てには障子を突き破ってしまいます。さすが唯です、どこでも生きていけそう。
その頃、若君も戦場で戦っていました。圧倒的な兵の数の差はあったものの、唯の弟・尊の発明品マボ兵くんのおかげで無事戦況を乗り切りきったのです。しかしその後、戦はこう着状態になってしまいます。
このまま長引くかと思われた時、相手方の高山殿が倒れたことから和議を結べることに。そしてその話し合いの場に現れた宗熊に自分たちは戦うつもりがないことを伝えます。攻められれば守らなければならないが、こちらから攻めることはないと名言するのです。
「わしもそうしよう!」
周囲が若君の言葉を疑う中、宗熊はふたつ返事でその申し出を受け入れます。顔は三枚目だけどいいやつそうです……笑
そして戦を終えた若君はその足で待ちきれないというように唯のもとへと向かいます。
朝目を覚まし、そのことを聞いた唯は寝巻きのまま彼のもとへと走りました。そして気を失っている間に城の安全な場所に戻されたけれど、本当は一番そばで守りたかったという思いの丈をぶつけるのです。
しかし、とにかく無事でよかった、と若君を見つめる唯。
「この人の命 初めて会った時より
何倍も何万倍も大切なものになってた」
そしてふたりは抱き合います。
最高の名シーンです。自分の腕の中で幸せそうにする唯を見て、若君は本当にこのままこの時代で生きていくことにしていいのかと問いかけます。唯は最初に戦に参加した時のように何の迷いもなくイエスの返事。
「そりゃ私も家族には会いたいし すごい親不孝だと思うけど
今度帰ったら多分もうこっちに戻れなくて 二度と若君に会えないかと思うと……
微塵の迷いもございません!!」
唯……。最初にこの子を見たときは何てバカな子だろう、実際にいたら戦場で真っ先に死ぬタイプだと思いましたが、今ではこの突き抜けたまっすぐさに感動すらしてしまいます。
若君も今回の戦での活躍と唯の決心を見て、何やら考えるところがあるよう。そして最強の胸キュンなご褒美を唯に言いわたすのですが……。
続きは作品でお確かめください。言葉は不要、神巻です。
婚約の日どりも決まり、阿湖姫と若君の兄成之とのまさかの恋愛展開にドキドキして、とさまざまなところで良い流れがきていた9巻。
そちらはぜひ作品でお楽しみください。成之が少し可愛らしく見えてくるのが不思議です。
平和な展開が続きましたが、ついに物語最大のピンチが訪れます。それは和議を結んだ高山家の寝返りでした。父・宗鶴のそんな暴走を事前に高山宗熊からの手紙で知った若君。
未来の歴史ではなぜ羽木家が高山家に倒されたかが分かっていませんでしたが、実は裏で織田信長が両家を戦わせ、漁夫の利を得ようとしていたんですね。許せません。
- 著者
- 森本 梢子
- 出版日
- 2017-09-25
それを知って自ら相手の城へ乗り込み、戦をしないように説得しに行こうとします。それは朝方でしたが、唯も何か嫌な予感を感じ、普段は寝ている時間なのに起きるのです。そして若君のが出立したということを聞き、何かあったのだとそのあとを追いかけます。
「若君様!妖怪じゃ!! 妖怪が追うて来ます!!」(『アシガール』9巻より引用)
従者とともに走っていた若君に追いつく唯。
それにしても本当にここまで女扱いされないヒロインも珍しいですよね。今回なんか馬にも追いつきそうな勢いで走ってくるからと、人間にすら見られていません。
最初はしらを切り通そうとする若君でしたが、唯はいつもと異なる様子をお見通し。高山家の寝返りを知って憤慨し、若君についていくと言うのですが、今回ばかりは彼の言う通りにおとなしく待っていることにしました。
このことを聞く前日には和議を結べたと上機嫌で酔っていた若君。それが裏切られたという辛い気持ちを抱えながらも、みんなの命を守るために一番良い方法を必死に考える彼を、唯は尊重しようと思ったのです。
しかし若君の思惑とは裏腹に敵の勢力は圧倒的で、話し合いの余地もなさそうでした。また、それを聞いた父上は今にも戦場に乗り込もうとします。若君の思いを知っている唯は必死にそれを止めようとしますが、聞く耳を持ってくれません。
そこへやって来たのは若君に付き添って敵方の城に向かっていた従者の久六。若君は彼を城へ戻らせ、父上にありのままを話すよう言ったのです。久六は敵の兵力の多さと決して出陣しないよう伝えます。
久六に対してどうして若君をそのまま戦場に置いて来たのかと恨みがましく思っていた唯。若君からどうしても彼女に渡したいものがあると言われて戻って来たのだと久六から聞かされ、渡されたものを見て絶望的な表情になってしまいます。
それはタイムスリップ装置で……。
幸せな日々ではありながらも、妙に唯がフラグ立てする発言をするな、と不安になっていたところにこれですよ。本当に唯も叫んでいますが、「宗鶴のっ クソハゲがぁ!!」って感じです。結局、唯の婚約の日も若君がいないままに当日になってしまいましたしね。
そして若様がこのタイムスリップの装置を渡したということは、そういうことですね。自分の命がいよいよ本当に危ないと感じ、彼女にいざという時は現代に戻れと伝えているのです。
歴史の転換点、変化を戻そうとする揺り戻しの力にうちのめされる唯でしたが、何やら考えがあるようです。
果たしてその考えとは一体何なのでしょうか?10巻が待ちきれません!
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