子どもにとって電車とは、迫力満点の乗り物です。線路わきで電車を見ているほどの電車ファンから、電車のおもちゃが大好きな子どもまで、何度でも読み返したくなるような電車の絵本を選びました。
一人で電車に乗っておばあちゃんの家に向かう少女・うららちゃん。ここだ駅に着くまでの間、電車はいろんな駅に停車します。わにだ駅ではワニが乗りこみ、くまだ駅ではクマが乗り込んでくるのです。
電車のなかには続々と動物たちが乗り込み、ぞうだ駅でゾウが乗り込んでくると、シートは満員状態に。その先の駅で乗り込んできたウサギが立っていると、ゾウはウサギを膝に乗せてくれるのです。動物の仲間たちが増えていき、ぎゅうぎゅう詰めの車内。ゆらゆらと揺られる電車の中でうららちゃんはうとうとと眠ってしまいます。
- 著者
- とよた かずひこ
- 出版日
小さな少女うららちゃんが一人でおばあちゃんの住む町に向かう、そのシチュエーションは、子どもにとってちょっとした憧れなのではないでしょうか。電車では、今までに会ったことのない人に出会うことが出来て、それもまた電車の旅の面白い所です。
電車のなかでは、お節介焼きのゾウがうららちゃんに行先を訪ねてきたり、座席のないウサギを膝に乗せてあげたり。本物の電車の中にも、子どもにおせっかいを焼くおばさんやおじさんがいるかもしれないと想像はふくらみます。
気持ちよく眠っていたうららちゃん。ここだ駅に着いたことをゾウが教えてくれると、落っことした切符をウサギが拾ってくれます。電車のドアの向こうには優しいおばあちゃんが笑って待っていてくれるので、ほっと安心。
この絵本は電車の旅の魅力を余すところなく詰め込んでいます。電車を見ているだけで満足していた電車好きの子どもが、この本を読んだら今度は電車に乗ってみたいと思うかも知れませんね。
機関車のちゅうちゅうが繰り広げる躍動感たっぷりの暴走劇を描いたこの絵本は、電車が好きな子どもにとてもおすすめです。ちゅうちゅうはたくさんの人に支えられ、多くの乗客の役に立ちながら毎日仕事に精を出していました。
しかしある時、ちゅうちゅうは思うのです。もし、この重い貨車を外したらどうなるだろう。身軽に、自分の行きたい場所へすごいスピードを上げて走ったらどんなに気持ちがいいだろう。
ちゅうちゅうは人を助ける重要な役割を持っているのに、自分の思いを抑えきれずに身勝手な行動を起こしてしまうのです。ちゅうちゅうがスピードを上げて駅を通り過ぎると、行く先々で人々からは白い目で見られ、燃料は減り続けるのに道に迷ってしまいます。ちゅうちゅうが切望した自由は、手に入れてみると思い描いていたものとは全く違うものでした。
- 著者
- バージニア・リー・バートン
- 出版日
- 1961-08-01
この絵本は、自由とは何かについて考えさせられる絵本です。社会の一部となって、誰かの役に立っていたちゅうちゅうがある日身勝手な行動を起こしてしまう。ちゅうちゅうの行動には、共感できる部分もわずかながらあります。ただ、大人になると経験や理性によって、社会のために生きることが結果、自分のためにもなるとわかるものですよね。
ちゅうちゅうはまだ幼い子どものように見えます。ちゅうちゅうを守る車掌さん、石炭をくれるオーリー、機関士のジムはちゅうちゅうの親のようにも見えるでしょう。自分の思いのままに突っ走って後悔した子どもを温かく迎えてくれる親の姿そのものなのです。
機関車のちゅうちゅうに感情移入したり、3人の保護者の思いにほっこりしたり、ハラハラする冒険もあり、愛情を感じられる描写もある、温かい物語です。
表紙の絵を見た瞬間、電車好きの心をわしづかみにするであろうこの図鑑には、かなりの種類の電車が描かれています。新幹線・特急列車・SL・リニアモーターカーなど。カラフルで、形も色も様々な電車の数々を思う存分堪能することが出来ます。
約70種類以上の電車が掲載されたこの絵本。見開き一杯に新幹線の車両が広がるページでは、新幹線を正面から見た図や、それぞれの電車の豆知識なども盛りだくさん。ひらがなで書かれているので、ひらがなを覚え始める子どもにも楽しんでもらえる一冊です。
