『ノルウェイの森』を分かりやすく解説!残酷な愛の物語がそこにはあった!?

更新:2021.12.20

村上春樹の名作『ノルウェイの森』をさまざまな角度から徹底解説!残酷で救われないけど、どこか美しい。現代にも通じる愛の構図がそこにはあったのです。 

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『ノルウェイの森』を通して村上春樹が伝えたかったこと

都内の大学に通う主人公「ワタナベトオル」は、唯一の親友「キズキ」が自殺した日を境に、他人と深く関わることを避けるようになります。そんなときキズキの親友「直子」と出会い、同じ痛みを持つ者同士で惹かれあい、ついには関係を持ってしまいます。

親友の恋人だったにも関わらず、直子は処女だったのです。あんなにも仲の良かった2人が、どうして一度も関係を持たなかったのでしょうか。

 

著者
村上 春樹
出版日
2004-09-15


「村上春樹を読んでみたい」「読みたいけど、どれから読んだほうがいいんだろう」と思っている方は、まずはこの『ノルウェイの森』から読むことをおすすめしたいです。

理由はいくつかありますが、なによりまず読みやすい。世界各国で翻訳されている本というのは、それだけ普遍的な要素を含んでいるということになります。つまり、人々の心に浸透しやすい物語構造なんですね。

この『ノルウェイの森』も全世界で翻訳されており、世界の本屋に並べてあるのです。それだけ人間の根底にあるものに働きかける魅力があるということでしょう。

もうひとつの理由は、作中で物語を大きく動かしている謎にあります。

それは、かつて自殺した親友「キズキ」とその恋人である「直子」の関係です。この2人は幼馴染のカップルで、とても仲がよくいつも一緒でした。なのに、2人は一度も「寝なかった」のです。

直子はもちろんキズキのことを愛していたし、キズキも直子のことを愛していました。2人は深く愛し合っていたのに、一度もそういう関係になりませんでした。

そしてキズキはある日突然、自宅のガレージで自殺してしまいます。

主人公のワタナベはそのとき深くショックを受け、逃げるように地元から離れて東京の大学へ進学。直子も傷心のまま、東京のミッション系の女子大学へ進学していきます。

ワタナベと直子は東京の街でばったり再会し、同じ傷ついた者同士惹かれあっていくのです。そうして2人はついに関係をもってしまい、直子は処女だったということが明らかに。

なぜ直子はキズキと寝なかったのか。

これが本作、最大の謎なのです。

劇中では直子の口から「いろいろ試したけど、キズキくんとは濡れなかったの」と語っていますが、どうして彼らはセックスできなかったのでしょうか。

そしてなぜ直子は主人公とは寝ることができたのでしょうか。

これにはさまざまな考察があり、発刊された当初はさまざまな解説本が出ましたが、結局どれも推察の域を出ることはありませんでした。

どこまでも読者の想像に委ねたその作風は、一部では「中身がない」「安っぽい」と揶揄されることが多々ありました。

しかし同時に、それだけフックの強い作品であることの証明にもなっています。読んだ人の感情を強く刺激する作品なので、そのぶん反響も強く現れてしまうのでしょう。

残っていく作品は、それだけ強烈な存在感がありアクが強いものが多いものですよね。それゆえに反発や拒絶も出てきてしまいます。

この『ノルウェイの森』も発刊されてからずいぶん経ちますが、いまだに本屋にいけば置いてあるし、図書館にも置いてあります。時代が変わって、世代が変わっても買っていく人がいるのです。そうしていずれは古典になっていくでしょう。

村上春樹は、主人公を通してこう述べています。

「傷ついた心を癒すことは誰にもできず、傷が癒えても次にくるもっと大きな悲しみには太刀打ちできない」
(『ノルウェイの森』より引用)

この言葉は作品を読んだ人にしかわからない大きな意味を持っており、「また読み返してみようかな」と思わせてくれるきっかけにもなっています。

何度読んでも新鮮さを感じるこの『ノルウェイの森』は、きっと村上春樹が本を読むことの楽しさを我々に伝えるために書き上げた渾身の作品だったのではないかと思います。

村上春樹の作風として、ダークなファンタジーを思うかべる人もいるかと思いますが、この作品は純粋に現実世界のものだけで書かれています。異世界に行ったり、パラレルワールドに迷い込んだりする作品が多いなか、『ノルウェイの森』は終始現実世界であれこれ奔走するのです。

そういう意味では村上春樹初心者でも読みやすく、そして他の作品も読んでみたくなるようなステップになるような作品といえるでしょう。

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