絵本の魅力と言えば、たくさんの絵や言葉に触れられることや、現実の世界から本の中に入り込んで面白い体験をした気分になれることですね。日常や現実で凝り固まった大人の頭もほぐれるほど不思議な世界を織り成す、おすすめ絵本を5冊紹介します。
仲良しの大クマ君と小グマ君。二人でハチミツとアリの卵を食べていたら、食べ物に混じって不思議な種が出てきました。クマたちが庭にそれを植えてみると、見たことのない植物がぐんぐん成長していくのです。
最初はキュウリくらいの大きさだった不思議な実。4週間もするとクマたちの家と同じくらいの大きさにまで成長します。通りがかったキツネにその実の正体がカボチャだと教えられた二人は、その中をくりぬいて、中に住むことにするのです。
- 著者
- レンナート・ヘルシング
- 出版日
- 1976-10-10
大きなカボチャに5つの穴をあけ、中にたまっていた水を抜いてハチミツを運び込んだ二人。ある日、大波がやってきてカボチャの家が海に乗り出してしまうと、大クマ君と小クマ君は嘆くどころかその状況を楽しみながら釣りを始めます。
まもなく冬がやってきて、海の上のカボチャの家は、窓の外につららができるほど寒くなります。カボチャの家を温めようと薪を割って火を起こしたクマたち。すると、温かくなった空気のせいで海の上のカボチャの家が空へと浮かび上がって行くのです。
どんな状況でも前向きなクマの二人がとても頼もしいこの絵本。困難を面白さや楽しさに変えていくクマたちの姿を、幅広い年齢の子どもに見てほしいと思います。
透明人間って何を食べるんでしょうね。この絵本に登場する透明人間は、主人公の男の子と同じものをよく食べるのです。でも、食べ物は透明ではないので、食道を通って胃に入り、小腸・大腸と消化されていく不思議な光景が見えてしまいます。
まず、透明人間が普通の人間と同じ食事を食べるところが面白おかしいですね。透明人間の体の中で食べ物が徐々に消化されていく様子も、食育の一環と思えば面白いものです。
- 著者
- 塚本 やすし
- 出版日
- 2015-11-06
透明人間が登場する絵本なんて、なにか怖いことが起きるのかと思う子どももいるかもしれません。しかし、この絵本には、とてもまじめに透明人間が食事をして、消化されていく過程が描かれているのです。透明人間の存在など信じていないお母さんが宙に浮くケーキを見た時、それは面白い表情で驚いて見せてくれます。
宙に浮いてお母さんを驚かせたケーキが翌朝には、透明人間の体の中でウンチに変わっていました。お母さんは再び宙に浮くものを見て心底驚きます。しかもその物体はウンチなのです。子どもたちは笑いながらも、人間の体の構造や、食べたものがどうなっていくのかを学ぶことが出来ますね。笑いながら覚えたことはなかなか忘れないものです。
りえは、弟のけんちゃんと一緒に公園に行きました。遊びに夢中になって置き忘れた縄跳びを取りに行くためです。ボール遊びに誘われたりえが木の枝に縄跳びをかけっぱなしにした場所に戻ると、そこにはなぜか縄跳びはありませんでした。
でも、その縄跳びはなぜか、キツネの子どもたちが持っていたのです。りえとけんちゃんが子どもたちの笑い声のする方に行くと、そこにはキツネの子どもが10匹、縄跳びをして遊んでいました。キツネたちは尻尾が邪魔になって上手く飛ぶことができないようです。
- 著者
- あまん きみこ
- 出版日
キツネたちが縄跳びを飛ぶと、だらんと垂れた尻尾が引っかかってしまいます。その姿を見てつい笑ってしまったけんちゃん。キツネたちは驚いて回りを見回します。
隠れてキツネたちを見ていたりえとけんちゃんは、キツネたちに縄跳びの飛び方を教えてあげて、一緒に遊ぶことにしました。子どもは、キツネだろうが人間だろうが、同じ方向を見ていればすぐに仲良しになれるものなんですね。
きつねの神様が本当は誰だったのか、予想外の答えが返ってくるラストシーンはほほえましく、りえの優しさを感じられることでしょう。
ピンク色の空に浮かぶゴム頭のポンたろう。頭がゴムでできているので、いろんな場所にぶつかりながら移動していきます。まずは山の頂上にぶつかり、お次はバットが頭についた大男のバットの部分にぶつかってホームラン!
ゴムあたまのポンたろうの体は、常識では考えられない構造をしています。だから大人が理屈で理解しようとしてはいけないのかもしれません。ゴムあたまに何かがぶつかるたび、ポンたろうは未知の世界へ旅を続けることになるのです。ページをめくりながらワクワクが止まりません!
- 著者
- 長 新太
- 出版日
- 1998-03-25
花畑、オバケの家族、ジャングルなどなど。さまざまな場所を旅したポンたろう。ハリネズミたちの背中の上に刺さってしまうかと思ったら、ハリネズミたちは足を出して、ポンたろうの頭でサッカーをするのです。
ぶつかってはねられるものになら、安心して勢いよく飛んでいくポンたろう。その世界観はどこまでもシュールで、予想外の展開の連続です。最後はゴムの木が優しく受け止めてくれたので、ポンたろうはゆっくりと眠って体を休める事が出来ました。ポンたろうの旅の続きを想像したくなる、そんな絵本です。
全てが電気で動いていたロボットの国の中で、大地震が起きました。すると、ロボットの国では一番時代遅れだと言われていたゼンマイ仕掛けのロボット以外、みんな動かなくなってしまうのです。
ゼンマイロボットはフープ博士の所に助けを求めてやってきました。そのロボットはゼンマイ仕掛けなので、行く先々で動きが止まってしまい、そのたびにゼンマイをまかなくてはいけない面倒な作りでした。でも、なぜか愛着がわいてくるもので、物語が進んでいくうちに誰もがそのロボットを好きになるのではないでしょうか。
- 著者
- たむら しげる
- 出版日
- 1996-09-10
ロボットの国を探検するというストーリーも、不思議な世界が好きな子どもにとってはとても魅力的ですね。フープ博士とゼンマイロボットに同行するルネ君になったつもりで読み進めていけば、その不思議な世界にどっぷりと浸れることでしょう。
マンガのようにコマ割りになっているので、読み聞かせしてあげるというより、自分で文字が読めるようになった子どもにおすすめです。北欧のようでもあり、今までに見たこともないようなキノコの森だったり、未知の世界に迷い込むようなワクワクも感じられる絵本です。
絵本のなかにはこれほどまでに不思議な世界が広がっているんですね。常識にまみれた大人も、この絵本を読めば子どもの頃のように不思議で幻想的でワクワクする世界を存分に楽しめるのではないでしょうか。
子どもと一緒に笑ったり、次の展開を考えたり、予想外の展開に驚いたり。日常を忘れてしまうほど夢中になれる時間が訪れる、そんな一冊が見つかると良いですね。