誰もが小さいころに一度は読んだことがあるであろう名作「3びきのこぶた」は、元はイギリスの昔話。お話の筋や結末がソフトな内容に改変されていたり、大人向けパロディになっていたり、作者による絵の違いも大きいです。さて、あなたならどれを選びますか?
お母さんに、大きくなったから自分で家を建てるように言われ、家を出た3びきのこぶたたち。
1番目のこぶたはわらの家、2番目のこぶたは木の家をつくり、3番目のこぶたはレンガの家をつくりますが、そこへオオカミがやってきて……。
最後は、レンガの家に煙突から入ろうとしたオオカミが、煮え立った鍋に落ちて死んでしまうという結末です。
- 著者
- いもと ようこ
- 出版日
絵はいもとようこ。彼女独特の柔らかいタッチで描かれた、見ていてほんわかする絵です。
この作品では1番目と2番目のこぶたはオオカミに家を壊されてしまいますが、3番目のこぶたが作ったレンガの家に逃げるので、オオカミに食べられることはありません。
お話の結末は、オオカミがあっさり死んで終わるという、ちょっと残酷な、でも、小さい子供にも分かりやすいものになっています。しかしながら、結末のわりに残酷さをあまり感じないのは、いもとようこの絵ならではでしょう。
絵に背景はなく、話が簡略化されていて話の展開が早いので、赤ちゃん~小さい子ども向き。ボードブックのため本のつくりが小さく紙が厚いので、自分でめくりながら本を読む練習にもおすすめです。
元のお話に忠実に描かれた作品です。
1番目のこぶたはわらの家をつくり、2番目のこぶたは木の家をつくりますが、それぞれオオカミに家を吹き飛ばされたうえに、こぶたたちは食べられてしまいます。3番目のこぶたはレンガを積み重ねて頑丈な家をつくり、オオカミを撃退して、最後はこぶたがオオカミを大鍋で煮て食べてしまうのです。
時間はかかったけど、地道にコツコツと堅実な仕事をしたから良かった。そう思える結末になっています。
- 著者
- 山田 三郎
- 出版日
- 1967-04-01
1番目と2番目のこぶたは、おおかみに食べられてしまう。おおかみは、3番目のこぶたに食べられてしまう。
子どもにとっては残酷なのかもしれませんが、そういった残酷さを隠すことなく、子どもに”教訓”として伝える役割を持った作品は、時間はかかっても着実にやることの大切さを教えてくれます。
そして、悪いものは悪い、罪を犯した者は罰せられるということが、子どもでも分かりやすいのです。
どんな話もハッピーエンドで終わる傾向が多い近年の絵本とは一線を画した、昔話の絵本。結末を大団円にした改変版に疑問を感じる方におすすめです。
貧乏で暮らしていけないからと、家を出されてしまう3びきのこぶたたち。お母さんが涙を流しながら見送っているシーンから、この作品は始まります。
1番目のこぶたと2番目のこぶたは、オオカミにあっさりと家を吹きとばされ、そして食べられてしまいました。3番目のこぶたがつくったレンガの家にもオオカミがやってきますが、レンガの家は吹き飛びません。
それでもしつこいオオカミは、知恵を絞ってこぶたを外へ誘い出そうとして……。
- 著者
- ポール ガルドン
- 出版日
本自体は小さ目ですが、お話が簡略化されているわけではなく場面ごとに絵が丁寧に描かれているので、ページ数は多めですが話の内容がとても分かりやすいです。
3番目のこぶたを狙ったオオカミは、こぶたを外へ誘い出して食べようとあの手この手を考えるのですが、こぶたの方が一枚上手で、オオカミの行動の裏をかいて難を逃れます。
怒ったオオカミは煙突から家に入ろうとして鍋に落ちてしまうのですが、そのオオカミを鍋でぐつぐつと煮ているときのこぶたからは怖がるそぶりが全く感じられず、普通のお料理をしているようにしか見えません。
オオカミはこぶたの夕飯になってしまうのですが、最後のページにこぶたが幸せに暮らす姿が描かれていることで、穏やかな結末となっています。
おなじみのストーリーではありますが、こぶたたちが建てたそれぞれの家が一味違います。
1番目のこぶたは安い工業用素材の家を、2番目のこぶたはワンルーム風のガラスの家を、3番目のこぶたは石とコンクリートの家を建てるのです。実はこぶたたちは建築デザインの才能があり、家の中は有名デザイナーによる家具が置かれている、羨ましいくらいおしゃれな家なのでした。
さて、オオカミに吹き飛ばされなかったのは、誰の家でしょう?
- 著者
- スティーブン・グアルナッチャ
- 出版日
- 2013-04-05
この作品に登場する3びきのこぶたのモデルは、世界的に有名な建築家のフランク・ゲーリー、フィリップ・ジョンソン、フランク・ロイド・ライトで、こぶたたちが建てた家はそれぞれの代表作(つまり実際の建築物)だそうです。家に置いてある調度品も、世界的なデザイナーによる実在のもの!
絵はスティーブン・グアルナッチャ。スウォッチの腕時計やニューヨーク近代美術館のカードなどを手掛けたデザイナーとあって、描写が見事としか言いようがありません。
建築好き、デザイン好きな方はもちろん、絵がとても面白いので、元のお話を知っている大きなお子さんにもおすすめです。
母親から、広い世界に出て自分の家をつくるように言われて家を出た、3びきのオオカミ。この作品では、家を建てるのがオオカミで、ブタのほうが悪者です。
さすがにオオカミがブタに食べられることはありませんが、レンガでつくった家をハンマーで壊す凶悪で大きなブタに対し、家が崩れる前に逃げ出すオオカミたちの弱々しいこと!
オオカミたちは、次はもっと頑丈な家にしようとコンクリートの家を建てますが、今度はダイナマイトで壊され……
- 著者
- ユージーン トリビザス
- 出版日
- 1994-05-18
原作はギリシャの犯罪学者、絵はイギリスの絵本作家による、大人が笑えるパロディ作品です。
こぶたはそもそもオオカミを食べようとしてるわけではなく、レンガの家に入れてもらえなかったことに腹を立てているのでした。そのせいで、攻撃がどんどんエスカレートしていきます。でもこの作品は、誰も食べられないし誰も死なない。最後は、びっくりするようなハッピーエンドになっているのです。
オオカミが悪者になっているお話は数多くありますが、この作品は、子どもに“オオカミ=悪”というイメージを植え付けないために重要な役割を果たしているかもしれません。
文字の量は多くやや乱暴な表現も含まれているので、小さな子どもよりも、元の話を知っている大きな子どもや大人に向いている作品です。
「3びきのこぶた」はいろいろな作家が手掛けているため、タイトルだけで選ぶと読んでびっくりすることがあります。こぶたがレンガの家に逃げて無事だったり、オオカミが大火傷して逃げていったり、子どもに読み聞かせをしながら「私が子どもの頃に読んだのと違う」と思った親御さんもいらっしゃるのでは?
子どもがどんな絵が好きか、どの結末を子どもに見せたいか、そういった内容で絵本を選ぶといいかもしれませんね。