- 著者
- 五十嵐美和子
- 出版日
- 2017-04-27
内容はボリューム満点なのに、サイズは持ち運びしやすいサイズ。お出かけや、病院などの待合室にもぴったりです。暇つぶしのつもりで読んでいると、いつの間にか引き込まれるのが魅力ですね。
大好きな電車の豆知識がたっぷり詰まっているので、電車についてもっと知りたいと思う子どもに読んでもらいたい一冊。一つ一つ丁寧に描かれた電車の絵を眺めているだけでも、時間があっという間に過ぎることでしょう。知識と学びの宝庫でありながら、見ていて飽きない素晴らしい絵本です。
若い電車たちの間で、一つだけ目立つほど古い機関車やえもん。若い電車たちを見て、汚くなってしまったやえもんは寂しい気持ちに包まれます。
体も思うように動かないし、できる事も減ってきたやえもん。お昼ご飯の石炭を食べていると、石炭など必要のない新しい電車たちは、やえもんをバカにして笑いものにするのです。みんなのために一生懸命働いたあげく、こんな気持ちになるなんて……やえもんの気持ちは悲しみから怒りに変わり、怒ったやえもんの吹いた火の粉が田んぼに燃え移り、火事になってしまいます!
火事になると怒るのは百姓たち。怒った百姓たちに追いかけられ、やえもんは壊され鉄くずにされることが決まってしまうのです。
- 著者
- 阿川 弘之
- 出版日
- 1959-12-05
壊されてしまうなんて、悲しいですね。子どもには、古くなって体が動かなくなる悲しみなど、想像するのも難しいでしょう。壊されることをおそれるやえもんの視点で描かれているので、子どもは今までになかったものの見方ができるようになるかもしれません。
しかし、たまたま通りかかった交通博物館の職員さんが、やえもんが珍しい型の機関車であると気づき、博物館で保存することに決めたのです。こうしてやえもんは壊されずに済みました。
怒ったり、泣いたり、悲しんだり、笑ったり。やえもんの表情はバラエティ豊かで、やえもんを取り囲む電車たちも様々な種類のものがあります。登場するキャラクターを象徴するような擬音もそれぞれのキャラクターを引き立たせるものでとても魅力的です。この電車はどんな電車?と親子でクイズを出し合いながら読むのも楽しいかもしれません。
電車の歌って何だろう。この絵本の表紙を見た人は思うかも知れません。でも、読んでみれば一目瞭然、電車が出す音をただひたすら追っていく絵本なのです。
主人公らしき親子が駅で電車を待っていると、音を立てながら電車がホームに入ってきます。声に出して電車の音真似をする必要があるので、読み手は電車の音を思い出しながら、リズムよく読んであげてみてください。
物語は、電車の先頭車両の窓からの眺めとともに、たくさんの音を立てて進みます。踏切を越え、向かい側の列車とすれちがい、鉄橋を越えてカーブを曲がり、線路の切り替えまで本当に電車に乗っているかのように体験することが出来るのです。
- 著者
- 三宮 麻由子
- 出版日
- 2009-04-10
電車が奏でる音を、電車の歌として表現したこの絵本。臨場感あふれる絵と、どこかで聞いたことがある擬音の数々が、読み手を本当の電車の中にいる気分にさせてくれます。
実際に電車に乗って、この絵本を眺めてみて、似たような音を探すのも楽しいと思います。奥行きもあり、広がりを感じられる挿絵なので、電車同士がすれ違う場所などは、迫力満点です。電車に乗っている時に聞こえる音に、これほどのバリエーションがあるのかと驚かされる一冊です。
電車好きの子どもなら、読み手と一緒に大合唱して楽しんでみてはいかがでしょうか。
電車を題材にした絵本には、これほどまでにたくさんの視点や楽しみ方のバリエーションがあるものなんですね。電車を擬人化したストーリーや、電車に乗って旅をした気分になれる絵本など。電車好きの子どもでなくても、電車を好きになるのではないでしょうか。
絵本のページを開いて子どもの笑顔がこぼれる、そんな一冊が見つかると良いですね。