「グレッグのダメ日記」シリーズはアメリカで出版された作品で、ローティーンの男の子の目線で書かれています。主人公・グレッグの行動や心情が率直に描かれていて、2010年にはアメリカで映画化されました。日本でも大人気の作品です。
『グレッグのダメ日記』の表紙の画像をご覧ください。タイトルの横に謎の物体が描かれていますよね。一体なんだと思いますか?実はこれ、腐ったチーズなのです。
掃除もされずに学校の中庭にある、腐ったチーズ。これを触った者は「チーズえんがちょ」として嫌われるという設定が生徒の中にあって、それが本作の重要なポイントになっています。
ページをめくると、まさに日記帳のように罫線がひいてあって、本当にグレッグの日記を読んでいるかのよう。
グレッグが描いたんじゃないかと錯覚してしまうイラストがふんだんに使われて、日記によりリアルさを出しています。物語に入り込みやすく、中学年の子どもさんにも読みやすい作品です。
- 著者
- ジェフ キニー
- 出版日
グレッグはパパ、ママ、兄ちゃん、弟の5人家族。兄弟で真ん中のグレッグは自分への理不尽な扱いに不満を抱きつつも、その内容を日記にして、日々なんとかやりすごしています。
そもそも、グレッグがこの日記を書いた理由は、「将来金持ちの有名人になったときのため」。有名になったらインタビューにいちいち答えるのが面倒だから、この日記を読ませたら一発で解決すると考えたのです。
だからグレッグは自分の身に起こった事を赤裸々に綴ります。読んでいくと「え、こんなことまで書いていいの?」と思うような内容も……。特にラストにいたる、腐ったチーズついてのエピソードは、ある意味凄惨です。
でも、子どもっていつでもどこでも天使のように可愛らしいわけではないですよね。親に反発したり、友達とケンカしたり、兄弟といがみ合ったりするのが、子どものありのままの姿ではないでしょうか。
この作品が子どもたちに人気なのは、普段は大人に「こんなことはやっちゃいけません」「ダメですよ」と言われるような事をグレッグは平気でやっちゃう、そんな場面を読んでカタルシスを感じるからでしょう。
何もかもダメダメと言われる今の子どもたち。せめて物語の中だけでもスーッと胸のすくような出来事に触れてみたいはずなのですから……。
「グレッグのダメ日記」シリーズ第2弾。今回の表紙にはワゴン車が隅っこに描かれています。第1作を読んだ方はおわかりでしょうが、これはグレッグの高校生の兄が運転する車。つまり、「兄の象徴」なのです。
ちなみに、アメリカではほとんどの州で16歳から運転免許がとれます。そこが日本と違うところですね。今回は、この兄とのアレコレが書かれています。
- 著者
- ジェフ キニー
- 出版日
- 2008-09-01
グレッグの三兄弟は、絵にかいたように仲がいい……わけではありません。兄ちゃんは意地悪だし、保育園児の弟は甘えん坊で要領がよくて、グレッグは間に挟まれてあまりいい思いはしていません。特に兄ちゃんは風変りな性格なので、グレッグは苦労しています。
兄ちゃんはロックバンドのメンバーです。今回はそれに絡んだエピソードを中心に話が進みます。ママは兄弟仲を取り持とうと勘違いしながら頑張っていますが、その鬱陶しさはまるで読者が見たら「自分の親みたい……」と感じる場合もあるでしょう。
そして、兄ちゃんは意地悪だけど、グレッグはどうやら内心少し憧れているところもあるように感じられます。兄ちゃんの失敗談をただ面白おかしく書いているわけではなく、「兄ちゃんちょっと可哀想だな」というグレッグの心の声が日記の罫線から聞こえてきそうです。
兄弟のいるお子さんはもちろん共感ポイントが満載ですが、少子化の昨今、一人っ子のお子さんが読んだら「兄弟っていいなあ……」と思うかもしれません。
表紙にはサッカーボールが描かれています。ということは、今回は何かサッカーに関する日記が出てくるのでは?と期待してしまいますね。グレッグがサッカーを始めるのでしょうか。
そして、サッカーだけではありません。今回は、彼の人生を変えるかもしれない最大のピンチがやってきます。まさにグレッグ危機一髪なのです。
- 著者
- ジェフ キニー
- 出版日
- 2009-04-01
今回は、グレッグ一家の新年の日記から始まります。洋の東西を問わず、年が明けると新年の抱負を語るものなのですね。そして、やはり洋の東西を問わず実現しないことが多く……。グレッグの家もそのようです。
しかし今回は、パパがグレッグを鍛えようと行動を起こします。まず、グレッグをサッカーチームに入れようとするのです。グレッグは集団プレイのスポーツは大嫌い。そんなグレッグがサッカーチームで活躍できるのか疑問ですよね。
次に、パパは新学期になったら、グレッグを全寮制で規律の厳しいスバッグ学園に転校させようとします。パパとしてはグレッグのためだと思っているようなのですが、本音を言うと大迷惑!
