面白い時代小説はたくさんあります。その中でも、ベストセラーになるのはほんの一部です。ベストセラーになった作品だけあって、ほとんどが面白いものばかり。今回はその中でも、2016年以降に文庫化されて時代小説を5冊、ご紹介します。
アヘン戦争、アロー戦争、日清戦争と、19世紀に入り清朝は諸外国との戦争に負け続けます。西欧列強だけではなく、格下だと思い込んでいた日本にまで負けてしまい、かつての大国としての中国は跡形もありません。
国内は荒れに荒れ、広大な領地も諸外国による占有地ばかりです。そんな状況の中、外国人排斥の機運が高まり、街には暴徒があふれかえりました。
彼らは各国大使館を取り囲み、破壊を繰り返していきます。そんな暴徒に対し列強諸国は足並みを揃えられず、対応できないままです。
そんなとき、真っ先に立ち上がったのが日本でした。日本の駐在武官である柴五郎は、中国国内の混乱を収めるために立ち上がります。
- 著者
- 松岡 圭祐
- 出版日
- 2017-04-14
この本は2017年に講談社から上下巻同時発売された小説です。発売時の帯には、元防衛大臣の石破茂のコメントが載せられるなど、非常に話題を呼ぶ作品になりました。
アヘン戦争で敗れて以来、清朝中国は列強諸国に好き放題される状態でした。そんな状況の中で、中国国民の反発が出るのは当たりまえのことです。暴徒化した中国国民は、その怒りの矛先を国内にあった列強諸国の大使館に向けます。
暴徒たちの中心にいたのは義和団という宗教団体であり、そのことから、この事件は「義和団の変」と名付けられました。危険を感じた列強11ヶ国の大使館関係者たちは、自衛のため協力し、籠城することになります。
しかし、籠城しているだけではいつか全員死んでしまうのは目に見えていました。そうならないために、各国が協力して急援軍を派遣することになります。
しかし、彼らの足並みは揃いません。一刻も早く、籠城し人質となった大使館関係者たちを救うべく立ち上がったのは、1人の日本人でした。
史実に残る日本人の活躍を、是非一度読んでみてください。
様々な人のお世話をする「縁見屋」という店が京都にありました。そこでは、道行く修行僧や無縁無宿の旅人に、仕事や住む場所を紹介しています。
店の主人とその娘・お輪は穏やかに過ごしていました。「徳を積む」という家訓のもと、日々仕事を行っています。
そんな彼女たちは穏やかに暮らしていましたが、「店の娘は早死にして、跡継ぎになる男の子を産むことが出来ない」という噂に苦しんでいました。
そんな折、店に帰燕と名乗る修行僧が現れます。彼に仕事を与えたお輪たちでしたが、お輪はなぜか帰燕に心惹かれていきました。
帰燕もまた、お輪を救うために彼女に秘術を施しますが……。
- 著者
- 三好 昌子
- 出版日
- 2017-03-04
この作品は宝島社から出版されている小説で、「このミステリーがすごい!」で大賞・優秀賞を受賞した作品です。
京都にある「縁見屋」には、ある「悪縁」がありました。それは、そこの娘は全員26歳になると死ぬというものでした。主人公・お輪は父と穏やかに暮らしていましたが、ある日その悪縁を知り、自分がどうなるのか不安に駆られるようになります。
自分の行く末に不安を感じるお輪の前に、一人の修行僧が現れました。彼の名前は帰燕といい、愛宕山から来たといいます。お輪はそんな彼に、一目惚れしてしまいました。
帰燕はお輪の持つ悪縁のことを知り、それを断ち切ると言い出します。帰燕がどのようにして奇縁を断ち切るのか、そもそもなぜそんな奇縁が出来たのか、そして帰燕の正体とはいったい誰なのか……。
謎が謎を呼び、やがて京都全体を巻き込む大騒動につながっていきます。
本作品は、「大水滸伝」シリーズの最終作です。前作『楊令伝』で頭領を失い、その上大洪水の被害にあった梁山泊は壊滅状態に陥り、それぞれの武将たちは単独行動をとるようになります。
