16年前の片思いの相手がタイムスリップしてきたというSF漫画。誰しもあるであろう青春の傷と、時間がすぎて大人になった主人公の気持ちとの対比に切なくなる作品です。今回はそんな本作の魅力をご紹介!ネタバレありなのでご注意を。
主人公の鳥羽は最近同棲を始めた彼女・みい子とラブラブの32歳。
一見平和な毎日を送る彼ですが、実は過去に大きな傷を抱えていました。それは初恋の人の失踪。しかもいさかいを起こしたその日、彼の目の前で彼女は消えてしまったのです。
しかし、すでにあれから16年。新しい彼女もできた彼は、ついに過去を認めながら生きる道へと踏み出します。そして彼はみい子を誘って、初恋の人・さくらが消えた場所へとやってくるのです。
それは彼の出身高校の、桜の木の下。言葉に詰まりながら今までの思いの丈を吐露した彼を、みい子は優しく抱きしめます。
過去がやっと過去として、彼の中に刻まれようとしていました。あたたかな日差しがふたりを包み込みます。
と、その時、何の脈絡もなくふたりの目の前に突然、あの日のままのさくらが現れるのです。雨に濡れ、いさかいのなかで鳥羽にひどいことを言ってしまったと後悔している彼女が。
驚いて目をみはる鳥羽。そしてそこから、過去と現在との間で苦悩する、彼の日々が始まるのです。
- 著者
- 緑のルーペ
- 出版日
- 2015-08-10
鳥羽とさくらのいさかいの原因。それは、さくらの告白が原因でした。
鳥羽はかねてからさくらに思いを寄せており、ひょんなきっかけから一緒に昼休みを過ごすようになります。それから時間は経ち、彼は彼女の家で遊ぶようになるまでに仲良くなりました。時々思わせぶりなことを言う彼女に、鳥羽はさらに想いを増していきます。
そんななか、いつもさくらをからかっている倉橋とさくらが喧嘩をして、頭を打ってしまった彼を彼女が保健室へと連れて行きます。遅れてふたりを追う鳥羽。
ふたりの姿を見つけ、声をかけようとしますが、彼はさくらが倉橋に弁当を作ってきていたという衝撃の事実を聞いてしまうのです。
今までの思わせぶりな発言はすべて、倉橋に向けられていたものだと知る鳥羽。彼は物陰でしばらくふたりの話を聞いていますが、ふたりが怪しい雰囲気になりキスをしそうになったところで、とっさに割り込んでしまうのです。
彼を見て興が冷めた倉橋はその場をあとにし、さくらは話しかけてくる彼を無視して帰ろうとします。外に出てもついてくる彼を見て、彼女はこう言い募るのです。
なんで邪魔したの 鳥羽が居なかったらうまくいってたのに!
なんなの!ただの友だちのくせに
馴れ馴れしいし 人の邪魔ばっかりするし!
鳥羽が居なかったら倉橋君と二人っきりになれたのに!
(『青春のアフター』1巻より引用)
いつしか降り始めた雨は、彼女の言葉とともにどんどん強くなっていきます。鳥羽は好きな子からの突き刺さる言葉の数々を聞くのを嫌がり、耳を塞ぎ、かたく目をつむります。しかし彼女は、口を突いて出る言葉を止めることができません。
鳥羽なんかいなくなっちゃえばいいんだ!!
(『青春のアフター』1巻より引用)
耳を塞ぎ続ける鳥羽でしたが、その言葉のあとに何も言ってこない彼女を不思議に思い、目を開けます。するとそこにもう彼女の姿はなく、彼は少しほっとしながらも、明日以降どう仲直りをすべきか雨に濡れたまま途方に暮れるのでした。
しかし、その日を境に彼女はこの世からいなくなってしまったかのように、姿を消してしまうのです。彼は自分が選ばれし者ではないという青春の痛みをこの失恋によって知り、それをうまく消化することができないまま大人になっていったのでした。
16年後にやってきたさくらですが、今では唯一の身内だった祖母は亡くっており、誰も頼りとなる人がいなくなってしまっていました。そこで仕方なくさくらと一緒に暮らすことにする鳥羽ですが、彼はみい子とは同棲を始めたばかり。当然みい子は面白くありません。
しかし彼は何とかふたりに仲良くなってもらおうと、ふたりが大好きなゲームを共通の話題にして見事仲良くさせることに成功します。そんなふたりを見て、当分3人暮らしか、と考える鳥羽。やはり彼も彼女を少し疎ましく思っているのです。
「なんていうか……………めんどくさ…
そう 面倒くさい だってもう32歳だぞ?
