今回は世代を超えて愛される名作をボリュームたっぷりにご紹介します。世代も国境も超えた作品・作家の名作と謳われるものばかりです。好奇心を刺激する高い感受性と、深い物語性を養うにはもってこいの作品をご紹介します。
- 著者
- ["エリック=カール", "もり ひさし"]
- 出版日
ある日曜の朝に卵から孵ったあおむしはお腹がペコペコでした。いちご、りんご、みかんなど様々な果物を食べてもお腹は満たされません。
ソフトクリーム、パン、ケーキなどおいしいものをたくさん食べたあおむしは、次の土曜日にはお腹を壊してしまいます。その後、葉っぱを食べておなかを休めたあおむしはさなぎになり、蝶へと変身していくのです。
目に飛び込んでくる鮮やかなカラーリングに魅了されている読者は多いでしょう。その配色はグッズ化されるなど多方面で活かされています。魅力はその色だけではなく、穴あきのページがあるなど仕掛け絵本的な要素も持ち合わせているのです。
果物の数が1つずつ増えていく過程は小さな子どもが数字を知るためにもうってつけです。芸術的なだけでなく、子どもの創造力、学習力などを身につけさせてくれる多面性を持ち合わせています。
歌がついたりぬいぐるみになったりと様々な形で私たちの目に触れる機会が増えた『はらぺこあおむし』。様々な形で展開されている作品なので、それぞれの形で楽しんでみるのも良いかもしれませんね。
- 著者
- ディック ブルーナ
- 出版日
- 2000-12-01
うさぎの夫婦のもとに可愛らしい赤ちゃんのうさこちゃんが生まれました。お祝いのために彼らのもとには鶏や牛など様々な動物が訪れます。
夫婦とうさこちゃんはたくさんの「おめでとう」というお祝いの言葉をもらいました。やがて、彼らとのおしゃべりに疲れたうさこちゃんは疲れて眠ってしまうのです。
正面か後ろ向きしか描かれていない顔や構図、作者の名をとって"ブルーナカラー"といわれるシンプルな配色は、どんな赤ちゃんも喜んで楽しめるといった研究がなされています。安定感のある物語には、科学的な裏付けがあったのです!
また世界中で最もこのシリーズを愛読しているのは日本なんだとか……。多くの魅力を兼ね備えた「うさこちゃん」は意外と知られていない部分も多いのですね。
オランダ出身のデザイナー・絵本作家のディック・ブルーナは、幼いころから芸術に触れ、自身もアーティストになるものと信じ続けていました。その夢をかなえた彼は、児童向け絵本をはじめ、社会福祉にも力を注ぎます。
今や世界中で愛されている作品は、様々な分野で大切にされているのです。改めて手に取って読みたい名作絵本です。
- 著者
- なかがわ りえこ
- 出版日
- 1967-01-20
シンプルに描かれたイラストと登場人物たちの柔らかい表情が安心感を与えてくれます。「ぐりとぐら」シリーズに登場する美味しそうな食べ物のレシピも必見度です!料理番組やレシピ本で特集されることも多いようです。
森に食べ物を探しに来ていたのねずみのぐりとぐらは、とても大きな卵を見つけました。卵が重くて動かせない2匹は、その場で卵を使ってカステラを作ることを思いつきます。
カステラの甘い匂いにつられて集まる森の動物たちは、肉食も草食も関係ありません。ぐりとぐらは彼らを思って愛情たっぷりのカステラを完成させ、みんなで仲良く分けながら食べました。最後は卵の殻を使って車を作り、仲良く2匹で帰ります。
料理の様子をうかがう動物たちの柔らかい表情も見ものです!誰かの笑顔を考えながら作ったものこそ、愛情がつまっているのだと感じられますね。保育士の経験もある、なかがわりえこの子ども目線で制作された絵本は、親御さんも安心して子どもに読ませることができるでしょう。
読後感は温かみと、意外と爽やかさも感じられます。きっと物語の展開が穏やかで、さっぱりとした結末を向かえているからでしょう。物語の最初から最後まで、人を思うことの愛おしさを感じられる名作絵本です。
- 著者
- レオ・レオニ
- 出版日
- 1969-04-01
レオ・レオニの作品を谷川俊太郎が翻訳した『スイミー』。2017年現在でも、たびたび小学生の国語の教科書に掲載されているほどの人気絵本です。
誰よりも早く泳げることが自慢のスイミーの体は真っ黒。あるとき大きな魚に兄弟たちが飲み込まれてしまいます。逃げ切ったのは誰よりも早く泳げるスイミーだけでした。
兄弟たちを失った悲しみから、海の底深くをふわふわと泳ぐスイミーは珍しい生き物たちを見て生きる勇気と希望を持ち始めます。そして出会った仲間たちと知恵を振り絞り、スイミーは大きな魚を追い払うのです。
