普段はお嬢様学校に通う深窓の令嬢、夜は暴走族の特攻隊長というふたつの顔を持つ女子高生を描いた『特攻!アルテミス』。古き良き漫画の魅力があります。今回はそんな本作の魅力をご紹介!ネタバレを含みますのでご注意ください。
恵美は大正時代から続く華族の家に生まれたお嬢様。才色兼備でテニス部でもエースという完璧少女です。
しかし彼女には実は裏の顔がありました。それは暴走族・月姫(アルテミス)の特攻隊長だということ。『特攻!アルテミス』はそんな彼女の裏と表の日常を描いたヤンキー漫画です。
本作の魅力は何といっても恵美が可愛いということ。抜群のプロポーションと真っ赤な口紅をつけた強気な顔つきはたまりません。
そしてとにかく喧嘩が強い。頭を使った戦い方に、男顔負けの立ち回りなどにはつい見とれてしまいます。
女性が主人公の漫画でとにかく大事なのがビジュアル的に可愛いかどうかということ。本作の主人公恵美はそこをきちんと抑えた魅力的な女性です。
- 著者
- 森 左智
- 出版日
本作はヤンキー漫画で最も重要とも言える喧嘩シーンも読者をしっかりと引き込んでくるもの。画面に迫力があり、コマ割りにスピード感があります。
ある日、アルテミスのひとりが犯されかけたという話を聞く恵美。その相手は1週間前に合併を持ちかけてきた黒叉悪隊(ブラックシャーク)のメンバーだと言います。
偉そうに上から交渉を持ちかけてくる総長・杵島に、めぐは平手打ちをかまして暴言を吐き、追い返したのでした。
意のままにいかない相手に余計にもえる杵島はその夜、アルテミスに電話をかけてきます。そして彼はアルテミスからさらったメンバーのひとり・珠紀と引き換えに下につけと言ってくるのです。
横暴なやり方についに堪忍袋の緒が切れた恵美は、珠紀とブラックシャークが待つ現場へと向かいます。
その場にバイクで駆けつけ、パチンコで火薬を撒き散らす恵美。彼女の奇襲に気を取られた男たちにメンバーたちがガソリンの入った水風船をブラックシャークのメンバーたちに当てます。そしてライターを手に持って彼らに迫ります。
予想外の喧嘩の仕方に追い詰められ、手も足も出ないブラックシャークのメンバーたちはボロボロ。その間に恵美は杵島にトドメを刺し、颯爽とその場を去るのです。
細い線や淡い色彩感の画面で洗練された雰囲気の漫画が増えてきた昨今ですが、本作では昔の漫画らしい「濃い画面」が際立ち、迫力を出しています。
しかし主人公が美少女ということもあり、読んでいてクドく感じません。男だらけのヤンキー漫画もいいですが、こんな作品も迫力がありつつ飽きないいいものだと思わせてくれる作品です。
- 著者
- 森 左智
- 出版日
本作では画面も昔ながらの濃いものですが、ラブコメ展開もコテコテのもの。しかし想像できるのにそのオチを待ち構えてしまうような、お家芸的な良さがあります。
ある日恵美はお見合いに連れて行かれ、実は貿易会社の令息だという杵島と再会。彼は両親には暴走族のことを内緒にしている恵美を脅してきます。
そんな見合いの最中、アルテミスのメンバーから恵美に連絡が入りました。何とブラックシャークレディースが男チームをコケにされた報復として喧嘩を売ってきたというのです。
後ろで聞いていた杵島はお願いすれば力になってやらないこともないと迫ってきますが、恵美はこう返します。
「女ってのが全部が全部
男に頼らなきゃいらんねー生物(モノ)だと思ってんのかよ?」
そう言って杵島が持っていた車の鍵を奪うと、着物のままで喧嘩の現場へと向かうのです。
コケにされて怒り心頭な杵島はタクシーに乗り込み「ぜってーひれ伏させてやらあッッ!!」と意気込みます。しかし少しずつ怒りが心配に変わっていることに気づくのです。
慌てて自分の気持ちにブレーキをかける彼ですが、行き着いた先で見事喧嘩に勝利している恵美を見てついドキッとしてしまいます。
そんな杵島の様子に気づいた恵美は更に着物の襟元をゆるめ、彼に「二人でいいトコ行こ?」と誘惑。メロメロになった杵島は「どこだろーと!!」とホテルの名前をリストアップします。
しかしふたりが着いた先は呉服屋。恵美はボロボロになった着物を新しい着物に変え、総額103万円を杵島に払わせるのです。
