海外の名作絵本おすすめ5選!世代を超えて読み続けられている作品

更新:2021.12.20

名作には、名作として世の中に残る理由がありますよね。世代を超えて読み続けられている作品は、やっぱり魅力が詰まっています。国境も世代も超えて、誰もが夢中になれる海外の素晴らしい名作絵本を5冊厳選して、ご紹介したいと思います。

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壮大な自然を味わう『よあけ』

『よあけ』は、ポーランドのワルシャワ生まれの絵本作家ユリー・シュルヴィッツ作・画、児童文学作家であり翻訳家であった瀬田貞二訳の1977年発行の作品です。ユリー・シュルヴィッツは、『空とぶ船と世界一のばか』でアメリカのコールデコット賞を受賞している著名な絵本作家です。

著者
ユリー・シュルヴィッツ
出版日
1977-06-25

月夜から、日がのぼり夜の明けるまでの時間の、湖畔の景色の変化を描いた作品です。おじいさんとまごが、早朝にボートで湖に漕ぎ出すというシンプルな筋書きですが、言葉と絵の表現に臨場感があってみずみずしいのです。刻一刻と移り変わっていく自然の美しさが丁寧に描かれていて、読んだ後にはまるで自分も湖畔へ行ったかのような爽やかな清々しい気持ちになれるでしょう。

この絵本の面白いところは、音や動きが次第に生まれていくところではないでしょうか。静まり返って、音も動くものもない湖畔から、音はないけれど飛ぶコウモリ、後半のカエルの水に飛び込む音や鳥の声、ボートがオールの音やみずしぶきをたてながら漕ぎ進められていく……というように夜から朝に向かって、静まり返っていた世界が動き出していく様子をリアルに感じることができるのです。

この絵本のラストシーンで、朝日がのぼって、山と湖がぱっと明るく輝く情景は、本当に美しくなんともいえない色づかいです。自然の美しさと朝の澄み切った空気感を堪能できる一冊です。
 

心は残る、アナグマが贈った『わすれられない おくりもの』

『わすれられない おくりもの』は、イギリスの作家スーザン・バーレイが24歳のときに手がけたデビュー作で、小川仁央訳の1986年発行の作品です。

みんなに愛されていたアナグマの亡くなった後、森のみんなは、アナグマの思い出を語り合います。アナグマの残してくれたおくりものは、楽しい思い出でした。モグラはハサミの使い方、カエルはスケートの仕方、キツネはネクタイの結び方……みんな最初はうまくできなかったけれど、アナグマさんがそばについて一緒に練習してくれたおかげで今では特技になっています。

著者
スーザン・バーレイ
出版日

アナグマは、ひとりひとりに知恵や工夫を残してくれて、そのおかげでみんなは互いに助けあうこともできるようになります。楽しい思い出のおかげで、みんなはアナグマを失った悲しみをのりこえていくのです。

大切な人を亡くすという経験は、生きている以上誰もが避けられない悲しい経験ですが、この作品から、思い出は残り続けるということに気づかされます。

また、どんなに、得意なものがある人にとっても、練習が必要だったときがあるということ、その練習を見守ってくれた人がいたこと、そんなことに思い馳せると、人は一人じゃないと心強く感じながら、生きていけるのではないでしょうか。

たくましく生きる『三びきのやぎのがらがらどん』

『三びきのやぎのがらがらどん』は、ノルウェーの民話であり、アメリカの絵本作家マーシャ・ブラウン画、瀬田貞二訳の1965年発行の作品です。

自然の中で、たくましく生きるやぎを描いた生命力あふれる物語です。三匹のやぎは、草を食べて太るために山にのぼっていくのですが、途中の谷川にある橋にいる怪物トロルに遭遇します。生き延びるために三匹のとった行動は……。

著者
出版日
1965-07-01

ところで、この物語の主人公たちの三匹のやぎ、みんな名前は「がらがらどん」です。面白くて一度聞いたら耳に残る素敵な名前ですが、同じ名前で、見分けはつくのかな?兄弟なのかな?友だちなのかな?親子かな?と想像の余地はたくさんありますが、小さいがらがらどんも、中くらいのがらがらどんも、大きいがらがらどんも、生命力たっぷりです。

小さいがらがらどんが、そのサイズを活かして生き抜くところが、面白いですね。生命の危機を、たくみに切り抜けて、おなかいっぱい草を食べるがらがらどんたちの姿に、読む人はほっと胸をなでおろすスリルのある絵本です。
 

収穫の喜びをわかちあう『おおきなかぶ』

『おおきなかぶ』は、ロシア民話をロシアの作家アレクセイ・ニコラエヴィッチ・トルストイが再話し、彫刻家の佐藤忠良画、翻訳家であり児童文学者、そしてロシア文学者であった内田莉莎子訳の1966年発行の作品です。

この物語は、おじいさんが育てたおおきなかぶが、大きすぎて、おじいさん一人の力では引っこ抜くことができず、みんなの力を合わせて、収穫する物語です。

著者
A.トルストイ
出版日
1966-06-20

「うんとこしょ どっこいしょ」この掛け声、声に出してみると、とっても耳に心地いいですよね。おおきなかぶは、音読すると、より一層楽しく読めるリズム感あふれる作品です。

かぶが抜けたときの達成感は、苦労した分大きなものではないでしょうか、収穫の嬉しさにとどまらず、みんなで力を合わせてやり遂げる喜びも味わうことができるでしょう。農作業は簡単ではないけれど、だからこそ大地の恵みを受け取るありがたさと喜びを感じさせてくれる作品です。

冒険家、まねっこ『こねこのぴっち』

『こねこのぴっち』は、スイスの絵本作家ハンス・フィッシャー作・画、児童文学作家であり、翻訳家であった石井桃子訳の1987年発行の作品です。

りぜっとおばあさんの飼い猫のなかでいちばん小さいぴっちは、ほかの子猫のようには遊びたくなくて、ちがったことがしたいと考えます。おんどりに憧れて「こけこっこう!」と鳴いてみたり、木の枝を二本つのにみたてて、やぎの真似をしてみたり、アヒルの真似をして泳ごうとしてみたり……

著者
ハンス・フィッシャー
出版日
1987-11-25

ところが、どれもぴっちの思うようにはいかなくて、とうとうぴっちは疲れたのか、重い病気になってしまいます。ぴっちは、りぜっとおばあさんに看病され他の動物たちや家族の猫たちにお見舞いに来てもらい、治ってからもまだすこし甘やかされて自分の居場所を再確認する物語です。

この作品は、ハンス・フィッシャーの絵がなんといっても魅力的。踊るように飛び跳ねる線が、とっても躍動感があって一枚一枚ページをめくってぴっちを探すのが楽しくなる絵本です。絵本の最初では、みんなと一緒にいながら疎外感を感じて寂しそうにしているぴっちが、最後にはみんなの輪の中で満足そうにしているその変化から、ぴっちの成長を感じられます。

海外の名作絵本おすすめ5選紹介させていただきました。世代を超えて読み続けられている作品、それぞれに個性的で面白いものが多いです。定番の絵本を改めて読み返してみると昔読んだころを思い出して、懐かしくなったりするかもしれません。また、新しい発見もあるかもしれませんね。ぜひ、ご覧になってください。

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