グレッグは何とかして転校を免れようと大奮闘します。グレッグは転校せずにすむのかどうか、最後までハラハラドキドキすること間違いありません。
今回は表紙タイトルに可愛らしい携帯電話が……。この携帯電話は誰のものでしょう?兄ちゃんがこんな可愛い物持つはずありませんし、保育園児の弟でしょうか。
この作品の初版は2009年ですから、スマホはまだ一般的に普及していなかった頃ですね。でもグレッグの姿そのものが生き生きと描かれているので古さは全然感じません。今の子どもでも抵抗なく読めるでしょう。
- 著者
- ジェフ キニー
- 出版日
- 2009-11-01
今回のお話は、グレッグが中学生になって初めての「夏休みの日記」です。アメリカの夏休みは3ヶ月ありますから確かに日記のネタには事欠かないでしょう。
ですが、前3作はそれぞれ3ヶ月以上の出来事が書かれているのですから、それに比べたら、この夏休みがグレッグにとっていかに濃密な期間だったかということが感じ取れます。
この日記が今までと違うところは、グレッグがある女の子を意識して行動を起こしている場面があることです。「高校生の彼女をつれて」なんてことは前3作では見たことがありません。グレッグ、中学生になってちょっとマセてきたのでしょうか。
もしかしたら、この作品は、グレッグが思春期にさしかかったことを表しているのかもしれません。
実は、あの可愛い携帯電話は実はパパとママがグレッグに買ってくれたものなのです。女の子に気に入られようとカッコつけてるグレッグが子どもっぽいい携帯を使うことになるのか、そして女の子と進展するのか……見どころたっぷりの一冊です。
表紙タイトルの脇に描かれているのは「目覚まし時計」。第4作は夏休みをまるまる書いたものでしたが、この作品はいよいよ夏休みが終わり、新学期が始まった様子が書かれています。
アメリカの学校は9月から新学年ですから、グレッグも中学2年生になりました。この時計、新学期と関係あるようです。
そして、第4作で親友(?)のロウリーと気まずくなっていたグレッグですが、新学期になって果たして修復できるのでしょうか。
- 著者
- ジェフ・キニー
- 出版日
- 2010-11-13
第5作には新キャラクターが登場します。新キャラといっても、グレッグの友達ではありません。ちなみに女性ですが、かなり強烈な人物で、グレッグとの格闘(?)も今回は見どころの一つです。
「グレッグのダメ日記」シリーズは、読んでいくと時々「これ、原書では何て書いてあるのかな?」と思うことがあります。今回は特にそれを強く感じたのは「ニックネームゲーム」のところです。
「ニックネームゲームっていうのは、自分がどんな人かわかるようなニックネームをつけて自己紹介するゲームだ」とのことですが、ここの英語と日本語の語呂合わせをするのも訳者の力量だなと思います。
グレッグはここで「くいしんぼうグレッグ」とニックネームを付けられてしまうのですが、原書では……?そして、グレッグとロウリーは仲直りができるのでしょうか。ぜひ、実物を手に取ってご覧ください。
「グレッグのダメ日記」シリーズは「え、こんなことまで書いていいの?」と感じることもありますが、だかこらそ読者が「自分も日記を書いてみようかな」という気持ちになる作品です。
もしかしたら、この作品を読んでいるお子さんはすでに「ダメ日記」を書いているかもしれませんね。もちろん、周りの大人はのぞいてはいけません。
そして、もう少し大きくなったら原書にも触れていただきたいです。ジョークや駄洒落は原書ではどう書かれているか、比べてみるのも面白いですよ!