名作探偵漫画「リバースエッジ」が泣ける!【ネタバレ注意】

更新:2021.11.26

オダギリジョー主演でテレビドラマ化もされた人気探偵漫画『リバースエッジ大川端探偵社』。謎解きの中で描かれる人情ドラマが心にしみる作品です。今回はそんな本作の魅力をご紹介!ネタバレを含みますのでご注意ください。

ブックカルテ リンク

『リバースエッジ大川端探偵社』事件簿その1:カラオケドリーム

著者
ひじかた 憂峰
出版日
2009-10-19

リバースエッジ大川端探偵社は川沿いにある探偵事務所。調査員の村木、受付嬢のメグミ、コワモテの所長の3人が暇そうにしています。

ある日、事務所に訪れたのはボイストレーナーをしているというショートヘアの美人・沢田。首都圏でいくつかカラオケ教室を経営していると言います。

彼女の依頼は何だか遠回りをするような言い方です。

「噂を耳にしたのは三年前…
ある日突然その”招待状”は届くらしいの

沖合に停泊した超豪華客船の特設ステージで…
東洋一のチャンピオンを決定するカラオケ大会が行われるそうなのです」

その後もその噂についての不確かな情報を羅列する沢田。村木は「そろそろ御依頼事をストレートに話してくれませんか」と切り出します。

「最近ではその”噂”がますますエスカレートして…
生徒さんたちに質問されて困ってますの…
いったいどう返答していいのやら」

しかし、それだけのためにわざわざ探偵事務所まで来るはずがありません。村木は更に彼女の真意を尋ねます。それを聞いて決心した様子の沢田の様子は一変、悪女のような雰囲気になるのです。

「オペラ歌手を目指してた…

いちおう音大出身なの わかるでしょ!?
好きこのんで老人たちの先生やってるわけじゃない

このままで終わりたくない…
最後にワンチャンス欲しい」

沢田の願いはその噂の招待状を彼女のもとに届くよう裏工作してほしいというものでした。

次の日から村木は都内のカラオケ酒場を訪ね歩きます。そして朝までカラオケ酒場に通っている村木は疲労困憊。

それに比べ、所長は電話ですべて済ましています。彼の情報網はヤクザの親分からホームレスの元締め、変態性欲の現職刑事、手コキエステ嬢にタクシー運転手と幅広いものです。そして彼の調査により、事件は一気に解決に向かいます。

行き着いた場所は小さな印刷所。そこで見せられたのは3年前に前金も要求しないで作ってしまったという豪華な特殊印刷をされた招待状でした。5万セットもつくったものの、それっきり音沙汰がないのだと言います。

その招待状を持って沢田のもとへと向かう村木。彼女にそれを渡し、こう言います。

「ウチの所長の意見ですが…
何らかの事情で未遂に終ったサギ事件…だと」

ひた隠しにしてきた沢田の熱情を聞いてしまった後だけに、あっけない幕切れに真相をスムーズに伝えられない村木。彼女はそれを聞くと一気に老けたような表情になり、茫然自失としてしまいます。

それを見て、村木は何も言わずに彼女のもとを去っていきました。

夢を諦めきれなかった中年女性の最後の夢が、詐欺事件だというなんともやりきれない結末。夢老い人の女性の悲哀を見事に表現した1話です。

 

事件簿その2:セックスファンタジー

著者
ひじかた 憂峰
出版日
2010-11-27


ある日の依頼主はまたしても綺麗な女性。しかも今回は更に美しく、女優のような出で立ちの和装美人です。

彼女はメグミを見ると「若い女のコには聞かれたくない相談事なのよ」と言って席を外させます。村木は色事に関することだと気づきますが、女の依頼は所長も驚くようなものでした。

「鏡越しに覗き部屋のあるラブホテル!?」
「この浅草周辺に30年ほど前…昭和50年代ころかしら
そんなラブホテルがあったのですって」

まるでファンタジーのような雲をつかむ話。もちろんそんなホテルが実在すれば違法行為で捕まってしまいます。

しかしそのありえないホテルを探して欲しいというのが今回の依頼。所長は彼女とこんな会話をします。

「正式な依頼主は男性ですな!?
30年前に”おいしい快感”を味わった……」
「おっしゃるとおりです
あたくしの主人でして…変態ですの ホホホ」

優雅に笑いながらも溢れる色気を感じさせる理由がわかるようなやりとり。妙齢とはいえ、不思議と男を虜にする魅力があります。

そしてまたしても足で稼ぐしかない村木は、ラブホテルをしらみつぶしに探すのです。まったく情報を得られず、あるホテルではそんな評判が落ちるような部屋をつくるか、と怒鳴られてしまいます。

そんな時にやはりそのホテルを見つけたのが所長でした。村木は肩を落とし、自分の存在意義について疑問を持ってしまいます。

後日依頼者の女を呼び出して地図と電話番号を伝える村木。仕事を終えて帰ろうとすると、女が彼を引き止め、こう言います。

「もうひと仕事してくださらない?
所長さんとあなたにも覗き部屋の”観客”になっていただきたいの」

所長と相談してみると答えた村木ですが、結局そのホテルに行くこととなり……。

続きは作品でお楽しみください。

『リバースエッジ大川端探偵社』を作品で楽しもう!

著者
ひじかた 憂峰
出版日
2011-05-28


今回は訳あり美女の依頼をご紹介しましたが、女性の依頼以外にもまだまだ奇想天外で面白いものがこのあとまだまだ出てきます。思い出のストリッパーを探す老い先短い老人や、「怖い顔グランプリ」に出場したいパン屋など多種多様です。

そのどれもが何だかしんみりと考えさせられてしまう結末で、心に沁みてくるもの。ぜひ作品でその世界観を味わってみてください!

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る