人が生きていく上でとても重要な人間関係の形成。子ども達の世界は友達作りで広がっていきます。同じ歳のお友達、年上のお友達、ぬいぐるみのお友達、動物のお友達。あなたにはどのようなお友達がいますか?色々なお友達との友情を描いた5冊をご紹介します。
キツネは1時間100円でお友達になってあげる"ともだちや"を始めます。1人で食事をするのが寂しいというクマと、いちごやはちみつを食べて200円。"ともだちや"だから苦手なものでも我慢です。
次のお客さんはトランプの相手をしろというオオカミ。オオカミは代金をもらおうとしたキツネに「友達からお金と取るのか!」と怒り出し……。
キツネはオオカミから代金をもらって帰れるのでしょうか?
- 著者
- 内田 麟太郎
- 出版日
「1時間100円でお友達が買える」。そんなお店があったらあなたはお友達を買いますか?きっと誰にでも「友達がいてくれたらな……」という経験があることでしょう。森のクマは一緒に食事をする相手が欲しくて2時間分のお友達を買いました。
2時間200円を払ったクマに対し、次のお客様であるオオカミは代金を払ってくれません。オオカミは「ともだちや」を呼んだのでなく「ともだち」を呼んだのだと言うのです。そしてキツネに一番の宝物を渡します。そんなオオカミにキツネは大喜び。実は"ともだちや"がしたかったのではなく、誰かの"ともだち"になりたかったのですね。
子どもはよく「お友達になろう?」と話しかけます。子どもならではのとても素敵な会話です。しかし、わざわざ友達であることを確認しなくても時間を共有することで自然と友達になれることがたくさんありますね。あなたにも気づいていないお友達いませんか?
幼稚園生活の先輩、年上のお友達との交流を描いた物語です。
新入園児がやってくる幼稚園。年長さんは仮装と歌、手作りのプレゼントで歓迎します。幼稚園の園舎案内、遊び方の案内も年長さんが行います。1つしかないブランコでケンカしたときの解決方法も年長さんならお手のもの。教えてもらった通りお片付けしたら、楽しい給食の時間です。
年齢を超えた新しいお友達との出会いにカンパーイ!
- 著者
- 中川 ひろたか
- 出版日
お友達と遊んでいても必ず親に見守られていた未就園のころと違い、幼稚園生活が始まると親の手を離れてお友達との関係の中で生活が行われていきます。
この物語に出てくる幼稚園では、新しいお友達の世話は年長さんのお友達がしてくれるようです。自分たちが経験してきたことを交えて園内を紹介する姿、そしてケンカが起きた時の対処方法などは経験の違いを感じさせるたくましさを感じますよ。
子どもは自分と同じ子どもが大好きです。大人が言って伝わらないことでも子どもが説明すると理解してくれることもあるでしょう。年上のお友達から学ぶこと、年下のお友達に教えてあげることで学ぶこと、年齢を超えたお友達は成長期の子供たちになくてはならない人間関係だと言えますね。
ぬいぐるみの”こん"は"あき"が産まれたときから一緒のお友達です。ハイハイするときも、歩き始めたときも、こんとあきはどんな時でも一緒。
あきが大きくなるにつれ体が古くほころびてしまった"こん”。さきゅうまちに住むおばあちゃんに直してもらうため"こん"と"あき"の冒険旅行が始まります。駅弁を買いに行ってドアに挟まったり、犬に追いかけられて砂に埋められたり、波乱万丈の2人の旅はハラハラドキドキの連続です。
- 著者
- 林 明子
- 出版日
- 1989-06-30
ぬいぐるみや人形がお友達というお子さんはとても多いですね。お出かけに必ず連れて行くという時期もあったかもしれません。
この物語に出てくる"こん"はあきのためにおばあちゃんが作ったぬいぐるみです。しかし、"こん"は駅弁を買いに行ってくれたり、犬からあきを守ってくれたり、まるで本当の人間のように行動します。自分の大切なぬいぐるみが"こん"のように動いて、本当の友達のように接してくれたらどんなにうれしいことでしょう。
さらにあきのおばあちゃんは"こん"のことをぬいぐるみとして直してくれるだけでなく、あきと対等に温かく受け入れてくれます。まるで本物の友達のようなぬいぐるみと温かいおばあちゃんに囲まれて、読み終わった時には心がじわっと温かくなりますよ。
オオカミのガブとヤギのメイ、本来狩る側と狩られる側である2匹の友情を描いた物語です。
ある嵐の夜、ガブとメイは小さな小屋で偶然出会います。真っ暗闇の中、さらに雷や風の音が激しく、話が食い違ってしまうことにより、相手の正体を知らないまま2匹に友情が芽生えますが……。
ガブとメイの友情。2匹は周囲の反対や一般的な概念にとらわれずに仲の良い友達同士でいられるのでしょうか?