惚れさせた相手を期待させてから落とすという小悪魔展開の王道を踏襲する恵美。喧嘩のシーンが迫力満点なだけに、ゆるいラブコメ展開の面白さが更に際立ちます。
このあとも手に汗握る喧嘩シーンに挟まれる杵島と恵美のラブコメ展開は、ストーリーに良い緩急をつけてくれるものです。
- 著者
- 森 左智
- 出版日
ここまで恵美を始めとした女性キャラクターに焦点を当ててきましたが、実は『特攻!アルテミス』にも魅力的な男性のキャラクターがたくさんいます。
1番の人気を誇るのは、多摩地区最大の暴走族集団・紅連曾のリーダーを務める桃生河鳶生(ものうが とびお)。最強の男だけが手にする事の出来る「Eの伝説の証」の後継者で、わずか16歳にして多摩地区で最も恐れられている最強のヤンキーです。信じられない程の強さを持ち合わせ、対立していた暴走族集団「ベラドンナ」をほぼ1人で一掃しました。また彼は持ち前の甘いマスクで女性から人気を誇り、気が強く恋愛とは少し遠いように思える恵美ですら彼に思いを寄せていました。
前述の杵島もとても人気の高いキャラクターです。物語の冒頭では悪役として登場する杵島ですが、物語が進むにつれアルテミスの強い味方として抗争に加わりました。恵美に思いを寄せる彼は桃生河を常にライバル視しており、たびたび戦いを挑むものの、やはり最強の相手に歯が立ちません。最強で完璧な桃生河に比べると、少々泥臭く映ってしまう杵島ですが、どうしても恵美を諦めることが出来ない姿に強く胸を打たれます。恵美や杵島達の恋愛模様にも注目です。
ここで紹介した2人以外にも、まだまだ多くの男性キャラクターが登場します。男気溢れる彼らの魅力をぜひ味わってみてください。
月姫への熱い思いがこもった言葉や、女として強く生きる恵美の言葉など、漫画『特攻!アルテミス』では多くの名言が登場します。
今回はその中から選りすぐって、3つの名言を紹介します。ネタバレ込みなのでご注意ください!
主人公恵美の月姫(アルテミス)に対する熱い思いが感じられる名言。恵美はお嬢様として家のため、琴や茶道といった習いごとに加え、優秀な成績を残さなければならないという窮屈な生活を強いられています。
そんな彼女にとって月姫は唯一自分らしく生きることができる、かけがえのない場所。月姫の仲間が危険にさらされていると知り、助けに駆けつける恵美の言葉から、彼女がどれだけ仲間を大切にしているのかを感じることができます。
初代総長の宗方流音は、恵美の師匠のような存在です。型にはまって生きている自分を変えたいと思い、月姫へ仲間入りした恵美ですが、殴り合いなどしたことがあるはずなく、喧嘩に負け続ける毎日が続いていました。喧嘩を挑むものの、人を殴る事が出来ない恵美に総長が喝を入れます。
どこにいたって人間は同じだッ!!
自分(てめえ)を守るために戦うッ!!
牙がなくちゃ生きてけねェんだよッ!!
終わりたくなきゃ死ぬ気で嚙みつけッッ!! (『特攻!アルテミス』1巻より引用)
この言葉を受けて踏ん切りがついたのか、恵美は覚悟を持って喧嘩へと挑むようになりました。そして彼女は自分の殻を破り、二代目の総長へと成長していきます。恵美に向けられた言葉ではあるものの、何事にも覚悟を持って死ぬ気で挑めという、読者へのメッセージのようにも思えます。
族の総長として一仕事終えた後、才色兼備のお嬢様へと戻る恵美。特攻服を脱いだ彼女は、お嬢様のようなフリルのついたパジャマに着替え、ふわふわのベッドで眠りにつきます。「すう…」と寝息をたてて眠るその顔からは、暴走族であることなど微塵も感じさせません。
自分の本当の居場所は月姫であると感じながらも、お嬢様としての生活もしっかりとこなす恵美。昼と夜でまったく違う2つの顔を持つ彼女ですが、どちらの彼女もとても魅力的な女性です。
- 著者
- 森 左智
- 出版日
コテコテの展開なのにページをめくる手が止まらなくなる『特攻!アルテミス』。古き良き漫画の王道が味わえる懐かしい作品です。
ぜひ作品でそんな魅力を味わってみてください!力を入れずに楽に読めるおすすめヤンキー漫画です。
おすすめのヤンキー漫画を紹介した<最強不良漫画ランキングベスト25!名言続出のアツい男たち>もおすすめです。ぜひご覧ください。