嫌いな人も多いかもしれない、ちいさな虫たちの世界。覗いてみればこんなにおもしろいんです。日頃室内で過ごしがちな子も、外で元気に遊び回る子も、ちょっと絵本を開いて、ちいさな世界に親しんでみてはいかがでしょう。
まっかに熟したおいしそうなすいか。見つけたありは大喜びですが、すぐに悩んでしまう事になります。とっても大きいすいかは、ありのからだが運ぶにはあんまりにも大きすぎるのです。みんなを呼んでもまだ大きい。さて、いったいどうしましょう?
大きくおいしそうに描かれるすいかと、ちいさなありの努力やアイデアがユーモラスに、迫力たっぷりに描かれる、シンプルに楽しめる絵本です。
- 著者
- たむら しげる
- 出版日
まず目を引くのは表紙のすいかの、鮮やかな赤色でしょう。堂々としたすいかはとってもおいしそうに描かれていますし、すいかのあちこちに集まるありは、おいしいからこそすいかに集まっているのです。こんな風に甘くて大きなすいかを目の前にしたらと思うと、きっとわくわくしてしまうでしょう。
そう、すいかはとっても大きくて、ちいさなありが集まったくらいじゃ歯が立たないのです。ありとすいかを見比べてすぐに分かるように、シンプルにはっきりと描かれています。こんな大きなものをどうやって運ぶのか。力を合わせても手におえないものに、ありたちはユニークな方法で立ち向かいます。
普段見ているはずの世界は、大きさが変われば見え方も大きく変わります。ありの視点ではきっと、私たちの見るすべてが何もかも大きく感じるでしょう。そんな中でとってもおいしいすいかというわくわくするものに対して、元気に取り組んでいく。この小さな虫のことが、きっと好きになる。そんな一冊です。
少し手を伸ばしてみれば、ころんとまるまるかわいい姿。きっと他の虫が怖くても、だんごむしまで怖いという人はあまりいないでしょう。
そんな愛嬌たっぷりのこの虫は、実は意外な生態を持ってたりするんです。いつも見るようなかわいい姿から意外な姿まで、しっかりとした知識をやわらかく描かれている観察絵本です。
- 著者
- 得田 之久
- 出版日
- 2005-04-15
よろしくお願いします、と答えたくなるようなタイトルですが、読み終わった時には、きっとはじめましてだったんだ! と思うようになっていることでしょう。
だんごむしが自己紹介をするように、その生態が描かれていきます。絵は貼り絵なのですが、絵柄や貼った紙の質感から、写実的なはずなのにやわらかい印象を得られるでしょう。あのまんまるの姿から連想されるように、和やかな絵本となっています。
ですが語られる知識はきっと知らなかった、想像もできなかったものばかり。知ってたはずの姿が、全然知らないものだったと、新鮮な驚きをもたらしてくれることでしょう。あんなに小さな虫の向こうに、未知の世界が広がっているのです。
とてもわくわくすることでしょう。今どこにいるのか、なんて探してみる気持ちにもなるかもしれません。庭先でちょっと地面を見下ろしてみる。そんな些細な変化が、この絵本との出会いでもたらされることでしょう。
地中で暮らしていたセミくんに、一本の電話が届きます。いよいよだ、と始まる準備。いろんな虫が力を尽くして、何かの準備をしています。
とてもかわいらしく描かれる虫たちがセミくんの「いよいよ」に備えます。それまでずっと続けてきた暮らしから、新しい生活へ向かうのです。それを祝おうとする周囲の温かさや、セミくん自身の過ごすこれからに希望を持てる。そんな優しい絵本です。
- 著者
- 工藤 ノリコ
- 出版日
暮らしの変化、セミが羽化するその瞬間を優しい物語で追う、心温まる一作。皆優しく、セミくんのこれからを祝っていて、セミくん自身も自分の迎える変化を、希望を持って受け入れます。
セミは地中で7年も過ごすそうで、絵本でもその長い生活がそれとなく描かれています。だからこそ、そこを出る時の挨拶は、ちょっと切ないものとなるのです。