そんな中『岳飛伝』の主人公・岳飛は、梁山泊での戦いで、楊令に右腕を切り落とされたことから、立ち直れずにいました。そんな彼は、南宋の宰相である秦檜の下に行き、軍閥となります。
一度武人の誇りを失いかけた彼は、立ち直ることは出来るのか。彼以外の梁山泊の英傑たちはどうなっていったのか。大人気シリーズの最後を締めくくるに相応しい作品です。
- 著者
- 北方 謙三
- 出版日
- 2016-11-18
このシリーズは、中国の四大奇書である『水滸伝』をもとに描かれており、2011年から2016年に「小説すばる」で連載されていました。2016年から集英社によって文庫化され、全17巻で刊行予定です。
ハードボイルド小説の第一人者・北方謙三が著者であり、彼の作品特有の雰囲気が随所に漂っています。出てくる登場人物たちみんなかっこよくて、読めば彼らにあこがれること間違いなしです。
特に、この作品の登場人物である岳飛は、非常に魅力的なキャラクターになっています。中国国内ではかなり人気のあるキャラクターであり、挫折を味わった彼が、苦しみながらも乱世を駆け抜けていく様子は、一種の青春劇のようです。
久留米藩にある井上村の百姓たちは怒っていました。なぜなら、突然彼らに下されたのは、年貢の増徴と夫役(強制的な労役)だったからです。大勢と集まり、一揆を行おうと試みていました。
その光景を見ていたのは、同藩の大庄屋(村役場の1つ)である高松家の息子・甚八と弟の庄十郎。一揆を起こす寸前だった百姓たちですが、家老の稲次因幡のおかげでなんとか鎮まりました。
そんな百姓の生活を目の当たりにしてから時が過ぎ、甚八は大庄屋を継ぎ、庄十郎は医師の道へと進むことを決めます。
この作品は、権力者に苦しめられ困窮していく農民のそばに寄り添い、彼らの生活を助け続けた心優しい者たちの物語です。
- 著者
- 帚木 蓬生
- 出版日
- 2017-05-19
権力者である幕府や領主たちの理不尽な課税に苦しむ農民たちの様子を、権力者と農民の間で取り持とうとした大庄屋・高松家を中心として描いていきます。
高松家の息子である庄十郎は、自身が幼いころ病で死にかけた経験から、医師になることを志します。自分が病で苦しんだ経験を持つ彼は、医師になった後も農民たちのそばに寄り添いつづけ、彼らの体と心のケアし続けました。
兄の甚八もまた、常に農民の味方であり続けた父の遺志を継ぎ、自分もまた農民たちの味方であろうとし続けます。物語の中心は、この心優しき2人の兄弟です。
この兄弟が経験していく人生の悲しみと喜びを、是非読んで体感してみてください。
時は戦国の世、当時村上水軍という海賊が、瀬戸内海を支配していました。その当主である村上武吉の娘・景が主人公です。彼女もまた、父のように男勝りな活躍をしていました。
そんなとき、安芸を支配していた毛利氏から、ある依頼をされます。それは、急速に領地を拡大していた織田信長によって追い詰められた本願寺のために、物資輸送をして欲しいというものでした。
村上水軍はその以来を受けることにし、毛利氏への協力を決めます。こうして、毛利と織田の対立に介入していくことになった村上水軍とともに、景も戦いに参加することになりました。
- 著者
- 和田 竜
- 出版日
- 2016-06-26
第11回本屋大賞を受賞した作品です。2013年に単行本化、2016年には新潮文庫で文庫化されました。
主人公・景は、長身で怪力の女性です。彼女は父の率いる村上水軍の軍船に乗って、海上の無法者たちを裁くなど、男勝りの活躍を見せていました。
歴史上で見れば、あまり有名な人物ではありません。しかし、そんなことは関係ないほど、景は魅力的な人物です。当時絶対の力を誇っていた信長に対して、必死に抵抗し自分の生き方を貫こうとする彼女の姿は、読者の心を熱くさせてくれます。
2016年に文庫化された時代・歴史小説を5つご紹介しました。どの作品も人気があるので、面白いこと間違いなしです。ぜひ一度読んでみてくださいね。