絵本/児童書

名作「長靴をはいた猫」を読ませるなら、どれ選ぶ?おすすめ絵本5選!

更新:2020.11.30 作成:2017.6.2

ヨーロッパに伝わる民話を複数の作家が作品として世に出していますが、フランスのシャルル・ペローによって書かれたものが有名です。日本では1969年にアニメ化され、アニメでこの作品を知った方もいるでしょう。さて、子どもにはどれを読んであげますか?

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気軽にバッグに入れて持ち運びできる「ながぐつをはいたねこ」絵本

ご覧の通り、絵本というよりTVアニメを一冊の本にしたかのような、そしてキャラクターが今にもしゃべりだしそうな感じを受ける絵で描かれた作品。

描いたのは、元タツノコプロで数多くのアニメを世に送り出して現在はフリーランス、絵本作家としても活躍している柳川茂と、名探偵コナンなど劇場版アニメを多く手掛けている清水義治。アニメのプロの手にかかると、ヨーロッパの民話も本作のような親しみやすい絵本になるのです。
著者
["シャルル ペロー", "柳川 茂", "Charles Perrault"]
出版日
本そのものが小さく、そして薄いので、おでかけするときにバッグに気軽に入れて持ち運ぶことができます。子どもが自分でページをめくって読むにも、ちょうどいい大きさと軽さです。

それと、絵本としては破格のお値段であるということも、親にとっては重要ポイントのひとつ。絵本は好きだけど紙を上手にめくれる力加減がまだ分からない子どもは、読もうとしているだけなのにページを破いてしまうことがしばしばあります。(もちろん、本は大切に扱うようにと言い聞かせることは大切なのですが)子どもがページをめくる練習用の本として、経済的なリスクが少ないこの作品はぴったりでしょう。

子どもが本を好きになるきっかけになるのなら、本作のようなアニメ絵本を選んでもいいかもしれませんね。

話は痛快劇だけど、どこかほのぼのとしている「ながぐつをはいたねこ」

フランス文学者で、随筆家・翻訳家としても活躍する奥本大三郎と、「11ぴきのねこ」シリーズで有名な馬場のぼるの合作です。

漫画家でもあった馬場のぼるの、どこかほのぼのとした親しみを感じるイラストで描かれています。ねずみを捕らえるシーンを写実的な絵で描かれたらちょっと怖いくらいですが、この作品だとまるでギャグ漫画。王さまに獲物としてうさぎを献上するシーンでは、脚がだらーんとしたうさぎはぬいぐるみさながら。本物っぽくないから、小さい子どもが狩りのシーンを見ても怖さをまったく感じないでしょう。

読み終わると心温まる、原作よりも癒し系と呼べそうなほんわかした作品です。
著者
奥本 大三郎
出版日
馬場のぼるが描いたねこといえば「11ぴきのねこ」シリーズが有名ですが、こちらのねこは自分よりも主人を大切にするような、知恵を働かせて奮闘する賢い子。『11ぴきのねこ』を連想しながらこちらを読むのも面白いです。

主人公だけではなく、王さまや農夫たちなど登場人物がみんなニコニコ笑っているかのような表情で、読んでいると絵につられて自分も笑顔になってしまうのが、この作品の大きな魅力かもしれません。

アニメっぽい絵本は子どもに読ませたくないけど、でもリアルな絵の本は読みたがらないお子さまがいるご家庭に最適な作品。もちろん、馬場のぼるが描くほのぼのとした絵を楽しみたい大人にもおすすめです。

ラフに描いた線だけど、表情もしぐさも愛らしいねこ

これは下書きか何かのデザインかと誤解しそうな、パステルのようなものでぐるぐると線を描いた主人公が印象的な作品です。この作品中で使われている色の数は少なくて、色が多いページでも4色ほど。

シャルル・ペローの原作に注釈を付けて物語にしたのは、スイス出身の絵本作家ハンス・フィッシャー。翻訳は、多くの作品の翻訳を手掛けて随筆なども書いていた矢川澄子です。
著者
シャルル ペロー
出版日
1980-05-20
ハンス・フィッシャーが原作に付けた注釈・ねこの陰の努力(成功の裏話のようなもの)が面白いです。鏡を見ながら練習をしているシーンは、ねこ自身は真面目に頑張っているのでしょうけれど、どこか演劇の練習風で滑稽にさえ見えます。

ねこの大活躍で、主人である粉屋の三男はカラバ侯爵という貴族となって、王女さまと結婚しました……というのがこのお話でよくある結末。でもこの作品は、このねこは実は早く靴を脱ぎたかったんだと、読んだらクスッと笑える一文で終わっています。

モノクロではないけどカラフルでもない、全体的に黄土色をベースとした落ち着いた色合いで描かれています。最後のページだけは黒い絵ですが、それは夜景かのように幻想的。絵の美しさと面白い結末の作品なので、大人も楽しめます。

主人を幸せにできるのは幸運の黒猫

絵はイギリスの芸術家、ウォルター・クレイン。描かれている主人公は黒猫です。

ヨーロッパでは、黒猫は”魔女の使い”、”見ると幸運が訪れる”などと言われる、幸運の象徴。魔女の使いなら、なるほど、人間の言葉をしゃべっても(ちょっと気味が悪いけど)おかしくはないし、幸運の象徴として描かれたとしたら、本作のねこが黒いのも納得しますよね。

中世ヨーロッパの雰囲気が伝わる、クラシカルな絵が素敵な作品です。
著者
シャルル・ペロー
出版日
この作品を描いたウォルター・クレインは装飾美術に力を入れていた画家で、絵本の基礎を築いた人物。日本の安藤広重や葛飾北斎の浮世絵にも影響を受けているためか、黒い線が強調されているのが特徴です。

作者が19世紀後半に活躍していた芸術家であるため、描かれている絵は古典的。絵本でありながらレトロなカードのようにおしゃれな雰囲気で、さらに絵に対して文章量が多いので、子どもよりも大人の方が楽しめそうな作品です。

赤いウエスタンブーツのハンサムな主人公のねこ

白と黒の体に、緑の瞳。赤い長靴はさながらウエスタンブーツです。

ねこの名前はプス。この作品は他の作品と異なり、主人公にちゃんと名前が付いているのです。プス(puss)は英語で“ねこちゃん”、猫に呼びかけるときに使う言葉。猫に「ねこちゃん」という名前をわざわざ付けたのは、作者の猫に対する愛情でしょうか?
著者
ポール・ガルドン
出版日
1978-07-10
作者のポール・ガルドンはハンガリー出身ですが、子どものときにアメリカに移住して、ニューヨークで美術を学んだイラストレーターです。長靴がウエスタンブーツのようなデザインなのは、アメリカ西部開拓時代をイメージした、作者の遊び心なのかもしれないですね。

この長靴(ブーツ)の赤い色が作品中でアクセントになり、ねこの可愛らしさと背景の美しさを引き立てているかのよう。

一番面白いシーンは、この作品の最後。置いてある調度品が”ねこらしい趣味”で、細かいところですが見つけると思わずにやけてしまいますよ。

同じタイトルでもいろいろな作家が絵本として世に送り出している作品で、ここに挙げた以外にもまだまだたくさんの「ながぐつをはいたねこ」作品があります。いろいろな作者の絵本を読んで、お気に入りの絵で描かれた作品を探してみるのも面白いですよ。