「嘘をつくために命を削る人がいるなんて」。探し続けてきた何かを演劇の世界に見た素人は、天才女優に導かれ、熱い世界に足を踏み入れます。傑作演劇漫画『ブタイゼミ』。熱い漫画好き必読です。
- 著者
- みかわ 絵子
- 出版日
- 2017-03-07
「セミになれますか」
何でも演じられると語る劇団員如月今日子にお題を求められ、演劇の素人千石はセミが好きだからセミになれるかと尋ねます。
次の瞬間、スイッチが入った今日子は木に登り始め、人を集めるくらいの大声で鳴き始めます。
出典:『ブタイゼミ』1巻
警官や野次馬が集まり、今日子の異常な行動を撮影する人も現れるなか、千石だけは、ひとり圧倒されていました。
野次馬の声も、警官の制止も気にせず泣き続ける今日子。無視しているのではなく、セミだから聞こえていないことに千石だけは気づきます。
その姿は千石が長い間求めていた、違う世界の何か、でした。
出典:『ブタイゼミ』1巻
木から飛び降り、人間に戻った瞬間、汗が噴き出す今日子。
いきなり汗が噴き出したように見えたと言う千石に、「セミは汗かかないでしょ?」と平然と答えます。
再び圧倒される千石。今日子は千石に訴えます。
「キミは気づいてるよね?
(中略)
時間!!限られてるの時間って
皆それに気付いてなくて」
今日子の言葉に「何か」を感じた千石は、今日子に誘われ、劇団「ブタイゼミ」に入ることを決意します。
出典:『ブタイゼミ』1巻
千石はそもそも演技の素人でしたが、それ以前に、日常的に無表情な人間で、座長に「役者と一番縁のない人間だ」と言われてしまうレベルでした。
幼少期に、感情は無駄だという教育を受けていた千石は、表情を作る、感情を出す、ということができなくなっていたのです。
そんな千石に今日子は「大丈夫だよ 思い出せるから」と言います。
今日子とエチュード(アドリブの即興劇)をすることになった千石は、今日子に感情を引きずり出され……。
出典:『ブタイゼミ』1巻
泣いた記憶がないから泣くことができないという千石に、「最後に泣いた日を私は…知ってるんだ」と言うなど、以前から知り合いだったのではないかと思われるような発言をする今日子。
1巻では、具体的な過去のエピソードなどは明かされず、本当に以前から知り合いだったのかはわかりません。
まだまだ謎が多く、主人公が初舞台にすら立っていない状態ですが、演劇素人の千石が練習で予想外の演出を始めるなど、傑作演劇漫画『ガラスの仮面』を彷彿させるような面白さも発揮しつつある『ブタイゼミ』。おそらく2巻の発売は2017年の秋ごろになるかと思われますが、それまで待たずに1巻を読んで欲しい作品です。
熱い演劇漫画、青春漫画が読みたいという方、損はしないと思います。体中の血が熱くなる漫画体験を是非。
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- みかわ 絵子
- 出版日
- 2017-03-07