淡い水彩画が読者の心を癒してくれるでしょう。描かれているわけではないのですが、スイミーをはじめとした海の生き物たちの表情を感じ取ることもできます。またスイミーの心理に呼応するように、明暗が変化していく見開きイラストには、グッと胸に迫るものも感じます。
スイミーの心象変化が背景に用いられる色の明るさと対応しているようです。シーンひとつひとつを大切に描いているのが分かりますね。知恵と勇気を持ち合わせた魚たちに拍手を送りたくなる絵本です。
- 著者
- 加古 里子
- 出版日
レシピ本も多く出版されている『からすのパンやさん』は、子どもだけでなく大人のパン好きにも大好評の作品です。また子どもを思う親の心理も丁寧に描かれた、家族愛の物語でもあります。
パン屋を営むカラスの夫婦に4羽の赤ちゃんが生まれました。親カラスは、大切に4匹を育てていきます。
しかし子カラスが泣くたびに様子を見に行くものですからパン作りは失敗続き、お店は散らかり放題に。徐々に貧乏になっていく一家は途方に暮れるのです。
しかし失敗したパンをおやつとして子カラスに食べさせると、なんと大好評!そしてその噂は町にも広がり、パンブームが始まるのです。
なかなかリアリティのある物語の設定が、より深い家族愛を伝えてくれます。子どもを想う親の愛も苦労もしっかり描かれているので、親となった読者は親カラスに感情移入してしまうかもしれませんね。
見開きいっぱいに描かれた様々なパンのページも有名ですが、物語そのものに注目して読みなおすのも良いでしょう!一家の賑やかな様子に、家族を重ねる読者も多いはずです。
- 著者
- モーリス・センダック
- 出版日
- 1975-12-05
子どもにとっては少し怖いように感じる異世界の生き物たちも、物語を読み進めるうちに不思議と愛着が湧いてくる素敵な作品です。幼い少年の気持ちも丁寧に描いた読み応えがあります。
マックスはぬいぐるみを着て大暴れをしたため、お母さんに怒られてしまいます。そして放り込まれてしまった寝室はなぜか森や野原の景色に!マックスは近くのボートに乗り、たどり着いたのは「かいじゅうたちのいるところ」でした。
彼らの王様になったマックスは、かいじゅうたちと様々な踊りを踊って交流をしていきます。しかし元の世界が恋しく寂しくなったマックスは王様をやめることにしました。「行かないで」とすがるかいじゅうたちを振り切り帰って来たところは、自分の寝室。
怪獣というだけあってビジュアルはかなり個性的なキャラクターがたくさん登場します。しかしマックスとの踊りの場面はとても陽気で、思わず微笑んでしまうほどの平和を感じます。
異世界の生き物との友情と、両親を恋しく思う少年の葛藤が繊細に描かれている愛おしい作品です。異世界の生物との友情だけでなく、親子の絆も感じられるでしょう。
- 著者
- 西内 ミナミ
- 出版日
- 1966-12-15
居場所を求めてさまようゾウのぐるんぱが主人公の本作。様々な経験を重ねていく様子は、どんな社会でも目にすることがあります。自分に見合ったことを探して行うのはとても難しいこと。しかしそれが見つかった時の幸福感と達成感はとても尊いものでしょう。
とっても大きなゾウ・ぐるんぱはいつも一人ぼっちで涙を流していました。仲間のゾウ達はぐるんぱを働きに出してはどうかと提案します。ビスケット作り、お皿作り、靴作り……様々なことに挑戦するのですが、体が大きいぐるんぱはいつも大きすぎるものを作ってしまいます。
ちょうどよい大きさの物を作れず、しょんぼりして涙を流すぐるんぱにある時、「子どもと遊んでほしい」とお仕事が入りました。子どもを喜ばせることができたぐるんぱは幼稚園を開き、たくさんの子どもと遊ぶのでした。
水分の少ない絵の具をたっぷりとつけてべたりと塗りつくしたイラストは、重ね塗りも合わせて色が様々に用いられ目を楽しませてくれます。表情豊かに描かれる登場人物たちは読んでいるとこちらも感情移入してしまうでしょう。
自分にできることには限界があります。しかしそれを見極め、できることを一生懸命に取り組むことに限界はありません。そしてその様子は必ず誰かが見守って評価してくれています。子ども向けの作品としてではなく、“働く大人を応援したい!”という時にも、プレゼントしたい絵本です。
- 著者
- 五味 太郎
- 出版日
- 1982-08-31
五味太郎の作品の中でも小さな子どもから遊べる本作。カラフルな色使いで、見開きいっぱいのイラストを楽しめます。読み聞かせというよりは遊び絵本として見せたい親御さんは多いのではないでしょうか?
