食用としても観賞用としても身近である魚は、子どもに特に人気が高い生き物。ペットとして飼育したり、魚釣りに行ったり、水族館に行ったり、魚と触れ合う機会も多いことでしょう。今回は様々な角度から魚に焦点を当てた絵本を5冊ご紹介します。
他の魚とは違う美しい鱗を持つにじうおは、鱗自慢が原因で他の魚から避けられてしまいます。賢いタコに「その自慢の鱗を他の魚に1枚ずつあげるべき」と助言されますが……。
美しい鱗が何よりの自慢であるにじうおは、友達に大切な鱗を分けてあげることが出来るのでしょうか?鱗を分けたらにじうおは幸せになれるのでしょうか?
- 著者
- マーカス・フィスター
- 出版日
- 1995-10-20
他人よりもちょっと優れているものが原因でお友達との仲がこじれてしまった経験はありませんか?この物語に出てくる"にじうお"は、とても素敵な鱗を自慢するあまり一人ぼっちになってしまいます。それを解決する方法は鱗が1枚欲しいという友達の願いを叶えること。
自慢は自分の周りにお友達など相手がいて初めて成り立つものです。にじうおは何よりも鱗を大切にしていましたが、自分の周りに誰もいなくなると鱗の無意味さに気が付きます。そして友達の願いを叶えて自分の大切なものを分け与えた時、にじうおは今までにない感情に襲われるのです。
相手が喜ぶ姿は自分の喜びにつながります。自慢の"モノ"だけでなく、自慢の"仲間"がいることもとても大事で素敵なことですね。
赤い兄弟たちの中で1匹だけ真っ黒なスイミーは誰よりも泳ぎの上手な魚です。ある日、大きなまぐろがやってきて兄弟たちはみんな飲み込まれてしまい……。
暗くて怖い海の中をひたすらさまよい続けるスイミー。やっとのことで自分とそっくりの小さな赤い魚たちと出会うことが出来ましたが、その群れは大きな魚が怖くて岩場から出て来られません。
さて、みんなと一緒に生きるためにスイミーが考えた方法とは?
- 著者
- レオ・レオニ
- 出版日
- 1969-04-01
『スイミー』は小学校の国語の教科書でも長年親しまれている物語です。
自然界では、弱肉強食の世界が広がっています。小さな魚であるスイミーは、本来、まぐろやサメなど大きくて強い魚などに食べられる運命にあるのです。しかしひたすら岩場に隠れ続ける新しい兄弟たちと生き抜くため、スイミーは大きな魚の怖さも知った上で、自分達の運命を跳ね返す方法を考えます。
魚は群れる習性を持つ種類も多く、群れの力をよく利用します。この物語を手にする子供たちも、学校や幼稚園など、集団の中で生活していることでしょう。スイミーは赤い群れの中で1匹だけ黒い、異質な存在です。群れの中で1匹だけ違うことをかわいそうとか変なことだと考えたことはありませんか?確かに1匹だけ違うということにはリスクがあります。しかしスイミーは群れの中で、その特質を自分にしかできない役割を果たすことで活かしていくのです。
小さなものが大きなものに勝つという協力の凄さ、マイナスをプラスに変えていくスイミーの強さは読み切った後には爽快感が得られますよ。
"魚"を思い浮かべて下さい。
あなたの思い浮かべた魚はどの方向を向いていますか?魚は図鑑に載っているのも食べるときにお皿に乗っているのもたいていは横顔をこちらに見せています。上から下から、前から斜めから魚を見るとどんな顔をしているのでしょう。真横についた目はどんな動きをするか知っていますか?魚に鼻はあるのでしょうか?耳は?舌は?
