小学校低学年の子どもたちの読書は、絵本を卒業し、自分で本を選び読んでいく力を養う大切な時期です。面白い本に出会ったら、次々にシリーズを読破して読書好きになってほしい、そんな気持ちを込めて楽しい児童書をご紹介します。
「フーム、においますね……。」が口ぐせのおしりたんていは、顔がお尻の形です。依頼人に差し出す名刺もお尻の形。でもとってもジェントルマンな言葉遣いと態度で、テキパキと推理をして事件を解決します。
時に「しつれいこかせていただきます」と、顔からブフォォーッ!と臭い息?を吐き出し犯人をやっつけるおしりたんていに、子どもたちが夢中にならないはずはありません。
- 著者
- トロル
- 出版日
- 2015-08-06
おしり探偵本人は、いたって真面目です。テキパキと論理的に推理をして犯人捜しをしていきます。その推理中には迷路や絵探しなどがあり、読者が参加しているような謎解きも子どもたちを夢中にさせるのです。
『おしりたんてい むらきふじんのあんごうじけん』でも、いたるところに謎解きが隠されています。暗号の手紙を解き明かしたり、畑や地下が迷路になっていたり、ヒントに合わせて言葉を作ったりと、ただ物語を読むだけでは終わらない楽しさがあるのです。
「覚えて 調べて 理解すること」が推理の3か条だと言うおしり探偵、たくさんのページに謎やヒント、お尻までもが隠されていて、隅から隅までイラストをじっくりと眺めたくなります。1冊読んだら、もう虜になって次から次へと「おしりたんてい」シリーズを読む手が止まらなくなるでしょう。
この本は1987年から続く「かいけつゾロリ」シリーズの記念すべき第1作目です。今や小学校や児童館の図書室に必ず置いてある「かいけつゾロリ」は、お話のテンポが速くギャグやいたずらが満載で、子どもたちの必読書になっています。TVアニメや映画化もされているので、ゾロリの顔には見覚えがある方も多いでしょう。
原ゆたかの作品はイラストにも面白さがにじみ出ています。物語の楽しさを予感させるような表紙に、子どもたちの自然と手も伸びるのです。一作ごとに完結するお話になっていて、何巻から読んでも良いので気軽に手に取れることも、低学年のファンが長年絶えない理由でしょう。
- 著者
- 原 ゆたか
- 出版日
- 1987-11-01
天国のママに自慢できるような立派な男になるため、いたずらの修行で旅に出ているゾロリ。そのゾロリを「ゾロリせんせ」と呼んでずっと支える双子のイノシシ「イシシ」と「ノシシ」に出会うお話が、この1作目『かいけつゾロリのドラゴンたいじ』です。
ゾロリは正義の味方ではありません。いたずら、意地悪が大好きな悪の味方だと名乗っていますが、お姫様や子どもたちに弱く、優しい心の持ち主です。そしてどんなピンチでも諦めず、得意のひらめきと奇想天外な発明で乗り切る姿が、子どもたちにとってはゾロリがヒーローである所以です。
このお話では結婚式を控えたお姫様をゾロリが横取りするために、イシシとノシシがドラゴンに化け、ゾロリがドラゴンを倒す、という計画を練りますが見事に失敗します。綿密に作られたドラゴンの設計図には、おかしな装置もたくさん!思わずツッコミたくなるようなものばかりです。こういった工夫も、子どもの心をグッと掴んで離さないポイントなのでしょう。
一度本を開いたら、最後まで読まずにはいられない「かいけつゾロリ」シリーズ。毎回、初版本には愉快なゾロリ新聞などの付録が付いてくるのも、子どもたちには嬉しいですね。
お父さんのクリーニング店の配達を手伝う「わかったさん」は、いつでもなんでも「わかった、わかった」と返事をするのでわかったさんと呼ばれています。クリーニングを依頼するお客さんも、それぞれ愉快で個性的な人ばかりです。