金魚鉢から逃げてしまった金魚を探すため、思わず次々とページをめくってしまいます。この本の主役は間違いなく読者でしょう。
金魚を探すため、色々目を向けてみると金魚以外にも面白く魅力的なものがたくさん描かれています。しかけ絵本も多く発表する五味太郎の魅力も担っている作品といえるでしょう。
子どもが“これはなに?”という質問にも答えられる年齢になったら金魚以外も楽しめるはずです。シンプルさとカラフルさを兼ね備えたイラストに見応え・読み応えも抜群!金魚以外のものにも興味を持てるデザインを用いているので、子どもの好奇心をくすぐってくれます。
400冊以上の絵本を制作してきた五味太郎は、世界でも高く評価されています。『たべたの だあれ』や『仔牛の春』などで国内外の受賞歴を持ち、名実ともに世界で有名な絵本作家のひとりです。親子で遊べる絵本として手元に置いておきたい作品でしょう。
- 著者
- ばーじにあ・りー・ばーとん
- 出版日
- 1965-12-16
主人公は田舎に建てられた小さなお家です。彼を中心に変化していく周囲は時間の流れも感じさせます。時が経つことの切なさが心に響く作品。優しい色使いにも癒されること間違いなしです!
田舎にある小さなお家は季節の移り変わりを楽しんでいました。のどかな風景の向こうには街の明かりが見えます。
ある時、小さなお家の前に数台の車やトラックがやってきます。また町の灯りが徐々に近づき、小さなお家を囲むように車が走り、建物が立ち、高層ビルが並びました。ボロボロになる小さいお家を救うために、ある女の人がお家を訪れます。
挿絵そのものが小さなお家を中心に展開していきます。目線を大きく動かさないで全体を楽しめるので、深い物語にも疲れずに読み進めることができるでしょう。配色も明るい色使いで描かれているので、ほっとできる安心感があります。
子どもにとっても切ない物語として印象深い作品となるのではないでしょうか。時間の経過と共に得るものと失うものがあること、失うだけでなく守り続けることの意義を教えてくれる作品です。
- 著者
- ジーン・ジオン
- 出版日
- 1964-03-15
シンメトリーに描かれた表紙のイラストが印象的です。ペットを家族同然に大切にしている読者には共感が持てる作品ではないでしょうか?これからペットを飼おうと検討している家庭にも、楽しんで読んでもらえる作品にもなっています。
黒ぶちの白い犬・ハリーはお風呂が大嫌い。お風呂に入りたくないがために、お家を飛び出して様々なところでどろんこになってしまいます。
工事現場で遊んだり友達の犬とどろどろになりながら鬼ごっこをしたり、どんどん泥だらけになってしまうハリー。一見すると白いぶちの黒い犬となるまでに遊び倒しました。
しかしお家に帰っても、どろんこになりすぎて家族にはハリーと気付いてもらえません。ハリーは家族に気づいてもらうため、自らお風呂に向かい洗ってもらうのです。
オレンジ・緑・黒の3色しか用いられていないのですが、表情豊かな登場人物たちのおかげで挿絵に寂しさを感じません。特にハリーの表情の変化は、こちらもつられてしまいそうになります。
絶妙な配色のおかげで、物語全体に明るさを感じることができ、安心して子どもに読ませることができます。ラストのハリーの表情に癒される作品です。
聞いたことも読んだこともある作品ばかりだったのではないでしょうか?しかし知らない魅力や改めて感じる魅力もあったはずです。長い年月をかけても色あせない魅力を作品ごとにご紹介しました。大人には深い物語性を、子どもには豊かな感受性を与える作品ばかりです。改めて手に取って読んでみるのも良いでしょう!