柔らかい絵柄の中で、こうした心を動かされるフレーズはより響くことでしょう。少しの切なさや寂しさは、絵本だからこそのストレートな言葉で、さらりと描写されています。ふんわりとした絵の中に記された短い言葉は、その場面で伝えられなければならない大切な一言なのです。
知っている人は多いと思いますが、セミは地上に出てから、そう長くは生きていられません。長年を過ごしたすみかから離れるセミくんは、これからわずかな時間を、懸命に生きる事になるでしょう。だからこそ、これまでのすみかへの感謝はとても大事なものとなっていますし、お祝いはとても盛大なのです。やさしく、かわいらしく、懸命に命と向き合う姿がここに描かれています。
色とりどりのその虫は、思ったよりも模様が多い? ファンも多いだろうかわいらしいてんとうむしの、種類や生態、天敵との戦い方が表情豊かに描かれる絵本です。
とってもコミカルで、自然とてんとうむしの生態を学ぶことができるでしょう。指先くらいの小さな姿を、もっと知る事が出来るようになっています。虫が嫌いな人でも、この絵本ならば怖がること無く親しむことが出来るでしょう。
- 著者
- ["高家 博成", "仲川 道子"]
- 出版日
- 1999-06-20
いろいろな虫の話を取り上げたシリーズのうちの、てんとうむしの生態をしっかりとふまえた一作です。知ってる事から知らない事まで、ストーリーを追う内に自然と頭の中に入っていくことでしょう。
種類による背中の模様の違いや、天敵に襲われ、それを撃退する方法。かわいいストーリーにちょっとはらはらする展開で、すいすいとてんとうむしの雄姿を飲み込ませてくれます。
実際のてんとうむしの行動にはこういうことだったのか、と驚かせられることもあるかもしれません。これからてんとうむしと出会った時に、その行動から絵本を思い出して、ちょっと得意になれることもあるかも。この絵本が、てんとうむしと新たに出会いなおさせてくれるのです。
てんとうむしを前にした時、あれかな? これかな? と想像する楽しみをもたらしてくれる。そんなわくわくをくれる作品です。
アリ、セミ、モグラ。地面の下でも、たくさんの生き物が暮らしています。普段は見ることのできない地下世界では、彼らはどのようにして生活をしているのでしょうか。
リアルな描写でページ内にところ狭しと描かれる虫や生き物たち。網のように張り巡らされた先の住処はどのようになっているのか。暮らしぶりが手に取るように分かる、図鑑のような絵本です。
- 著者
- 大野 正男
- 出版日
- 1988-06-30
温度の変化の少ない地下世界。そこで生活することを選んだ生き物たちは、どのようにそこで生きているのか。知っているようで知らないその様子が、はっきりくっきりと描き出されています。
普通に存在することすら困難な場所、住処の場所からその違いは現れます。住処を作る深さや、食べ物の違いから来る地上の環境の違い、体の大きさに由来する通り道の太さの違いなど。イラストを重視してそうした違いが描き出されています。
地中でどんな生き物が暮らしているのか、想像するような色々な生き物が書かれていますが、その中には予想もできない生き物も描かれています。まさかこの生き物まで地中で暮らしていたなんて! と、楽しい驚きと出会えることでしょう。
生き物はそれぞれ、自ら選択して生きる環境に合わせた進化をします。生態の違いは必然のものです。その必然を知る事は、その種がこれまでどんな環境に直面してきたか、その一端を知る事に繋がります。この本を通して出会った知識は、きっと命、生き方にも繋がっていくことでしょう。
身近な生き物との新しい出会いをもたらしてくれる本の数々。子供に読み聞かせるだけでなく、自分で読んでもわくわくできる本だと思います。今まで知らなかった生き方や性質、生態など、これまでとは違った見方を教えてくれます。