ある日、受け取った洗濯物から見たことがないカギが出てきます。誰のカギか分からず、わかったさんは再びお客さんの家を訪ねてまわるのですが……。不思議で愉快な世界に迷い込み、わかったさんはなぜかクッキー作りを習うことになります。巻末にはわかったさんが作るクッキーのレシピも掲載されていて、読み終わった後も楽しめる本です。
- 著者
- 寺村 輝夫
- 出版日
- 1987-12-01
寺村輝夫の「わかったさん」シリーズは、お話の中にお菓子作りが盛り込まれている楽しい物語です。わかったさんの他に「こまった、こまった」が口癖の、花屋の「こまったさん」によるお料理シリーズもあります。クッキングに興味がでてきた女の子たちに、どちらもおすすめしたい物語です。
最後のページには、お話に出てきたお菓子作りのレシピが付いています。読み終わった後に、わかったさんと同じ味を食べることができるのもお楽しみです。低学年でも上手に作ることができるように、用意するものや調理の時間まで詳しく書かれていて、誰もがキッチンに立ちたくなるでしょう。
『こぐまのくまくん』は、タイトルどおり子熊のくまくんが、お母さんや仲良しの動物たちと楽しく過ごす日常を描いた短編の物語集です。第1作目となる本作には、寒いから洋服を着たいと言うくまくんのお話、お誕生日パーティー、月旅行、くまくんが寝る前のお母さんとの会話、の4つの可愛いらしい物語が収録されています。
- 著者
- E.H.ミナリック
- 出版日
- 1972-06-01
何でも一人でやってみたいけれど、まだお母さんには甘えたいというくまくんが、幼児を卒業する年齢のお子さんと重なるでしょう。身に覚えがあるようなお話が多いので子どもたちも共感しやすく、短編集であることも絵本からステップアップするお子さんに読みやすい作りです。
絵本のように横開き、横読みで、各ページには動物たちの可愛いの挿絵がふんだんに使われていますが、その雰囲気は洋書そのものです。絵本に比べると厚い装丁と翻訳本のイラストに、子どもたちはちょっと背伸びした気分も味わえるでしょう。「こぐまのくまくん」シリーズには、くまくんとお母さんのやりとりに思わずクスリとしてしまうような可愛らしい物語が詰まっています。
男の子たちが大好きな玩具菓子「ほねほねザウルス」を物語にした本です。ワクワクするような冒険ストーリーと、物語に盛り込まれたクイズや迷路が、男の子たちを魅了します。食玩の「ほねほねザウルス」も、たくさんの種類のフィギュアが発売されていて、どれも好きなように組み合わせることができるのも、組み立て・破壊が好きな男の子たちを虜にしている秘訣です。
- 著者
- ぐるーぷ アンモナイツ
- 出版日
- 2008-04-24
玩具菓子「ほねほねザウルス」は、恐竜の骨格をプラモデルのように組み立てて遊ぶフィギュアです。このお話のイラストも、恐竜たちはお菓子と同じように骨格だけで描かれていますが、それぞれに名前があって、仲良しの友だちと冒険に出かけることが、子どもたちの空想だった遊びを具体化させています。そこも人気がある理由の1つです。
シリーズ1作目のこの本は、ティラノサウルスのベビー、トリケラトプスのトップス、ステゴサウルスのゴンちゃんの3頭が、ボムボム山を目指して冒険をするお話です。途中には迷路やクイズ、漫画の場面も盛り込まれていて、グイグイとお話に引き込まれていきます。読み終わった後には、自分の「ほねほねザウルス」コレクションで遊びたくなるでしょう。主人公の3頭が、男の子たちに人気の恐竜であることも見逃せません。
国語の授業で習う物語や漢字に苦手意識をもち、読書が食わず嫌いになってしまう子どももいるかもしれません。そんなお子さんたちにも手が届きやすい、文字が大きく、イラストも楽しい本をご紹介しました。お気に入りの主人公が見つかったら、もう心配ありません。低学年の子どもたちが、休み時間や夏休みにも「読書は楽しい」と思えるようなお手伝いができると嬉しいです。