阿部智里のおすすめ小説5冊!「八咫烏」シリーズを書き継ぐ作家

更新:2017.6.4

早稲田大学在学中の2012年に20歳で、史上最年少の松本清張賞を受賞した阿部智里。そのデビュー作であり、以後、圧倒的な人気シリーズとなっているのが「八咫烏」シリーズです。ファンタジー小説ファンならずとも引き込まれるシリーズの魅力に迫ります。

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20歳で松本清張賞!阿部智里が描く壮大な世界とは?

阿部智里は、1991年生まれ群馬県出身の作家です。早稲田大学在学中に『烏に単は似合わない』で、松本清張賞を受賞。20歳での受賞は、この賞の最年少記録になっています。

その後、早稲田大学大学院に進学しつつ、「八咫烏」シリーズを中心に新進作家としての歩みを続けています。

「八咫烏」シリーズは、人として暮らしながら時に烏の姿になる存在「八咫烏」が住む異世界「山内」が舞台。「宗家」と呼ばれるロイヤルファミリーを中心に、東西南北の四家が権力争いを繰り広げる血生臭い世界ですが、そこに登場する人物たちは、お茶目だったり、一途だったり、魅力的な人たちばかりです。

全体としては、日本の古い話のようでもあり、また、未来の話のようでもある。そんな不思議な世界の設定が、壮大で細かく、また色彩鮮やかに描かれていきます。

登場する人物のまとう衣装、住む家の造りの描写が細かく、まるで絵画を見ているかのように鮮やかに読者の心の中に広がってくるのです。

ファンタジー小説が好きな人や、時代小説が好きな人にもおすすめのシリーズです。

阿部智里の「八咫烏」シリーズ1作目!華麗なる姫たちの権力闘争

普段は人間の姿をしていながら、時によっては烏に姿を変えられる。そんな「八咫烏」と呼ばれる者たちの住む世界「山内」を舞台にした物語です。

物語は、この「山内」を統治する「宗家」の若宮の妃を、中央貴族である東家、西家、南家、北家のそれぞれから差し出された候補の中から選ぶ、というところから始まります。

四家のパワーバランスが拮抗する中、各家からのプレッシャーを背負って集まる姫君たち。そして、彼女たちを取り巻く女房や家臣たちにもさまざまな思惑があり……。

自分磨きにしのぎを削る姫たちを横目に、一向に姿を現さない若宮。なぜ若宮は来ないのか、という焦りと極度の緊張状態の中に置かれた姫たちの間で、やがて起こる殺人事件。その犯人と黒幕の人物とは……?

著者
阿部 智里
出版日
2014-06-10

本作の魅力の一つは、思わず壮大な「山内」の世界に引き込まれてしまうことです。微細な表現で描かれる姫君たちの着物や、宮殿のしつらえなどにはうっとりすること間違いなし。

一方で、主人公の姫と仲の良かった女官は命を絶たれ、ライバルの姫は実家からの入内のプレッシャーで心を病むなど、女性たちとそのバックボーンにいる貴族たちの権力争いは、これでもかというほど血生臭く描かれていきます。

ファンタジーの世界のようでいて、美しさと醜さとの対比がこれでもかと描かれていく様は圧巻です。

阿部智里が描く「八咫烏」シリーズ人気の主従コンビが登場!

前作の『烏に単は似合わない』が女性を中心にしたサスペンスだったのに対し、本作はその女性たちのあこがれの君だった若宮が中心のお話です。

主人公は、地方豪族のダメな次男坊、雪哉。彼の実家は、「山内」の貴族である北家の領地に住む地方豪族ですが、次男坊である彼は親からも見捨てられたような存在でした。

ひょんなことから、「宗家」の若宮の側近になるのですが、若宮の周りでは、次の皇太子の座を巡ってさまざまな権力闘争が巻き起こり、雪哉も命を狙われることに……。

前作で描かれたきらびやかな姫たちは姿を隠し、今回は若宮とその兄である、前の皇太子を担ぐ者たちとの戦いを中心に物語が展開していきます。

はたして、どちらが本物の為政者としてふさわしいのか。若宮と雪哉を取り巻く人々の、誰が味方で誰が敵なのか。最後にはアッと驚く結末が待っています。

著者
阿部 智里
出版日
2015-06-10

雪哉と若宮の軽妙なやりとりがとにかく面白いです。

「何度も言いますけどね、あんた、いずれその軽率な行動のせいで死にますよ」
「大丈夫だよ。私は金烏だから。」
「答えになっていません。」
「そう?」(『烏は主を選ばない』より引用)