- 著者
- ["きむら ゆういち", "あべ 弘士"]
- 出版日
- 2014-09-02
オオカミにとってヤギは大切な食料。しかしメイと仲良くなってしまったガブにとって、ヤギを「食べる」対象として見ることは大切な友達への裏切り行為となります。お腹がすいてくれば美味しそうだなと思ってしまう本能、ヤギの群れを襲う計画を立てるオオカミの仲間たちとの友情、オオカミであるガブにはたくさんの試練が待っているのです。
一方のメイはガブの心の葛藤に比べるとのんきに友情を謳歌しているようにも思えます。でも実は「友達を信じる」というとても大切な心意気を見せているのです。自分のことを食料にしている相手に対して無防備でいることは何よりもの友情の証なのでしょう。
心から信頼できる友達、本能や運命に逆らってもいいと思える友情、ぜひそのような素敵な相手と巡り合いたいですね。
月夜の晩、ボートに乗っていると空の上に居たのは大きな月。話をするわけではないけれどとても居心地がよく信頼関係で2人の絆は深まっていきます。
夜明けが来たら、消えてしまわないようにぼくの家へ移動です。歌って踊って食べて寝て、この嬉しい気持ちを話したくてまたボートに乗って出かけます。
そしてぼくは新しい友達を月に紹介して……。一緒にいると100倍輝くぼくの新しい友達とは誰でしょう?
- 著者
- ["アンドレ・ダーハン", "きたやま ようこ"]
- 出版日
- 1999-06-25
ぼくと月は偶然出会って友達になりました。しかし、「こんばんは。」と声をかけただけでお互いを知るために話をしたわけではありません。黙っていても楽しくて一緒にいるだけで嬉しい気持ちになったのです。
友情を築くためにはお互いのことを知るということが大切ですね。一方でぼくとお月様のように「空気感があう」と自然と真の友情が育まれることもあります。
学校ではたくさんのクラスメイトが居て、好きなことが一緒な子、意見の合う子、またその逆の子など色々なタイプの友達と出会うことでしょう。「友達100人できるかな?」と歌われるようにたくさんの友達ができることは大変価値のあることですが、気の置けない落ち着ける友達が1人できることも実はとても大切なことなのです。
友達関係は歳を追うごとに難しくなってくるかもしれません。もし友達関係で悩んでいる人が居たら、ぜひぼくと月を思い出してくださいね。
友情を描いた5冊をご紹介しました。いかがでしたか?"友達"の定義はとても広く、年齢や性別、立場に左右されるものではありません。様々な友達と友情を築くことによって、心が豊かになったり、悩みが解決して道が開けたりと人生自体が豊かになっていくのです。当たり前のように赤ちゃんの頃から持っているぬいぐるみ、いつも見上げる月や太陽、そして学校や幼稚園で出会ったたくさんのお友達、ぜひこれらの本を読んで、自分の友達や友情について考えてみて下さいね。