102種もの魚の特性から顔かたちと顔の仕組みまでもが良くわかる図鑑形式の1冊です。
- 著者
- ["なかの ひろみ", "まつざわ せいじ"]
- 出版日
人が人と出会ったとき、その人の顔を見て特長をとらえるでしょう。体型などスタイルが記憶に残ることもありますが、目が大きかったとか鼻が高かったとか顔を記憶するおくことが多いのではないですか?この本は人間のように魚の顔に着目して魚を知ることのできる1冊となっています。
魚の顔というと、真横についた目と種類によって凶器のように尖った歯のイメージが強いですね。しかし人間の顔にはその他に鼻、耳、口の中には舌もあります。魚にも実は人間と同じ働きをする器官があるのです。
この本には魚が好きな人にはもちろん、食べるのが専門という人にもおすすめの雑学がたくさん書かれています。アジの鼻のあなを探す方法も紹介していますので、ぜひ食べる前にチェックしてみて下さいね。
買い物が大好きな"またやさん"。市場でお店4軒分以上もある大きなサンマのひらきを買います。家で待つ友達たちも大喜び。さぁ、焼いて食べよう!と思ったら大きなサンマに逃げられてしまいます。
翌日、今度は市場で大きなスルメを見つけたまたやさん。家に持ち帰って食べようとするとまたスルメに逃げられて……。
そのまた翌日、今度は市場で大きなタイ焼きを見つけたまたやさん。また買うのでしょうか?そして今度こそ食べられるのでしょうか?
- 著者
- 岡田 よしたか
- 出版日
- 2013-11-16
またやさんはどこにでもいるような普通のおじさんです。しかし買い物好きのまたやさんには、大きくて珍しかったり人に勧められたりするとどうしても購入してしまう傾向があるようです。またやさんのような人、周りにいませんか?
アジに逃げられ、スルメに逃げられ、それでも翌日には懲りずにタイ焼きを購入します。タイ焼きは天然ものではなく、作り物ですから大丈夫なはずですが、きっとまた……と期待せずにはいられませんね。
食べようとするとその食べ物に翻弄させられるまたやさんの友達が言う、「またや」のセリフも見逃せませんよ。
何度も何度も買っては逃げられるまたやさんが、もう絶対買わない!とかたくかたく心に決めた翌日。市場には大きな松葉ガニ。またやさんは「ええなぁ これ」。この物語にはまだまだ続きがありそうで、読み終わった後にもワクワクが残りますよ。
一般向けの魚図鑑を子どもにも理解しやすいようにまとめた絵本です。
海にいる魚を「広い海の表面ちかく」「海岸近くのいそ」などの暮らし方で分類し、その魚の特徴がしっかりと描かれた絵で説明しています。名前、全長と共に日常生活で役立ちそうな豆知識がふんだんに盛り込まれているため、飽きずに魚に関する知識が得られますよ。
- 著者
- 渡辺 可久
- 出版日
この本の最初の魚の説明はプランクトンについて。本のラストには魚に関する年表が載っています。個々の魚に関する知識を深めるだけでなく、生態系や歴史に関しても学ぶことができるよう、工夫がされているのです。幼児期には絵を見て、成長してからは内容を理解して、と何年でも手元に置いて楽しむことができるでしょう。
一方、表紙のイメージによって魚釣りや水族館が好きな、魚に親しみのある子ども向けの本に思われがちですが、「幼魚でしらすぼしを、成魚でにぼしやごまめなどをつくる」(『海のさかな』からの引用)など生活にまつわる知識もふんだんに盛り込まれています。また、絵も写真よりも分かりやすいくらい詳細まで丁寧に描かれていますので、魚にあまり興味のなかった方もぜひ手に取ってみて下さいね。
魚にまつわる5冊をご紹介しました。いかがでしたか?観賞用の可愛いお魚が出てくる話から食べる魚が出てくる話まで色々な物語がありました。また図鑑のような本でもどの部分に着目するかで全く違う知識が得られますね。それほど魚が人間にとって身近な存在で、色々な役に立っているということが言えるでしょう。魚好きはもちろん、興味のない方もぜひ魚の本を手に取ってみて下さいね。