高校時代の片思いなんかに振り回される年じゃあない
さくらのことなんか忘れてみい子と幸せになりたかった なのに…」
(『青春のアフター』1巻より引用)
勢いでさくらを助けると言ったことを後悔する鳥羽。「16年も経って今更さくらに未練なんか……」と考えますが、学生時代の彼が、現在の彼の気持ちに疑問を投げかけてくるのです。
今というものがありながらも高校生時代に傷ついた自分は、さくらを好きだという衝動を消させてくれないのです。この状況も、そして過去を消せない自分も、面倒くさいと思うのでした。
青春を青春として終わらせることができなかった彼は、果たして過去と、そして現在とどう向き合っていくのでしょうか?
1巻では、消えたはずのさくらが鳥羽の目の前に現れ、今の彼女であるみい子との間で、揺れる心情が描かれました。この巻では、高校時代にさくらが消えた後、残された鳥羽と倉橋の回想シーン、そしてその後の鳥羽の大学生時代に焦点が当てられます。
自分の目の前で消えてしまったさくら。元々好意を寄せていた鳥羽ですが、彼女が消えてしまった後もその想いは消滅することはありませんでした。
- 著者
- 緑のルーペ
- 出版日
- 2016-03-12
大学生になってから、鳥羽はさくらによく似た女性と付き合います。そして、その彼女にさくらが着ていた制服と同じものを着せ、セックスにふけるのです。16年前に再びタイムスリップしていた彼女は、クローゼットの中からその様子を見てしまいます。
さらに見つけたのは、鳥羽が書きためていた日記。そこには、さくらに対する一途な想いが綴られていました。そのときに初めて彼女は、自分の中に芽生える彼への想いに気がつくのです。
過去の鳥羽を知ってしまったさくら。戻せない過去。複雑な関係の決着点は、はたしてどこにあるのでしょうか。3巻に続きます。
せっかくみい子との同棲生活が始まったのに、突然消えたはずのさくらが現れて、鳥羽の想いは揺らいでいきます。
そんな彼を見かねたみい子は、自分の実家に行こうと提案。鳥羽もさくらから離れなくては、という気持ちがあったため、その提案にのります。
一方のさくらは、過去の鳥羽の想いを知ってしまってから、心の中の彼の存在が大きくなっていってしまうのです。倉橋の助けもあり、みい子の実家に行ってしまった彼を追いかけに行くことになります。
- 著者
- 緑のルーペ
- 出版日
- 2016-11-11
一旦は諦めがついたはずの、さくらへの想い。16年という長い年月が過ぎ、忘れていたはずでしたが、いざ目の前にするとかつての想いがよみがえってしまうのでした。
みい子を大切にしたい気持ちと、さくらへの想いが拮抗しあい、彼は自分でもどうしたらいいかわからない状態です。そんな状態でしたが、「みい子と結婚する」ことを公言。決めた後も、これでいいのか、と迷う彼でしたが……。
続く4巻で物語は完結。揺れる三角関係から目が離せません。
鳥羽、みい子、さくら、倉橋たちは大人の修学旅行と題してバリ島へ向かいます。こじれた関係は、この旅行をきっかけに、さらに深みへと進んでしまうのです。
3巻の終わりで、さくらは鳥羽に飛びついてキスをしました。そのとき、2人は湖に落っこちてしまいます。びしょ濡れの2人を乗せた車内の空気は最悪で、みい子はずっと泣いていました。鳥羽の気持ちがはっきりせず、みい子とさくらの間を行ったり来たりするのですから、傷つくのも無理ありません。
- 著者
- 緑のルーペ
- 出版日
- 2017-08-10
鳥羽への想いを諦めきれないさくらは、みい子に「一日だけ鳥羽とデートさせてほしい」と願い出ます。みい子は鳥羽に「別に帰ってこなくていいから」と言い放ち、さくらの申し出に許可。1日限りのデートで、鳥羽・みい子・さくらの運命ははたして……?
終着に向かって、急展開が進む4巻。もう1人のさくらが現れたり、鳥羽もタイムスリップに巻き込まれたりするなど、物語が次々に進んでいきます。
彼が選ぶのは、さくらなのか、それともみい子なのか……。涙があふれる最終巻、結末はぜひご自身でお確かめください。
- 著者
- 緑のルーペ
- 出版日
- 2015-08-10
誰しも辛かった青春時代の思い出はあるかと思います。しかしそれを忘れたり、乗り越えたりして現在を生きるようになるのではないでしょうか。
鳥羽も、さくらとのいさかいと彼女の失踪からやっと目を遠ざけ、現実に生きようとしていたところだったのです。しかし突然に再び目の前に現れたさくら。それによって彼は今までどうにか抑えてきた気持ちと、再度向き合うことになるのです。
はたして彼は『青春のアフター』にどう始末をつけるのでしょうか?