花街に誘われた雪哉と若宮とのやり取りは、いつもことほど左様にフランクなので、ついこの2人は主従関係だったよね?と思ってしまうのです。

でも、こうしたやり取りの間に出てくる、若宮と雪哉それぞれの家の歴史や領地への愛など、複雑に絡み合った感情には、読んでいる方も心を動かされます。

ラストの展開に「あれ?!」と裏切られる読者の方もたくさんいるはず。でも、ご安心ください。次の『黄金の烏』に乞うご期待ですよ。

八咫烏たちに迫る危機とは?阿部智里の才能が光る一冊

「八咫烏」シリーズ第3作。

実家で元通りの生活を送っていた雪哉に、再び若宮からの連絡が。「山内」で、麻薬のようなものが不法に流通する事態が起き、その捜査を命じられます。

その捜査過程で、若宮と雪哉が出くわしたのは、最北の地の鄙びた村が大猿に襲われ、一村亡所になるという惨劇でした。凄惨な事件を追う若宮と雪哉に身の危険が迫ります。

著者
阿部 智里
出版日
2016-06-10

前作『烏は主を選ばない』で、がっちり組まれた若宮と雪哉のタッグが復活。軽妙なやり取りが楽しいのはもちろんですが、主人公たちが様々な出来事に直面するたび、彼らの成長していく様が描かれていきます。

前作までは、「山内」内部の政争が中心に描かれてきましたが、今作では新たに外敵との戦いも浮上。神に守られていると言われてきた「山内」に危機が迫ります。

いつも変わらないキャラクターがそこにいる安心感もありながら、雪哉の人としての成長、若宮の為政者としての覚悟など、読む人の心に訴えかけてくるものが多い作品です。

若き八咫烏たちの青春『空棺の烏』

「八咫烏」シリーズ第4作。

地方豪族の次男坊でありながら、「山内」の次期最高権力者、若宮の近習として仕えてきた雪哉は、優れた武人の養成機関「勁草院」に入学することになります。

そこで出会ったのは、出身も立場も違う少年たち。切磋琢磨しながら育ってゆく、彼らの間に沸き起こる対立。

さまざまな過去を背負いながら、頭と体を磨いていく少年たちの青春の日々の裏で、「山内」には、ある危機が近づいていました……。

著者
阿部 智里
出版日
2017-06-08

一見学園ものに見える本作ですが、1作目から引き継がれる政治の影や、猿との戦いなど、「山内」におけるさまざまな問題をはらんで、物語は進んでいくのです。

「山内」の中における身分差別や外敵との対立、長い歴史に秘められた物語など、さまざまな問題に立ち向かっていく雪哉の姿が描かれます。

「勁草院」に入ったばかりの雪哉は、同室となった友達に、「茂さんと仲良くなれてよかったよ。絶対、一緒に山内衆になりましょうね」と、無邪気な様子を見せますが、その後、雪哉の行動は、同胞や「勁草院」の教官をも驚かせるものに。一豪族のぼんくら息子が、国の大事を背負う存在にまで成長していく様子は圧巻です。

息を呑むラストまで、目が離せない作品となっています。

ついに物語の秘密に震撼する、阿部 智里の「八咫烏」シリーズ5作目!

これまでの作品とはガラリと趣を変え、「山内」という異世界から現代にアプローチする作品になっています。

主人公の女子高生・志帆は両親を事故で亡くし、祖母と二人暮らし。音信不通だった親戚との再会で、彼女は昔、祖母が逃げてきた村の生贄の儀式に選ばれてしまうことに。

志帆がささげられた相手は、あの「山内」を守る山神。身の毛もよだつ恐怖の中に陥れられた志帆の前に現れたのは、「八咫烏」の奈月彦でした。彼の忠告、そして、目の前にあらわれた不思議な女性の幻の導きで、一度は山神から逃れた志帆ですが、あるきっかけで、再びその足は山神のもとへ……。

「山内」の世界が生まれたいきさつや、今までのシリーズで秘されてきた若宮の過去、猿と烏の関係性など様々な「山内」秘話が明かされます。

著者
阿部 智里
出版日
2016-07-21

現代の女子高生が、おなじみの異世界「山内」と通じてしまう、というアプローチで、今まで明かされてこなかった「山内」の秘密をイチから解き明かしていきます。「山内」側から描いてきた前作までのストーリー展開とは大きく異なり、ありふれた言葉でいえば「外伝」や「異聞」に。

恋の要素も交え、改めて「山内」を取り巻く世界の大きさや歴史の深さを感じさせるものになっています。

だんだんとシリーズは終盤に差し掛かっていく様子。壮大な物語は、次作2017年7月発売予定の『弥栄の烏』で、第1部が完結されるようです。

人気の若宮も登場しますので、ファンの方、ご安心くださいね。

壮大な世界観に裏打ちされた「八咫烏」シリーズ。ストーリーの面白さ、展開の速さに引き込まれ、ついつい時間を忘れて読みふけってしまう作品となっています。

作家・阿部智里の頭の中に、この世界がどこまで広がっているのか、覗いてみたいファンがどれだけいることか。ぜひ、みなさんもこの世界を体験してみてくださいね。

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